魔法のお城で幸せを   作:劇団員A

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悪戯反撃

俺は激怒した。必ず、かの悪戯小僧どもに何らかの仕返しをしなければならぬと決意した。俺には悪戯がよくわからぬ。俺は、ごくごく真面目な人間であった。通知表には真面目で明るく素直な生徒と書かれていた。だが何らかの形でやり返したいのだ。

 

「それで昨日から部屋に篭って作業してるのかい?」

「うむ!!」

「わざわざ上級生にまで手伝ってもらって何をしているのですか?」

「ヒ・ミ・ツ」

 

授業を終えて制服から着替えて、俺は反撃の準備をして部屋で作業しているとステフが部屋に訪れてセドリックと二人で質問してくる。ちなみ我がハッフルパフの寮は男女の部屋の行き来が性別問わず自由である。

俺がステフの質問にそう答えてウインクすると、無言で顔を引っ張ったいてきた。しかも笑顔で。このお嬢様ドSである。

 

「いたっ!ちょ、お嬢様。ビンタはっ!あ、ごめ、もう一回はやめ」

「ステフ、そう呼んでくださいね」

「まぁまぁステフ、落ち着きなよ」

「うー、ありがとう。セド」

 

どう叩いているかわからないが、音と見た目は派手だが大して痛くはない。ちなみにここ数日一緒に過ごして俺とステフ、エリスはセドリックをセドと呼ぶことになった。

 

俺がこうやって準備している発端はグリフィンドールと授業が一緒になった帰りに赤毛の双子にお菓子が入っていると言われ、大きな箱が渡されたことである。俺が期待して開けてみると箱が大爆発した。

何が起こったかわからない俺は目を丸くして呆然としていると、赤毛の双子が愉快そうに笑って楽しげに去っていった。

他のグリフィンドールの子たちに説明を聞くと、どうやらフレッドとジョージというらしく、よく愉快犯のようにいたずらを仕掛けているらしい。

セドやステフ、他のハッフルパフの子たちは笑っていたが、おれはお菓子と思いきや、まさかの大爆発で普通に激怒した。

そして、俺は何らかの形で反撃を企画したのだ。

 

「とりあえずもう寝ようか。これ以上やると明日に支障が出るよ」

「えー」

「私ももう寝ますね。おやすみなさい、アイク、セド」

「「おやすみ、ステフ」」

「セド、アイクが寝ないようだったらあとで生ける屍の水薬でも飲ませてください」

「よし、セド。もう寝よう。目覚まし頼むぞ」

「あははははは……」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

そして次の日、いつも通り目覚まし時計のおかげで目を覚まして、寝ぼけ眼をこする。その後にセドリックが俺の髪に櫛を通すのは最早日常となっている。それから談話室に行ってステフが俺の髪型を自由にいじる。ここまでが一連の流れとなっていた。ステフによる今日の俺の髪型は一本の三つ編みである。

 

「はい、できましたよ」

「毎朝ありがとう、ステフ」

「いえいえ、わたくしも楽しいので。実家ではこういうことは従者の方々にしかやらせていませんでしたので、自分にも妹にもできませんでしたから」

「へぇ、そうなんだ。金持ちってすごいなぁ。それとステフ、妹いるんだね」

「えぇ、兄、姉、妹、弟がいますよ。わたくしはちょうど真ん中です」

「そういえばステフ、その髪型をどうセットしているのかい?似合っていて素敵だよ」

「まぁ!ありがとうございます、セド。これは上級生の方々に髪をいじる呪文を教えてもらいまして」

 

セドリックがまたさらりと褒める。こういうとこ紳士であり、尊敬するなぁ。なんて思いながら俺たちは話し続けて朝ごはんへと向かった。

 

 

今日の授業では一番楽しみにしていた物がある。箒による飛行訓練である。グリフィンドールと合同であり、各々寮ごとに分かれて授業が始まった。箒で空を飛ぶとはつくづく魔法らしい。

 

「良いですか、箒に向かって右手をだして『上がれ』と言うのです」

 

先生にそう言われて右手を箒に向けて、みんな口々に「上がれ」と言う。セドリックなどは一発で成功しており、ステフは二、三度上がれと言うと手に収まった。次々とみんなが成功していく中で、俺はというと

 

「上がれ!上がれ!」

 

全くピクリとも箒はしてくれなかった。なんだこれは。というか無機物に永遠と叫んでいる姿痛くない?大丈夫?

