まあ設定とか厳密にしないといけない作品でもないですので悪しからず。
カルデアには職員用・来客用問わず、いくつもの個室が用意されている。
なので召喚されたサーヴァントは、基本的に一人一部屋を与えられていた。
中には極小特異点で暮らしている者もいるが、基本的にはカルデアで過ごしている者が大半だ。
多くのサーヴァントを現界させたままで過ごせるのも、僻地で標高の高い雪山という立地の為、宿泊施設が充実しているカルデアならではと言える。
更に言ってしまえば、人理修復の旅が始まる際、レフ・ライノールの破壊工作で、職員・マスターの大多数が死亡もしくは冷凍処理をされた事、及び宿泊施設は狙われず殆ど被害がなかった事も理由に挙げられる。
そんなカルデアマイルームに召喚当初から暮らすあるサーヴァントは、自らのマスターである少年にこう言った。
「ねえマスター、私にもう一部屋都合してくれないかしら?」
「うーん、駄目ですね」
すげなく要望を断られて細長い耳を垂れさせたのは、神代の魔女メディアである。
彼女は比較的早い段階からカルデアに召喚されたサーヴァントであり、戦闘以外にも影に日向にカルデアを支えた功労者でもある。
その業績を鑑みてある程度の要望は通して貰えるメディアではあるが、それでも通らないものは通らないのであった。
「まあ一応、理由だけは聞いておきましょうか?」
メディアと彼女のマイルームで机を挟んで座るぐだ男は、仕方ないといった調子で問いかけた。
「……見て分からない? これだけ物が多いとどうしても、ね」
「だろうと思いました」
言葉通り、彼女の部屋には多くの物が置かれていた。
いくつかの生活必需品を除けば、召喚後に彼女自身がしたためた魔導書の類(講義用)の他、フィギュアやボトルシップ等の模型、他のサーヴァントに着せる用の衣類等、要するに趣味人としての様相が色濃く表れた部屋だった。
「整理整頓はしているのだけれどね」
「まあこれだけ作品が多いと、もう一部屋欲しい気持ちも分かるんですけどね」
事実、ぐだ男の目から見ても整理整頓自体はされていて、その辺に対するメディアの几帳面さを察する事は出来た。
しかし如何せん、物が多すぎて本来の広さに比べて大分手狭な印象なのは拭えない。
「というかこんな会話してるのに、ドールヘッド作りながらってのもアレな感じですね。しかも俺まで手伝わされて」
「あら、良いじゃないの。どうせ今日は暇なんでしょ? 偶には付き合いなさい」
へーへーと、気のない返事をしつつ内心、どうしようもねえな、と思うぐだ男であった。
それから暫く、ネロの顔の造形について議論を重ねつつドールヘッドを作っていた二人だが、また話題がマイルームの話に戻ってきた。
「それで、どうするんです? いっそ、断捨離でもしますか?」
「いやよ! 折角どれも丹精込めて作ったんだから」
「なら在庫一掃セールでもしますか。いつもはどんな風に売ってるんです?」
「えっ?」
マスターの何気ない一言に、メディアは思わず声が上ずってしまう。
「あ、知らないとでも思ってました? 直接売っているのを見たわけじゃないですけどね。何となくですが話には聞いてましたよ。黒髭に吐かせましたというか、吐きました」
「…………あの変態、どうしてくれようかしら?」
「まあまあ」
カルデア内では金銭、またはそれに類するものの取引は、マスターもしくはカルデアの役職を通さないものは禁止されていた。
特に人理が修復される以前は、閉鎖環境下でもあったので人間関係の悪化に繋がる可能性があるという理由があった為だ。
勿論、軽い貸し借りや善意の施し等は普通に行われていたが、QP等を用いての取引・賭け事等は監視が厳しかった。
そういった事情があるにも関わらず、メディアの作品を気に入った何某が、QPや出向いた特異点で集めた金品等で買い取っていた、という事があったのだ。
「まあ、世間から見れば狭い一組織の中での出来事だからね、調べればすぐに分かる話でしたけど」
「あらやだ怖いわね。可愛い顔して敏腕ね。けどそれで今まで私が何も言われてこなかったのは――」
「別にあくどい商売でもなかったようでしたからね。黙認してました。ガス抜きにも丁度良かったでしょ?」
本当に恐ろしい子ねぇ、とぐだ男の話を聞いたメディアは呟いた。
「最初の頃はもっと可愛げがあったのに」
「今更ですよ。万国ビックリ人間コンテストに出れそうな人達と一年以上も付き合えばこうもなりますよ」
「時の流れは残酷だわ」
「…………」
メディアが言うと重みが違うなぁ、と思ったマスターがいたとか。
なお、後日刑部姫に頼んでネットオークションに出品したところ、質の高い作品で発送事故もない(アマゾネス・ドットコム利用)等の理由で高額取引が何件も成立し、界隈を賑やかす事になるのはまた別の話。
ボトルシップの最高傑作は、黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)。どこぞの海賊達に大層喜ばれたとか。