魔法のお城で幸せを   作:劇団員A

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学校初日

「アイク、もう朝よ。起きて」

 

そんな愛する妹の声が聞こえて一瞬で目が覚めた。え、なんで?ハーマイオニーがここに?入学したの?飛び級?

ベッドから跳ね起きて辺りを見回すがもちろんハーマイオニーの影も形もない。

しばらく唖然としていたがくすくすと笑うセドリックの声でようやく現実を認識した。

 

「すごいな、その目覚まし時計。えっと名前は……」

「『変声目覚まし』だよ。そんな飛び起きるなんて一体誰の声が聞こえたんだい?」

 

『変声目覚まし』セドリックが持ってきた魔法の目覚まし時計である。機能としては時間になるとジリリリリといった音ではなく、聞く人間が最も目が覚める、または最も聞きたい人物の声で起こされるというものである。それ以外にも様々な設定ができるらしいが。

 

「妹だよ、すっごく可愛い。彼女は地上に舞い降りた天使だ」

「家族思いなんだね」

 

俺が真顔でそう言うと若干引かれながら苦笑していた。シスコンとでもなんとでも呼ぶがいいさ。

正直朝弱い俺にとってはとても助かる目覚まし時計である。

 

「余裕持って目覚まし設定したから、髪整えてきなよ。すごいボサボサだよ」

「うー、めんどくさいなぁ」

 

俺はどうやら寝相が悪いらしく朝起きると大抵髪はボサボサになっているのだ。いつもは大体ハーマイオニーが「仕方ないわね」とか言いながら嬉しそうに、楽しそうに櫛を通してくれるんだがな。

 

「セドリック〜髪に櫛を通してくれないか」

「いいよ」

「ありがとう、はいこれ」

 

俺は櫛を手渡してセドリックの方に頭を向ける。セドリックが櫛を髪にゆっくり通していく。それがとても気持ちよくて寝そうである。

 

「寝そう」

「整え終わったら起きてくれれば良いよ」

「おー、ありがとうー」

 

こうして再度俺は眠りについたのだった。二度寝は至福だよね!

 

 

 

* * * * *

 

 

 

その後俺はセドリックや他の一年生になかなか起きないので担がれるようにして食堂へ連れられて行き、食べ物の匂いで意識が覚醒した。

ちょっとセドリックたちが疲れた様子だったので正直すまないと思っている。

そうして俺は美味しい朝ごはんを食べてから、家族に手紙を出すためにフクロウ小屋へと向かった。だが、

 

「うーん、ここはこう言い直したほうがいいかな?いや、でもハッフルパフになったのは俺の資質がそうだったってことだしなぁ」

 

ハーマイオニー宛の手紙でグリフィンドールでもレイブンクローでもなく、ハッフルパフになったことを伝えてガッカリされないだろうかとか考えてタラリアに手紙を渡すかどうか悩んでいた。

 

「もうさっさと送っちゃいなよ」

「いやでも、これでハーマイオニーが傷つくような返事送ってきたら耐えられない……」

 

ああだ、こうだと悩んでいると、そんな俺の様子に痺れを切らしたのか俺のペットである愛フクロウ、タラリアは俺の頭を突いて手紙を奪い去っていった。

 

「痛っ!?あ、こら、タラリア!タラリア?待って行かないで、大人しく飼い主の元に帰って来て、タラリア〜!!」

 

あぁ、行ってしまった。ご主人様から手紙を勝手に奪っていくとはなんてフクロウだ。

俺が項垂れているとセドリック以外の笑い声が聞こえた。

振り向くと俺たちと同じハッフルパフの女子生徒とスリザリンの女子生徒がいた。少なくともハッフルパフの方は一年生だと思う、見たことあるから。

ハッフルパフの方は柔らかそうな金髪がふんわりと巻かれておりタレ目でゆったりとした所作の可愛いらしい女の子と、対照的にスリザリンのほうは艶のある長い黒髪を流した目力のある強気そうな綺麗な女の子だ。

ふんわりしたほうが俺たちの方を見て話しかけてきた。

 

「ごめんなさい。馬鹿にしたわけじゃなくてあなたの様子がとても面白かったので自然と笑いがこみ上げてしまいました」

「ステフ、それ結局遠回しに馬鹿にしてると思うんだけど」

 

