鉄と血のランペイジ   作:芽茂カキコ

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決闘の作法

▽△▽――――――▽△▽

 

『来ましたッ! 奴らを乗せた貨物列車です!』

 

 部下の報告に〝グレイズリッター〟のコックピットモニター越し、古臭い列車が徐々にこちらへと近づいてくるのがカルタにも見えた。

 あの列車に………地球軌道上、ミレニアム島、さらには洋上でもカルタの部隊を打ち破り、カルタの誇りを傷つけた〝鉄華団〟なる宇宙ネズミ共の集団が乗っている。カルタら〝グレイズリッター〟3機は今、列車の線路に跨るように布陣しており、足下の線路を踏み潰されたくなくば、貨物列車は止まらざるを得ないだろう。

 

 誇り高きイシュー家の娘として。カルタは強く決意を湛えた瞳で鋭く敵影を睨み据えた。

 

 

「――――いいこと? もはや私たちに、退路はないと思いなさい!」

『『ハッ!!』』

 

 

 親衛隊員たちが応える。………奴らと戦う前、総勢8名の選ばれたエリート中のエリートも、見ればあと2人。残りは戦死するか、辛うじて生還した者も長期の療養を余儀なくされ、砕かれたプライド共々、立ち直るには長い時間がかかるだろう。

 そしてカルタ自身も、度重なる敗戦に追い込まれていた。家名に傷をつけたままイシュー家の屋敷を跨ぐことなどできようはずもなく、戦果なくば地位も、名誉も失われる。

 

 

「だが………この窮地が私を強くする」

 

 

 カルタの〝グレイズリッター〟はバトルブレードを抜き放った。親衛隊の2機もそれに続き、カルタ同様完璧な所作で迎撃の構えを取る。

 

――――私は、どんな時も誇りを忘れない。

――――そうでしょ? マクギリス。

 

 カルタは、ヴィーンゴールヴで戦果を待っているだろうマクギリスのことに思いを馳せた。その真っ直ぐ見てくれた瞳を、決して裏切る訳にはいかないのだ。

 

『必ずや、勝利を我が手に!!』

『この胸の誇りにかけてッ!』

 

 負ける訳にはいかない。

 そして、窮地によって牙を鋭くした私たちが、負けるはずがないのだ。

 これまではただの宇宙ネズミの集団と侮ってきた。だが、ここから先は違う。

 

 対等の好敵手として………正々堂々と相まみえようではないか!

 

 

 

「そう――――真価を示す時よッ!」

 

 

 

 やがて、カルタらの数百メートル手前で貨物列車は急停止した。吹く夜風以外、しばしの間沈黙に閉ざされる。

 と、貨物列車から次々と人影が飛び出してきた。クーデリア・藍那・バーンスタインを護衛しているという〝鉄華団〟の兵士たちだろう。長大な車列の後尾には、これまで何度もカルタら地球外縁軌道統制統合艦隊を打ち破ってきた〝バルバトス〟の姿も見える。

 

 相手に取って不足は無い。

 

 好敵手を前に正々堂々と宣戦布告すべく、カルタは古くから定められた所作の通り外部スピーカーをオンラインにした後コックピットから出、乗機の肩部の上に立った。

 当然部下たちもそれに倣う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――私はギャラルホルン本部所属、地球外縁軌道統制統合艦隊司令官カルタ・イシュー! 鉄華団に対し、モビルスーツ3機同士による………決闘を申し込みに来たッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽――――――▽△▽

 

「くそっ! やっぱり出張ってくると思ったが………」

『待ってカケル! 地上戦用のセッティングはまだ不十分で………』

「砲台にさえなればいい。………他の連中は!?」

 

 

 既に〝ラーム〟のコックピットで待機していた俺は、機体のシステムを立ち上げ、機体を起こしながら他のモビルスーツの状態を確認する。

 見張りのため稼働状態にあった〝バルバトス〟は貨物列車の後尾で、いつでも交戦に移れるよう待機しているようだった。他の機体も、

 

 

『〝ホバーマン・ロディ〟、ビトー機。いつでも出れるぜ!』

『ペドロ機もいけますっ!』

『昌弘機、準備よし』

『同じくクレスト機もOKですっ!』

 

