割とガチ対応をする、ぐだの話   作:風呂

2 / 9








アルトリア・ペンドラゴン(ズ+α)への対応

 食堂、それは戦場の名である。

 毎日朝昼晩、定期的に訪れる大勢力に対してこちらの戦力が試される試練の場である。

 戦線を維持する為には、数多の事柄に気を配らなければならない。

 まずは兵力の確保。これはカルデアに召喚される英霊の何人かが調理に覚えがあるので、何とか事なきを得ていた。

 エミヤ、タマモキャットを筆頭に、ブーティカ、玉藻の前、鈴鹿御前、マルタ、源頼光、清姫、ジャンヌ、俵藤太等が当番制で料理の腕を振るっている。

 勿論この面子だけではなく、マシュ達カルデアの職員や、気が向いた英霊等も手伝いをしていた。

 次は武器である調理器具類である。

 元々カルデアに常備されていたのではあるが、ファーストオーダー時点でのごたごたで補充物資の中でも優先順位が低くなっており、今現在の職員英霊の調理人数に対しては質・量共に心許ないものだった。

 しかしこれも、オールラウンダーエミヤが召喚される事で即座に解決。彼お得意の投影魔術による補充が出来たからだ。

 そして最大の問題、戦力そのものである食料だ。

 最初の頃は備蓄や自家栽培等でなんとかやっていけたが、徐々に英霊(食い扶持)が増えてきた為にそれも難しくなった。

 一度、食糧難に陥りカルデア全体にピリピリした雰囲気に包まれた時があった。

 誰もが絶望しかけたが、俵藤太が召喚されその宝具が活用された時は全員がむせび泣いた。

 そんなカルデアではあるが、現在、とんでもない暴威に晒されていた。

 アルトリア・ペンドラゴン(ズ)連続召喚である。

 良く分からない亜種も含めて七人もだ。一度の十連続召喚でアルトリアシリーズコンプリート(召喚後の霊基変更を除く)なんてマーリンも驚愕する奇跡ではあったが、残りの概念礼装が全て麻婆豆腐だった事が後の悲喜劇を物語っていたとは、エミヤ以外に誰が想像しただろうか。

