魔法のお城で幸せを 作:劇団員A
花言葉は「想像力」「いつも幸せ」「貪欲」「あなたは私の安らぎ」
『決まったーー!!スリザリン代表者決定トーナメント、最後の試合、敗者復活戦の勝者はグスタフ・グラント選手です!!さぁ皆様大きな拍手を!!』
ケビンの実況と共に、拍手が会場中に響き渡った。僕もみんなと同様に手を叩く。
『さぁ、五月下旬、これにて各寮の代表者がようやく決まりました!!』
『……いよいよ来月から最強の寮を決定する戦いが幕を上げる』
『えー、みなさん頑張ってください!!!!』
『……ファイト』
『ふぅーようやく実況終わったわー』
『……ケビン、オフにしてないよ』
『あ、やべ』
わぁぁっと割れんばかりの歓声の中、代表者となった生徒たちが前に出てそれぞれお辞儀をして舞台の幕は降りていった。これでようやく予選が終わったのだ。クィディッチの試合や天候の関係もあって試合期間も伸びてしまってなかなか全ての予選トーナメントが終わらなかったのだ。各寮によって立候補者数が異なりグリフィンドールはなんと三日もかかった。流石である。
「お疲れ様、二人とも」
「いやぁ、めっちゃ緊張してたわ」
「そう?堂に入ってたよ、ケビン」
「お、そうか。ありがとなセドリック」
そういってお互いにハグをする。その隣に目を向けると死んだ目をしたフレデリカがいた。
「……顎が痛い」
「あはは、お疲れフレデリカ」
「……疲れた」
「お前言うほど喋ってないだろ」
「……バカと違って考えて喋ってるから。その分頭も使ってる」
「ほう、それは俺がバカだと?」
なんというか仲が良さそうで何よりである。去っていく二人を見送り、片付けの指示を始めていると、スリザリンの女子生徒シアンが近づいてきた。
「代表決定おめでとう、シアン」
「ありがとう、セドリック。あなたも代表者でしょ、お互い頑張りましょうね」
「そうだね、手加減はしないよ」
「あら女性に優しくしなさいと教わらなかった?」
「ゲームや試合は別だよ」
僕がそういうとシアンがクスクスと笑った。それから笑みを消して真剣な表情に変わった。
「それでエリスについてなのですが」
僕は静かに首を横に振る。シアンはぐっと唇を噛み締めて悲しいような悔しいような顔をした。
「一体どこへ消えたのでしょうか、エリスは」
「それは……」
「私もちろん色んな所を探しましたよ、それでも手がかりも見つからずもしかしたら、もう既に……」
「シアン……」
今にも泣き出しそうなシアンの肩をそっと掴んで安心させるようにできるだけ優しい声を出す。
「大丈夫だよ、シアン。エリスはきっと無事だよ。彼女は純血だし、スリザリンの生徒だ。継承者に襲われて亡くなったわけじゃないって」
「セドリック……」
「エリスの悪戯じゃないかな、きっとひょっこり戻ってくるよ」
「そう、ですよね……すみません、親友全員が消えてしまったあなたが一番辛いというのに」
「いや大丈夫、辛いのはお互い様だよ」
そう笑いかけるとシアンは目尻の涙を拭いて、笑顔を作って去っていった。
事の始まりは二ヶ月前、スリザリンは全員が完全に個室らしくいつまで経っても起きてこないエリスをシアンが起こしに行ったところベッドはもぬけの殻だった。最初はまた勝手にどこかへ行ったのかと考えていたのだが、その日の授業にも現れず、数日経ってからも姿は見えなかった。不安に思ったシアンは先生に相談したのだが先生方も何も知らず、石化した彼女も見つからなかったため彼女は行方不明となったいる。ただでさえ不安な校内にこれ以上悪影響をもたらす訳にもいかず彼女は家の事情として一時帰宅しているということになった。
先生たちに手伝ってもらいながら僕たちは舞台装置を片付けたので想定していたよりも早く片付いた。どうやら先生たちもこのイベントに賛成らしく、色々な協力をしてくれている。
* * * * *
