魔法のお城で幸せを 作:劇団員A
花言葉は「うれしい便り」「壮大な計画」「深い関係」
クリスマス休暇が終わると再び学校に生徒たちが戻り、各々が家族と過ごしていたせいかクリスマス前よりは活気が戻ってきた。時間は過ぎても誰が継承者かはわからず捜査は続いていた。
「継承者って誰なのかしら?」
「やっぱりハリー・ポッターじゃないの」
「ハリーはありえないよ」
「じゃあドラコ・マルフォイが嘘ついているとか?」
「ドラコ・マルフォイってエリスにベタ惚れなんでしょ、あの子の性格からむしろ自慢すると思うわ」
そうスリザリンの女子生徒がいってため息をつく。継承者についての手がかりはあれ以降増えずに、そもそも五十年前に誰が開けたのかもよくわからないままだった。
「ねぇ、エリス。ドラコ・マルフォイに好かれてるらしいけど、貴女の方は彼をどうも思ってるの?」
「私?」
「あぁ、それ私も知りたぁい」
「ええ?」
「ねぇ、ナタリア顔色悪いわよ?大丈夫?」
「あぁ、ちょっとぉ話し逸らさないでよぉ」
「でもナタリアさん本当に具合悪そうですよ?本当に平気?」
「少し横になってくるわ……」
フラフラとソファに横になったナタリア。彼女とは対照的に、にこにことシアンとフローラがぐいぐいとエリスに迫る。エリスは困ったような顔をする。ナタリアは最近体調を崩しているのか、ここのところずっと具合が悪い。彼女以外にもみんな疲れてきたのか別の方向に話が進んでる。そんな様子に苦笑していると、他のグループではちゃんと継承者についての話をしていた。
「ブース?」
「……違う。別に彼は純血主義者じゃない」
「ベルは?」
「その人確かアイクさんに惚れてましたよ」
「マジかよ?!」
「愛しさ余って憎さになったとか」
「ないない」
「マロンとかー?」
「彼、大の爬虫類嫌いよ」
最近最早虱潰しに適当に名前を挙げては否定するといったような流れになってきていた。完全に八方塞がりである。そもそもパーセルマウスである可能性が高いのに、ハリー以外では学校で誰がパーセルマウスか聞いたことがなかった。
「……そもそも学校には継承者がいないのかも」
「何だその意見?」
「新しい見解だな」
「ホグワーツ外部から誰かがバジリスクを操っているってことかい?」
僕がフレデリカにそう質問すると横からキースが否定してくる。
「えー、無理あるよーそれー。だってここの防御魔法ってもうなくなった古い魔法もあって外部からそう簡単に手は出せないんだよー」
「……知ってる」
「「ならどういうことだよフー」」
双子がフレデリカに疑問を呈するとこくりと頷いてからフレデリカは答えた。
「……外部から内部の人間を通じて無自覚のまま操っているとか」
「えっと、つまり?」
「……例えばふくろう便などを通じて簡単な指示だけ出しているとか、あらかじめ時間指定で決まった動作をするようにしてるとか」
「……なるほど」
確かにフレデリカが今言ったような可能性を考えていなかった。でもその可能性を考慮すると容疑者は広がっていってしまう。僕の口からは自然とため息が漏れていた。
* * * * *
劇団も僕たちもあれから何も進展がないまま、事件も起きず、生徒の中にはもしや事件は終わったのではという雰囲気がホグワーツを満たしていた。そんな中、ロックハートが2月14日、バレンタインデーにまた騒動を起こした。
クィディッチの朝練で少し寝不足のまま大広間に入ると、僕は部屋を間違えたかと思った。壁という壁がけばけばしい目を惹く大きいピンクの花で覆われて、天井からは趣味の悪い淡いブルーのハート形の紙吹雪が舞い降りてきていた。
