仮面ライダーエグゼイド レジェンダリー・エンディング 作:エクシ
第1話「Alternativeな助っ人!」
「ソルティワクチンだっつっただろうが!」
「ハァ!?アランブラって言ってたし!」
「俺が言い間違えるわけねえだろ。さっさとソルティワクチン持ってきやがれ!」
「ふっざけんな!もういい!私出てく!」
またこんな調子で
…ないが何だかモヤモヤする。くそ!不本意だが連れ戻そうと白衣を脱いで診察室を出ようとした時、ゲームスコープから通信音が鳴り響いた。
「なんだ、今忙し…」
「あぁ良かった!大我さん出てくれた!」
「エグゼイドか、悪いが今…」
「お願いがあるんです!大至急CRに来てもらえませんか?」
「…チッ。」
患者の治療には代えられないか。一度脱いだ白衣を手にし俺は聖都大学付属病院へと向かうことにした。
だが着いて話を聞いてみれば患者が多く人手が足りなくて俺を呼んだわけではないという。それもそうだ、この間のマキナビジョンのパンデミック以降、バグスターウイルスは沈静化しているのだから。
「なら何の用だ、俺は忙しいんだ。」
「すみません、でも大我さんにしかお願いできなくて…。」
エレベーターを下り、CRに入るロックコードを入力すると扉が開いた。エグゼイドは「どうぞ」といって俺を席に座らせる。
「実は突然アメリカでバグスターウイルスが活発化しているんです。」
「なんだと?アメリカ!?どのタイプだ。」
「ハリケーンサバイバルのディザストです。」
「ハリケーンサバイバルって確か…。」
「その通り、あの霧島だ。」
ドレミファビートの機器の中からゲンムの声がした。コイツにしては珍しく落ち着いて檻の中に入っていやがる。
「だが今はハリケーンサバイバルではなくディザスターサバイバル…とかいうゲームになっているらしい。私の許可なくどいつもこい…」
エグゼイドが機器を操作するとゲンムの声は聞こえなくなった。耳障りだったから丁度いい。
「ディザスターサバイバルは霧島が作り出したゲームらしいです。ゲムデウスウイルスが入って強化されています。」
「ずいぶん詳しいな。」
「南雲さんが事情聴取でCRに伝えてほしいって、泊さんから。」
「だがその風魔がディザストを倒したって話だったじゃねえか。なんでそのディザスターサバイバルがアメリカなんかに渡ってんだ。」
「それはたぶんドクター・フェイスっていう闇医者が奴が持っていったんじゃないかって。」
「闇医者か。無免許医の俺には最適な敵じゃねえか。」
俺は冗談のつもりで言ったんだが、エグゼイドの奴は苦笑いしかしない。冗談が通じねえ奴だ。
「まぁいい。俺にソイツを追ってほしいってわけか?」
「はい。」
「なんで俺だ?お前も含めCRのメンバーはいるだろ。」
エグゼイドは胸ポケットからマイティアクションXガシャットを取り出しプレイングスターターを押すが起動音が鳴らない。
「昨日パラドとオペをしていたら突然知らない仮面ライダーに変身能力を奪われてしまって…それからパラドも姿が見えないんです。」
「ビルド…とかいう奴か。前にゲンムも襲われたって言ってたな。」
ゲンムの奴は音声が切られていることに気が付いたのか今度はジェスチャーで大きな丸を作ってこちらに手を振ってくる。見ているだけでも煩い奴だ。
「飛彩さんはこれから外科の方でオペが3つ控えていて、貴利矢さんは再生医療センターを作るための学会に行っててここには数日戻れないそうです。」
学会か、大学病院は随分とお忙しそうなことで。まぁ消滅した人間を復活させるための機関を作るためとあらば仕方がないか。
「黎斗さんは当然衛生省から許可は下りず…。」
「だろうな。衛生省は所詮日本の行政機関。海外のことのために危険な犯罪者を放つわけにはいかない。」
恐らくゲンムの奴はジェスチャーで俺にキレてやがるんだろうがもう画面は見ねえぞ。見るだけで煩いからな。
「だからポッピーが1人でアメリカに行ってるんです。僕も行くって言ったんですけど変身できないから危ないし、小児科の仕事もあるでしょって…。」
「…わかった。それでCRとしてじゃなくお前として俺にアメリカ行きを頼みたいってわけだ。」
「はい…お願いできませんか?花家医院は何かあればニコちゃんがいますし…。」
「アイツは今いねえぞ。」
「え?」
このくだりを説明するのは面倒だな…。俺は机の上に置いてあったペンと紙を手に取った。今の俺の気持ちを書いてエグゼイドに渡してもらうか。
…いやそんなことは俺らしくないか。
「…どこに行けばいい?」
「ラスベガスから少し離れた小さな町です。ここですね。」
CRのパソコンを操作しモニターに場所が映し出された。黙って行けばアイツは怒るだろうが、待っている患者がいる以上俺は行かなければならない。だったら…。
「わかった、今から向かう。だがエグゼイド、1つ頼みたいことがある。」
10時間ほどかけてようやくラスベガスに着いた。ポッピーピポパポは先に行っていると言っていたがよくよく考えればアイツはバグスターだ。飛行機の移動などお構いなく電子空間を通ってあっという間にこちらに来ていたのだろう。ならばポッピーピポパポが既に問題を片付けてるってこともあるか?