 

 ブルワーズ時代からの習慣で、機体前でいつでも戦えるよう待機していたのだろう、真っ先に元ブルワーズ組が準備を整えた。インナーパイロットスーツを着た4人の姿が続けざまに通信ウィンドウに現れる。

 

 他の機体も出撃準備を進めているようだったが………またしても外部スピーカーからの声が飛び込んできた。

 

 

 

 

 

『私たちが勝利を収めた暁には、蒔苗東護ノ介および、クーデリア・藍那・バーンスタインの身柄を速やかに引き渡してもらおう。無論、鉄華団の諸君には大人しく投降していただく。我らが敗北した場合は、………好きなようにここを通るといいッ!!』

 

 

 

 

 

 原作通りの文句だ。原作ではカルタがセッティング云々を口にしている最中に三日月が問答無用で奇襲を仕掛けたのだが………

 俺はオルガらが詰めているだろう、蒔苗老のいる一等客室への通信を開いた。

 

「指示をくれ。奇襲は可能だが、相手は線路を人質にしている。射撃による排除は難しく、対応は慎重を要する」

『ま、待ってください! まさかこんなに早くギャラルホルンに感づかれるなんて………待機でお願いします!』

 

 通信に応えたのはビスケットだった。

 原作同様、このルートがバレたのはモンターク=マクギリスの差し金だろうが、オルガもじきにそれに感づくだろう。俺から口にする必要はない。

 

 センサー表示を見れば、〝バルバトス〟の他、〝グシオンリベイク〟〝流星号〟〝漏影〟や〝フォルネウス〟〝アクア・グレイズ〟にもパイロットが入ったようで、

 

 

『へぇ~、決闘たぁ面白え。やってやろうじゃねぇか、なあ昭弘!』

『ああ………』

『シノも昭弘も熱くなってんじゃないよ! 決闘なんて無駄だ!』

『そうそう。数はこっちが上なんだしさ。皆でボコ殴りにしちゃばいいだけじゃん』

 

 

 ラフタが気軽にそう言った直後。わずかに貨物列車全体が、揺れた。

 まさか三日月が? そう思ったが〝バルバトス〟のエイハブ・ウェーブは動いていない。

 

 モニター越し、見ればクランクの〝フォルネウス〟が雪原に立ち上がった所だった。

 そして、

 

 

 

『オルガ・イツカ団長! 悪いが三日月少年と昭弘君を借り受けたい』

『おいおい………まさか受ける気か?』

『相手は正々堂々の決闘を所望している。線路が人質に取られている現状、奇襲もままなるまい。………試しに聞くが、決闘の正式な作法を承知しているか?』

『んなもん知るかよ………』

 

『ならば私が手本を見せてやろう。さあ、決断するがいい』

 

 

 

 マジか………。

 あの決闘、本気で受ける気なのか。

 

 オルガは、少し悩んだようだったが、

 

『………分かった。ミカ! 昭弘! 行ってこい!』

『分かった!』

『おう!』

 

〝バルバトス〟と〝グシオンリベイク〟を引き連れ、地上戦用に最適化されたクランクの〝フォルネウス〟は、雪煙を噴き上げながら雪原を駆け飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽――――――▽△▽

 

『30分! セッティングにかかる時間を考慮し、我々は30分待とう! 準備が整い次第………む!?』

 

「お待たせして申し訳ない。決闘を受ける3機を揃えた故、こちらで顔合わせ願いたい。線路の人質は無用だ。決闘受立人として、こちらの雪原での決闘を要求する」

 

〝フォルネウス〟は〝バルバトス〟〝グシオンリベイク〟に一歩先んじる形で雪原に降り立った。〝グレイズリッター〟が頭部センサーをこちらに向け、

 

『そちらの要求はもっともだ。我らとしても、線路を人質に決闘を優位に進めんと誤解されるのは本意ではない。雪原での決闘を了承する』

「――――感謝」

 

〝グレイズリッター〟が飛びあがり、〝フォルネウス〟らと対する形、三角陣形で降り立った。距離も適度で問題は無い。

 

 

 

