仮面ライダーエグゼイド レジェンダリー・エンディング 作:エクシ
高岡の姿は学校のどこにもなかった。逃げ足が随分速いことで。もし教師なんだとしたらこの場から離れてはいけないのではないか?
とにかく高岡のバグスターウイルスはバグスターユニオンになるタイプのウイルスだ。再覚醒すればすぐに駆けつけることは可能だ。今は霧島を追った永夢を探すとするか。
学校を出てすぐに角を曲がる。その先には急な坂があってそれを小走りで上がっていくと…。
「…永夢!?」
白衣を着た青年が血だらけで倒れている。すぐに駆け寄って首につけている名札を見るとそこには宝条永夢の文字が…。
「永夢!永夢!どうした!何があった!?」
「あぁ…パラド…霧島が…逃げた…!すぐに…追って…。」
-ゲームオーバー-
そんな!永夢の体が消えていく。馬鹿な!ゲームオーバーだと!?俺がついていながら永夢を…死なせてしまった…!
「ウワアアア!!!!」
永夢は俺の手の中から完全に消えた。仮面ライダークロニクルをプレイしているとき、クロノスの時間停止能力発動中に倒されれば自分たちバグスターでも完全な死を迎えることを知り恐怖した。人にとってもバグスターにとっても…あらゆる生物によって死とは恐怖の対象なのだ。俺はその恐ろしさを知ることで永夢たちと共に手を取り合って戦っていこうと決めたばかりなのに…!
「…いや永夢は死んでなんていない。」
そうだ、永夢は俺の感染源。永夢が死ねば俺は完全な存在となっているはずなのだ。しかしそんな感覚は全くない。つまりこのゲームオーバーはあくまで幻夢VR内でゲームオーバーになったにすぎず今頃現実世界に戻っているに違いない。
「そうだ、きっと大丈夫…!」
今は霧島の行方を追うことに専念しよう。霧島…ここで見ただけだっただろうか。現実世界においては確かあの高岡という男を偶然天ノ川学園高校で見つけ俺がバグスターウイルスを注入したのだ。その光景を霧島は見ていた。
対して気にも留めてなかったが考えてみればバグスターウイルスを注入され苦しんでいる人を黙って見ている人間は中々いない。今考えてみれば、本当は霧島が高岡にバグスターウイルスを入れに来たがその前に偶然俺が高岡にバグスターウイルスを入れていたのが現実であったことだったのかもしれない。
それならばなぜ霧島は高岡にバグスターウイルスを入れようとしていたのか。考えろ…何かヒントが…。
「仮面ライダー…!うわああ!」
そうだ。俺を見た時、高岡は仮面ライダーと言って恐怖していた。聖都大学付属病院がある地域の住民はドクターライダーたちを仮面ライダーと呼ぶ習慣はあまりない。仮面ライダーと呼ぶのはCRやバグスターの面々たちぐらいであろうか。
では仮面ライダーと呼ぶようになったのはなぜなんだろう。仮面ライダーという呼び方を知っていた高岡に近づくヒントになるかもしれない。仮面ライダーという呼び方に最も精通している人物…それは…。
「ほう、仮面ライダーについて?それをこの神の才能を持つ私に聞きたいと?」
コイツに聞くしかないか。俺は幻夢コーポレーションを訪れゲンムに聞くことにした。ゲーマドライバーの音声にもあるように仮面ライダーという呼び方を定着させたのは幻夢コーポレーション、さらに言えばこの男 檀黎斗なのだから。
「仮面ライダー、それは人間の自由のために戦う戦士たちのことだ。この辺りではあまり聞かないが世界のあちこちで都市伝説になっていてね。このドクターライダーシステムはその都市伝説の戦士に非常にそっくりだからその呼び方でいこうと思っているんだよ。」
なるほど、スナイプよりも前に先に戦っていた戦士が仮面ライダーと呼ばれていたわけだ。高岡がその仮面ライダーに何かトラウマでもあるのだろうか。
納得してその場を立ち去ろうとした時、ゲンムは俺を引き留めた。
「待てパラド。グラファイトからバグヴァイザーを君が持っていると聞いた。私に帰してくれ。」
「なんで返す必要がある?」
「完全体グラファイトが生まれてからはしばらくバグスターウイルスは沈静化させる。それが計画だ。君は仲間を産むためにそのバグヴァイザーを使うだろう。それでは計画が狂ってしまう。渡すんだ。」
「嫌だと言ったら?」
