魔法のお城で幸せを   作:劇団員A

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アイクとエリス視点です
花言葉は「門出」「別離」「ほのかな喜び」「優しい思い出」


スイートピー

夏休みという生徒にとっても一番の安息の時間は過ぎ去り、学校が始まった。今日はホグワーツ初日である。俺たち四人はいつものように同じコンパートメントを使っている。窓際に俺とセドリック、それぞれの隣にステフとエリスという並びで座っている。

 

「この二つの脚本結構いいよね」

「そうね書いたのは誰?」

「確かシェルビーとリアムだと思いますよ」

「二人ってどこの寮だっけ?ハッフルパフじゃないよね?」

「えっと……あまり覚えてないです。劇団にいると誰がどこの寮かわからなくなりますね」

「シェルビーはレイブンクロー、リアムはグリフィンドールよ」

「あれ、シェルビーってレイブンクローなんだ。スリザリンかと思ってたよ」

「そういえばフレデリカとウィーズリーの双子って親戚らしいですよ」

「あの悪戯トリオって血筋なのかしらね?」

「でもウィーズリー家の上のお兄さんは成績いいって聞いたよ」

「たしかにフレッドとジョージの一つ上のお兄さんは主席と聞きましたよ」

 

夏休みの間に書いてきてもらった脚本に目を通しながら、どれがいいか議論したり、どうでもいいような話に花を咲かせる。……俺を除いて。ぐったりしながら呻く。

 

「夏休みの課題なんてなくなればいいのに……」

「そんなこと言っちゃダメですよ。きっと私たちを思って先生方は復習や予習のために出しているんですから」

 

そういいながら自作のタルトを頬張るステフ。そんなこというステフの横で俺はぐったりしていた。

 

「だから言ったじゃないか、先に魔法史だけは終わらせなって」

「また徹夜したの?学習しなさいよ」

「うう……姑が二人いるよ」

「父親の次は姑ですって、セド」

「あははは……」

 

寝不足でぼーっと流れる風景を眺めていると、ローブがそっとかけられた。木や大地を思わせるような優しい匂いが鼻をくすぐる。セドリックのローブか。

 

「しばらく寝てなよ。ひどい顔してるよ、アイク」

「ん。そうする」

「セドはアイクに甘いよね」

「まぁ仲良いことはいいことですよね」

「寝起き悪いっていうか、なかなか起きないから大変なんだよね」

「へぇ、そうなの。毎朝起こすの大変なんじゃない?」

「目覚ましの魔法道具使ってるんだ」

 

親友たちの優しい声を聞きながら俺は意識を手放した。

 

 

* * * * *

 

 

アイクが目を閉じてしばらくすると、静かに寝息をたてながら眠りに落ちた。随分と綺麗な寝方ね、寝息がないと死んでるようだわ。

 

「アイクも男の子らしくなりましたね」

「ははは、ステフもそう言うんだね、この前エリスと話してたよ」

「背は私とそれほど変わりませんが、顔つきや体格が少し男の子らしくなりましたよ」

「キースはそれでも変わんないけどね」

「あの人、去年一年生と一緒に授業受けてましたからね。しかも誰も先生が指摘するまで気づきませんでしたし」

「あれか。ケビンが怒ってたね。減点もされたし」

「キースの変化のなさは一種の病気を疑うわね。あのフローラですら成長してるのに」

「だるだるに制服着てるから分かりづらいですけどフローラはスタイルいいですよね」

 

他愛もない話をしてるとコンパートメントのドアがノックされる。どうぞと応えると、現れたのはハーマイオニーだった。

 

「あらハーマイオニー。こんにちは」

「こんにちは。ハーマイオニー」

「こんにちは。久しぶりね」

「こんにちは。ねぇロンとハリーを知らないかしら?」

 

ステフとセドリックはおおかたハーマイオニーはアイクに用があると思っていたのか少し驚いたような顔をする。私はもちろん知っているのだけども。ちなみに三人は調べ物をしに尋ねて以来、ちょこちょこ話をしたりお茶飲みに来たりする。といっても原則部員以外出入り禁止な部室ではなくて隣の部屋でステフがよく相手しているのだが。ステフは劇団以外の他寮の下級生と話すことが楽しいらしくよく嬉しそうにしていた。

 

「二人とも見かけてないよ」

「ハーマイオニーと一緒のコンパートメントにいると思ってましたよ」

「私も知らないわね。同じ寮の友達のところに行ってみたらどうかしら?」

「そうね、エリス。みんなありがとう、また後でね」

 

ひらひらと手を振って足早に出て行った。その背中に三人で手を振って見送る。ドアが完全に閉められてから二人は不思議そうな顔をする。てっきり仲良し三人組は一塊りになっていると思っていたのだろう。

 