『では、これより決闘前の顔合わせを行う。憎たらしいその姿を見せるといい、宇宙ネズミ共』

 

 

 

「………三日月少年、昭弘君。私に続いてコックピットから出るといい」

『え?』

『マジかよ………』

「まずはパイロット同士が顔合わせをし、所属と名前を名乗るのが決闘の作法だ」

 

 そう言い、まずは手本を見せるべくクランクはコックピットシートをリフトアップし、〝フォルネウス〟の肩部に飛び乗った。既に相手は3名ともコックピットから出、見事な佇まいで待ち構えている。

 数刻後、ようやく〝バルバトス〟〝グシオンリベイク〟のコックピットから三日月と昭弘が姿を見せた。最初はコックピットシートから立っただけだったが、「機体の肩に乗れ」とクランクが指示すると、渋々の体でそれに従った。

 

荒涼とした環境で作法も知らずに戦うより他なかった少年兵たちであろうが、一通りの作法を弁えておけば、これから身分の高い者とモビルスーツによる決闘を行う際、恥をかかずに済むであろう。クランクはこの戦いを通してそれを教授する心づもりだった。

 

『では、代表者より名乗るがいい!』

「鉄華団預かりの傭兵、クランク・ゼント! 少年たちは決闘の作法に疎い故、私が代表者として受け立とう」

 

『確かに………予想していたよりも幼いな。まあいい。残り2名も名乗るがいい!』

 

 三日月、昭弘らは最初、困惑したように顔を見合わせたようだったが、

 

『えーと………鉄華団実働………』

「気合を入れてもっと声を張り上げろッ!」

『て、鉄華団実働モビルスーツ隊。三日月・オーガス』

『お、同じく鉄華団実働モビルスーツ隊。………昭弘・アルトランド』

 

 

『決闘代表受立人、クランク・ゼント。決闘受立人、ミカヅキ・オーガス。アキヒロ・アルトランドの計3名で承知した。決闘代表申込人カルタ・イシューは決闘代表受立人及び決闘受立人を承認する。次は我らが名乗ろう!』

 

 

 ザッ! と〝グレイズリッター〟の3名が姿勢をさらに正した。

 

 

『改めて名乗ろう! 私は、ギャラルホルン本部所属、地球外縁軌道統制統合艦隊司令官 カルタ・イシュー一佐!』

 

『ギャラルホルン本部所属、地球外縁軌道統制統合艦隊親衛モビルスーツ隊、レクシウス・パウルス・ヨーゼフ・ヴィ・ヨアティス一尉!』

『同じくギャラルホルン本部所属、地球外縁軌道統制統合艦隊親衛モビルスーツ隊、ザーツレウス・フォン・ディッターフォランド二尉!』

 

「うむ。決闘代表申込人、カルタ・イシュー。決闘申込人、レクシウス・パウルス・ヨーゼフ・ヴィ・ヨアティス及びザーツレウス・フォン・ディッターフォランド、計3名で承知した。決闘代表受立人クランク・ゼントは決闘代表申込人及び決闘申込人を承認する」

 

 

『承認を確認した。次に、決闘時の条件の確認に移る。見ての通り我らは近接武器のみで決闘を申し込む。願わくば、決闘受立人も同等の条件で戦うことを希望したい。ただし、そちらの機体は旧式故、モビルスーツの性能や練度を考慮し、そちらが火器の使用を希望する場合は了承しよう』

 

 

「うむ。なれば〝決闘は対等であるべし〟の作法に則り、我らも格闘用兵装のみでお相手しよう。………二人も銃火器をオフライン・放棄しろ」

『………マジで言ってんの………?』

「これは戦ではなく決闘だ。守らねばならぬ相当の礼儀と作法というものがある」

 

 

 有無を言わせぬクランクに………少しずつげんなりし始めた様子の三日月と昭弘は、〝バルバトス〟は腕部に格納された機関砲を引っ込め、〝グシオンリベイク〟は手持ちのライフルを放棄した。

 

 

 カルタは、その様子を見、満足げに小さく頷いていた。

 

 

