奥さん、貸した金が払えないなら身体で払ってもらおうか!   作:筆先文十郎

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辺りが真っ暗になった公園で、汚れなき少女を男達が忍び寄る。
少女の衣服に手をかけたその時、汚れなき白い花が散った。


夜。汚れなき花は散る

「い、いや……やめてください……」

 人気のない公園で、一人の少女が数人の男達に取り囲まれていた。

 卯ノ花(うのはな)繭梨(まゆり)

 県内でも有名な 女子校に通う生徒である。整った眉に控えめな鼻筋、長いまつ毛によって縁どられたぱっちりとした瞳。少し幼さを残した輪郭。

 小柄な身長に反して一般女性の平均を超える乳房。細く引き締まった腰回り。適度に張った臀部。才色兼備の非の打ち所がない模範となる優等生。

 彼女はそんな自分が嫌だった。

 自分の好きなように振舞うことが出来ず、親の望む通りに生きている自分が。

 

 一度ぐらい自分の思い通りに。

 

 せめてもの反抗心が強姦が現れるというよりに来る公園だった。

 スリリングな体験をしてみたい。どうせ自分を襲われないのだから。

 そして彼女は後悔した。

 彼女がどんなに暴れても男たちが四肢を抑えている以上彼女が動くことはできない

 ましてや 男たちも彼女よりも体格がいい。 運動神経がさほど良いとは言えない彼女が抵抗すること自体が無駄であった。

「やめ、止めて下さい!」

 無理やりキスをしようとする男に少女は反射的に顔を背ける。それでもキスをしようとする男にもがき続ける繭梨が偶然にも男の頭に頭突きするようにぶつかってしまった。

「何すんだ、このアマが!」

「い、痛い!」

 頬を叩く音が周辺に響く。

 初めて味わう暴力が彼女の抵抗する意識をなくさせる。

「さてご開帳と行くか」

 その言葉に少女は血の気が引いた顔を小さく左右に振る。

「い、いやぁ……」

 今まさに食われようとする子羊を、よだれを垂らしながら一人の男が服に手をかける。

  その時だった。

「こんばんは 」

 不意に聞こえた謎の声に男たちはバッと振り向く。そこには時代劇でしか見ない黒い和服を着た、150センチ前後しかない繭梨も小さい男が立っていた。腰には刀が差してある。

「なんだテメーは?」

 目の前に立つ謎の男が小さくことに男たちは気づいていなかったったが、一目見た瞬間彼女は強姦たちよりもそういうの男の方が強さを感じた。

 否、恐怖心を覚えた。

 突然現れた男の姿を見た瞬間彼女は恐怖で息を呑んだ。男の身長は145センチ前後。繭梨よりも小柄だ。しかし体から滲み出すオーラがその男がただものではないということを知らしめていた。

 

「死神……」

 

 少女は自分でも気づかぬまま少年のような男をそのように言った。

「あぁん!何だ、てめぇはよ!!」

 せっかくのごちそうを横取りされたライオンのように怒り狂った男たち。

「死ねや、オラァ!!」

 そう言った謎の男に襲い掛かった不良をきっかけに仲間が続く。しかし少年のような男は前後左右からの攻撃を容易く避ける。

 まるで普段は理知的に振舞っているが、その本性は残忍な性格をしたマッドサイエンティストで、倫理観の歯止めが利かない研究や人体実験を好む強い好奇心の上司から逃げ惑っている自分には欠伸(あくび)が出ると言わんばかりに。

 その後男達がどんな攻撃をしようとも繭梨が死神と言った男は服にすらかすらせることなく攻撃を避け続けた。

「ハア……ハア……な、なんで攻撃が当たらねぇ……」

 肩で息をする男達を見ながら小柄な男は呟く。

「本来なら殺してやりたいところだが……霊法で指定以外の人間を殺してはいけないからな。これだけで勘弁してやるとするか」

 意味不明なことを呟いた小柄な男は左足を少し下げ持っていた刀に手をかけた。

 

 シャキンッ!

 

 男がいつの間にか(・・・・・・)抜いていた(・・・・・)刀を鞘に納めた。次の瞬間。

 

 パラパラパラッ……

 

男達が持っていたナイフなどの武器がまるで包丁で切られたバナナのようにボトボトと地面に落ちた。

「次は首をもらうぞ」

男が静かに笑う。その姿に男達は初めて気がつく。自分達がとんでもないバケモノにケンカを売ってしまったことに。

「「「う、うぅ、……ウワアアアアアアァァァァァァッッッ!!」」」

数分前の威勢が嘘のように、不良達は我先にと謎の男の前から姿を消した。

「さて」

 謎の男が少女の方へ振り返る。

 膝がかすかに震え始める ゆっくりと迫ってくる少年のような男がやけに大きく見せて 押しつぶされそうな威圧感を覚える。冷たい視線で見降ろされ 恐ろしさのあまり視線をそらすことができない。

「か、帰して下さい。お願いですから……」

少女は手を合わせて懇願する。しかしその一言に男の声のトーンが一段低くなった。

「このまま帰るだと?」

「ごめんなさい!」

「脱げ」

 男は静かに、そしてドスの効いた声でそう呟く。

「い、いや……」

「いいからさっさと脱げって言ってるんだよ、おらぁ!!」

 そういった男は抵抗する繭梨の制服に手をかけた。

「いやああああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

 

 パラッ……

 

 少女の悲痛な叫びとともに近くに咲いていた白い花がぱらりと散った。

 

 

 

「無理に引っ張ったから余計に破れてしまったじゃないか。貴女が裁縫道具を持っていないことはとっくにお見通しだったんですよ」

 謎の男は裁縫道具を取り出し彼女の破れた制服を縫っていた。

「あ、あの……どうして私の服を?」

「破れた服でウロウロするつもりですか?……たく、本当は忙しくてこんなことをしている暇はないんだけど」

 そう言って男はあっという間に制服を縫い合わせた。

「いいですか。これからは危ない道は 進んで入らないことですよ」

「は、はい」

(そうだ、お礼を言わないと。何だかんだ言って私を助けてくれたんだし)

 男に背を向けて歩き出そうとしていた繭梨は振り向く。しかし先ほどまでいた男はいなくなっていた。

 

 

 

 まるで魂を回収という仕事を終えた死神のように。




本作とは関係ない登場人物紹介
葛原粕人(くずはら かすと)
筆先文十郎が書いているBLEACHの二次創作『涅マユリの秘密道具』の登場人物で死神。後述の卯ノ花烈と涅マユリを尊敬しており、言われなきことで二人を侮辱されることは自分がバカにされることよりも我慢できないほど。

卯ノ花烈(うのはな れつ)
漫画『BLEACH』に登場する護廷十三隊という警察・軍事・治安機関を担う組織の四番隊前隊長。葛原粕人の元上司の女性。
前述の葛原粕人を後述の涅マユリの部隊に異動するように薦めた。
このことを葛原粕人は自分の進むべき道を差し進めてくれた大恩人と感謝している。
葛原粕人に居合いを伝授した。

涅マユリ(くろつち まゆり)
漫画『BLEACH』に登場する護廷十三隊という警察・軍事・治安機関を担う組織の十二番隊長と技術開発局局長を務める男。葛原粕人の現上司。
普段は隊長として理知的に振舞っているが、その本性は残忍な性格をしたマッドサイエンティストで、倫理観の歯止めが利かない研究や人体実験を好む強い好奇心の持ち主。
何度でも生き返る能力を持つ葛原粕人を実験に利用している。
葛原粕人は誰からも理解されなくても自分のやり方で多くの人に貢献する涅マユリを尊敬している。

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