鉄と血のランペイジ   作:芽茂カキコ

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あれが三日月

▽△▽――――――▽△▽

 

 昭弘らが交戦している位置から更に上方。

 巨大な青い惑星……地球を背景に〝バルバトス〟と〝キマリス〟の戦いは熾烈を極めていた。

 

「ち………っ! 前より速いな」

 

〝キマリス〟の凄まじい加速力を前に、ドルトコロニーの時同様、〝バルバトス〟は翻弄されるしかない。事態の膠着に三日月は内心舌打ちを隠せなかった。

 だが勝機はある。

 チャンスは一度。

 

『お前らに引導を渡すため、わざわざ用意してやった〝ガンダムキマリス〟だ。そしてボードウィン家直属の部隊まで引っ張ってきてやったのだから―――――ありがたく思いながら逝けぇッ!』

 

 目まぐるしい機動から一転。〝キマリス〟はミサイルに等しい速度で〝バルバトス〟へと突撃、ランスを突き出してきた。

 

「………俺もアンタのために、用意したものならあるよ」

 

 今だ。三日月は………敢えて動かずその突進を受け止めた。ランスの先端が〝バルバトス〟の胸部装甲を容赦なく抉りぬく。

 その衝撃の中で、三日月は冷静にコンソール上の【装甲分離】コマンドを叩いた。

 

 

『やったか! ………なぁ!?』

 

 

 内部に仕込んでいた爆薬によって吹き飛ばされる〝バルバトス〟の胸部装甲。それは、ただの追加装甲であり、ランスの先端はその内奥で守られていた本来の胸部装甲やコックピットに全く到達していなかった。

―――これが、俺がアンタのために用意してやった………えーと、何だっけ?

 

 

『ま、まさか! リアクティブアーマーだとッ!?』

「あ、そうそれ。………パターンがわかれば対策くらいするよ」

 

 

 おやっさんが。と三日月は内心付け加えた。リアク何とかを知ってるって、ガリガリって結構頭いいんだな。

 詳しい仕組みはよく分からなかったが、とにかく前方の装甲が厚くなり、あの厄介なランスの突きから一度だけ機体を守ることができる。それだけ分かれば十分だった。

 すかさず三日月は〝キマリス〟のランスを〝バルバトス〟の手で掴んだ。これで得意の高速戦は封じた。

 

 

『くそ! ネズミ………がっ!?』

 

 

 そう吐き捨て〝バルバトス〟の捕捉から逃れようとした〝キマリス〟だったが、すかさず垂直回し蹴りでその手からランスをもぎ取る。

 そこで姿勢が崩れた一瞬を逃さず、三日月は目にも止まらぬ挙動で〝キマリス〟の肩部に手持ちのメイスを突き立て………メイス内部に収められていたパイルバンカーをゼロ距離で発射。撃ち出された鉄杭が〝キマリス〟の肩部から後部のブースターユニットを引き裂き破壊した。

 

 これで得意の高速戦は完全に使えない。モビルスーツによる格闘戦では、阿頼耶識システムによって直感的な反応を持つ三日月が圧倒的に有利だった。

 見る間に殴り飛ばされ、他の兵装も次々潰されてしまう〝キマリス〟。

 さらにその頭部を掴み、三日月は勢いでトドメを刺そうとしたが、すんでの所で〝キマリス〟は腰部に残っていたコンバットナイフを引き抜き、一瞬〝バルバトス〟を振り払う。

 だが三日月は〝バルバトス〟を素早く回り込ませ、〝キマリス〟の胸部を蹴飛ばした。負けじと向こうも殴りかかってきて、

 

 

『俺にも誇りがある!』

「あ、そう」

 

 

 だから何だよ? 無駄口叩く暇があるなら戦いに集中すればいいのに。

 少なくとも三日月はそうした。〝キマリス〟から一度距離を取り、〝バルバトス〟両腕に仕込んでいたミサイルを発射。

 回避が遅れた〝キマリス〟に2発とも着弾し、その姿は一瞬爆発の炎と煙に呑み込まれた。

 

 

『がっ! ………はあっ、は………あ――――――!?』

 

