仮面ライダーエグゼイド レジェンダリー・エンディング 作:エクシ
いってぇ…。
ゲキトツクリティカルストライクの威力は抜群だ。後で知った話だがゲキトツスマッシャーによるパンチ力だけ見るならレベル50にも匹敵する力に相当するらしい。今の自分にはレベル50ってのがどんだけヤバイのかわからないけどな。
とりあえず自分の胸のライダーゲージはあとわずか。また死ぬのは御免ということで何とか逃げてきた。アクチュエーションレバーを閉めてガシャットを抜き取ると元の自分の姿に戻る。
とにかくあの永夢は自分の知っている永夢ではないらしい。信用できる仲間が敵になるって…。どうやらこのゲームは難易度高めのゲームらしいな。どのゲームも同じ難易度って言っていたのは本当か?
寂れたバーに黄色いストールを身につけた男が入ってきた。奥の席に1人で酒を飲む黒いジャケットを着た男の元に向かう。
「今回のゲームのラスボスはお前みたいだな。」
「通りで自分の所にこのガシャットが来たわけだ。」
座っている男は内側のポケットから黄土色のガシャットを取り出しカウンターに置いた。
「エグゼイドが戦ったが逃げたらしいぞ。」
「まぁ名人相手じゃちとキツイかもな。」
男はニヤリとしてコップに入っていたジントニックを一気に飲み干した。
あれから何日か、自分は正体を隠しつつ情報を集め続けた。とは言っても
NPCに尋ねればどんなに顔を隠していても自分が現実世界から来た人間だとバレて攻撃が開始される。
さまよった結果わかったこと、それはこのゲームが”無理ゲー”であることだ。
何度も言うように宝探しゲームは情報収集がマスト。本来はNPCから話を聞いたりして進めるものだ。ところがこの爆捜トレジャーはそれが出来ない。お喋りが得意な自分の性格もここじゃ宝の持ち腐れってわけだ。
そんなわけで未だに宝がなんなのかわかっていない。目的のないゲームほどつまらないものはない。街にいても進展がないので今日はいよいよこの街を出て隣の砂漠を渡ろうとしている。いったいどこまで続くのかわからないが、人間として死んだお陰…というんだろうか。腹が減ったり喉が渇いたりすることはないから乗り越えられそうだ。
-爆走バイク!ガシャット!キメワザ!-
キメワザスロットホルダーに爆走バイクのガシャットを装填することで自分が変身した姿 レーザー バイクゲーマー レベル2が召喚される。普段は使いにくいガシャットだがこう使えばバイクを持ち運びする必要がなくなって便利なんだぜ。自分に乗って移動するってのはちょっと変な感じがするが…。
しばらく走らせても砂漠に終わりは見えない。そもそもプログラムされてない可能性もあるな。
引き返そうかとバイクを停めようと思った時、突然前に人間が現れた。
「うぉ!」
ハンドルを右に捻って引かずにはすんだが自分は横転。下が砂で助かった。
「おい!何でいきなり現れて!危ねえだろ!」
「わりぃわりぃ。悪ノリが過ぎちまったな。」
ん?どこかで聞いたことがある声…。というか自分の声だ。服もどこか似ている。ジャケットの色が違うぐらいだろうか。
…顔まで同じじゃねえか…。
「誰だお前…!」
「誰だって見てわかるでしょ。自分は自分だ。やっと見つけたぜ、現実世界の自分。」
現実世界の自分と呼んでくるということは黒ジャケットの自分…そうだな、通称 黒貴利矢とでも呼んでおくか。黒貴利矢は現実の存在ではないということだ。
「ゲーム世界の自分なのか?」
「ご名答。」
「初めてまともに自分の質問に答えてくれた人が自分とはな。」
「自分は性格がいいからな。自分のことだからわかるだろ?」
(嘘つきまで同じかよ。)
思わず自分に対して心の中で突っ込んでしまった。
「性格がいいなら教えてもらおうか。どうすれば自分はゲームをクリアできる?」
「さぁな。それはお前で考えな。ただ自分はアンタを消すだけだ。現実世界の自分を倒せば自分は完全な存在になれるからな。」
そういうと黒貴利矢はゲーマドライバーを腰に装着した。ゲーム世界の永夢と同じように自分もライダーに変身するのか。ならばこちらもとゲーマドライバーを装着。
-爆走バイク!-
-爆走バイク!-
使うガシャットまで同じか。
「0速。変身!」
ん?0速?
-ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!爆走 独走 激走 暴走 爆走バイク!-
パネルをケンカキックで蹴り、変身エフェクトが黒貴利矢を通過すると人型のライダーへと変身した。
「どういうことだ?ガシャットは同じはず!」
「自分のガシャットはレベル0の力を持っている特別製だ。仮面ライダーレーザーターボの力、見せてやるよ。」
なるほどさすがは無理ゲー。そういう仕様なら仕方ねえ。
-ギリギリチャンバラ!-
こっちも人型でやってやる。
「3速!変身!」
-ガッシャット!ガッチャーン!レベルアップ!爆走 独走 激走 暴走 爆走バイク!アガッチャ!ギリ・ギリ・ギリ・ギリ!チャンバラ!-
自分はレーザー チャンバラバイクゲーマー レベル3で対抗だ。
-ガシャコンスパロー!-
召喚されたガシャコンスパローを手にした瞬間、レーザーターボに向けて射撃する。レーザーターボは自分の動きを見切って一回転しつつ避けた。やるじゃねえか。
すぐさまこちら目掛けて走ってくるレーザーターボを撃とうとするもその速さに翻弄され一発蹴りを入れられた。
「いってぇな!」
-ス・パーン!-
すぐ鎌モードに変えて接近戦に対応する。ガシャコンスパローは遠近共に使い勝手がいいのがメリットだ。
攻撃を喰らってもなかなか倒れないしぶとさは評価するが、レーザーターボは武器を持っていない。あちらの攻撃はガシャコンスパローで抑えればそこまで怖いことはない。武器の有無はデカイ差だ。
-シャカリキスポーツ!-
レーザーターボが一歩引いたと思うと左腰のキメワザスロットホルダーにあるプロトシャカリキスポーツを起動させた。まさかプロトガシャットがあるとはな。黒いスポーツゲーマが出現しレーザーターボの周りを走っている。
-ガッチョーン!ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!爆走 独走 激走 暴走 爆走バイク!アガッチャ!シャカリキ!メチャコギ!ホット!ホット!シャカ!シャカ!コギ!コギ!シャカリキスポーツ!-
プロトスポーツバイクゲーマー レベル0といったところだろうか。スポーツゲーマを身につけているライダーを見ると嫌なアイツを思い出す。あ、いや今シャカリキスポーツを持っている現実世界の永夢のことじゃないぜ。俺を殺した”アイツ”のことだ。
とにかくこうなるとかなりヤバイ。右肩にあるトリックフライホイールを右手に持って投擲攻撃を放ってきた。手足のパーツとなっているヨロイクロガネイトで抑えようとするもかなりの攻撃力にダメージを吸収しきれず吹っ飛んでしまう。
「永夢と違ってテクニックはねえがスペックが強すぎる。本当に自分か?コイツ!」
「弱い自分はさっさと強い自分の一部になればいい。ギブアップしな。」
「ふざけるな!」
「なら消えるんだな。」
-ガッシューン!ガッシャット!キメワザ!-
レーザーターボはプロトシャカリキスポーツのガシャットを抜いてキメワザスロットホルダーに装填した。必殺技を放つ気だ。
-シャカリキ クリティカル ストライク!-
それならこっちもだ!
