奥さん、貸した金が払えないなら身体で払ってもらおうか!   作:筆先文十郎
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奥さん、貸した金が払えないなら身体で払ってもらおうか!

「じゃあお母さん。行ってくるね♪」

「ええ、気をつけるのよ」

 ランドセルを背負う娘を母、橘朝子(たちばなあさこ)は笑顔で見送る。どこにでもある日常の風景だ。

 だが、そんな微笑ましい光景は一瞬で終わりを告げた。一人の男によって。

「いやぁ、美しい光景ですな。奥さん」

 朝子が振り向くと、そこにはパンチパーマにギラギラした目つきをした男がニヤニヤと愛娘を送り出した母親を見ていた。

「さ、鮫島さん……」

 一目見ただけで普通の人間ではない男が自分の前に現れた理由を知っている朝子は、ガタガタと身体を震わしながら「こ、ここだと人目がつくので」と男を自分が住んでいるアパートの自室に案内した。

 

 

 

「奥さん。俺がここに来た理由、もうお分かりですよね?」

「……あ、あの」

 視線を伏せ、震える身体で朝子は言葉をつむぐ。

「もう少し、もう少しだけ……待ってもらえないでしょうか……」

 涙をためて、震える声で朝子はお願いする。

 彼女は目の前の男に借金をしていた。数年前に夫のDVが原因で離婚し、その後夫が傷害事件で捕まったため慰謝料や教育費が望めなくなった。頼るべき親類がいない朝子にとって子育てと仕事の両立は困難を極めた。

 自分の生活と愛娘のため、朝子は男から借金をした。しかし今までスーパーの販売員のパートしかしていない彼女に転職が上手くいくわけがなく、生活が苦しくなるたびに男から借金をして、ついには数百万になってしまったのだ。

「ふう~」

 男はポケットからタバコとライターを取り出し、携帯用灰皿にタバコを捨ててから口を開く。

「奥さん。俺は慈善事業をしているわけじゃないんですよ。10ヶ月3%の単利なんて貸し金業界だったら『お前はお人よしか?』ってバカにされるくらいですよ」

「は、はい……鮫島さんには、本当に頭が上がりません……」

 顔を伏せ、涙をポロポロと流しながら朝子は答える。

「それに先月も先々月も『もう少し』って言ってましたよね?で、俺待ちましたよね?なのに利子すら払ってもらえないってどういうことですか?」

「そ、それは……生活費とか、娘の進学のための準備などで……ですが次は、次こそは必ず払いますので、どうか――」

「奥さん」

 静かで、それでいて恐ろしく重い男に口調に朝子は恐怖のあまり言葉をとめてしまった。

「さっきも言いましたが俺は慈善事業をしているわけじゃないんです。ビジネスで奥さんに金を貸しているわけです。借りた物は返す。これはガキでも分かることです。でも奥さんは払おうとしない」

「ですから、来月は……来月には利子分を――」

「信用できると思ってんのか?」

 先ほどと同じく声の音量こそ同じなものの、先ほど以上にドスの利いた声に恐怖に震えるシングルマザーは完全に声を失った。

「仏の顔も三度まで。三度目はないんだよ」

「……ッ」

 恐怖に震える女性を、男は舐めるように見る。

 30代近いとは思えないピチピチの肌と大学入学したてと思える幼い顔立ち。しかしその顔の下の肉体は幼い容姿と半比例するかのような大人の身体をしていた。

 子どもを生んだ身体とは思えないほど引き締まり、胸元は巨漢な男の手のひらに余りそうなほど大きく盛り上がっている。そのたわわな乳房の膨らみから一気にくびれる健康的なウエスト。そしてムチッと張り詰めた臀部(でんぶ)。スカートから生える細く長い脚。幼い顔立ちと胸の大きい大人のプロポーションは一種のアンバランスを生みだしていた。 

「……あ、あの。何でしょうか?」

 男のいやらしい視線を感じ、朝子は思わず胸元を隠した。

「奥さん。もう分かってんじゃないですか?」

「え?……ヒィッ!?」

 突然の言葉に思わず疑問の言葉を残す女性に、男は目の前の女性の顎をクイッと持ち上げる。

「今ここで払えないと言うんなら、身体で払ってもらいましょうか」

「そ、そんな……身体って……」

身体で(・・・)。払ってもらいましょうか」

「は、はい……」

 有無も言わさぬ男の威圧感に、朝子は「はい」と答えるしかなかった。

 追い討ちをかけるように男はいやらしい笑みを浮かべながら言った。

「なあに、奥さんみたいな身体を持っていたら。すぐに借金が返せるほど男が来ますよ。そう……たくさんね!」

 

 

 

 数日後。

「朝子さん。俺、牛丼セット一つ!」、「朝子さん、こっちは日代わり定食!」、「朝子ちゃん。焼き魚定食ね!」

「はい!かしこまりました!!」

 朝子は嬉しそうに男性客の注文を受けていた。

 朝子は男が店長を務める飲食店のホールスタッフになっていた。

 朝子のギャップのある顔と身体に多くの男性客が(とりこ)となり、男の飲食店は大繁盛していた。

「店長!注文お願いします!!」

「あいよ!」

 注文された料理を作りながら、パンチパーマの料理長は言った。

「奥さん。このまま売り上げに貢献してくれればその分利子や借金を帳消ししてやるよ。それに娘さんの分のまかないも作ってやる。だから、きっちり身体で払うんだな!」

「はい、店長!」

 

 

 

 こうして橘朝子は男の店で、身体で借金返済に努めるのであった。

 

 




筆先文十郎の一言。・・・なんでこんな話を思いついたんだろう。

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