 

 ようやく煙が晴れた時、〝キマリス〟に乗る疲弊したガリガリの目に映ったのは、自分めがけて投擲される自機のランスの切っ先だっただろう。

 お前を守ってくれる奴は誰もいない。

 次の瞬間、三日月はコックピットモニター越しに………長大なランスが〝キマリス〟の腹部から胸部にかけてをぶち抜くのを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

『が……ぐ――――――――がアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 通信越しの耳障りな絶叫に、三日月はチッと舌打ちした。

 仕留め損ねた。ガリガリはまだ生きてる。

 

「………ガリガリが」

 

 さっさと倒れろよ。今忙しいんだから。

 さっさと潰すべく三日月はフットペダルを………

 

 

『――――ミカ悪ィ! 敵の増援だ。すぐ行ってくれるか!?』

「分かった、オルガ。任せて」

 

 

 あんなダメージじゃトドメを刺さなくても、もう長くないだろ。

 三日月は沈黙し、漂流する〝キマリス〟を一瞥すると、新たな敵機の反応目がけて〝バルバトス〟を加速させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽――――――▽△▽

 

『カケルっ! 敵がまた………』

「く………っ!」

 

 無限湧きのつもりかよ、さっきから………。

 さらに追加された7機の反応。拡大モニターに表示されるのはアリアンロッド艦隊仕様の〝グレイズ〟。

 今しがた倒した〝グレイズ〟からコンバットブレードを引き抜き、俺は素早く残弾数と高度、降下船の位置、それに高度を確認した。あと少しだけ、時間を稼げればそれでいい。

 だが〝マン・ロディ〟はもうスラスターガスが底を尽きかけているはずだ。

 

「クレスト、ビトー、ペドロはもういい。降下船に行け」

『まだやれるっ!』

「ガスの残量を見てから言ってくれ。時間稼ぎなら俺一人で何とかなる」

 

 あいにくと高燃費の〝ラーム〟のスラスターガス残量も―――まもなくイエロー表示からレッドに差し掛かりつつある。だが短時間の全力戦闘なら問題ない。

 サッと頭の中で交戦可能な残り時間を計算し、俺は〝ラーム〟をアリアンロッドの増援部隊目がけて突っ込ませた。

 

『カケルっ!!』

「後ろは気にするな! 行け!」

 

〝グレイズ〟隊の銃撃が何発も〝ラーム〟に着弾し、その度にコックピットが激しく揺さぶられるが、構わず突撃し、なけなしの残弾を間近の〝グレイズ〟に叩き込んだ。

 それにしてもこいつら――――――

 

 

『ぐ………こいつっ!』

『怯むな! アリアンロッドの底力を見せてやれ!』

『戦果を上げねば、命令違反で地球外縁軌道統制統合艦隊の領分を侵した我らに、帰る場所は無いッ!!』

 

 

 成程………離反部隊だったのか。

 だが、何となく月外縁軌道統制統合艦隊の首魁、ラスタル・エリオンの影がちらほら見えるような気がする。

 何にせよ、ここから先には行かせるつもりはない。

 

「来いよ。7対1なら楽勝だろうが」

『舐めた口をッ!』

 

 激高した〝グレイズ〟隊が一斉に襲いかかってきた。

 そっちから来てもらえるなら―――有難い。

 俺は抜き放った〝ラーム〟のコンバットブレードを、眼前の〝グレイズ〟が構えるバトルアックスに叩き込み、素早く刃を絡ませて、背後からこちらを狙おうとしていたもう1機に、〝グレイズ〟ごと投げ飛ばした。

 

 

『ぐあ………っ!』

『くそ! なんて馬鹿力………!?』

 

 

 敵が怯んだ一瞬を逃さずコンバットブレードを逆手に、俺はその刃の先端を、回避が遅れた1機の〝グレイズ〟、その装甲と装甲の合間にねじ込んだ。

 やっと1機。さすがにこのペースで全機を叩き落すのは不可能だ。

 

「降下船は………!」

『こちら2号降下船! もう降下軌道に乗ったぞ! 早くこっちに………!』

 

