魔法のお城で幸せを   作:劇団員A

5 / 43
キャラが大勢出ますが、基本モブです。



休日謳歌

学校が始まってから数ヶ月経った。

今日は休日である土曜日で、俺たち三人だけでなく一年生数名で談話室でまったりお茶を飲んでいた。マグル出身の子でお茶が好きな子がいて、それを振舞ってもらった。そこそこの人数がいるのでなかなか賑やかである。

 

「あ、これ美味しい」

「一口ちょうだい」

「ねぇ、それミルク入れ過ぎじゃない?」

「えぇ?あぁ、ほんとだぁ」

「何飲んでんだそれ?」

「それとこれ混ぜてみたー」

「ちょっと私のお茶で実験しないでくれる?」

「誰か僕のお茶に砂糖入れたのかい?無糖がいいんだけど」

「そういえば最近、マクゴナガル先生がね……」

「知ってる?レイブンクローのフレデリカに彼氏が出来たみたいよ」

「えっ?!」

「なんでケビンがショック受けてんのー?」

 

お茶の感想や最近の出来事、みんなが口々に話し合う。お茶以外にもお菓子を持ってきており、マグルのものも魔法世界のものも味わっている。あ、蛙チョコが逃げた。だが、誰もこの場から追いかけようとはせず、蛙チョコは自然に帰っていった。みんな完全にリラックスしており、席から離れる様子はない。

 

「そういえば、アイク。今度はどんな演目やるのー?」

「えー、先に聞いちゃうの?分からないほうが楽しくない?」

「でもどんなジャンルなのかぐらいかは知りたくない?」

「それは確かに」

「前回って何だっけ?」

「魔女に呪いをかけられ、獣になったマグルの王子と器物になった彼に仕えた人々が、実は半純血の女の子に呪いを解いてもらう恋愛物でしたよ。私感動しました」

「面白かったなぁ、あれ」

「俺はその前の冒険譚の方が好きだったかな」

「えっとーそれって確かー」

「トロール退治に剣を片手に勇者が行く話だよ。途中で三匹の使い魔を手に入れてね」

 

それぞれ美女と野獣と桃太郎のオマージュである。両方とも別方面にしんどかった。美女と野獣は一人で二種類の声音を演じることが大変だし、恋愛の盛り上げ方には苦労した。桃太郎は盛り上げようとしてアクションを派手にしたら動かす量が多くなり、普段よりも汗だくになった。

 

「いや、実を言うとまだ決めてないんだよね。どうしよっかな」

「あれってアイクのオリジナルなんですか?」

「んー、いや完全なオリジナルってわけじゃないんだ。ステフ聞いたことのあるのない?」

「いえ、私、あんまり絵本は詳しくなくて……」

「ステフはマグルのお嬢様だもんねぇ」

「まさかあのペンテレイシアのご令嬢とホグワーツで会うとは思わなかったよー」

「それはさておき、今更だけどアイク、よくあんなに動かせるよな」

「え?」

「いや、簡単な魔法だけどあんなに長い間、連続して使うのって大変だろ?」

 

まぁ実際大変ではあるが、人に喜んでもらうことは嬉しいのでつい張り切ってしまっているのだ。

 

「そもそも動かすこと自体大変じゃないのか?」

「んー、そうかな?」

 

俺はそういってポッケから粉を取り出して、杖を振って人の形にする。口笛を吹いて音楽に合わせて軽く踊らせてみる。どうだこのブレイクダンス、見たことない動きだろう!踊らせ終わるとみんなから拍手された。いやー、それほどでも。

 

「私もやってみたいです」

「いいよ、やってみなよ。ステフ」

「次俺もやりてぇ」

「あたしもぉ!」

「えーじゃあー、僕もやってみようかなー」

「アイク、僕もやってみていいかい?」

 

おう、大人気だな。だけどこんなに人が多いんじゃもういっそのこと普通に袋もってきたほうがいいかもしれない。俺はみんなに待ってもらって、部屋に取りに行った。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

談話室に戻るとそれぞれのカップは別の机に移しており、みんな準備万端と杖を抜いていた。

 

「よし、じゃあ、やってみようか」

 

机の中心に袋を置いて、袋の口を開く。一斉にみんなが杖を振って、白い筋が何本も袋から伸びて行く。そしてそれぞれ人の形をとった。と言っても、みんな顔の形が歪だったり、体のバランスがおかしかったりするけど。

 

「意外と難しいな」

「足が滅茶滅茶長くなっちゃった」

「手が短いね、ケビンの」

「そういうフローラもバランスおかしいだろ」

「じゃあ、次に動かしてみようか。とりあえず右に歩かせてみよう」

 

俺の指示に従って、みんながそれぞれの人影を動かしてみる。だが、途中で粒子に戻ったり、足を出す順番がおかしかったり、なんというかゾンビの行進のようである。あ、でも流石セドリックは上手いな。

 

「アイクが簡単そうにやるけど、これかなり難しいね」

「でもセドリックもできてんじゃないの」

「見た目ほど容易ではないのですね」

「うぇ、気を抜くとすぐ粉に戻っちゃうよぉ」

「えーい」

「あ、こら俺の人型を蹴るなよキース」

「おりゃー」

「やったな、この!」

 

なんというか趣旨が変わってキースとケビンがお互いの人型を使って喧嘩を始める。お互い操作がイマイチなのでなんかゆったりとしたロボット対戦を見ているようで面白い。

みんなも観戦モードに入って二人のやり取りをみている。

 