もしや今度は先生に悪戯されて、ただの箒を渡されているのかもしれない。

隣にいるセドリックに囁く。

 

「セド、セド。大変だ。今度は先生までも俺を騙そうとしている」

「また変なこと言い始めたね、アイク」

「本当なんだよ、多分この箒は空飛ぶやつじゃなくて普通のなんだ」

「はぁ……」

 

呆れたようにため息をついてセドリックは自身の箒を地面に置き、次に俺の箒に右手を上げて上がれと一言。すると、すんなり浮かび上がり大人しくセドリックの右手に収まった。

…………。

気まずそうにセドリックが俺に箒を渡してきた。俺はその箒を受け取った瞬間ぶん投げる。

 

「ちくしょう!セドの言うことはすんなり聞きやがって!!面食いかこの箒!」

 

投げられた箒は大地をリバウンドして転がる。するとそれから柄の部分から俺目掛けて飛んできた。それをすんでのところで避ける。

 

「このやろう!やりやがったな!!」

 

それから俺と箒の取っ組み合いが始まった。

 

 

その後、先生に見つかって怒られるを通り越して、呆れられた。いわく、「箒と喧嘩するような人間は初めて見ました」とのこと。ごめんなさい……。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

飛行訓練以外の授業も終えて、迎えた放課後俺は中庭にて大きな袋を抱えて準備していた。さて、派手に仕返ししてやろう!

とそう思ったものの、あれ?あの二人いつ来るんだろうか?呼び出しも特に何もしてないということに準備を終えてから気がついた。

 

「………呼び出すの忘れてた」

「そんな意気揚々と準備してるからてっきり万端かと思ってたよ」

「あらあら、まぁまぁ」

 

うむむ、まさか計画の一番最初の部分で躓くとは……。でもここまで準備して何もしないというのはなぁ。

 

「ちなみに何をしようとしていましたの?」

「えっとね、この袋の中には砕いたチョークの粉が入っててだね、それを津波のようにしてあの双子を流そうとしてた」

「随分と派手だね」

「水には流さんが粉には流してやろうと」

 

そういってぽんぽんと袋を叩く。こんなに用意したんだけどなぁ。無駄になっちゃうのもなぁ。

 

「それでどうするんですか?あの二人が通るのでも待ちますか?」

「もしそうするなら多少待つのには付き合うよ」

 

そう二人が言ってくれる。本当にハッフルパフの人はいい人ばっかりだな。たが流石にいつ来るかわからないまま待つのはなぁ……。

袋の口を開けて杖を振って少し白い粉を取り出す。なんか出来ないかな。

くるくると動かして人の形を作ったり、うさぎにして見たりして遊ぶ。こういう細かいことは得意なのだ。図工と美術なら必ず5だったからな。ふと我が愛する妹、ハーマイオニーに自身の英語上達のためも兼ねて、絵本を読んで上げたことを思い出した。

そして閃いた。

 

「ねぇねぇ、二人とも昔話とか絵本とかって好きかい?」

 

 

* * * * *

 

 

 

中庭のベンチの近くに移動して、二人には座ってもらってから俺は袋を大きく開けて、準備を始める。

 

「何を始めるんだい、アイク?」

「とりあえず楽しみです」

「まぁまぁちょっと待ってね」

 

杖を振り、狐や人の形にしたり家の形にしてみたり、それを複数個作ってみたりする。

おお、いけそうだ。

 