『対等な条件での決闘に感謝する。これで正々堂々と戦えるというものだ』

「うむ。時に、決闘立会人は如何する? もしそちらで用意できぬ場合、私はアイン・ダルトンを推挙する。まだ若輩ではあるが質実剛健、忠勇義烈な優良男児であり、公正明大さにおいて比肩する者はいない。私同様、かつてはギャラルホルンに属し、堅実で優秀な仕事ぶりはかつてのギャラルホルン火星支部長コーラル・コンラッドも認める所であった」

 

 

 決闘には通常、事前に定められた条件が履行されているか監視・審判するための立会人が置かれる。どうやらカルタ・イシューら地球外縁軌道統制統合艦隊の一同は3機のみでこちらに対峙する様子で、立会人を別途連れて来ている様子はない。

 第三者の立場にある立会人が置かれるのが本来の理想であるが、それが望めない以上、現場において最も公正さに優れた者を指名するのが合理であった。

 

 カルタも、それに首肯し、

 

 

『――――良いだろう。決闘代表申込人カルタ・イシューは、決闘立会人としてアイン・ダルトンを承認する』

「感謝する。………アイン! こちらに来い!」

『は、ハッ!』

「心配することは無い。火星で教えた通りにやれば良い」

『はいっ!』

 

 

 アインの〝アクア・グレイズ〟が列車から飛び立ち、対峙し並ぶ両者を見渡せる少し小高い雪原の上に着地した。そしてコックピットから出て肩部へと飛びあがる。

 

 

『………で、では! これより私、アイン・ダルトンが決闘立会人としてこの場に立つものとするっ! まず、決闘受立人の………』

「決闘申込人が先だ、アイン」

『し、失礼しましたクランクさんっ! まず決闘申込人の確認を行う! 決闘代表申込人、ギャラルホルン本部所属、地球外縁軌道統制統合艦隊司令官 カルタ・イシューで相違ないか!?』

 

『相違なしッ!!』

 

『決闘申込人、ギャラルホルン本部所属、地球外縁軌道統制統合艦隊親衛モビルスーツ隊レクシウス・パウルス・ヨーゼフ・ヴィ・ヨアティス一尉で相違ないか!?』

 

『相違なし!』

 

『決闘申込人、ギャラルホルン本部所属、地球外縁軌道統制統合艦隊親衛モビルスーツ隊、ザーツレウス・フォン・ディッターフォランド二尉で相違ないか!?』

 

『相違ありません!』

 

 もし、代理人が立つ場合はこの場で立会人に申告するが、今回は皆本人同士での決闘となる。

 

『次に、決闘受立人の確認を行う。決闘代表受立人、鉄華団預かり傭兵、クランク・ゼントで相違ないか!?』

 

「相違なしッ!!」

 

『決闘受立人、鉄華団実働モビルスーツ隊、三日月・オーガスで相違ないか!?』

 

『ぐしゅっ………あ、ゴメン。いいよ』

 

『こういう場では「相違なし!」と答えるのだ! 作法を弁えろッ! クランクさんが決闘代表受立人を務める決闘なんだぞ!?』

 

『………ソーイなし』

 

『次に決闘受立人、鉄華団実働モビルスーツ隊、昭弘・アルトランドで相違ないか!?』

 

『………相違なし』

 

『相違なしを確認した! これより決闘立会人、アイン・ダルトンの下に、決闘代表申込人、カルタ・イシュー。決闘申込人、レクシウス・パウルス・ヨーゼフ・ヴィ・ヨアティス及びザーツレウス・フォン・ディッターフォランド。決闘代表受立人、クランク・ゼント。決闘受立人、三日月・オーガス。昭弘・アルトランド、各3機によるモビルスーツを用いた決闘を執り行う! 決闘条件は両者の合意の通り火器を用いず、近接格闘兵装のみを用いるものとする! また、決闘立会人の名において、決闘戦闘方式は地球決闘協会が定めた正統決闘方式となるギヨーム・ド・ソヴァラス式に則って執り行いたいと考えるが異議のある者はいるか!?』

 

『決闘代表申込人、ギャラルホルン本部所属、地球外縁軌道統制統合艦隊司令官 カルタ・イシュー、異議なし!』

『決闘代表受立人、鉄華団預かり傭兵、クランク・ゼント、異議なしッ!』

 