そう言ってくすくす笑う二人。セドリックは人見知りモードを発動して若干強張っている。仕方ない、俺が話しかけるか。

 

「やぁ、恥ずかしいとこ見られちゃったね。俺はアイク。それでそっちの背の高い方はセドリック。人見知りなんだ」

「はじめまして、アイク、セドリック。わたくしはステファニー・ペンテシレイア。貴方たちと同じくハッフルパフの一年生ですよ。ステフ、と呼んで下さい」

 

ゆっくりとした所作で自己紹介をするステフ。なんというかまるで良いとこのお嬢様である。

 

「あれ?ペンテシレイアって確か有名なブランドなかったっけ?」

「え?僕は知らないよ。マグルの服?」

「えぇ、私の母がデザイナーをしています」

 

確か滅茶滅茶大金持ちの家だった気がする。うちも両親が共に歯科医のため一般家庭よりも裕福ではあるが、そんなの歯牙にも掛けないような大富豪である。たしか始まりは金持ちの道楽とか揶揄されていたが最近流行しているんだとか。ハーマイオニーが言っていた。服に興味を持つのが早い気がする?良いことを教えてあげよう、女は生まれたときから女なのである。

それにしても確かに話し方といい、ゆっくりとした動作といい、お金持ちのご令嬢っぽい雰囲気である。

 

「そんなお嬢様はホグワーツになんで来たの?」

「お嬢様ではなく、ステフ、と呼んで下さいね」

「ええっと、ステフはなんでここに通うことにしたの?」

 

有無を言わさぬ迫力を感じた。俺が言い直すと満足そうに頷きステフは答えた。

 

「私、五人きょうだいでして、姉の様子を見てお嬢様学校に通うのは嫌でしたの。そう考えていたらここへの通学許可証が来まして通うことにしました」

 

甘い雰囲気に見合った可愛らしい声でステフはそう言った。

金持ちは金持ちで大変らしい。

 

「それに魔法ですよ。なんて甘美な響きでしょう。私魔法が使える才能があるいうのなら是非とも使って見たいです。それに」

 

そう歌うように滑らかにステフは続けた。彼女はチラリと隣を見た。

 

「わたくし、エリスと同じ学校に通いたかったですし」

「同じ寮にはならなかったけどね。あ、私は、エリス・グリーングラス。スリザリンだけどよろしくね」

 

スリザリンの少女、エリスが名乗ると驚いたような顔をセドリックはした。といっても俺にはピンと来ないということは魔法世界関連なのだろう。

 

「あら、本当にエリスの家は有名なんですね」

「信じてなかったの?それに有名っていっても悪名のほうよ」

「えっと、セドリックどういうこと?」

 

チラリとセドリックの方を見ると困惑した様子であった。

 

「えっとね、アイク。グリーングラス家っていうのは魔法使いの中でも有名な家で、間違いなく純血と言われている『聖28族』の一つの家なんだ」

「純血?」

「血縁に非魔法使い、マグルがいないってことよ。私の家はそれに拘ってる純血主義の人しかいないことで有名なの。セドリックは多分そんな家の私がなんでマグルの子と仲良いか疑問に思ってるんじゃないの?」

 

そう遮るようにエリスが話すと、肯定するようにセドリックは首を動かした。エリスはそれに満足したように鷹揚に頷いた。

 

「私、純血主義って嫌いなの。馬鹿みたいだわ、生まれだけで人の優劣を決めるなんて」

「エリスとわたくしは入学する前からの知り合いなんですよ」

「へぇ、そうなんだぁ」

 

生まれや態度、雰囲気も対照的ではあるが良い友達らしい。

 

「それじゃ、授業もはじまりそうだし私は行くわね。またねアイク、セドリック。遅刻しちゃダメよステフ」

「バイバイ〜」

「はい。またあとでエリス」

 

俺たちは去って行くエリスに手を振った。だが見送った後に気づいた、エリスがもう授業が始まるということは俺たちもそうだと。

 

「やばいセドリック。最初の授業ってなんだっけ?」

「魔法史だよ、急がないと間に合わないと思う」

「あ、待ってください。わたくしまだフクロウさんに手紙を出していないので」

「なんでステフはそんなゆっくりしてんの?急がないと!」

 

そのあと俺たちは騒ぎながらもフクロウ小屋を出発して、動く階段やらゴーストやらに翻弄されながらもなんとか授業開始までに着くことができた。

 

 

 

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