 高度の低下と共にノイズも激しくなる。クレストら〝マン・ロディ〟隊は、指示通り降下船に着地しつつあった。オルガの乗る1号降下船は、さらに高度を下げて先行している。

 タイミングを逃せば地球の摩擦熱で焼け死ぬ。この瞬間にも徐々に地球の重力に引かれつつあり、高度がかなり下がっていた。機外温度も徐々に上昇していく。

 

『カケルっ! 早く!』

「分かってる! この………っ!」

 

 なおも迫る1機をガトリングキャノンの砲身で思い切り殴り飛ばし、その隙を突いて俺は一気に〝ラーム〟を地球目がけて急降下させた。その先には2号降下船の姿が。

 

 

『くそっ! これ以上は重力が………!』

『まだだ! まだやれ……うぐっ!?』

『降下船からの攻撃だと!?』

 

 

 降下船の出っ張りに掴まりつつ3機の〝マン・ロディ〟がマシンガンを撃ちまくり、なおも追いすがろうとする〝グレイズ〟を1機、また1機と撃ち飛ばしていった。

 あと少し………俺は〝ラーム〟の足を降下船に向け、着地態勢に―――――――

 

 

『行かせるかァーッ!!』

 

 

 その時、弾幕を強引に突破した1機の〝グレイズ〟が………両手を広げて〝ラーム〟に組み付いてきた。

 

「ぐ………ぅ!?」

『地球に! 我らの地球に病原菌持ちの火星人を入れてたまるか―――――――ッ!!』

 

 抱き合った姿勢のまま、降下船へと着地軌道から大幅に引き離されていく2機。

 衝撃と警告音が滅茶苦茶に迸る中、俺は機体に組み付いた〝グレイズ〟を引き剥がそうとするが………拳を振り上げた〝グレイズ〟の手に握られていたのは、バズーカ砲のマガジン。

 

 

 やばい――――――!!

 

 

 逃れる間は無かった。マガジンを握りしめた〝グレイズ〟の拳が、次の瞬間〝ラーム〟の胸部上方に打ち付けられ、拳の中でひしゃげたバズーカ砲のマガジンは爆発。

 

『カケル!?』

 

 火球と爆煙に呑み込まれた2機は、炸裂した爆発によって力づくで引き離される。自爆特攻に近い攻撃によって、上半身が焼けこげ奇妙にねじ曲がった〝グレイズ〟は、力なく弾き飛ばされていった。

 重装甲の〝ラーム〟も無事ではない。全身を思い切り殴りつけられるような衝撃とコックピットに飛び散る火花。堪えきることができず俺の意識は一瞬吹き飛んでしまい、その後の対処が遅れてしまった。

 

 

『仲間の死を無駄にするな!!』

『こいつだけでも! うおオオオオオオオオオオオォォォォ!!!』

 

 

 限界点を突破して迫るもう1機の〝グレイズ〟。意識では俺も必死に迎え撃とうともがいたが………先ほどの衝撃で身体が痺れてしまい、思うようにコントロールグリップを握れない。

 そしてコックピットモニターいっぱいに、敵機のバトルアックスが大写しとなった。

 もう、間に合わない………!

 

 

『やらせるかっ!!』

 

 

 だが〝ラーム〟を撃墜あと一歩の所まで追い込んでいた〝グレイズ〟は、次の瞬間脇から飛び込んできたずんぐりとした巨体によって突き飛ばされ、コックピットモニターから弾き出された。

〝マン・ロディ〟の渾身のタックルをもろに食らった〝グレイズ〟はバトルアックスを失い、それでも素早く姿勢制御を取り戻すが、次の瞬間、背後に忍び寄った2機の〝マン・ロディ〟…そのハンマーチョッパーに殴り潰された。

 

 

「………お前らっ!? 今降下船から離れたら―――――!」

『カケルを置いていけないっ!』

『今ならまだ追いつける! 戻るぞ! ………あ? あれ?』

『ぜ、全然上に上がらな………!?』

 

 ビトーら〝マン・ロディ〟が脚部スラスター全開で飛び上がろうとするが………

 

