仮面ライダーエグゼイド レジェンダリー・エンディング 作:エクシ
「貴様…霧島明か?」
ゲーマドライバーに装填されているハリケーンサバイバルガシャット。現代において檀黎斗が霧島と戦った際に霧島が持っていたガシャットだ。霧島は結局ゲンムとの戦いでサバイバルゲームのデータを収集し、自らがハリケーンサバイバルのバグスター ディザストになることに成功した。
「…さぁね。正体なんてどうでもいいんだよ。君のガシャットも頂くよ。」
謎のライダーはダミ声で俺に話しかけてきた。初期の仮面ライダーゲンムと全く同じような声だから正体を知ることは出来ない。
「霧島、お前を切除する。」
ブレイブ クエストゲーマー レベル1(ゲーマドライバーを付けてはいないが。)に変身している俺は剣を構える。謎の仮面ライダーは既にレベル2のような戦闘向けの体形になっていることからこの俺の姿よりもレベルが高いことはまず間違いないだろう。格上相手…面白い。
剣で謎の仮面ライダーに襲い掛かる俺。しかしそれを難なくかわしてパンチを食らわせてきた。
「く…!」
「ハリケーンサバイバルは敵と味方に分かれて戦うサバイバルゲーム。しかしこの場は自分以外がすべて敵。これだけ暴れ甲斐のあるオペは久しぶりだ。」
「…!」
とにかくコイツと戦っても”今は”勝ち目がない。俺はレベル1特有のスピードで林の中を駆けていった。謎の仮面ライダーは俺を追ってくる様子はない。
と突然目の前に誰も乗っていないバイクが草木の中から飛び出してきた。
「! 監察医か。」
「おい!早くこっち来てくれ!大変なことになってる!」
レーザー バイクゲーマー レベル2に跨っていけば楽に移動できるのだがあいにく今の俺はレベル1の姿。さらに変身を解除してしまえばもう二度と同じ簡易版タドルクエストガシャットで変身することが出来ず、試験に不合格となってしまう。監察医もレベル1へと戻り走って現場まで向かうとしよう。
「簡潔にまとめろ。何が起きている?」
「向こうであるブレイブ…」
「クエストプレイヤーだ。」
「? まぁいいや、クエストプレイヤーが暴れてんだ。バグヴァイザーでひたすらバグスターウイルスをまき散らしてやがる。」
「何!?」
「見たところによるとクエストプレイヤーのシステムはライドプレイヤーに似てて、適合手術をする事無く変身を可能にしてるみたいだな。」
つまりバグスターウイルスに1度感染させて変身させているということだ。手段を選ばぬ檀黎斗らしいやり口だな。
「そいつがたぶん霧島だと思うんだ。」
「それはないな。さっき俺は霧島に会った。」
「え?」
「ハリケーンサバイバルガシャットとゲーマドライバーを使って変身する仮面ライダーになっていた。奴はそのクエストプレイヤーではない。」
「じゃあまた別のやばい奴が紛れ込んでたってことかよ。めんどくせえ…。」
そんな話をしながら現場に着いた。
…なるほど地獄絵図だな。ガシャコンバグヴァイザーを手にしたクエストプレイヤーが他のクエストプレイヤーに向けてバグスターウイルスを撒いている。ほとんどのクエストプレイヤーがもがき苦しみながら変身を解除。中にはバグスターユニオンに覚醒して大暴れしている者もいる。
「大先生、アンタこんな事件起きてたの気が付かなかったの?2年前!」
「黙れ、すぐにバグスターを倒すぞ。」
正直自分でも気が付かない間にこんなことが起きていたとは知らなかった。通りで競争者たちが次の試験で一気に減っていたはずだ。こんなことが起きていたんだからな。
体に炎を纏いバグスターユニオンに何度も特攻することで相手の体力を徐々に削っていく。
「俺に斬れないものはない!」
最後の特攻だ!体当たりによって人間とバグスターが分離した。向こうで監察医もバグスターを人から引きはがすことに成功したようだ。
俺が切り離したバグスターはタドルクエストのバグスター アランブラになる。
「私は悪の大魔ほ…」
「消えろ!」
だからもうお前のことは知っている!問答無用で剣を振り下ろすがアランブラは手にしているアランブラスタッフで俺の剣を止めた。
「フフ、お前程度のレベルでは我が魔法には敵わぬ!」
「く…メスの状態が悪い…!」
この時はまだガシャコンソードを使うことは出来なかったな。この剣ではアランブラを切除することは難しそうだ。どうすればいい…考えろ!
