「と言う訳でバニ上、質問があるんだけど」
「……何が『と言う訳で』なのか疑問ですし、バニ上という呼称についても思うところがあるのですがまあ良いでしょう。なんでしょうかマスター?」
数多の英霊で賑わう食堂でのことである。
第二霊基状態のバカンスセレブ衣装で食事をとっていたバニ上こと、ルーラーのアルトリア・ペンドラゴンの隣に、会釈と共に座ったぐだ男がおもむろに切り出した。
「いやさ、同じルーラーという事で聞くんだけどさ? 殴ルーラートリオについてどう思う?」
「どう、とは?」
「あの三人、裁定者って感じしないじゃん。どちらかというと選手、プレイヤーの方じゃない? って」
「ああ、そういう」
突然だが殴ルーラートリオとは!
ステゴロ上等! タラスク諸共、鉄 拳 聖 裁! 水着マルタ!
サンバでサンタ! 似ているのは名前だけだぞ! ケツァル・コアトル!
天空で最も優美なハイエナ! おいこら憑依先ぃ! アストライア!
の、三人の事である。
それぞれ、聖女、女神(分霊)、女神(憑依)なのだが、戦闘スタイルがそれと思わせない迫力ある物になっているのだ。
喧嘩殺法、ルチャリブレ、プロレスとか、誰も想像するもんかよ! とは初遭遇時のぐだ男の心境である。
「いえ、私も足技なら宝具(第一霊基)で使いますしそこは何とも私の口からは……」
「そうなんだけどさ。……あ、ジーク君。ちょっと聞くけど、カルデアにルーラークラスが何人かいるけど、パッと思いつくのは?」
「……む、やはりルー……、ジャンヌ、だろうか。他のルーラーは、その、イメージと違うというか、なんというか……」
たまたま近くでアストルフォと食事をしに来ていたジークに質問したぐだ男は、どうだと言わんばかりにアルトリアの方を向いた。
「ほら」
「…………」
それに対してアルトリアは、何とも言えない表情しか返せないのであった。
「いや、しかしアーチャークラスのルーラーはその、正直コメントに困るな……」
「早く食べようよー。冷めちゃうよ?」
尚、ジークが姉のような何かにつけ狙われるまで、あと四時間と二十八分。
「どういう事――」
「――なんですのー!?」
食堂の一角、ぐだ男達の会話がこの賑わいの中、強化した聴覚でようやく聞こえるくらいの離れた場所で。
当の殴ルーラートリオが聞き耳を立ててやけ食いしていた。
「ワォ! 食事中にいきなり叫ぶのはイケマセーン」
「あら失礼。淑女ともあろう者が失礼いたしましたわ」
「ごめんなさい。けど、いきなり何を言い出すのかしらマスターは?」
水着のマルタは疑問を口にしながらも、肉じゃがを一口。
「あらこれ、結構いけるわね。妹達にも食べさせてあげたいくらい」
「私の方も、憑代の少女が知っているみたいですわ。しかも味付けまで一緒」
どういう事かと作った当人に聞いてみたら、
「黙秘権を行使させていただく」
とのこと。
「日本の家庭料理らしいネー。とっても美味しいデース!」
「そうね……って、それは置いといて、マスターよ!」
「そうですわね。続きを聞きましょう」
「気になるネ」
「それで、結局マスターは何が言いたいのですか?」
「うーん、いやさあ? なんでサーヴァントのクラスにグラップラーとかレスラーとかがないんだろうなって。だってあの三人もそうだけど、一部のサーヴァントって素手での戦いがメインの奴がいるだろ? 既存のクラスに仕方なしに当てはめただけみたいなさ」
「そうは言いますが、そもそも素手で戦う者の絶対数が少ないので、クラス分けする程でもないのでは」
「あー、確かにそうか。老齢の李書文とか燕青とかがパッと思いつくけど、あの二人以外じゃあんまり浮かんでこないもんな」
……後は精々、三蔵ちゃんくらい? なんか中国系が多いな。
「やっぱりインパクトが強いからそう思ったのかもしれないな。こんなんで倒される敵がちょっと不憫に思った事は一度や二度じゃないし」
「あ」
アルトリアが何かに気付いたが、その事にぐだ男は気づかず喋り続ける。
「巨大な亀を殴ったり、踊りながらプロレスしたり、豪快なバックドロップしたり、正直トチ狂いましたかと尋ねそうになったもんだよ」
「……マスター」
とうとうアルトリアは両手で顔を隠してしまったがそれにも気づかず。
「だって聖女に女神がだよ? ちょっとその辺辞書で引いて調べて方が――って、あれあれ?」
ぐだ男の視線が宙に浮いた。
正確には何者かから背後から持ち上げられて、高い位置で身体ごと天井を向いて、
「おやおや? 床に下ろされたと思ったら、やあ、お三方。奇遇だねえ」
「ええ、マスター奇遇ね」
「で、後は分かりますわね?」
「お仕置きデース」
左右の腕にそれぞれマルタとアストライアが絡みつき、ダブル腕ひしぎ十字固めを。足に取りついたケツァル・コアトルが四の字固めをキめた。
「ははは、これくらいの事で何が癇に障ったか分からないけど、暴力はいけないなーってマスターは思う訳ですよ」
「ギルティですわ」
「大丈夫大丈夫。加減はしてあげるから」
「怪我はさせないですけど、ちょっと以上に痛くするネー」
凄いいい笑顔でぐだ男に言う三人。
「あ、ちょ、ま、ギブギブギブギブギブギブーー!?」
ギブアップ宣言するも当然のように無視され、しっかりテンカウントとられましたとさ。