「地球の重力にもう捕まってるんだよ!」

 

 

 モビルスーツのスラスター程度では地球の重力を振り切ることはできない。

 降下船は遥か頭上。降下船ほどの分厚い耐火装甲を持たないモビルスーツでは………いずれ機内が灼熱し、パイロットは中で焼け死ぬしかない。

 こうしている間にも〝ラーム〟や〝マン・ロディ〟の装甲表面は徐々に大気との摩擦熱で赤らんでいき、コックピット内部温度も徐々に上昇していく。

 

 

『あ、熱い………!?』

『な、何なんだよこれっ!?』

「………今すぐ3機で固まれ!」

 

 手近なクレストの〝マン・ロディ〟の腕を掴み、ビトーとペドロ機に押し付けた俺は、大気の摩擦熱から3機を庇うように〝ラーム〟を回り込ませた。

 背部の機外温度が急上昇し、いくつもの警告表示でコックピットモニターの片面が埋め尽くされていく。

 

『か、カケル!?』

「〝ラーム〟の装甲なら、何とか大気圏を抜けられるかもしれないからな」

 

 俺は抱き合わせるように3機の〝マン・ロディ〟に〝ラーム〟を密着させた。これで、一応は〝ラーム〟がMS用降下グライダーの代わりになるはずだ。

 

 

【警告:機外温度 限界温度突破】

【警告:冷却システムに異常発生】

【警告:コックピット内温度調節機能に異常発生】

 

 

 ゴゴゴ………! と聞こえる背面からの凄まじい衝撃に灼熱。なけなしのガスを消耗して全スラスター全開にしても、無駄だ。

 

『カケル!!』

「動くなッ! 焼き殺されるぞ!」

『でもカケルが!!』

 

 このままだと俺はコックピットの中で蒸し焼きだ。

 ノイズが滅茶苦茶に迸るモニターに、エラーか警告ばかりの計器表示。もう〝ラーム〟は重力に引かれて落ちるだけの鉄の塊だ。

 すでに背中から焼けそうな熱を浴び、全身の血が沸騰しそうだ。しかもさらに気温は高まっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 死――――。否応なく突きつけられる事実を、俺は受け入れるより他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで、なのか………」

 

 が、その時だった。

コックピットモニターの上片隅で何かが摩擦熱を放っている。モビルスーツ………にしてはかなり大きい。そう、降下船ぐらいの。

まさか………!

 

 

『お困りのようですね。よろしければお乗りになってくださいな』

 

 

 現れたのはメタリックブラックの降下船だった。急角度、凄まじい速度で突っ込んでくるそれは、瞬く間に落下中の4機のモビルスーツを追い抜いて、その鼻先で機首を上げた。

 大気摩擦熱を黒い降下船が肩代わりしてくれる形となり、機外温度も徐々に低下。

 安全に地球に降りたいなら、何にせよこの降下船に降りるより他ない。

 

「よし………降りるぞ!」

 

 着地姿勢を取って、まずは〝ラーム〟が降下船の背に着地。3機の〝マン・ロディ〟もそれに続いて降り立った。

 

「全員、生きてるな?」

『う、うん………』

『つか、何なんだこの船』

『味方?』

 

 クレストら共々、俺も困惑する中、再び降下船から通信が。

 通信ウィンドウに現れたのは、流れるような金髪の、それはもう美しい女性だった。

 

『ご無事で何より。私はエリザヴェラ・ウィンストン。モンターク商会渉外部の者ですわ』

「………傭兵、蒼月駆留だ。救援には感謝する」

『いいえ、とんでもございません。鉄華団の方々が窮地の際には援助せよと、我が主モンターク様の厳命でございますから。それよりも振り落とされないよう機体の固定を、どうぞよろしくお願い致します』

 

 了解、と俺は

 やがて、〝ラーム〟と〝マン・ロディ〟3機を載せた黒い降下船は大気圏を突破、眼下に広がる薄雲をいくつも突き破り………星空が覗く夜空が姿を現した。

 うわぁ……! とクレストらがはしゃぐ声が通信越しに聞こえてきた。

 