-ガッシューン!ガッシャット!キメワザ!ギリギリ クリティカル フィニッシュ!-
自分はガシャコンスパローから、レーザーターボはトリックフライホイールからそれぞれ攻撃を放つ。お互いのいる場所の中心部でぶつかり合うも競り合いの後、徐々に自分の方へと攻撃が近づいてくる。
「くそ!」
-タドル クリティカル ストライク!-
鳴り響く音声と共に自分に向かってくる攻撃を飛ぶ斬撃が切り離し自分に当たることなく爆散する。
「何!?何者だ!」
斬撃が飛んできた先を見るとそこにはブレイブが立っている。いやよく見ると細部の色やパーツが違う。
「逃げろ、監察医!」
「監察医…?て本物の大先生か?」
「自分の邪魔をするな!」
レーザーターボはトリックフライホイールでブレイブによく似たライダーへ攻撃を放つも手にしている長剣の一振りでその攻撃を切り裂いた。
「すげぇ…。」
「く…。」
「無駄だ。俺のレベルは50。レベル
「ったくどうなっているのか…。まぁいい、今回は引いてやるよ。」
そう言うとレーザーターボは姿を消した。自分はブレイブに似たライダーの元に駆けていく。
「助かったぜ。もしかして現実世界の大先生なのか?」
-ガッチョーン!ガッシューン!-
ゲーマドライバーに装填されていたガシャットを抜いて変身解除したブレイブによく似たライダーの正体は自分の予想通り、大先生だった。しかし白衣ではなく黒いコートを着ているので何か雰囲気が違う。
「俺はゲーム世界の鏡飛彩だ。だが俺は他の奴らとは違う。とにかくついて来い、俺のアジトに案内する。」
やっと案内してくれるNPCの登場ということだろうか。無理ゲーかと思いきやただ難易度が高めのゲームだったようだ。
-ガッチョーン!ガッシューン!-
自分も変身を解除して大先生の近くに寄る。この距離でいいだろうと呟くと大先生は自身のキメワザスロットホルダーのホルダースイッチを押した。
-ステージセレクト!-
廃工場が選択されその場所へと移動する2人。
「ここはどこだ?」
「超スーパーヒーロー大戦のゲームエリアだ。ここにいればアイツらはお前を追ってこないだろう。お前が砂漠にいたのは不幸中の幸いだったな。あの砂漠は爆捜トレジャーと超スーパーヒーロー大戦の世界の境界に当たる場所。お前がいつまでも街から動かなければ俺はお前を助けることは出来なかった。」
「あ、えーっと…。どういうこと?」
ゲーム世界の大先生…なんかこれ自分以外の人には伝わりにくいな。ここだけでは飛彩と呼ばせてもらおう。
この飛彩は超スーパーヒーロー大戦というゲームのキャラとして存在しているらしい。変身するライダー名は仮面ライダートゥルーブレイブ。かつて現実世界の飛彩と戦って敗北してから止まっていた自分の時が動き出し、日々ドクターとして人を救う毎日に励んでいるそうだ。
飛彩は爆捜トレジャーの世界に異物…まぁ自分だな。それが入り込んできたことを探知し、超スーパーヒーロー大戦との境目である砂漠で自分が来るのを待っていたらしい。
そんな中、ゲーム世界の自分である黒貴利矢と自分が戦っているところを目撃。助けてくれたってわけだ。
「どうして自分を助けてくれたんだ?」
「助けられる命を諦めることはもうしたくないからな。あくまでそうプログラムされているだけかもしれんが。」
「そんなことはねえ。助かったぜ。」
「それよりも爆捜トレジャーをクリアすることを考えろ。爆捜トレジャーの純粋なゲームエリアには超スーパーヒーロー大戦のNPCである俺は入ることは出来ない。」
「とにかくもう一人の自分は強い。自分も強くなる必要があるな。」
「ならばこれを持っていけ。」
そういうと飛彩は先ほどまで使っていたタドルレガシーのガシャットを渡してきた。このガシャットのレベルは50。半端じゃねえレベルだ。
「いいのか?」
「あぁ。」
「現実世界と違って優しいじゃねえか。」
自分は思わず飛彩の肩を叩こうとするも避けられた。やっぱ現実世界はそこまで変わらねえな…。
「それとアンタ、爆捜トレジャーのクリア条件って知らない?未だにどうすればクリアになるのかわかってなくてさ。」
「俺が知るわけないだろう。だがもう一人のお前には気を付けろ。お前を倒すことでコンティニュー用の命を自らの物にしようとする気に違いない。」
なるほど、もう1人の自分がよく言う「お前を倒して私は完全な姿になるのだ」というやつか。いや冗談はさておき完全体のバグスターを参考にすれば納得できる。
人間に感染したバグスターはその人間が消滅することで完全体になることが出来る。この世界でももう一人の自分は自分を消すことで完全な存在になろうとしているんだろう。
「気を付けろよ、監察医。」
「あぁ。ありがとよ。」
「それと。」
「ん?」
「もう一人の俺と再会することがあれば伝えてくれ。俺は前を向いて歩き出した。お前も過去に囚われるだけでなく、未来を見ろ…とな。」
「フッ…了解。」
いいこと言うじゃねえか。確か飛彩は恋人との決別で闇医者先生…いや大我と何かゴタゴタがあったみたいだしな。貰ったタドルレガシーをキメワザスロットホルダーにいれて、そのホルダースイッチを押した。
-ステージセレクト!-
さて、戻るか。爆捜トレジャーの世界によ。