奥さん、貸した金が払えないなら身体で払ってもらおうか!   作:筆先文十郎
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親の借金で家を手放さなくなった少女、深雪。思い出の詰まった家を守りたいと思う彼女に、欲望にまみれた男の提案が彼女をとある世界に誘う。


お嬢ちゃん、今何でもするって言ったよな?

 それは突然のことだった。

「え?」

 チアガール部のキャプテンを務めるほどの容姿と実力を持つ美少女、我妻(あづま)深雪(みゆき)が家に帰るや否や言葉を失った。

 黒い服にサングラスと怪しい風貌の男達が『差押(さしおさえ)』という札をつけて家から家財道具を次々と持ち出していたからだ。

「ちょ、ちょっとこれは!?」

 深雪は思わず声を上げる。

「なんだ?」

 高級そうな黒い車からオールバックの金髪に熊や猪を倒せそうな大男が現れた。

「アンタ、ここの身内のもんか?」

 ナイフのように鋭い目つきで自分を見下ろす大男に、深雪は震えながら頷くしかなかった。

「まあ、嬢ちゃんも突然のことで頭が混乱しているだろうから奥で話そうや」

 

 

 

 数分後。我妻家和室。

 タンスや絵などがあった部屋はすでに取り払われており、今あるのは座布団と机のみだった。

 今まであったものが突然なくなっていることに深雪は寂しさを感じた。

「実はな。お前の父親がウチの事務所に借金をしていてな。借金を払わずどこかに行方をくらましたからこうして差押に来たってわけだ」

 そう言って男は借用書を目の前で小さく震える少女に手渡す。

「……ッ!」

 少女は何度も何度も借用書を見る。これが嘘であってほしいと願って。

 だが何度見てもその借用書は父親が男の事務所に多額の借金をしており、返済が(とどこお)った場合は家を処分しても構わないという内容のことが(しる)されていた。

 彼女も生活が苦しいということはなんとなく認識していた。しかし父親が借金しているとは知らなかった。そして、それは高校生の自分では到底返す方法が思いつかないほど大きかった。

「ま、現実を受け入れろというのは難しいわな」

 そう言って男は借用書を取り上げ、バッグの中に収める。

「昔だったら『親の借金なんだから子どものお前が払えや!』って言えたんだろうけど。今の法律は親の借金の返済義務は子どもにないからな。そんなことを言うつもりはないから安心しろ」

「……」

「じゃあ嬢ちゃん。俺はアンタが父親以外親類はいないのは知っているから頼る身内はないのは分かる。でもウチもビジネスだからそんなことまで気を回していられん。じゃけんホレ」

 男は懐から財布を取り出し、1万円札を放心する少女に差し出す。

「これでどっかで飯食って、どっかの安宿に泊まって。それから友達に頼るなりして今後のことを考えるんだな。あ、心配すんな。この金はこのままお前を見殺しにしたんじゃあ寝覚めが悪くなるから俺が勝手にやるだけ。『金返せや!』っていうつもりは一切ないから安心しな」

「……」

 しかし少女は受け取ろうとはしなかった。

「なんや嬢ちゃん。もしかして金が足らんとか言うつもりじゃないだろうな?」

 少しドスの利いた口調で男が言う。

「……ますか?」

「は?」

「どうしたら、家をこのままにしてくれますか!」

「……へ?」

 涙を流しながら訴える少女に、男は一瞬言葉を失う。そんな男に少女は涙を流し、言葉を詰まらせながら続ける。

「私、この家……大好きなんです。家は、決して裕福じゃなかったし、欲しいものを買ってもらえなかった……でも、この家は、たくさんの思い出が詰まった場所なんです!だから、私からこの家を奪わないでください。お願いします!!」

 そう言って少女は頭を下げる。

「……嬢ちゃん」

 男は大きなため息をついた後、ナイフのように鋭い目をカッと開いて少女に言い放つ。

「あのな嬢ちゃん。そんなこと言われて『じゃあ許しちゃう♪』って言うと思ったら大間違いだぞ!ウチだってただで金を貸しているわけじゃない!貸した金が回収できなければ今度は俺らの生活がかかってくるんだ!思い出が詰まっているから?……家を奪うな?……ふざけるのもいい加減にしろよ!!」