グリフィンドールのテーブルについてあたりを見渡すと多くの生徒が顔色を悪くしたら不愉快そうな顔をしていた。そんな様子の生徒たちとは対照的に少なくない女子生徒が目を輝かせていた。(ハーマイオニーもその一人である)
「これ何事?」
吐き気を催しているような顔をしたロンに尋ねてもふるふると首を横に振るだけでどうやら彼も知らないようだった。薄々感づいていると、大広間のドアからファンファーレが響いて一人の教師が入ってきた。彼の姿を視認して自分の予感が間違っていないことを確信した。ロックハートである。
「バレンタインおめでとう!!!」
腹立たしいほど整った顔に笑みを浮かべ、輝く歯を見せたロックハートはそう叫んだ。
「今までに既に46人のみなさんから私にカードをくださいました!!ありがとう!!そうです、みんな驚かせようとした私からのちょっとしたサプライズですよ!!」
「ちょっとしたがこれかよ」
ロンがポツリと隣で呟いた。そんなことにももちろん気がつかずにロックハートは演説を続けていた。無愛想な顔をした天使のような格好をした小人たちも入ってくる。
「一体何事ですかこれは?」
そう大広間にいる全員の気持ちを代弁したかのようにマクゴナガル先生が驚いた声をあげながら入ってきた。
「おはよう、ミネルバ。いや、なんだい、今このホグワーツに必要なのは盛り上がりだと私は考えましたね。なにせ一連の事件の犯人は私を恐れたのか身を潜めましたので!!」
「事件はまだ終わっていません!!それにホグワーツを盛り上げる役には貴方よりも適任がいます!!」
そう噛みつくようにマクゴナガル先生は言った。それにしてもホグワーツの盛り上げ役?疑問に思っていると紙吹雪を吹き飛ばすように色々な花が吹雪のように舞ってきた。花びらはテーブルに落ちる前に空気に溶けるように霧散して空に文字を描く。
【劇団エリュシオン 見参!!!】
やっぱりと思い、大広間の出入り口に視線を向けると花吹雪の合間にいたのは白いローブと白い帽子を見に纏った集団がいた。その中心にいた一人の女子生徒が一歩前に出て、喉に杖をつけて喋り始めた。
『おはようございまぁす、みなさぁん』
ゆったりとした間延びした口調。ハッフルパフのフローラである。
『今年は団長や副団長の身に不幸な出来事が起きてしまいしたぁ。そのせいでろくに公演もできずにいましたぁ……。ですがぁ、私たちはここに活動の再開を宣言しますぅ!!』
柔らかくも力強い声が大広間に響いて、その台詞の意味を理解した生徒たちがざわざわと騒ぎ始めた。僕も少しワクワクしていた。あの素晴らしい劇が今年も観れるとは嬉しいことだ。ざわつき始めた制するように空にあった文字が動いて別の文字となる。
【静粛に】
その文字を見てに少しづつ静かになっていく大広間。その様子を確認してからもう一人生徒が前に出てくる。
『私たちの活動は再開しますが、初めは劇をやるのではなく別のものをやろうと計画しています。それは……』
【寮対抗FOC最強決定戦!!!】
空の文字が動いて輝き始めた。その文字を確認すると先ほどよりも大広間は活気付いて賑やかになる。FOC?聞いたことがある気がするが何かは思い出せない。
「ロン、FOCってなんだい?」
「えっとなんか最近できたら遊びらしくてね……」
それから簡単にロンは僕とハーマイオニーに説明してくれた。なんでもチョークを使った対決らしく、これも劇団が発祥らしい。
『四月までに各寮の代表者を五人まで絞り、その後代表者同士で対決してもらいます!大会の主催は私たち劇団が務めます!!また寮代表者を決める予選に出場したい人たちはハッフルパフのセドリック・ディゴリーかフローラ・ボスロイドのどちらかに相談してください』
わぁぁっと割れんばかりの拍手が大広間を埋め尽くす中、彼らは満足そうに笑って去っていった。