 最初は強力な英霊が一気に召喚された事で喜び受け入れたカルデア側であるが、暫くしない内にその顔が凍る事になる。

 全員が全員、食べるのだ。小さいのも大きいのも、良く分からないのも。大量に、一切の容赦も慈悲もなく。

 俵藤太のランク:EXの対宴宝具、無尽俵でさえも発動維持の魔力が莫大に消費される始末だ。

 これには職員・英霊問わず程度の差こそはあれ、不満が上がった。

 無尽俵から溢れ出てくる食材はとても美味しいのだ。それを独占され、目の前で食い散らかされるのはたまったものではない、と。

 本来英霊とは食事を必ずしもとる必要がない。しかしそれでも食事をするのは精神衛生に関わってくるからだ。

 しかしだからとはいえ、物事には限度というものがある。

 なので、マスター権限により強硬手段がとられた。

 具体的に言えば、

「……た、たこ焼き」

「マッシュポテト、だと……!?」

「チップスは私の物です」

「肉じゃがは良いんですが、この消毒液臭いのはまさか」

「あの、これは一体?」

「マスター、マスター! 説明を要求します! 次第によっては実力行使もやぶさかではありません!」

 ある日の食事時。

 アルトリアズは目の前に置かれた料理に、疑問と不平を配膳したぐだ男に訴えた。

「君達、エンゲル係数というのはご存知?」

 簡単に言えば消費支出における、食費の占める割合の事である。

 ぐだ男は、その言葉と共に、大きめのタブレットを取り出し彼女らに画面を見せた。

 そこには現カルデアにおける金銭的、魔力リソース的、備蓄的な総収支を簡単にまとめたものが表示されていた。

「戦闘時の魔力消費はある程度、それでももう少し抑えてもらいたいけれど、あえて仕方ないと割り切るとしても、特に食事に関してが、ね」

 どの項目にもアルトリア達が占める割合も併記され、その幅は割と無視できない程だった。

「ちょっと一気に召喚して贔屓にしていた面がなくもなかったし、これからはもう少し抑えて欲しいんだ」

 など、ぐだ男が色々と説得を始める。

 言っている事は間違いという訳でもない為、彼女達も渋々納得しかけるが、

「いや、ちょっと待ってください。それはそれで分かりましたけど、この食事はなんなのです? いくらなんでも酷すぎやしません?」

 と、ヒロインXの弁。

「それはここ最近、君達が無限俵を独占しすぎたからね。罰ゲームみたいなもんだよ。あとこれ、今回の事に関する匿名の意見箱に寄せられた要望の一覧ね?」

 再びタブレットを操作し、一つ一つ寄せられた意見を表示するぐだ男。

 そのあまりの多さに、絶句するアルトリアズ。

「あ、弁解の余地はないけど、これからの働きによってこの罰料理の期間が変わるからそのつもりで」

「すいません、ちょっとタイム。タイム良いですか?」

「いいよ? でも台所担当組はこちら側だから少なくても三日間はこのままだけどね」

 緊急円卓会議である。ただしメンバーは全員アーサー王。

「相当不味い事態になってます? もしかして」青

「まさか、ジャンクフード以前の品が出るとは」黒

「このチップス、味付けがされていない……」Xオルタ

「おのれバスターゴリラ」X

「嫌だ嫌だ嫌だ。もう消毒液臭いご飯は嫌だ」槍オルタ

「もうヤダこれ。いやまあ全員私なんですが」槍

 こんな感じで進んでいく会議だが、ふと、剣オルタなアルトリアが気付いた。

「そういえば小さい私はどうした? 姿が見えんが」

 確かにこの顔ぶれの中にはいない。

 そう思い辺りを見渡すと、

「あっ! いました! いましたよあそこ! というかなんで普通に食事してるんですかあのパダワン」

 食堂の一角で、年少組と食事しているアルトリア・リリィの姿があった。

「彼女、食事量は普通だし、戦闘時の魔力消費も比較的考えて戦ってくれるし、食事作りにも協力的だからだよ、謎のマスターX」

「うっ」

 ぐぅの音も出ない正論ではあるが、それならそれで話が早い。

 要はカルデアに貢献すればまともな食事にありつけるという事だ。

「それなら話は簡単ではないですか。すでに私達は戦闘で活躍している。ほら、文句はないでしょう?」

 本編で一番影の薄いアルトリアが何か言っているが、マスターであるぐだ男は即座に両腕をクロスさせる。

「ブッブー、それだけでは駄目です。さっき言った魔力消費の件もそうだけど、ぶっちゃけ、召喚された英霊は大体が皆戦闘で活躍しているからね? 戦闘での活躍と、食費の釣り合いがとれていないからこんな事になってるんですよ?」

「じゃあ戦闘にあまり参加していない英霊はどうなんですか!?」

「彼らは彼らで自分らの得意分野で貢献してくれているからいいんです。一部本当にメフィストフェレスみたいなのもいるけど、ああいうのはノーカンで」

「呼びましたぁ?」

「呼んでない」

「これはこれは失礼~」

 と、悪趣味な道化師の恰好をした人影が顔を出すも、すぐにどこかへ行ってしまった。

「……アレと一括りにしてもいいんならするけど?」

「それは勘弁してください」

 流石に悪魔と同列には見られたくない、腹ペコ王達であった。

 暫く、出された食事に手を付けつつ会議を進める騎士王達ではあったが、結局のところ、各特異点での食料調達に進んで協力するという意見しか出てこなかった。

「まあそれくらいしか出てこないだろうとは思っていたけど。何か戦闘以外で得意な事とかないの、大食い王?」

「でしたら私とXオルタが色々資格習得してま……」

「あ、そういうの(設定)は良いから」

「おぅふ」

 X、撃沈。

「他、と言われましても」

 それぞれ顔を見渡すも、妙案が浮かぶこともない。

 そもそも神話や伝説などに出てくる英雄なんていうものは、大体が脳筋か愛憎劇で人間関係拗らせるか、またはその両方なのが相場で決まっているのだから。

 特にアーサー王となれば、お察しどころの話ではなかった。話を聞いていた円卓勢も完全にお通夜状態である。

「まあ、別にそこまで厳しくしようとも思ってないし、戦い以外で特技がないんであれば、皆の手伝いをしてくれるくらいでいいよ。あ、食事量の制限は確定事項なんでそこんとこは宜しく」

 結局、埒のあかない緊急円卓会議に無理矢理結論付けたぐだ男は、そう言って嘆息するのであった。




勿論実際にはこんな奇跡の連続召喚なんて起きてませんのであしからず。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。