『地球だ………っ!』

『へぇ、これが………』

『何でだろ、なんか、俺、昔この景色を見たことあるかも』

 

 ペドロは地球生まれなのかもな。

 降下船は大きく翼を広げて、夜空を気持ちよく、飛び駆けていった。

 

『あ、見て!』

『ん? ………うわっ! で、でけぇデブリの塊が落ちてくるっ!?』

『あはは、違うよビトー。あれは月だ。地球の周りを回ってるんだ』

 

 夜空に、大きな三日月が浮かんでいた。厄祭戦によって表面が酷く抉られ、無残なデコボコを晒しているが、それでもなお美しく、夜空にわずかな明かりを投げかけている。

 

 

 

―――――あれが、三日月。今頃、地球外縁軌道統制統合艦隊の〝グレイズリッター〟隊を撃破し、地球へと降りただろう三日月・オーガスも、同じ光景を目にしているのだろうか。

 

 

 

 所で、

 

「………ん? あの、エリザヴェラさん?」

『はい。ご用件をどうぞ』

「この降下船はどこに? 俺たち、オセアニア連邦のミレニアム島に行かないといけないんですけど」

 

 周囲には他の降下船の姿は見えない。かなり引き離されてしまったのは間違いなかった。

 通信ウィンドウ上で、エリザヴェラは一瞬、手元の端末に視線を落として、

 

『大変申し訳ありませんが、突入角度の都合上、当機はオセアニア連邦領内で着陸できません。これより最寄りのアーブラウ領、旧ウラジオストク宇宙港に着陸いたしますわ』

「ウラジオストク………」

 

 脳内の情報チップにアクセス。

 旧ロシア連邦極東部に位置し、ロシア海軍太平洋艦隊が配備される軍港都市であったことは現実世界と同様だったが………厄祭戦時に徹底的な破壊に晒されて太平洋艦隊もろとも壊滅。戦後である現在は小さな町や研究施設が点在するだけの寂れた一地方と化しているという。

 脳内チップの情報によれば旧ウラジオストク宇宙港も厄祭戦時に破壊されて放棄されているはずなのだが………

 

『ウラジオストクには我がモンターク商会の資材管理センターと、我が主モンターク様の別荘がございます。モンターク様は、是非とも皆さまにご滞在いただきたいとお望みですわ』

 

 拒否権は無さそうだ。少なくとも金もツテも無い地球に放り出されて鉄華団に合流できる見込みはない。今はエリザヴェラなるこの女性……ひいてはモンターク=マクギリスに身を委ねるのが最善だ。

 

「………モンタークさんにはご厚意に感謝すると伝えてください」

『我が主も喜びますわ。では、30分ほどのフライトの後、当機は旧ウラジオストク宇宙港への着陸態勢に入りますので』

 

 夜空を滑るように、俺たちの乗る黒い降下船は暗い海原を遥か眼下に飛んでいく。

 正直、すぐにでもミレニアム島に向かいたい。このままだと間違いなく、復讐に燃えるカルタ・イシュー率いる地球外縁軌道統制統合艦隊の襲撃を受け………鉄華団にとって、その後の存亡をも左右する重要な人物が喪われてしまうかもしれないのだから。

 

 

 俺は夜空と三日月を見上げ、この後起こるだろう出来事………そして、このまま手をこまねいていれば容赦なく削られていくだろう命があるという事実に、ただ思いを馳せた。

 

 

 

 




◇オリメカ解説

・強襲降下艇

民間で運用されている降下船の戦闘仕様機。
装甲が追加されている他、急角度での高速突入にも対応可能な装甲と高出力スラスターを持ち、ギャラルホルンが地球軌道上からの強襲及びその訓練のため運用している。地球外縁軌道統制統合艦隊の保有機種の一つだが、現在まで実戦に参加した例は無い。

モンターク扮するマクギリスが登録を抹消した数機を密かに保有しており、うち1機を鉄華団の援護のために使用した。
軌道上での対空戦闘を想定した対空砲を2基備えている。

(武装)

対空砲×2


オリキャラ、オリメカ登場時にちょくちょく解説を挟んでいきたいと予定中です。

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