片付けが終わったその足で僕は保健室へと向かう。保健室に入るとマダム・ポンフリーはまたかといったような顔をしたけれど何も言わずに通してくれた。僕は二つのベッドの間に入り、花瓶の水を変えてから、硬く冷たくなってしまった二人の手を握った。
「やぁ、アイク、ステフ。今日、ようやく全寮の代表者が決まったんだ。ここまで長かったよ」
アイクとステフの手を握りながら今日あった出来事をつらつらと述べていく。楽しいことだけでなく、愚痴や大変だったことも。エリスが部室に来なくなり、失踪してしまったから保健室に通うことはすっかり僕の日課になってしまった。誰にも言えないような弱音や不安もここでならすらすらと言えた。二人がいなくて纏めるのが大変だとか、早く元に戻ってほしいとか、エリスがどこに行ってしまったのかとか、周りには不安が漏れていないかとか……例をあげればきりがないが概ね僕の胸の中を素直に正直に話していた。
「……君たちがいない学校生活はさみしいよ……」
涙が出てきそうになるのをそっと堪えて僕は二人のベッドを後にした。
* * * * *
部室の隣の教室で、外から聞こえてくる歓声に耳を貸さずに私たちは本に目を通していた。ある程度読んで一息をつき、疲れた目を休めるように揉み一緒にいる子たちに声をかける。
「シェルビー、何かわかったかしら?」
「私はさっぱり。お手上げよ」
「マーカスは?」
「僕も特に見つかりませんでした」
「ハーマイオニーはどうだったの?」
「私もないわ」
はぁぁあっと三人深いため息を吐く。私は今FOC大会にも目もくれず、劇団所属であるレイブンクローのシェルビーとマーカスの三人で調査を続けていた。
一連のマグル出身の石化事件について犯人に対してわかっていることは石化させたのはバジリスク、犯人は蛇語使い、純血主義者であるということだけである。更に手掛かりを増やすため、これ以上被害者を出さないためにもマグル出身である私たちは必死に調べていた。
もちろん、セドリックたちがおふざけでやっている訳ではないことはわかっているし、今の暗い空気を持ち上げることが必要だということもわかっているので文句がある訳ではないんだが。
シェルビーは疲れたのかぐったりと机にうつ伏せになり、マーカスはだらけて椅子に座っていた。そんな二人を見て私は叱咤する。
「ちょっと二人ともしっかりしなさいよ」
「なんであなたはそんな元気なのよ、ハーマイオニー。私たちの倍は本読んでるわよ」
「君がレイブンクローに入らなかったことが僕には不思議でなりません」
「あなたたちね、これはマグル出身の立場や人命が関わっているのよ。休んでいる暇なんてないわ」
バンと机に本を叩きつけるように置いて二人に向かって怒鳴る。
「でもそうはいうけどハーマイオニー。これ以上どうやって調べるのよ?」
「秘密の部屋の位置はわからないし、継承者に関する書籍はほとんどない」
「バジリスクの弱点の雄鶏は全て殺されちゃったし」
そう聞かれると答えに困る。確かにがむしゃらに本を読んだり記録を漁っても意味がない。考えるのよ、ハーマイオニー。何か有利な手がかりになるものは一体何かしら?本を閉じて一人で
「五十年前の事件」
「へ?」
「は?」
「そうよ、五十年前の事件と同一犯の可能性があるわよ!!」
「あー」
「でもそれって犯人は無実の罪で誤認逮捕だったってダンブルドアに聞いた人は言ってたよ」
「うそ!?」
ようやく浮かんできたアイデアも実は他の人がすでに疑問に思い、解消しているらしくかった。テーブルにぐったりと伸びる。一体どうすればいいのかしら……。そう考えていると、シェルビーが隣でブツブツとつぶやき始める。
「……犯人はハ…リッ……でも原因は……ク……だし………いや…でも被害者は……あれ?……バジ……スク、確……そ……考え……なるほど!!!」
バンと先ほどの私同様机を思い切り叩いて立ち上がった。
「まだ調べていないことがあったわ、五十年前の事件の被害者よ!!」
「そういえば確かに」
「記述も記録もないわね」
そうと決まれば善は急げ。私たちは図書館に新聞を借りに駆け足で向かった。