第二特異点攻略時、ローマ市外へ向かう行軍の間の事だ。
「そう、余こそはローマ皇帝、ネロ・クラウディウスである!」
「……ネロ、皇帝?」
「マスター、その様子だと説明が要りますか?」
「うん、名前は聞いたことあるんだけどね。説明お願い、マシュ」
「はい」
「おお、絢爛豪華たる余の事を知らぬとは人生の八割は損しておるぞ。これはじっくり聞かせてやらねばならぬな!」
ぐだ男はマシュから客観的な事実としての、ネロからは実際に目の前にいる本人からのネロ・クラウディウスについての説明を受けた。
「ふんふん。文字通り一国の主だったんですね、凄いな」
「フフン! もっと褒めても良いのだぞ!」
「けど、確かネロ皇帝は男性だった筈では?」
「そうですね、しかし目の前にいるのはれっきとした女性。国を運営するには男性でなければ上手くいかなかったから、という事ではないでしょうか?」
「そういう事だな。だからこうして男装しているのだ!」
「え?」
「え?」
「うん? どうした二人共?」
ある意味衝撃な一言に固まる、カルデアの二人。
マシュはまだ当時、対人関係の経験値が少ないが故に沈黙した。
しかしぐだ男は止まらなかった。
「男装?」
「うむ! 男装の麗人という奴だな!」
「男装の、麗人?」
「そうだぞ、美しかろう?」
「麗人は認めますが、男装?」
分かりやすく首を傾げるぐだ男。
事実、ネロの赤い衣装は殆ど肌を見せないものであったが、扇情的でもあった。
「そんな、スケスケのスカートの上に、胸と尻を見せてるのに、男装と言い張る?」
「う、うむ。煌びやかであろう?」
「ソウデスネ。それも認めます。けど、男装?」
ここにきて、ネロの額に冷や汗が浮き始めた。
「薔薇皇帝の名に恥じぬであろう?」
「でも、男装?」
「こ、これは、余の完ッ璧たる肉体を余すところなく際立たせる為の」
「男装とは?」
ネロの瞳に、涙が浮き始めた。
「せ、先輩! 先輩そろそろその辺で!」
「余、余を馬鹿にするのか!? 不敬罪になっても知らないぞ!?」
「それ多分、別のビューティー王様系の誰かのネタでは? というか男装を疑われただけで不敬罪とか、ローマ皇帝としてどうなんです? 器的に」
『君、メタい上に容赦ないね!?』
「ドクターは黙っていてください! 先輩も言いすぎです! ネロ皇帝? 先輩はこういう人なのであまり気にせず……」
マシュの中途半端なフォローが入った瞬間、ネロが決壊した。
「うわああああん! 其方なんて嫌いだああああああ!!」
尚この時、話が聞こえていたローマ兵とカルデア職員は全員、目を逸らしていたという。
「余は怒っている!」
「気持ちは分かります」
「そーなーたーがー言ーうーなー!!」
カルデアの一角にて、ネロの叫びが木霊する。
セプテム攻略後、更にいくつかの特異点を超えた時期にネロが召喚された。
意気揚々と召喚されたネロではあったがしかし、ぐだ男の姿を確認した瞬間、ものすっごく渋い顔をした。
色々ぐだ男に食って掛かり、護衛についていた幾人かのサーヴァントに制止されながらも喚き散らした。
それらを要約するとこうなる。
良いからちょっと面貸せや、である。
すわ戦闘か、と身構えるサーヴァント達であったが、マシュからの事情説明に、
「ぐだ男が悪い」
となり、順次解散となった。
そして最初の台詞である。
ぷんすかぷん、という書き文字が浮いて見えるような、頬を膨らましての憤慨姿である。
「それで召喚早々どうしたんです? また泣かされたいので?」
「ぐぬぬ。貴様どうしてそこまで余に厳しいのだ? 其方に何か悪い事をしたか!?」
「いえ? 別に。なんか弄ったら面白そうかなって」
「おのれええええ!」
「それ、我様系王様の持ちネタですよ?」
「だからぁ!」
一際大きく嘆いた後に、ネロは溜息を吐いた。
「はあ、疲れた。もう良い。余は寛大であるが故な」
「そうですか。それでは……」
「待て、話はまだ終わってないぞ?」
では、と踵を返して去ろうとしたぐだ男の肩を掴む余。
「謝罪を要求する。許して欲しければ、貢ぎ物でもなんでも捧げてみせよ!」
ぐだ男は考えた。仕方なくではあるが考えた。物凄く考えて、
「う~~~~~~ん。めんどくさいからいいや」
「何故ぇ!?」
後日、お詫びとしてカラオケルームを作ってあげた。
大体三時間くらいで書いた最速話。
書き終えた今から考えると、エリちゃんの話の前だなこれ。
投稿する小説、間違えたのは内緒。