奥さん、貸した金が払えないなら身体で払ってもらおうか!   作:筆先文十郎

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某国の諜報員であるジェニュイン・バスターバインを辱めた醜悪な研究員、田中海一郎が融資してくれた老人に女スパイを元に開発した商品をする紹介する。


女スパイ・屈辱的拷問後日談

田中製薬会社のVIP専用応対室。

「お待ちしておりました。最上(もがみ)様」

薄暗い部屋に杖をつく老人が入室する。政界にも大きな影響を与えるVIPを、田中製薬会社会長の孫に当たる腹の出た三枚目研究員の田中(たなか)海一郎(うみいちろう)が出迎えた。

「海一郎くん。商品(・・)は出来ましたかね」

枯れ木のようなヨボヨボの身体をしながら目だけはギラギラと獲物を狙うような猛獣のような光を放つ老人が、目の前の醜悪な男に尋ねる。

「えぇ。最上様が多額の融資をしてくださるおかげで。今回の新作(・・)は前回以上に最上様を満足する品かと」

「ふふっ、聞いているよ。会社(ここ)に某国の女諜報員が潜入してきたとか」

極秘中の極秘の情報を目の前の老人が知っていたことに、研究者は少しだけ驚いた。

「さすが最上様。そんなことまで知っておられるとは」

そう言って男は異性が見たら逃げ出しそうな醜悪な笑みを浮かべる。

「最上様のおっしゃるとおりです。ちょうど良い所に極上の実験体がきまして。おかげで今回のような商品が出来ました。まあ、やりすぎて使い物(・・・)にならなくなりましたが」

「いやぁ、海一郎くん。やりすぎ(・・・・)はよくないものだよ!」

「ええ、まったくです!」

ハハハッ!と二人は聞くに(たえ)えられない下品な高笑いをする。もしこの場に女性がいれば逃げ出すか嫌悪感を抑えられずにはいられなかっただろう。しかしバスケットコートほどある部屋にあるのは、隅に置かれた布が被せられた人一人(ひとひとり)入れるだろうガラスケースと豪華な調度品があるだけ。二人の笑い声を(とが)める人間はいない。

「それじゃあ、海一郎くん。さっそく商品(・・)を紹介してくれたまえ!」

よだれを垂らす勢いで老人は研究員を(うなが)す。その姿は欲情する極上の女に誘われた寸前のようでもあった。

「まぁまぁ、最上様。商品(・・)は逃げたりはしませんよ」

そう言いながら研究員も自身が手がけた商品(・・)を紹介したくてウズウズしているのだろう。ただでさえ醜悪な顔をさらに醜く(ゆが)ませながら、部屋の隅に置かれた布が被せられたガラスケースをチラチラと見ていた。そして被せられた布に手をかける。

「では最上様。これがこの田中海一郎が作り出した商品(・・)でございます!」

そう言って男は布を思い切り引っ張った。

「おおぉっ!これは!!」

目の前の現れた商品(・・)に老人は世界一の美女と付き合えることになった性を知らない少年のような感嘆の声を上げた。

「どうでしょう、最上様。この海一郎が開発しました……全身マッサージチェアは!」

「素晴らしい!素晴らしいよ、海一郎くん!!」

人一人入れそうな巨大なガラスケースに入れられた黒く艶やかな光を放つマッサージチェアに、老人は目を輝かせる。

「どうですか?このマッサージチェアは!この見る者全てを(とりこ)にしそうな(つや)やかな光沢ある黒。もちろん見た目だけではございません!360度回転するもみ玉がより滑らかな動きを実現し、背筋のカーブにフィットした構造、さらに細かくコリをほぐしてもらいたい所をしてもらえる部分調節機能!そしてよりプロの手技に近づけた機械の動き!おかげでコリの塊だった女スパイの身体が解れてしまい、マッサージチェアを試すことが出来なくなるほどです」

「そんな御託はいい!さっさと使わせてくれ!!」

老人の願いに男はマッサージチェアをガラスケースから取り出す。

喉から手が出るほど望んだマッサージチェアに座った老人は、天にも昇るような(ほが)らかな笑みを浮かべた。

 




お詫び。
間違えて『天才・涅マユリの秘密道具』に投稿するはずだった『新章第一話 葛原粕人、二番隊に異動される』をこちらに投稿していました。

この場を借りてお詫びします。

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