「お待たせ、準備できたよ」

「それで何をしてくれるだい?」

「昔話さ」

「マグルのですか?三びきの子豚のような」

「違うよ、多分二人とも知らない話」

 

俺はそう言って話を打ち切ると杖を振るい、サラサラと粉がまるで液体のように蠢きながら出る。

 

「むかし、むかし、あるところに子狐のノアがいました」

 

言葉に合わせて粉が動いて、小さな狐の姿になる。それをステフやセドリックが座るベンチの近くにまるで生きているように動かしてみせる。二人が目を見開いて驚いている。

 

「両親のいないノアは人里に降りては悪戯をして、里のみんなを困らせていました」

 

粉が今度は街並みと人々に変わり、狐が物を盗んだり人にちょっかいをかけては逃げていく。

 

「ある日、ノアは山の中で魚を捕まえようしている一人の青年、ダニエルを見つけました」

 

風景が川と山に変わり、青年が一人とそれを遠くから見ている子狐へとシーンが変わる。

 

 

さて、元々日本人ならば分かるであろうイギリス版ごんぎつねだ。流石に教科書の物語のことなら記憶しているし、感動的な内容だったので、俺はよく覚えているのだ。果たしてイギリス人にも感動的に思えるのだろうかね。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

杖を振るい、場面は最後のシーンへと移る。銃を持ったダニエルが遠くからノアを撃ち、ノアは衝撃で吹き飛び、転がった。

周りから悲鳴やショックを受けたような声が聞こえた。

 

「ノア、お前だったのか。ダニエルがそう呼びかけるとノアは静かに頷いて息を引き取りました。おしまい」

 

さあっと溶けるようにしてノアの姿が薄れていく。誰かのすすり泣くような声が聞こえた。続いて蹲っていたダニエルの姿も空に溶けるようにして消えていった。

 

ふぅ、めっちゃ疲れた。汗だくだわ。魔法を長時間使い続けること舐めてたわ。

汗を拭いながら正面を見ると気がついたら人だかりが出来ていた。

寮を問わず大勢の人間がどうやら見てたらしい。かなり感動したようで涙を流している人もいた。

おお、まさかここまで大盛況になっているとは思わなかった。集中してたからこんなに大勢の人が見てることに気がつかなかった。

使っていた粉を全て袋に戻し終えて一息つくと、セドリックとステフが駆け寄ってきた。二人の目尻にはきらりと光るものが見える。

 

「アイク、とっても良かったよ」

「ありがとう、セドリック」

「アイク!!」

 

がしりと、手をステフに掴まれじっと顔を覗き込まれる。顔が近いです、お嬢様!!

 

「わたくし、とっても感動しましたわ!!あなたの魔法も語り口も素晴らしくとても心動かされました!!」

「ええっと、ありがとうステフ」

「アイク、よろしければ他のお話などありませんか?差し出がましいですが、もっと色々なお話が聞きたくなりました」

「ええ?!」

「私も聞きたい!」

「俺も!!」

「今度は冒険物が聞きたい!」

「恋愛ものがいいな!」

 

ステフのお願いに同調したように周りの人々からも一斉に催促され始める。うお、マジか、こんな人気になるとは思ってもいなかったぞ。

 

「ええっと来週の放課後またここでいい?ステフ」

「ええ、もちろん。ありがとうございます、アイク」

 

そう笑顔で言われてむぎゅーとステフに抱きしめられた。

 

どうやらこのホグワーツ城というのは、遊びもそんなに多くなく、外界との連絡手段も乏しいため娯楽に飢えている人々が多いらしい。そのせいか俺の思いつきで行なわれた紙芝居ならぬ粉芝居は大盛況であり、毎週行う恒例行事となっていった。

 

ちなみにスリザリンを除く寮監の先生方も見ていたらしく、10点ずつハッフルパフに追加されていた。

 

 

 

 

 

 

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