「行けぇキース!」

「ケビン。キックが来るよ!」

 

趣旨は変わったがこれはこれで面白そうである。格闘すること数十秒、キースの人型の回し蹴りがケビンの人型に綺麗に決まり、粉へと戻った。あぁ、とケビンが悲鳴をあげた。

エドワードの人型が楽しげに踊っている。

 

「わーい、勝ったー!!!」

「なんだかまるでゾンビ同士の喧嘩のようでした」

「でも結構面白かったわよね」

「次、私とやってみようよフローラ」

 

この日からハッフルパフでは粉で出来た人形を操るバトル、ファイトオブチョーク(ネーミングセンスないとか言うな)、略してFOCが流行した。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

そして翌日、箒が貸し出しが認められてほとんどの一年生は箒片手に外へと遊びに行ってしまった。俺は相変わらず箒から嫌われているので、大人しく談話室でまったりしていた。俺と同じく箒に乗らなかった生徒たちと魔法の紅茶の番付をお茶菓子片手にしていた。

 

「ナタリアとしてはどの紅茶が一番なんですか?」

「んー、そうね、そこの花柄のカップのと、青いカップのかしら」

「どんな味だっけそれ?」

「ねぇえ、ナタリア、このお菓子もっとちょうだぁい」

「それないわよ、あんた食べたのが最後よ」

 

わちゃわちゃとしているが、こういった会話は割と昨日済ましてしまったので本格的に暇なのである。あとステフが俺の髪をさっきから結んでは解き、別の髪型へというサイクルをかれこれ十回はしている。

 

「ステフ、いい加減髪型固定してほしい」

「あら、そうですか。なら結ぶ代わりにお願いがあるのですが」

「お願い?」

「はい。私がデザインした洋服を着てみてほしいんですの。最近上級生に絵柄を動かす魔法を教わりまして、実際試してみたんです」

 

実家が衣服系ということもあり、魔法での服に関して興味があるとか確かに言っていたことを思い出した。まぁ別に服を着ることぐらいいいだろう。

 

「いいよ、それぐらい。お安い御用さ」

「はい、それでは私の部屋について来てくださいね」

 

ステフはそういうと俺の頭に編み込みをしてから、俺の手を引いて部屋へと向かった。生まれ直して初めての女子部屋である。なんだか、ちょっぴりドキドキする。

 

「どうぞ」

 

そう言って開かれたドアを通って中に入ると、なんだかいい匂いがした。壁にはおそらくルームメイトの子のであろう動く写真が飾ってあり、棚には色とりどりの布が置いてあった。開いたクローゼットの中には様々なデザインの服が見える。机の上には教材と画用紙、画材が広げられていた。

 

「それじゃ、こちら、お願いしますね」

 

俺に着せたいらしい服を手に取って、ステフがすごくいい笑顔でそういった。

 

 

俺は差し出された服に大人しく着替え、ステフと共に談話室に戻りお茶を楽しんでいた。しばらくみんなで話していると、外に出ていたセドリックたちが戻って来た。

 

「ただいま」

「おかえり、セド。楽しかった?」

「うん、楽しかったよ、アイ……ク?」

「なんだよ、セドリック。急に固まっ……誰だお前」

「ただいま〜アイク。似合ってるよ〜」

 

帰って来た人たちはほとんどぽかんとしたり、固まったりしてしまった。そりゃそうだ、俺もセドリックが同じ格好をしてたら同じリアクションしていた自信がある。

今俺が身に纏っているのは白い柔らかく温かそうなニットに丈の長い淡いピンクのフレアスカートである。スカートの柄には濃いピンクの花びらが上から降るようにして動いている。

なんというか言われた通り客観的に見ても似合ってる気がする。流石いずれかなりの美人となるハーマイオニーの兄である。今は美人じゃないのかって?今は可愛いんだよ、馬鹿野郎。

 

「ありがとう、キース」

「あ〜、声も高いね〜。魔法?」

「うん、通りすがりの先輩が面白がってかけてくれた」

 

クルンとその場で一回転してみると、スカートがふわりとゆるく広がる。その動きに合わせて花びらが風に吹かれたように布の上で揺れる。おぉ、手が込んでいるなぁ。

 

「その服はどうしたんだい、アイク?君の私物?」

「んなわけあるか」

 

否定するとぱしりと額を叩かれた。

 

「その格好でそんな口調だめだよぉ。この服はねぇ、ステフがデザインして作ったんだってぇ」

「へぇ、綺麗な服だねステフ」

「ありがとうございます、セド」

「あれ、綺麗なのは服だけかしら、もう嫌になっちゃうわ、ねぇケビン。いっつもセドったらこうなのよ」

 

からかってやろうと男子生徒の一人に腕を絡めるとセドリックはいつも通りの笑顔、対照的に男子生徒のほうは顔を赤らめて無言になってしまった。

セドリックは俺の髪をやんわりと撫でた。

 

「君も綺麗だよ、アイク」

「あらやだ、聞いた今の。やだわ、最初からそう言ってくれれば良いのに。素直じゃないんだから。ってあれケビン?」

「アイクのあのキャラは何なのですかね、腹立たしいのですが」

「やめたげなよーアイク、ケビン女の子に耐性ないんだよー」

「うるさい!!」

 

あはははとみんなで笑いあって休日は楽しく過ぎていった。

 

 

 

 

 

 




以下モブのどうでもよい補足

ナタリア 紅茶好き、マグル
フローラ マイペースな女子
ケビン  不憫
キース  マイペースな男子

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。