「どうしたんだろうね」

「喧嘩でもしたんですかね?それでしたら相談に乗りますけど」

 

二人の態度に知っているのに伝えなかった私は少し罪悪感を抱きながら話題を変える。

 

「ねぇ、セド、今年はクィディッチと劇団どっちに参加するの?」

「え?あ、うーん。今年は劇団にしようかなって思ってるよ。ハッフルパフとハリーの練習には付き合うけどね」

「ハリーにって、グリフィンドールに塩を送っていいんですか?」

「僕一人っ子だからなんか弟ができたみたいで嬉しくて」

「へぇ、知らぬ間にすごく仲良くなってるのね」

 

それにしても順調に進んでいるということは今年も本当に事件が起きてしまうのか。今年は去年よりも危険だが、分霊箱破壊用にグリフィンドールの剣にはバジリスクの毒を吸わせなくてはいけないし、事前に止めても今後に支障が出てしまう。全く、面倒なものだわ……。二人にはバレないようにそっとため息をついた。

 

 

* * * * *

 

 

目が覚めてからちゃんと周りが認識できるようになってから、あたりを見るとどうやら大広間だった。うわ、なんかすごい時間が飛んだ気がする。あくびをしながら体を大きく伸ばす。

 

「おはよぉ、アイク」

「おはよう、フローラ。組み分け中?」

「うん、そうだよぉ。相変わらずすっと起きれないんだねぇ、セドリックに運ばれながら爆睡してたよぉ」

「うわ、マジか。劇団の人には見られてないといいな」

「なんでぇ?」

「いや団長の威厳がなくなる」

「元からないよぉそんなのぉ」

 

ゆるっとした声がぐさりと突き刺さる。しょんぼりしているとナタリアが新聞紙を片手にやってきた。

 

「ようやく起きたのね、お寝坊さん」

「やぁナタリア久しぶり」

「わたし面白い記事見つけたわ、見て」

 

そういってから机に新聞紙を広げる。周りの生徒は気になったようで俺同様覗き込んだ。なになに『白昼堂々、空飛ぶ車!!マグルの目撃者多数!?』と見出しは書いてあった。ほうほう、一体誰がそんなことを。

 

「あぁ、ハリーとロンがこんなことするとは考えてませんでしたわ」

「あ、ステフ。っていうかハリーとロンなの?てっきりどっかのバカな魔法使いだと思ったんだけど」

「なんでもハーマイオニー曰く二人はホグワーツ特急に乗れなかったみたいですよ」

「それまたなんで」

「さあ?」

 

そうやって話していると、どうやらもう組み分けが終わったらしく豪華な食事が出てくる。いつもよりも少し遅れてダンブルドア校長が現れていつもより短く挨拶を済ませて、宴は始まった。

ステーキやらポテトサラダやら好きなものをよそってひたすら食べる。うむうむ、やはり美味しい。我が寮の創設者は偉大である。

 

会話と料理を楽しみながら宴は終わり、新入生は監督生に連れられて寮に行くことになった。新入生たちよりも俺たちは先回りして準備をしに行く。チョークの粉を入れた袋を運んだり、担当の楽器をそれぞれ持つ。こそこそと談話室近くの部屋に待機する。監督生が説明する声と一年生の賑やかで期待に満ちた、ワクワクしている声が聞こえてくる。俺たちもあんな感じだったのだろうなぁ。

 

「……さて、説明が長くなったけど、俺たちハッフルパフは君たちを歓迎するよ!我が寮は誰も拒まない!!さぁ歓迎会だ!!」

 

その声と同時にドアを勢いよく開けてチョークの粉が噴水のごとく袋から飛び出して行く。チョークの粉は談話室で人の姿や動物や魔法生物の姿を取り、演奏される音楽に合わせて踊るようにして動いていく。そんな様子に目を丸くして、感動している一年生。俺たちの歓迎会は魅せる側、見る側、双方楽しく過ぎていった。

 

 

* * * * *

 

そうして学校が数日経ってからある日、俺とエリスはいつも通りひっそりと二人で必要の部屋にいた。

 

「それでエリス、今年はどんなことが起きるの?」

「今年は危険な年よ、去年とは変わってね。なんで死者が出なかったのか不思議なくらいだもの」

「……そんなやばいのか……」

 

命の危機があると暗に告げられて背筋に冷たいものが走る。確かに学校生活を送っていて怪我するリスクなどはあるが流石に命の危機があったのは初めてな気がする。

 

「それで具体的には何が起きるんだ?」

「それを話す前に一つの魔法を覚えて欲しいの」

「またかぁ……」

 

動物もどき、守護霊の呪文に続いてまた新しい呪文。まったく大変なものだ。

 

「魔法の名前は閉心術。これが会得できたらより詳しい話はするわ」

 

 

 

 

 

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