「…ちょうど私の体も抗体が出来てきた頃だろう。仮面ライダーゲンムの戦闘収集の一環として君に制裁を与える。」
「…やれるもんならやってみろ。」
ここでドライバーとガシャットを渡すわけにはいかない。ゲンムを倒してでもここを抜け出す。
-ガッチョーン…パーフェクトパズル!-
-マイティアクションX!-
「「変身!」」
-ガシャット!バグルアップ…!Get the shine ジェノサイド!in the chain!PERFECT PUZZLE Woooo!-
-ガシャット!レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイム ア カメンライダー!-
俺は仮面ライダープロトパラドクス パズルゲーマー レベルXに、奴は仮面ライダーゲンム アクションゲーマー レベル1へと変身完了。さらにゲンムはアクチュエーションレバーを展開させレベルアップをする。
「グレード2。」
-ガッチャーン!レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショ-ン!X!-
これでゲンム アクションゲーマー レベル2。最近は細部の色が異なるアクションゲーマー レベル0かデンジャラスゾンビガシャットも差したゾンビアクションゲーマー レベルX-0しか見ていなかったからこの姿のゲンムを見るのは久しぶりだ。
「パラド、私に逆らうとどうなるかとくと味わうがいい!」
-ステージセレクト-
幻夢コーポレーションの社長室から採石場へと辺りの様子が変化する。これなら好き放題暴れられそうだ。
-ガシャコンブレイカー!-
ゲンムはエグゼイドと同じ武器を召喚しブレードモードの状態で俺に斬りかかってきた。そちらが武器を使いならこっちもだ!
-ガッシューン…ジャ・キーン…-
バグルドライバーとなっていたガシャコンバグヴァイザーをチェーンソーモードで取りつけて斬撃をぶつけ合う。お互いが斬り合って火花が飛び散る中俺は左手でエナジーアイテムを操作。これでどうだ!
-高速化 ジャンプ強化-
素早いスピードでジャンプ!
-ガッシューン…チュ・ドーン…-
空中で素早くビームガンモードに変えてゲンム目掛けて射撃!このスピードについて来れるわけもなく命中だ。
「く…仮面ライダークロニクルにパラドクスとして参加出来なくともいいのか!?そのテストプレイ用としてそのガシャットを貸したのを忘れたか!」
このプロトパーフェクトパズルガシャットとプロトノックアウトファイターガシャットはガシャットギアデュアルを作るための第一段階として作られたα版だ。現実ではグラファイトと戦うことで戦闘データをとってそのまますぐにゲンムに返したのだ。
しかし今はそんなことをするわけにはいかない。霧島の正体を知って高岡をバグスターウイルスの魔の手から救わなくては。
「そんなことはどうでもいい!」
「なんだと…!…くくく…宝条永夢と仮面ライダークロニクルで戦うことが全てだった君がそんなことをいうとはな!いいだろう、ならばこのガシャットの力を受けて消え去るがいい!」
-デンジャラスゾンビ!-
あれはプロトデンジャラスゾンビガシャット…!この間、プロトガシャット奪還の際に使っていた奴か。
「今の私の体なら使えるかもしれないからなあ…!」
-ガッチョーン!ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショ-ン!X!アガッチャ!デンジャー!デンジャー!キル・ザ・クルーエル!デンジャラスゾンビ!-
モノクロのゾンビアクションゲーマー レベル0へとレベルアップ。数値上のレベルはダウンしているがスペックは確実に上昇している。ゾンビアクションゲーマー レベルW-0との違いはメインガシャットスロットに入ったプロトマイティアクションXの種類が異なることぐらいだろうか。
「ククク…私のこのゾンビの力の前に…ウグッ…アアアアアア!!!!」
なんだ!?ゲンムのライダーゲージがどんどん減っていってあっという間に0となる。
-ゲームオーバー-
そして消滅…するかと思えばライフの数値が50から49へと変わって再びライダーゲージは満タン…空に…。
-ゲームオーバー-
それを何度も繰り返すゲンム。いったい何がしたいんだ?