『決闘立会人、アイン・ダルトンは決闘代表申込人及び決闘代表受立人の異議なしを確認した。これを以て略式での決闘事前確認を終了するものとす。各員、モビルスーツに搭乗されよッ!!』

 

 

 クランクはコックピットシートへと飛び乗り、シートをコックピットブロックへとスライド降下させた。三日月、昭弘もすぐにコックピットに戻る。ギャラルホルン側の機体への搭乗も確認した。

 

 全システム異常なし。鉄華団のメカニックの手によって〝フォルネウス〟は来る地上戦に向け、最適な調整が施されていた。かつて乗機であった〝グレイズ〟よりも力強い戦いができそうだ。

 

『決闘立会人アイン・ダルトンは各機の搭乗を確認した! 決闘申込人より準備完了を決闘立会人に通知せよ!』

 

『決闘代表申込人、ギャラルホルン本部所属、地球外縁軌道統制統合艦隊司令官 カルタ・イシュー。異常なしッ!』

『決闘申込人、ギャラルホルン本部所属、地球外縁軌道統制統合艦隊親衛モビルスーツ隊レクシウス・パウルス・ヨーゼフ・ヴィ・ヨアティス。異常なし!』

『決闘申込人、ギャラルホルン本部所属、地球外縁軌道統制統合艦隊親衛モビルスーツ隊、ザーツレウス・フォン・ディッターフォランド。異常ありません!』

 

「決闘代表受立人、鉄華団預かり傭兵、クランク・ゼント。異常なしッ!!」

 

『いいよ』

『だから三日月・オーガス! クランクさんが決闘代表受立人を務める大事な決闘だと言っただろうが! このような場合は、所属と名を名乗った後、異常なしを決闘立会人に伝えるのだ。やり直し!!』

 

『……………鉄華団実働モビルスーツ隊。三日月・オーガス。異常なし』

『………鉄華団実働モビルスーツ隊。昭弘・アルトランド、異常なし』

 

 

『決闘立会人アイン・ダルトンは決闘申込人、決闘受立人双方の異常なしを確認した! 先行、後攻を両者の合意によって決定した後、決闘立会人アイン・ダルトンの号砲によって決闘を開始するものとする!』

 

 

 モビルスーツを用いた決闘の開始は大きく2種類に分けられると言われる。

 一つ。機体性能が同等であれば号砲と同時に両者同時に戦闘を始め、その技量によって勝敗を決する。

 一つ。一方のモビルスーツがもう一方より性能で劣る場合、決闘の公平さを期すべく性能が劣る一方の先攻を許し、性能で勝る後攻はそれを受け止めた後、戦闘を始める。

 

 クランクの〝フォルネウス〟に決闘代表申込人にであるカルタから通信が入ってきた。

 

 

『希望があれば聞こう』

「古くからの慣習に則れば、リアクター出力で劣るそちら側が先攻を仕掛けるが道理。勢いをつけて参られよ」

 

『望むところ! 我らの先攻にて了承する! 我らが正義の一撃の前に倒れ伏すがいい!』

 

 

『――――では、決闘申込人側からの先攻にて決闘を執り行うものとする。各機、構えられよ!!』

 

 

 ザッ!! と3機の〝グレイズリッター〟が一糸乱れぬ動きで剣を構える。

 対する〝フォルネウス〟もランスを手に、〝バルバトス〟はレンチメイスを、〝グシオンリベイク〟もバトルアックスをそれぞれ構える。

 

 

 

 

 

『………はぁ、やっと戦える』

『身体冷えちまったよ………』

 

 

 

 

 

 機体間の通信で三日月と昭弘がげんなりとぼやいていたが、クランクの預かり知る所ではない。

 双方の準備完了を確認したアインの〝アクア・グレイズ〟は、持っていたライフルを天高く突きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ではッ! 構え―――――――始めッ!!』

 

 撃ち放たれたライフルの砲声。

 

 刹那、3機の〝グレイズリッター〟がメインスラスターを全開に、その推進で雪原を爆発させ、クランクらに飛びかかった。

 

 

 

 




特に問題なければ、明日(12/31)17時にて次話更新し、今年最後の更新としたいと思います。

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