とりあえず、昨日はどんぐり君ハウスで一泊。
いつもよりぐっすり眠れた。どんぐり君は夜行性みたいで、しばらく起きていたようだ。
俺とミツネの目が醒めた時、どんぐり君は寝ていたのでちょっと出かける。と伝えて、ミツネといつもの様に食材集め。どんぐり君ハウスへ戻ると、どんぐり君が起きたので、食事を取りながらどんぐり君といろいろ話した。
ミツネに通訳をして貰って、ハンターの生活とか、いろいろ聞いた。やっぱりゲームの世界とは違って、この世界にはこの世界の仕組みがあった。
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まず、クエストについて。
クエストは基本的に半日から2日かけて行う。簡単なクエストなら半日で済むが、難易度や討伐対象によっては2日かかる。
送迎船でフィールドまで向かい、モンスターを捜索して、ペイントボールを付ける。そこから戦闘開始となり、逃げられたり自分が離脱したり、沢山の行程を経て進行する。
モンスターに逃げられると、またペイントボールを頼りに捜索し、時間は過ぎる。捜索だけで半日費やす事もザラにあるそうだ。
討伐に成功すれば、剥ぎ取りを行い、信号弾を発射する。その後ベースキャンプへ戻り、送迎船を待つ。
欲しい素材があれば討伐後にしばらく採取も出来るが、クリア後の報告などもしなければならないので、手短かに済ませて、帰還する。
大型モンスターの討伐の場合は、送迎船にギルド員が搭乗しており、討伐したモンスターをギルドが回収して、送迎船へ積み込み、帰還先で解体されて報酬となる。
捕獲の場合は、送迎船と別に捕獲用回収船が来て、そちらへ積み込む。
捕獲の場合の報酬は、基本的に多額の金銭となる事が多いらしい。そりゃ生け捕りにしたモンスターを解体したら死んじゃうから、当たり前といえば当たり前なのだが。
クエスト受注時、契約金を払うが、その中にネコタクシーの依頼金も含まれている。ネコタクシーは保険のようなもので、ハンターを戦線から離脱させるプロフェッショナルである。ハンターが戦闘不能になった場合、サッとネコタクシーが現れ、ベースキャンプまで運んでくれる。
これが非常に重要で、もしもネコタクシーが無ければ、戦闘不能になったハンターはそのままモンスターの追撃を受けて命を落としてしまう。
そのためのネコタクシーである。
もしも、密漁などでフィールドに無断で入った場合、発見されれば捕まるのは勿論のこと、モンスターに遭遇して戦闘不能となっても、助けてくれるネコタクシーは居ない。よって、死ぬ。ネコタクシーは受付を通さなければ依頼出来ない為、密漁=ミスしたら死。となり、一種の犯罪防止策になっている。
しかし、即死の場合もある。
その場合、ネコタクシーは遺体を乗せ、ベースキャンプまで運ぶ。
採取や納品クエストの場合、納品ボックスへ指定アイテムを納品、信号弾を打ち上げてクエストクリア。
討伐クエストの途中で清算アイテムをある程度入手した場合、一度アイテムポーチの整理を兼ねてベースキャンプへ戻り、アイテムを納品してポーチの空きを作り、もう一度フィールドへ出る。
実際、アイテムポーチはそこまで大きく無いし、こまめに管理をしないと大変な事になるらしい。
ここまでがクエストの全体的な流れ。
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で、この後が1番重要。ハンターの生活について。
これを知る事が出来れば、人里へ行く事も視野に入れる事が出来る。
ハンターにもよるが、みんなクエストを達成して、10日ほど休んで次のクエストへ行くらしい。
どんぐり君の元ご主人は、生活費が減ったらクエストへ行き、稼いだお金で暮らし、また減ったらクエストへ。そんなスタンスだったらしい。
元ご主人の実力は平凡そのもの。難易度の高いクエストには行かないし、勝てない相手には挑まない。そんなハンターだったそうだ。
他にも、ハンターになりたての新人は、頻繁にクエストへ行かないと生活出来なかったりするし、噂では一年に一度だけ超高難度クエストへ行き、その報酬で暮らすハンターもいるらしい。どんぐり君自身も会った事すら無いそうだが。
ハンターは二種類いて、村を拠点として、その村へ来た依頼をこなす者、集会所へ所属し、集会所へ来た依頼をこなす者がいる。
村へ来る依頼は、比較的難度の低いものが多く、依頼そのものも少ない。のんびり暮らすハンターは村へ住み、クエストをこなして生活する。クエストを進めることで、村の発展にも繋がり、それに喜びを感じるハンターも多いようだ。
変わって、集会所へ来る依頼は低難度から高難度まで幅広くあり、クエスト自体の量も沢山ある。こちらは一人から四人のパーティでクエストに出発する事ができて、欲しい素材を求めて他のハンターの助け合いながら生活する。
狩人としての村ハンター、
戦人としてのギルドハンター。
といった具合である。別に村ハンターが集会所のクエスト受注してはならないと言う訳でもなく、各々自由に受注する事が出来る。
どんぐり君の元ご主人は、村ハンターだったそうだ。
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※ミツネが通訳してます
「なんでそんなにいろいろ聞くのニャ?ハンターにでもなるのかニャ?アル殿は…」
「いやぁ、何となく気になってさ。今まで集落で暮らしてたから、ハンター達はどんな生活をしてたんだろう?って」
「ニャへー…殊勝なモンスターだニャ。アル殿は」
「でも、どんぐり君も物知りで凄いね!」
「ミツネ殿、このくらいオトモには常識ですニャ。知らないとハンターの役に立てないのニャ」
「あはは、でもでも、どんぐり君も充分殊勝だよ。」
「褒めたって何も出ないニャ。そうだ、話しててもあれだし、ちょっと出かけようニャ〜!」
「出かけるって、どこへ?」
「手合わせしようニャ!」
えぇ…?手合わせ…?
お互いの実力を測る的な?
「まじで?痛いのは嫌だぞ…」
「だから手合わせだニャ。相手を仕留める直前でやめて、お互いの良いところや悪いところを教え合うんだニャ。よく友だちのアイルーとやってたんだニャ〜」
「それに、ボクは防御が得意ニャ。元オトモとして、そこだけは譲れないのニャ。だからアルとミツネの攻撃も受け止められれば良いし、受け止められなければボクの実力不足ニャ。そうやってボクは強くなったニャ〜。」
カッコいい…
素直にそう思った。武人としてのプライドがあった。
「ミツネ、どうする?」
日本語で、ミツネに尋ねる。
「…うーん…どんぐり君は私より強いと思う。今まで何回か狩りをして来て、私は弱いと思った。だから…」
「うん。俺も同意見だ」
「「やろう!」」
俺たちは、初めて、強くなるために戦う。