奥さん、貸した金が払えないなら身体で払ってもらおうか! 作:筆先文十郎
ある日、男は道端で倒れた少女を発見する。
救急車を呼ぼうとする男に悪魔が囁く。
この少女を家に連れ込もうぜ、と。
悪魔の囁きに負けた男は少女を家へと連れ込む。
「もう嫌だ……」
街灯のない夜道をヨレヨレのスーツを身に纏う男が月明かりを頼りに歩いていた。
会社では常に誰かに気を使い、サービス残業に、仕事のミスをなすりつけられる。思い通りにいかない、自分という人間が分からなくなる、そんなくぐもった生活を男は送っていた。
休日もクレームがあればすぐに対応しなければいけない。
一時も休まることがない、過大なストレスばかりの生活に男は絶望していた。
「もう何もかもどうでもいい。いっそのこと人でも殺してやろうかな……」
もし周りに人がいれば通報されかねないことを呟いた、その時だった。
ガサッ
無風の草むらに何かが動く音。
「な、なんだ?」
一瞬だけ驚いた男がスマートフォンのライト機能で草むらを照らしながらゆっくりと進む。
そこには一人の少女が倒れていた。
「!?」
なんでこんなところに!?という一瞬驚いた男だがすぐに我を取戻し、少女を観察する。
着ている服は所々破れ、破れている箇所から青痣などが見える。背中まで伸びた黒髪は何日も洗髪していないのかボロボロで艶を無くしている。人形のように可愛らしい顔立ちも生気を失いマネキンのように見えた。
「ど、どうしよう?……そうだ、ここは救急車を――」
持っていたスマートフォンで電話をかけようとしたその時、頭の中で悪魔が囁いた。
――この女を家に連れて帰ろうぜ。
「な、何を言っているんだ……俺は?」
自分の声に自答する男は再びスマートフォンのボタンに手をかける。しかし
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たった三回ボタンを押せばいいはずなのに指が動かない。
再び悪魔が囁く。
――いつ来るか分からない救急車を呼ぶより目と鼻の先にあるお前の家に連れて行った方が早いじゃないか。これも人助けのためだ。早くこの少女を家に連れて帰るんだ。
「そ、そうだよな……これも人助けのためだ……」
悪魔の囁きに負けた男は、周囲を見渡し誰もいないことを確認してから震える手で少女を抱きかかえた。
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3分後。
男は意識を失っている傷ついた少女をゆっくりと玄関に置いた。
「さてと」
じゅるりと舌舐めずりをして少女の服に手をかける。先ほど少女を助けようとした男とは思えない、欲望に塗れた邪悪な顔を浮かべながら。
「こんな少女を犯すなんて……ある意味背徳的な感じがするよな……」
このまま一気に服を破ろうとした、その時だった。
――待てよ。こんな意識のない奴を犯しても面白くないだろう?ここは起きるのを持とう。それとこんな生気のない状態で犯しても興ざめだ。飯をつくってやろう。
「そ、そうだな。確かにその通りだ」
悪魔の囁きに男は少女から離れる。
――とりあえずこのまま玄関に放置していたらこの
「なるほど。承知した」
悪魔の助言に従い、男は少女を布団に寝かすと台所に向かった。
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その後。目を覚ました少女に男は「外は寒かっただろう?おかゆを作ったから食べてよ」と促した。
状況を理解していない少女ではあったが、空腹だったのか男が出したおかゆをペロリと平らげた。
少しばかり元気を取り戻した少女は自分がなぜ倒れていたかを話しだした。
数ヶ月前に両親が死に叔父に引き取られたこと。叔父が自分を奴隷のようにこき使ってきたこと。自分に欲情し強姦しようとした叔父に暴行を受けながらも必死に抵抗。何とか逃げ出したこと。
そして頼るべき親類も友達もなく、力尽きて草むらに倒れてしまったこと。
辛いことを思い出し、とめどなく涙をこぼす少女に男は「それは大変だったね」という同情を装いながら、笑う。
(バカめ。ここに来て助かったと思ったんだろうが違うんだぜ。本当の地獄はここから始まるんだ)
ひとしきり涙を流し少しだけ気が晴れた少女に、男が襲い掛かろうとした。その時だった。
――待てよ。このままこの
(で、でも俺もこの子を犯そう家に連れてきたんだ。このまま手を出さないわけにも)
――豚は肥えさせて食うもんなんだよ。ここで
(なるほど。確かに一理あるな)
悪魔のアドバイスに納得した男は少女に「三年前に父が死んでここには俺しか住んでいないんだ。今日から自分の家だと思ってくれたらいい。まずは風呂に入りなよ」と言葉をかけた。
少女は困惑した様子だったが結局は男の申し出を受け入れお礼を言うと風呂場に向かった。
「これでいいのか?俺の中の悪魔」
一人になったリビングで、男は自分の中にいる悪魔に語りかけた。
――そうだ、それでいい。いいか、“豚は肥えさせて食え”。これを忘れるなよ。
「ああ」
風呂場の方角を見ながら、男は邪悪な笑みを浮かべた。
それから数年後。
「えぇ、こ、こんなところで……」と恥ずかしがる成人した少女を初めてあった草むらに連れ込み、男は犯した。
トラウマを持つ女性に嫌なことを思い出させないよう優しく、慈しむように。
この悪魔って本当は神様だったんじゃないの?