確かドクター・フェイスは幻夢VRをブレイブがプレイした時に登場した財団Xの闇医者だった。しかしブレイブやレーザーの記憶を含めたセーブデータを全て風魔が奪ってしまったことで俺たちはその存在を知ることはなかった。
だからドクター・フェイスについても俺は資料の中でしか読んだことがない。かつてはカリスマ美容整形外科医としてアメリカ、ヨーロッパを中心に世界で活躍していた。しかしある事故がキッカケで手が上手く動かなくなりメスが握れなくなってしまったという。だがそれでもドクター・フェイスは手術をし続け、やがて失敗してしまった。当然医師免許ははく奪。その際にドクター・フェイスはこう言ったという。
「手術が好きなんだ。人の顔が変えるのが楽しくてやめられない。」
…ゲームに溺れた姿を演じていた時の俺のようだ。周りの目から見たら俺もコイツも同じように見られていたのだろう。
「皮肉なもんだな。」
ラスベガスの街をチャーターしたヘリコプターに乗って見下ろしながら呟いた。
ヘリコプターが到着し外に出ると俺は息をのんだ。町のあちこちに破壊の跡がある。しかもこれは兵器や動物の付けたものではない。災害…恐らくハリケーンだ。
だがこの辺りでこの時期にハリケーンが出ることは滅多にないとヘリの操縦士は言っていた。荒廃したこの町を歩いていれば原因はすぐわかると言ってすぐにヘリは去っていく。
町をしばらく歩いていると獣のような唸り声があちこちから聞こえてくるのがわかる。バグスターだ。それもゲンムの報告にあったハリケーンサバイバルのバグスター ディザスト。霧島の正体であるソイツがなぜこんなにもいやがるんだ?
「エイ!エイ!」
窓ガラスが割れたスーパーマーケットの向こう側からは戦闘音と女の声が聞こえる。この町からはほとんどの人々が別の町へ避難している。残ってしまった一部の人もほとんどがシェルターで籠城していることから地上には一般人はいないはず。ということはこの声は…。
「ハァア!もう!倒しても倒してもキリがないよう!」
「ポッピーピポパポ!どいてろ!」
「大我!」
やはりポッピーピポパポか。仮面ライダーポッピー ときめきクライシスゲーマー レベルXに変身してディザストたちと戦っていたようだな。だがもう体力の限界のようでフラフラになっている。俺が後は代わってやる。
-バンバンシューティング!-
「まずは小手調べだ。第弐戦術、変身!」
-ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!ババンバン!ババンバン!バンバンシューティング!-
ゲーマドライバーにバンバンシューティングガシャットを装填しアクチュエーションレバーを展開、仮面ライダースナイプ シューティングゲーマー レベル2に変身完りょ…
「駄目!レベル1でやるの!」
-ガッチョーン!-
何!?ポッピーが俺のゲーマドライバーのレバーを勝手に閉じることで装甲が再び俺の身に装着。レベル2からレベル1へとレベルダウンしてしまう。
「何しやがる!」
「いいから!ほら来たよ!レベル1じゃディザストは強すぎるから気を付けて!」
「チッ!ミッション開始!」
だったらレベルを下げるようなことをするんじゃねえ!またアクチュエーションレバーを開けようとするもすぐに俺に気が付いたディザストたちが襲い掛かってきた。タイミングがある時にレベルを上げるしかねえか…!