「困っているようですね、鏡先生!」
どこからが声がする。この憎たらしい声は…檀黎斗!辺りを見回すと林の奥から黒いスポーツゲーマを漕いでくるゲンム アクションゲーマー レベル2の姿があった。仮面ライダーの姿で立ち漕ぎとは…シュールな画だな。
「私の許可なくこんなことをするとは…許さんッ!!」
どこかで聞いたような言葉だな。まぁアランブラを倒すのであればどちらでもいいが。
…!?ゲンムがバグスターウイルスをまき散らしているクエストプレイヤーに向かってスポーツゲーマを漕ぎだしただと!?
「待て、檀黎斗!バグスターを切除するのが優先だ!」
「黙れ!私に指図するなァ!」
くそ…自分でどうにかするしかないか!再び剣を構える俺を見た監察医がこちらに自分の簡易版タドルクエストガシャットを投げてきた。
「どういうつもりだ!」
「ゲーム苦手なアンタだから気がついてないかもしれないけどよ、この試験のルールは”ガシャットがなくなったら”ゲームオーバーなんだぜ。それに”同じガシャット”で変身出来るのは1回までだ。そこまで言えばわかるよな?」
ガシャットがなくなれば…。同じガシャットで1回…。そうか、そういうことか。
「2速!」
-ガッチャーン!レベルアップ!爆走 独走 激走 暴走 爆走バイク!-
監察医はレーザー バイクゲーマー レベル2にレベルアップ。人が誰も乗っていない状態ではあるが仮にもレベル2。監察医が分離させたモータスがモータスヴァイパーに跨ろうとする隙をついて攻撃を与えている。
こちらも行くか!相手の反撃を恐れず突っ込んでいく。とにかくダメージを与えることだけを考えるのだ。斬撃に炎を纏わせたり、氷のパンチをアランブラに叩き込んだりを繰り返す。
「モエール!」
一方アランブラの魔法も俺が防御を一切しない分、ライダーゲージを大きく削っていく。だがその対策は既に思いついている…!
ライダーゲージが尽きそうになったら簡易版タドルクエストガシャットのプレイングスターターを押すことで変身を解除。そして先ほど監察医から受け取った新しい簡易版タドルクエストガシャットを起動させる。
-タドルクエスト!-
「変身!」
-Enter The GAME!Quest The START-
再びブレイブ クエストゲーマー レベル1の姿に変身出来た。使用済みの簡易版タドルクエストガシャットはこのように踏んで壊してしまえば他のプレイヤーに使われることもない。
「やはりお前は大した男だ、監察医。」
監察医に聞こえることなく奴を褒めておいてやった。
「んん!?」
「アランブラ、お前の存在はノーサンキューだ!タドル クリティカル フィニッシュ!」
声に反応し必殺技が起動する。剣に炎と氷のエネルギーが蓄積されその斬撃をアランブラに向けて飛ばした。
「ぐあああ!」
-ゲームクリア-
これでオペ完了だ。監察医の方は…。
「おおい!ガシャット入れてくれぇ!」
仕方あるまい。俺は監察医の元へ行き、ゲーマドライバーから爆走バイクガシャットを抜き、キメワザスロットホルダーに装填する。
-ガッシューン!ガシャット!キメワザ!爆走 クリティカル ストライク!-
監察医は一気に加速していきモータスを轢く。断末魔と共に爆破が起きゲームクリア音が鳴り響いた。
「おっしゃあ。」
「後は檀黎斗だな。」
辺りを見回しゲンムの姿を見つける。ん?もう既に終わっているのか。ガシャコンバグヴァイザーを構えられ手を上にあげている霧島の姿がそこにはあった。
「…!?霧島だと!?」
「何を驚いてる?鏡先生、あなたがこの男が私のガシャットを盗もうとしていると言っていたんだろう。」
「いや、いったいこれは…どういうことだ!?」
バグスターウイルスをまき散らしていたクエストプレイヤーが霧島!?では先ほどの謎の仮面ライダーは一体…!?
「俺をお探しかな?」
このダミ声…謎の仮面ライダーか!