「ウガアアア!!私の体では…まだ…!」
どうやら人間の体であること、さらに体の中の抗体がまだきちんとしていないこともあってプロトデンジャラスゾンビガシャットをうまく扱えていないようだ。プロトデンジャラスゾンビガシャットにはコンティニュー機能が搭載されていると言っていたが、その命となり得るエネルギーを何度も使うことで順応しようとしているらしいがそれもむなしくあっという間にライフは一ケタにまでなってしまった。
「付き合いきれないな。」
俺はその場から消えていく。ゲンムは俺の方に手を出して待て!と叫んでいるが構うことはない。プロトガシャット奪還の際、プロトデンジャラスゾンビガシャットの中のライフは残り4つだったと聞いたがこんな体を張った実験をしていたからそこまで少ないライフしかガシャットの中に残っていなかったのだろう。
とにかく仮面ライダーについてある程度わかった。次は霧島が知っている仮面ライダーとは誰のことなのか知る必要がある。そのためには高岡から直接聞きたいのだが…。
「俺を見ると逃げていたしな。」
人間が俺から逃げるのを見ると仮面ライダークロニクルをプレイしていた頃のことを思い出す。そう昔のことではないがこの数か月で俺の心は大きく変わった。あの頃のように恐怖の対象となるのはあまり好ましいことではない。
怖がらせてしまうのは意に反するがやむを得ない。俺はネットワークに潜り込んで高岡の居場所を見つけた。どうやらもう幻夢VR内では数日が経過しているようで高岡の中にあるバグスターウイルスも十分に成長しているようだからすぐに見つけられたのだ。居場所は…また天ノ川学園高校…!
校舎裏に捨てられたパソコンから外に出て高岡に近づく。高岡の視線の先には…授業を行っている教室しかないが…?
「おい。」
「? …あ、仮面ライダー…!うぐ…!」
ストレスを感じている!まずい!
「落ち着け!俺は敵じゃない!なぜお前は仮面ライダーの存在にストレスを感じるんだ?」
「俺は…うわああ!」
「安心しろ。俺は変身しないから!」
そういってガシャコンバグヴァイザーとガシャットを床に投げた。それを見て安心したのか高岡の体は落ち着き始める。
「なんで仮面ライダーがお前のストレスの原因なんだ?」
「俺は…昔…」
「余計なことはやめてもらえますか?」
「!」
声のした方を向くとそこには霧島が立っていた。そっちから姿を見せてくれるとは有り難い。
「お前…。」
「私はその男のストレスのデータを収集しているんです。邪魔しないでもらえますかね?」
「それじゃこの男が消滅してしまうだろう。」
「それでも構いませんよ。仮面ライダーフォーゼのデータを取ることが出来ればね!」
「…!!!!」
高岡は仮面ライダーフォーゼという名前に反応して症状が出始めた。巨大なバグスターユニオンが高岡の体を包んでいく。
「お前は俺の心を滾らせた。」
そう言って床に落ちたガシャットらを拾い上げ変身の準備を整えた。
-ガッチョーン…ノックアウトファイター!-
「変身!」
-ガシャット!バグルアップ…!Extreme Hit!ジェノサイド!KNOCK OUT FIGHTER Woooo!-
プロトパラドクス ファイターゲーマー レベルXに変身!これでバグスターユニオンからの攻撃には耐えられるが分離させることはレベル1がないこのガシャットでは無理だ。ゲンムからガシャットを奪って来ればよかったか。
「どうすれば…。」
「パラドクス!何やってやがる!」
「…!」
声は校舎の上から聞こえた。この声はスナイプ…!?上を見ると屋上から花家大我が俺たちを見下ろしていた。
「バグスターユニオンの相手は俺がする。どいていろ!」
そういうとゲーマドライバーを装着し内ポケットからプロトバンバンシューティングガシャットを取り出して起動させた。
-バンバンシューティング!-
「変身!」
-ガシャット!レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイム ア カメンライダー!-
仮面ライダープロトスナイプ シューティングゲーマー レベル1はかつてグラファイトと戦い敗れたその姿だ。プロトスナイプは弾丸型のオーラを纏いつつ屋上から飛び降りてバグスターユニオンを攻撃した。