魔法のお城で幸せを   作:劇団員A

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ハリー視点です
花言葉は「うぬぼれ」「自己愛」


スイセン

あの人混みの中では結局戻ることが出来ずに僕とロンは流されるように寮へと戻った。しかし諦めきれなかったロンはどうしても行くと聞かず、僕とロンは2人で透明マントをまとって大広間に行くことにしていた。焦って走ろうとすふロンを諌めながら大広間に着くと、そこには劇団の生徒数名と教師が大勢いる。

 

「本当に犯人が誰なのかわからないのですね」

「すみません、俺らも幕の中で何が起きているかさっぱりで」

「……そもそもあの場にいた当事者たちはみんな石化している」

「幕が上がる前に何か違和感はありませんでした?」

 

先生たちがあの場にいた劇団の生徒たちに質問しており、状況をきっちりと把握しようとしていた。そんな様子を尻目にこっそりと段幕の下をくぐり、中を確認にする。現場はどうやらそのままにしていたらしく、固まってしまった各寮の代表が微動だにせずにいた。

 

「ほら、やっぱりジニーがいないじゃないか?!」

「本当だ……」

 

人数を数えると確かに足りない。だけど僕は更に2つのことに気づいた。

 

「なんでこんなにステージか濡れてるんだろう」

「多分バジリスクをここに呼んだとき誰かが水の膜で選手たちを覆ったんじゃないかな?そうじゃないとみんな石じゃなくて死んでるし」

「なるほど。ねぇ、ロン。もう1つ疑問があるんだ。」

「なんだい、ハリー?」

「確か代表って各寮に5人だよね?」

「そうだよ、だからここには全員で20人いるはずだよ」

「でもよく見てみてよ」

「?」

 

2人で順番に指をさして数えていく。

 

「……17……18……あれ?」

「やっぱり、ジニー以外に1人足りないんだよ!!」

「じゃあもしかしてその人が継承者ってこと?」

 

僕たちは顔を見合わせる。一体どこの寮の生徒だと、全ての寮を確認していった。グリフィンドールは1人いないけど、それはジニーだ。レイブンクローはみんないる。可能性が高そうなスリザリンも全員いた。ならばと思い、ハッフルパフを確認すると1人足りなかった。

 

「嘘だろ、まさかハッフルパフだなんて……」

「でも誰がいないの?ハッフルパフの代表ってみんな劇団の人達だよね」

「うん、えっと……」

 

代表が誰なのかを思い出しながら1人ずつ確認していく。

 

「ナタリア……フローラ……キース……ヒューゴ……」

「まさか……」

 

継承者はもしかしてこの場にいないハッフルパフの代表、セドリックなのではないか。僕たちは自信が導き出した真実に震えていると、ばさりと音がして段幕を通って先生たちがステージに上がる。どうやら他の生徒たちはもう寮に帰らせたようだった。

 

「まさかこんなことになってしまうなんて」

「みなが楽しみにしていたイベントでこんな出来事が起きてしまうとは」

「もうホグワーツは終わりです。こんなことが起きてしまっては閉校は免れないでしょう」

「ダンブルドアは今理事会の緊急会談に出席しています。まだ諦めるには……」

 

先生たちが口々に悲しみを言い、嘆きを露わにしている。すると段幕が再度音を立てて1人の教師が中に入ってきた。僕はダンブルドアが会談を終わらせて来てくれたに違いないと考えたが、そちらを見るとロックハートが立っている。

 

「遅れてすみません。少しうとうとしていたもので」

 

そうへらへらというロックハートの顔をどう見ても憎しみとしか言えないような目つきで先生たちは睨みつける。そんなことにも気がついていないロックハートにスネイプが一歩前に出て声をかける。

 

「なんと適任者がいるではないか。まさに適任者だ。ロックハート、女子生徒が怪物に拉致された。なんでも『秘密の部屋』に連れ去ったのだとご丁寧に伝言を残している。いよいよあなたの出番ですな」

 

そう皮肉めいた口調でロックハートに声をかけた。どこに伝言がと疑問に思うと段幕の内側に大きな文字で《白骨は永遠に『秘密の部屋』に横たわるでしょう》と書いてあった。

 

「そうですね、確かあなたこの前『秘密の部屋の場所がわかった』なんて言っていましたよね」

「『秘密の部屋にいる怪物と対決出来なくて残念ですね。もし私が対峙していたなら私の素晴らしい著作がもう一冊増えていたというのに』ともおっしゃっていましたよね」

「そ、それは……」

 

しどろもどろに答えるロックハートを石のように非情な顔で見つめていた。

 

「ならばギルデロイ、あなたにお任せしましょう。今回あなたの偉業を邪魔をする者は誰もいません。お好きなように怪物を煮るなり焼くなりしてください」

 

ふんと鼻で笑うようにしてマクゴナガル先生が最後通牒を突きつけて、ロックハートは絶望したような表情に変わった。

 

 

 

* * * * *

 

 

その後僕たちは寮に戻った。フレッドやジョージ、パーシーまでもがじっと黙って座り込んでいた。ロンも憔悴しており見ていてじっと胸が痛んだ。そのままただ時間は過ぎ去っていくかに思われたが、談話室のドアがいきなり開いた。みんながざわめき、ドアから少しでも遠くに行こうと移動する。僕もそっと唾を飲み、身構えていると現れたのはハーマイオニーだった。