「誰だ、貴様!私の許可なく不正なガシャットを…」
「お初にお目にかかる、檀黎斗。私はフェイス、仮面ライダーフェイスだ。」
仮面ライダー…フェイス!こんな奴がいたとはな。あの試験中に。
「フェイスだと?霧島の仲間か?」
「うーん、どうだろう…ね!!」
俊足で近づきゲンムを蹴飛ばしたフェイスはすぐに霧島を抱えてその場を去っていく。やはり霧島の味方のようで、彼がピンチになったから助けに来たのだろう。
「すぐ追うぜ!」
-ガッチョーン!-
レーザーの姿から元に戻った監察医はすぐにその場から消える。ハリケーンサバイバルガシャットの位置を探知しながら近づく気だ。
フェイスは試験会場を囲う塀のところで霧島を下ろした。
「やれやれ。助かりましたよ、フェイス。いえ根守川さん。」
「相変わらず無茶をする男だ。」
-ガッチョーン!ガッシューン!-
変身を解除したフェイスの素顔。それは参加者の一人 根守川岳であった。
「アメリカなら多くの人種がいるからバグスターウイルスの実験には最適って言って財団から派遣されたって聞いたぞ。」
「えぇ。あなたの任務に紛れさせてもらいましたよ。それと取引先候補のマキナヴィジョンともちょっとね。」
「マキナ?幻夢はどうした?」
「幻夢コーポレーションは前社長が今服役中でして。それで現社長はウチとは取引する気はないらしく。」
「なるほど、アンタも大変だな。」
「本当であれば私がブレイブになって財団にガシャットを持ち帰りたかったのですが…どうやら私の任務はここまでみたいです。しかしバグヴァイザーを使ってこのガシャットの中にタドルクエストガシャットのデータを回収することは出来ました。これをあなたに預けておきます。」
そう言って霧島は根守川にガシャコンバグヴァイザーを渡した。根守川はガシャコンバグヴァイザーからガシャットを引き抜く。
-ガッシューン!-
「チゾメノミソギ…あぁこのガシャットか。アンタがデータを集めてた理由もわかったぜ。」
「よろしくお願いしますよ。そのガシャットを完成させるのも我らが財団Xから課せられた重要な任務。」
「了解。俺の仕事ではないけどな。」
そういうと霧島はその場から消えていった。これが監察医が見ていたすべてだ。
「ということは根守川を捕まえればいいということだな!」
試験が終わり再びラスベガスに戻ってきた俺たちは檀黎斗が泊まっているスイートルームで話し合いをしていた。霧島はあの後も行方がわからなくなっている。クエストプレイヤーの何人かもどうやってかわからないが逃げ出したようだ。結局50名のうち第二試験に行くことが出来るのはたった10名となった。
「1人じゃちょっとヤバイと思ってな。手は出せなかった、すまねえ。」
「問題ない。お前の判断は正しい。俺たちの力では今フェイスを倒すことは困難だ。」
「そこで私の出番というわけだ。」
そう言うと檀黎斗はアタッシュケースを机の上に置き開いた。そこには11本のプロトガシャットが収納されている。
「根守川を叩くにはこれぐらいしないとな。私に許可なくガシャットを使ったことを後悔させてやる!それにゲーマドライバーも!なぜ奴は持っているんだ!」
「そりゃアンタのお父様のせいだろうよ。」
「何!?」
「アンタの父 檀正宗は財団Xってとこと取引してた。財団Xの優秀なシステムエンジニアである霧島も檀正宗のお気に入りだったって話だ。」
「おい、なぜそんなことを知ってる?」
「今調べてきた。」
…バグスターの体は便利だな。
「まぁ融資の見返りとしてガシャットやゲーマドライバーの設計図も提供していたんだろうな。」
「くそ!檀正宗め!!」
「とにかくこのプロトガシャットを使って根守川を叩く。いいな?」
俺は興奮する檀黎斗に向けて言ったが聞く耳を持っていない。監察医が何とかなだめて椅子に座らせる。
「あぁ、だがこの試験を中断、邪魔することは許さない。今この場で襲撃でもしてみろ。すぐ私がお前たちを消すぞ!」
「…面倒な奴だ。」
「次の第二試験。ここではタドルクエスト以外のガシャットも出すつもりだ。そこで蹴散らせばいい。」
「…いいだろう。」
「あ、あとよ、根守川ってやつを調べてみたんだが全然出てこないんだ。なんか知ってるか?神。」
「根守川岳、民間軍事会社スウォードの幹部だと聞いている。」
根守川岳の顔をパソコンに映し出す檀黎斗。相貌は茶髪のパーマで黒いスーツを着ている日本人で端正な顔立ちの男…と顔が整っていること以外は大した特徴はない。
この男をとにかくマークする。他の試験参加者の相手は他の奴に出も任せるとしよう。明日の第二試験も荒れそうだ。