-ガシャコンマグナム!-
武器を手にし飛びかかってきた数体のディザストたちに銃弾を撃ち込む。たった一発ずつ当たっただけにも関わらずバグスターウイルスが患者の体から消え去っていく。
「患者に寄生するタイプだったのか、久しぶりに見たな。」
「そうなの!敵の体力を減らせても患者からバグスターウイルスを切り離すのはレベル1ガシャットを持ってない私には出来なくて!」
「だから一発撃ちこんだだけですぐ倒せたってわけか。よくここまでダメージを与えることが出来たな。」
ポッピーピポパポは戦闘向けのバグスターではないと思っていたからな、正直ここまでやるとは思っていなかった。1体ずつ攻撃を加えることでバグスターウイルスが消滅していき患者がバタバタと倒れていく。
-ガッシューン!-
変身を解除したポッピーピポパポがその患者たちを抱えて壁に寄りかからせている。やはり看護師がいるとオペはスムーズに進むな。一方俺のところの看護師といえば…まぁいいか。
-ガッシューン!ガシャット!キメワザ!バンバン クリティカル フィニッシュ!-
ガシャコンマグナムにゲーマドライバーから抜いたバンバンシューティングガシャットをガシャットスロットに装填!バンバンクリティカルフィニッシュで一気にその場にいた全てのディザストを片付けた。
-ゲームクリア-
「ミッションコンプリート…!」
「さっすが大我!お疲れさま!永夢から話は聞いてるよ、わざわざ来てくれてありがとう!あれニコちゃんは?」
-ガッシューン!-
もうその話は勘弁してくれ、話すのが面倒だ。そう思いながらガシャコンマグナムからガシャットを抜いて変身を解除する俺。
「いねえよ。それより状況を説明しろ。」
「う…うん!あのね、この町では…」
ポッピーピポパポが話し始めようとした時、その背後から残っていた1体のディザストがポッピーピポパポに襲い掛かろうと飛びかかってきたところだった。とっさに突き飛ばし俺はディザストの前に飛び出る。
「大我!危ない!!」
やばい、変身を解除しちまってる!ゲーマドライバーを装着するのすら間に合わない!やられると思った瞬間、突如横から飛ばされて来た斬撃がディザストを攻撃し助かった。いったい誰が?
斬撃が飛んできた方向を見るとそこには単眼のホラーテイストな仮面ライダーが立っていた。マキナビジョンのパンデミックの際に大量に出現した忍者プレイヤーに酷似しているもののその禍々しさは風魔たちのそれとは質が異なる。
ドライブからエグゼイドが受け取った資料にあった仮面ライダーフェイスというのはコイツのことのようだな。
「おーい、参戦しないなら下がってな。」
-ガッシューン!ガシャット!キメワザ!タドル クリティカル フィニッシュ!-
タドルだと?ブレイブが使うゲームと同じカテゴリーのゲームということか?タドルホラーガシャットとやらを大鎌モードのガシャコンサイズのガシャットスロットに装填しタドルクリティカルフィニッシュが炸裂。ディザストはまともにその攻撃をうけ倒れ、わずかに痙攣しているのが見える。
「まだ駄目か?」
フェイスはガシャコンサイズを振り回しながらディザストへ近づいていく。まだやる気か?
「もうよせ、お前のガシャットはレベル1への変身は出来ないだろう?患者を痛めつけるだけだ。」
「うーん、まぁ分離は出来ないからな。」
「ならこれを使え。」
そういい俺はバンバンシューティングガシャットをフェイスに投げた。
「お、あざーっす。」
-バンバンシューティング!ガシャット!キメワザ!バンバン クリティカル ストライク!-
キメワザスロットホルダーにバンバンシューティングガシャットを装填したことでバンバンクリティカルストライクが発動。ジャンプからのキックでディザストから患者が分離した。爆発と共に飛び散るバグスターウイルスがフェイスが手に持つガシャコンバグヴァイザーⅡに吸われていくのが見える。ガシャコンバグヴァイザーⅡ…?どこでそれを…?
「あれ!私のバグヴァイザーがない!」
ポッピーピポパポを突き飛ばしたときに落としたのか。それを拾ったようだな。
「いやぁよーやくバグヴァイザーが手に入った。バグスターウイルスを吸収するにはコイツが最適だ。」
「てめえ、いったい何を考えてやがる?」
「さぁな、何かを見つけるのが今回のお前の仕事だろ、先生?」
「ちげえな。」
「?」
「俺はドクターとして患者を治すことしかずっと考えてねえ。俺の仕事は患者の病を治すことだ!」
俺の言葉を鼻で笑うフェイス。やはりコイツはこの事件に何か絡んでいるに違いない。