悪食女と美食竜   作:あかいかあ

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基本、毎日投稿出来そうです。月曜日はお休みを頂こうかと思っています。


プロローグ 2

彼女の名前を俺は知らない。

俺が座っているベッドの背中側の病室317号室。そこに彼女はいる。つまり、廊下へ出て名札を見ればすぐにわかることだ。

だけど、少し気が引けて見ない。

ミツネはミツネ。それでいい。

 

 

~~~~~~~~

 

 

7日目の朝。

今日は退院の日だ。13時に親方が迎えに来てくれる。なので、いつもより早く8時からモンハンをする約束になっている。8時ちょっと前、部屋を立てて待っているとミツネが入室して来た。

 

「おはようございます」

 

いつも通りの挨拶をした。今日は何を狩りに行こうか。

しかし、いくら待っても返事が来ない。いつもならマシンガンチャットが始まるのだけど。

 

「おーい、ミツネさーん?」

 

どうしたのかな、お見舞い客でも来たのかな。

 

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ナースコール!

 

二人の合言葉である。最初はふざけてったチャット定型文だったのだが、今ではクエスト中に現実で何かあった時の為の定型文になっている。

クエスト中に検査の時間になったり、お見舞い客が来たり。そんな時にお互い「ナースコール!」とう送る様にしている。

これが案外便利だったりする。

 

~~~~~~~~

 

気長に彼女からのチャットを待っていると、DSからチャットが届く音がした。

 

「アル、私の病室へ来て」

 

今までに無い内容の言葉だった。

「どうしたの?いきなり」

 

「今日退院でしょ?だから」

 

「わかったちょっと待っててね」

退院すれば一緒にモンハンは出来なくなる。当然の事だが。ミツネのお見舞いへは行くつもりだし、もちろんDSを持って行く。それでも、今まで四六時中遊んでいたのだから、寂しいのだろう。

これも何かの縁だ。行ってみようじゃないか。

 

松葉杖を突き、病室を出る。隣の317号室へ向かうが、名札は見ない。そして、扉を開け、名前を呼ぶ。

 

「ミツネ?」

 

「アル?」

 

産まれて初めて"アル"と呼ばれた。そりゃ俺にも名前はあるけど、意外と"アル"と呼ばれたことに違和感はなかった。

 

「初めましてどうも、アルでそす」

 

「あはは、そっか!挨拶は初めまして、になるんだね。なんだか不思議〜〜。あ、初めましてどうも。ミツネです!」

 

チャットでは見えなかった彼女の喋り方、声、抑揚が新しい情報として入ってくる。もうちょっとおしとやかな人かと思っていたが、随分と天真爛漫な子だな。

 

「じゃあ一狩り行こうか。」

 

ミツネの姿はカーテンに遮られて見えない。ただ、画面にはいつものミツネがいる。それで充分だ。

 

~~~~~~~~

 

1時間程だったのだろうか。世間話とモンハンの話、病院食がまずいだなんだ、そんな話をしながらモンハンをして、いつの間にかミツネのお見舞いの話になった。

 

「本当に来てくれるんだよね?」

 

「もちろん」

 

「本当の本当に?」

 

「本当の本当に。」

「お見舞いなんて言い方するからなんか堅苦しいんだよ。だから、お見舞いなんて言わずにさ、俺はミツネの所に遊びに来るよ。これならなんか来そうだろ?」

 

「あはは、何それ〜〜」

 

そんなに心配しなくても良いのになぁ。

 

 

その時だった。

扉も、窓も閉めた部屋に、風が吹き、カーテンを揺らした。

その隙間から見えたのは、深くニット帽を被り、優しい目でこちらを見ているミツネだった。

目が合うと、彼女は直ぐに俯いて、そのまま幕を落とす様にカーテンは帰って来た。

 

「見た?」

 

「見た」

 

「あーあ、バレちゃったよ〜〜。私の顔」

 

「ミツネは綺麗な人だね」

 

「い、いきなり何を?おだてたって何も出ないよぉ?」

 

「いやいや、本当にそう思ったよ」

 

「もう…」

 

 

少しの沈黙。お互いのDSから集会酒場のBGMが流れる。

 

 

「本当はね、退院だからってアルをこの病室へ呼んだけど、別の理由があるの。」

「私と実際に会って、お話して、そうすればアルの記憶にちょっとは私を残せるでしょ?そして、情けでも良いからアルにお見舞いに来てもらいたかったの。」

 

「情けなんてかけないよ」

 

「アルは優しいから、きっと来てくれる。わかってるんだけど、どうしても会いたかった。」

 

「そっか、なんかありがとうな。俺もあえて嬉しいよ。」

 

ミツネは突然カーテンを開けた。きょとんとする俺を見て、帽子を外した。

全て抜けている訳では無い。ただ、若い女性にはありえない程の毛髪の少なさ。医学には詳しく無いが、ミツネがそれほど強い薬を投与されている事だけはわかった。

 

「そんな顔しないでよ。今はこんな頭だけど、お医者さんは良くなるって言ってたよ。あと1カ月もすれば外を歩けるって。だからそんな顔しないで。」

 

俺がどんな顔をしていたのかはわからなかった。

 

そんな話をしていると、病室へ看護師がやって来た。ミツネの検査らしい。

 

~~~~~~~~

 

ミツネを見送り、自分の部屋へ戻った。

一人になってから、初めて自分が動揺している事に気づいた。

 

ミツネの病気。

 

ゲーム越しでは見えなかった、現実だった。

 

気づけば13時を越え、親方が迎えに来た。

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 




ありがとうございました。

感想や誤字脱字等ありましたら、どうぞよろしくお願いします。
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