 

「……なんだハーマイオニーか……」

 

安心したように自然と空気が胸から漏れた。そんな僕の様子や談話室の安堵している様子も意に介さずハーマイオニーはどこか興奮した様子で僕とロンの腕をとってズカズカと進んでいく。

 

「ハーマイオニー?!急にどうしたんだい!?」

「今は君の説教くさい会話を聞くような気分じゃないんだ」

「見つけたのよ!!」

「何を?」

「『秘密の部屋』よ!!五十年前の被害者は嘆きのマートルだったの!!彼女は『秘密の部屋』から出て来たバジリスクの目で死んだのよ!!」

 

その発言に僕とロンには衝撃が走る。なら今から秘密の部屋に行けばジニーを助けられるじゃないか!!!それから僕たちはハーマイオニーに先ほど起きたことやこれからロックハートがバジリスク退治に出かけることなどを話した。そうと決まったら急げと僕たち3人は急いでロックハートの部屋へと透明マントを被って向かった。

 

 

* * * * *

 

 

ロックハートの部屋を訪れると彼の名誉や著作が他人のものであったことが判明して、彼を盾にするようにして3人で秘密の部屋に入った。ハーマイオニーもあれほどロックハートを見るたび顔を赤くしていたというのに軽蔑した目つきで今はロックハートを睨みつけていた。その後、ロンから杖を奪ったロックハートはロンに向けて魔法を使ったが壊れていた杖で使った魔法は暴発して僕とロンやハーマイオニーを分断した。

 

「ハリー!!」

「どうしましょう!?ハリーだけ向こうに!!」

 

岩の壁の向こう側で慌てている声が聞こえてくる。だけど取る道は1つだけだ。

 

「僕だけ先に行くよ」

「そんな!ハリー!?」

「……わかった」

「ロンまで!?何言ってるのよ、今すぐこんな岩の壁に穴開けて」

「ダメだよ、そんなのいくら時間があっても足りないよ。今は一分一秒がもったいないんだ。ジニーが危ないんだ、僕だけでも先に行かなきゃ」

「……わかったわ。私たちもすぐに追いかける。それまで頑張って」

「ジニーを頼むよ、ハリー」

「それじゃまた後でね」

 

震える声と足を必死に抑えて僕は岩の壁を背後にまっすぐ進んだ。

 

 

 

* * * * *

 

 

僕が部屋に入ると2人の女子生徒が横たわっていた。赤い髪と黒い髪が地面に広がっている。

 

「ジニー!?それとエリスも!?」

 

急いで2人に駆け寄り体を揺らす。ジニーからは何も反応が返ってこなかったがエリスはゆっくりと目を開けた。しばらくパチクリしてからあたりを見渡す。

 

「……ハリー?それとジニー……?」

「そうだよ!!エリス何でここにいるんだい!?いや、とりあえずバジリスクが来る前にここから逃げよう」

「それには少し遅かったかな」

「誰だ!?」

 

がばりと振り返るとそこには知らない青年が立っていた。

 

 

* * * * *

 

 

半透明な好青年、トム・リドルは過去のヴォルデモートであり、記憶を封じた日記を通じてジニーを利用して一連の事件を起こしたという。

 

「なら一体エリスはどうしてここにいるんだ!」

 

僕が大声をあげて質問するとトムは冷たい微笑みを浮かべ楽しそうに答える。

 

「彼女はジニーに入っていた僕を監視していた。不完全な透明マントを使ってね。ある日そのことに気がついて僕はエリスに接触した。そしたら驚くべきことに彼女は僕の支配に抗った!!二年生の女子生徒の体とはいえ、闇の帝王の力に!!彼女を操ろうと干渉すると必ず『何か』に阻まれる。僕にも正体が掴めない『何か』だ!!それから彼女をこの部屋に監禁してその『何か』の正体を暴こうとしていた。それでも何も知らずに学校生活は進んでたけどね」

「二年生の女子生徒の体に入って、四年生の女子生徒を監禁とはど変態ねトム・リドル」

「黙れ!!僕をその名前で呼ぶな!!僕はヴォルデモート卿だ!!」

「そうね、マグルの父と同じ名前なんて貴方には耐えられないでしょう」

「貴様どうして知っている!?」

 

激昂したトムとは対照的に疲弊しながらもどこか余裕のあるエリス。なんというかいつもとどこか様子が違う気がした。

 

「まぁいい、まずはお前からだ、ハリー・ポッター。君を殺して未来の僕の失敗はただの偶然にすぎないと証明し、再度もっとも偉大な魔法使いは僕であると宣言しよう」

「違うな」

 

トム・リドルを否定して向けられた杖に怯えながらも必死に対峙する。

 

「最も偉大な魔法使いはダンブルドアだ。君じゃない」

「黙れ!!ダンブルドアは過去の記憶にすぎないと僕に追放され、今はこの城にいない!!ただの二年生である君は僕に殺されて、この事件はおしまいだ!!君1人で何ができる!!」

 

「いいや1人じゃないよ、少なくとも僕は間に合った」

 

そう声が聞こえた方を振り向くと白いローブ、白い帽子を着た灰色の瞳の生徒、セドリック・ディゴリーがそこにはいた。

 

 

 


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