奥さん、貸した金が払えないなら身体で払ってもらおうか! 作:筆先文十郎
卒業式。
多くの者が旅立ち、別れを惜しみつつも新たな一歩を歩きだす輝かしい日。そんな中、
「きゃっ!?」
とある女性教諭が人気のない体育倉庫のマットに倒され悲鳴をあげた。
多くの有名大学に生徒を進学させた名門校である私立
目尻が少し下がった優しげな顔立ちで落ち着いた雰囲気を漂わせている。黒髪のロングヘアが肩に柔らかく垂れかかっており、清流のような透明感を纏っていた。
白いブラウスにグレーのカーディガン、スリットが入った黒い膝丈のタイトスカートを穿いている。黒いストッキングに包まれたふくらはぎはスラリとしており、足首がキュッと細くしまっていた。
一見すると地味だがスタイルは抜群だ。ブラウスの胸は張り詰めており、ボタンが弾け飛びそうになっている。それでいながら腰はしっかりとくびれて、しなやかなラインを描いていた。
そんな美人新人教師をニタニタと笑いながら見下ろす四人の影。
「いい気味だな、華山よぉ!」
絵に描いたような不良のリーダー、
「志村の言う通りだぜ。勉強ができる生徒ばかりえこひいきしやがって!」
「そ、それは……あなた達の努力が足りないから……」
「あぁ! 努力が足りないだって?」
震える声で反論するカヲルに志村は懐からナイフを取り出す。窓から入る日差しに怪しく光る銀色の刃を、女性教諭の首元に当てる。
「4点が8点だったんだ。それでも努力が足りないっていうのかよ!」
志村の怒声が薄暗い体育倉庫に反響する。
「
今にもよだれを垂らしそうなほど邪悪な笑みを浮かべた志村は後ろに立っていた太った男と中肉中背の眼鏡をかけた男の名前を呼ぶ。何をするのかわかっている二人は両脇からカヲルを抱えて立たせる。
「……何をするの?」
何をするつもりなのか意図がわからないカヲルは今にも消え入りそうな声で尋ねる。
「『何』ってナニをするに決まっているでしょ?」
「……え?」
何を言っているのか理解が追いつかないカヲルに両脇を抱える二人が耳元で話しかける。
「先生も
「
その言葉を聞いた瞬間、小刻みに震えていたカヲルの肉体は石のように固まった。
「よかったなぁ先生。忘れられない卒業式になるぜ」
加藤の言葉が合図だった。志村がナイフでカヲルの服を斬り裂いた。カヲルの肌に触れるか触れないかのギリギリの力加減で上の服を切り裂く。
「ひぃっ!」
小さな悲鳴とともにブラジャーに包まれたむっちりと形のいい乳房と白い肌が露わとなる。平均サイズを上回りながら重さに負けない理想的な形を保つ乳房に、「おぉっ!」と男達の視線が惹きつけられる。
「なかなかいい乳してるじゃねえか!」
「さすが学園きっての美人教諭。顔だけじゃなくおっぱいも魅力的てかぁ!」
「俺好みのおっぱいだぜ。こんな上物がこんな身近にあったとはねぇ!」
「それじゃその先に行かせてもらおうか!」
男達の手が魅力的な二つのふくらみを包み込むブラジャーを剥ぎ取ろうと手を伸ばした。その時だった。
「お前ら! うちのお嬢に何をしとるんじゃ!!」
体育倉庫にスキンヘッドの男を先頭に、黒い服をまとった厳つい大男たちがズカズカと入ってくる。突然現れた男達の出現に固まってしまった不良達はなす術もなく取り押さえられる。
「お嬢に手を出したんじゃ! 覚悟はできとるじゃろうのう?」
「……あぁ! あ、ああああ! (……ひぃ! お、おたすけ!)」
スキンヘッドの男が志村の口に拳銃を突っ込み、引き金を引こうとした。その時だった。
「もういい、やめな!」
カヲルの言葉に全員がカヲルに視線を向け、
「「「「ヒ、ヒイイイイイイィィィィィィィッッッッッッ!!!!」」」」
不良達は歯をガタガタ鳴らして震えだした。
背中を見せるカヲル。その背中には大きな鐘を背負う博徒の刺青が彫られていたからだ。
その博徒の刺青はこの町周辺を裏で牛耳る極道、華山組の組長にのみ許された刺青だったからだ。カヲルが華山組組長だと知り、大きく体を震わせる不良達の股間から黄色い液体がこぼれ出る。
「し、しかし! お嬢に手を出した奴にケジメをつけさせねぇと示しが……」
「私は『もういい』と言ったんだ。それとも私の言うことが聞けないっていうのかい?」
そう言ってカヲルは取り押さえられた際に志村が落としたナイフを拾い、
バキッ!!
と割り箸を折るかのようにナイフの刃を真っ二つにした。
「
「い、いえ! 逆らうなど!!」
「だったら大人しくお帰り!!」
「は、はいっ!!」
碇矢と呼ばれたスキンヘッドは、カヲルの怒気に震える部下に撤収の指示を出すと逃げ出すようにその場を後にした。
「さてと」
カヲルは体に付着した埃などの汚れをはたき落とすと扉へと歩き出す。そして腰を抜かす不良達へ振り返る。
「志村」
「ハ、ハイッ!!」
カヲルに声をかけられ、志村は歯をガチガチ鳴らしながら答える。
「悪いんだけど。上の服、貸してくれない?」
「ハイッ!!」
自分の意思に反して激しく震える指に苦戦しながら、志村は上の服を脱いでカヲルに手渡す。
「ありがとね。明日までには自宅に届けるから」
「い、いいえ! 差し上げます!!」
自宅に先程の男達が来訪する姿を想像し、志村は慌てて首を横に振る。
「それじゃあ、元気でね。暇ならまた学校にきて元気な顔を見せてね」
そう言ってウィンクをするとカヲルは満面の笑みを浮かべて体育倉庫を後にした。
「「「「あぁ、ああああああぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!!」」」」
不良達は恐怖で震える体を静めようと身を寄せ合うように抱きついた。
今回はドリフの大爆笑の卒業コントを元に作りました。
志村けんさんが亡くなられて約一年。
「ドッキリでしたぁ!!」とテレビにまた出てくれないかなぁ、と思う自分がいます。