 バンッ!机を叩く男の迫力に、少女は「ヒィッ!?」とひるむ。しかし少女はそれでも必死にすがりつく。

「本当にお願いします!家を取らないでください!……私がお父さんの借金を引き継ぎます! 何でもします!……だから、お願いします!!」

「ん?」

 少女のある言葉に、男は反応する。

「今何でもするって言ったよな?ということはウチの会社が嬢ちゃんをどうこうしてもいい……そういうわけだ」

 男は舐めるように目の前の少女を見る。

 スレンダーな体つきに幼さが残る顔立ち。絹のように艶やかな黒髪をツインテールでまとめている。

 漆黒の瞳を神秘的に輝かせるその姿は、処女性が感じられる生粋の大和撫子といった印象がある。

 

 

 (けが)れのない手つかずの花。それを力いっぱい穢してみたい。

 

 

 男の中に邪悪な欲望がムクムクと湧き立つ。

「まぁ、嬢ちゃんが言うなら……考えなくもないがな」

「……え?本当ですか!?」

 男のいやらしい視線に気づいていなかった少女はパッと明るい表情で男を見る。

「ただし。嬢ちゃんにはウチの事務所に入ってもらうよ。なぁに、売れっ子になればすぐに返せるよ」

「え?売れっ子って……どういうことですか?」

 何をされるのか理解していない少女は、恐怖に震えながら尋ねる。

「そう不安がることはない。お金が稼げておいしい思いができる(・・・・・・・・・・・・・・・・)、素晴らしい仕事だよ」

 男は少女を下卑た視線で見回しながら、欲望にまみれた笑みを浮かべた。

 

 

 

 数ヵ月後

「い、いや、やめて……い、いやあああぁぁぁっっっ!!」

 箱に入れられた深雪を。大量の白い汁が、穢れの知らない可愛らしい美少女を頭から汚していった。絹のような艶やかな黒髪や幼さが抜け切れていない大人になろうとする可愛らしい顔にこれでもかとへばりつく。

「はい、罰ゲーム終了!」

 その声と共に彼女を閉じ込めていた箱が開き、深雪は外に出ることができた。

「ちょ、ちょっと高文(たかふみ)さん。量が多すぎでしょう!」

 数ヶ月前まで女子高生だった深雪は、日本屈指のお笑いタレントで司会者の長谷川(はせがわ)高文(たかふみ)に笑いながら文句を言っていた。

 父親の借金を背負う覚悟を決めたあの日。深雪は男が勤める芸能プロダクションに入社することが決まった。

 

 借金を返すためならどんなことだってやり遂げてみせる。

 

 その覚悟の下、彼女はゴキブリが大量発生した部屋でカラオケ100点を取るまで部屋から出られない。幽霊が出る洋館に一人で潜入。世界一高いバンジージャンプを行うなど、芸能事務所側がNGを出すケースでも率先して行った。

 穢れを知らなそうな美少女が率先して身体を張った仕事を行う。彼女の容姿とその仕事に対する姿勢に、我妻深雪は芸能界で確立した地位を築き上げていった。

「も~いや!」

 笑いながら文句を言う深雪を、彼女のマネージャーになった大男は呟いた。

「深雪ちゃん。お金が稼げておいしい思いができる(・・・・・・・・・・・・・・・・)、素晴らしい仕事だっただろ」

 (けが)れのない手つかずの花のような彼女が白いローションにまみれる姿は、彼女を穢したいという欲望にまみれた男を満足させるものだった。

「綺麗だ。とても綺麗だよ、深雪ちゃん……」

 大男はうっとりとしながら見つめていた。

 

 

 

 その後。可愛い系リアクション芸人の先駆者として芸能界で一目置かれる存在になった彼女は無事家を買い戻し、自分を捨てて逃げた父親を許し、リアクション芸人としての道を歩むのであった。

 




『奥さん、貸した金が払えないなら身体で払ってもらおうか!』の感想から思いついた物語です。

お楽しみいただけたのなら幸いです。

しかし。何か大事な物が失われたような気持ちになるのは、私だけでしょうか。純情とか。

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