魔法のお城で幸せを   作:劇団員A

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結局オリキャラが思ったよりも自由に動いてます


意気軒昂

俺たちはクリスマスを迎えた。パーティーを盛大に派手に過ごし、それが終わるとクリスマス休暇である。あぁ、久しぶりにハーマイオニーに会える。待っていてくれ、我が天使よ。

特急に乗り込む間、嬉しさのあまりくるくると踊っているとセドリックに苦笑される。

 

「本当に妹さんが好きなんだね、アイク」

「いや、好きではない」

「え?」

「愛してる!!」

「あぁ、そうかい」

 

わははは、と高笑いしているとエリスにドン引きしていた。

 

「アイクってシスコンなのね」

「シスコンってどういう意味ですか?」

「姉や妹が大好きってことよ」

「じゃあ、私もそうですね。私も姉さんや妹が大好きですから」

「訂正するわ、好きの度合いが一般的な水準を大きく上回っていることよ」

「僕はもう慣れたよ。家族思いなのは良いとこだよね」

「セド、あんたは人が良すぎるわよ」

 

三人がそんな会話をしていたが、俺には気にならなかった。待っていてくれ、今、お兄ちゃんが会いに行くぞ!!

 

 

* * * * *

 

 

 

久々に両親やハーマイオニーに会い、家で夕飯を楽しむと質問の嵐だった。

 

「動く階段とは面白いな」

「本当に魔法の学校なのね」

 

などと両親は俺の話を聞いて、楽しく感想を言っていったが、ハーマイオニーのリアクションはそんなものではなかった。一つ俺が話すと必ず疑問を投げかけてくるので、ただその学習意欲に感動していた。

 

「魔法史の授業ってどれくらい前のことから取り扱ってるの?」

「組み分けの儀式って何やったの?」

「魔法薬学って手順通り行えば本当に不思議な魔法の薬ができるの?」

「クィディッチって実際どんな感じだった?」

「箒ってどれくらい速かったのかしら?」

 

などなど疑問に思ったことが矢継ぎ早に質問される。これはハーマイオニーはレイブンクローかなと思いつつ、一つずつ質問に答えていった。だけど愛する妹よ、箒関連の質問は俺は答えられぬのだよ。すまんね。

 

家では法律上、魔法が使えないため、持ってきた魔法のお菓子や動く写真などを見せてやると、めちゃめちゃ喜んでいた。父さんと母さんは目を丸くしていたが……。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

そして休みも終わり、授業も再開された。俺はそこそこ成績も良くそこまで授業に苦労していなかった。がしかし、悲しいかな、我らがハッフルパフには少し成績に不安が残る人々もいるのだ。

自室にて俺が次の演目の原稿を書いて、セドリックがクィディッチの本を読んでいると急にドアが開かれた。

 

「セドリック、アイク、勉強教えて〜」

「うおっ?!」

「良いけどノックはちゃんとしようね、キース」

「はーい」

 

成績不振者その1、キースである。マイペースな間延びした口調と同じく生活もマイペースで、対照的にしっかりしている同室のケビンが面倒みている。ちなみにその2は意外とナタリアである。

 

「ケビンには聞かなかったのかい?」

「匙投げられちゃった〜」

セドリックが質問すると、良い笑顔でキースが答えた。……ケビンって結構真面目だし、根気よく教えてくれる方だと思うんだけど……。

セドリックが呆れたように苦笑いして、キースに近づいた。

 

「いいよ、僕が教えてあげるよ。アイクは成績が良いけど天才肌で人に教えるには向いてないからね」

「ぐぬぬぬ」

 

まぁ、実際その通りなんだけどね。自惚れではないが、俺はハッフルパフの一年生の中では五本の指に入る成績だと思う。一位はセドリックであろう。見た目良し、性格良しに続いて成績良しとは自慢の友達である。

あとはステフも成績が良い。何事にも丁寧であまり早くはないが、間違いが少ない。ついでに本人自身が勤勉である。この前の服にかけられた魔法も実際教わって試してみたが、かなり高度であることがわかった。

 

「じゃあ、僕はキースに談話室で教えてくるね」

「おー」

「アイクばいばい〜」

 

そう言ってセドリックとキースは部屋を出て行った。

 

 

* * * * *

 

 

さて、俺の方はというと最近チョークの物語にある計画を練っていた。

それは俺以外の生徒にも協力してもらうことだ。他の人に登場キャラクターに声を当てて貰ったり、背景や人型などを動かしてもらうことだ。

最近物語のネタも尽きてきて、まだあるとしても自分一人でやるには壮大すぎて手に負えないのだ。

そこで思いついた。俺以外にもやってもらえば良いじゃないかと。それ以外にも、今は色をあまり区別できていないので、より複雑な色をつくって操ったりも出来るのではないかと考えた。

 

最近、我らがハッフルパフではFOC(チョークで作った人形の闘い)がちょっと流行っており、そのおかげでみんな、特に俺と親しい一年生は上手なのだ。

そこで俺はある日みんなに一回だけ大規模な物語をやりたいので協力してくれるように提案をした。

 

そうしたらみんな喜んで俺の提案に参加してくれたのだ。むしろ率先して手伝いたいという子もいた。放課後や休日を使って二週間の準備期間を設けて俺たちは空き教室で練習した。セドリックがずば抜けて操作が上手くて、続いてステフ、ケビンと上手だった。脚本を書いたり練習期間努力して、一つの演目をニヶ月、計八回に分けて週一ですることとなった。

 

 

* * * * *

 

 

 

「フローラ何してんのよ?!」

「うわぁ、色混ざっちゃったぁ」

「ステフ上手になってきたね〜」

「ありがとうございます。キースは背景の方はどうですかね」

「あんまり細かく動かさないから楽だよ〜」

「ケビン、大丈夫かい?ガチガチに緊張してるけど」

「お、俺、こういうの上がり症で……。なんでアイクのやつは俺を主人公にしたんだよ……」

「声がいいし操作も上手いからね、ケビンは」

「ナタリア、台詞確かめてくれないか?」

「ええ、いいわよ。でもその前にフローラのミスを取り返さなきゃ」

「えへへ、ごめーん」

 

と、まぁこんな感じで賑やかに楽しく練習は過ぎていった。ちなみに、ケビンとステフが主役。ナタリアとセドリックがサブメイン。フローラとキースが背景。俺は全体の補助となっている。

 

意外と監督の仕事みたいなのが楽しい。

台本書いたり、ラフ画を書いたり、デザインを描いたりととんでもなく大変であったが、とても面白い。だが図工や美術の成績が良かったのに対して、国語と英語の成績は残念だったのでとても脚本作りには苦労した。

 

 

そして、迎えた当日、俺たちの第一幕が上がった。

演目の内容としては、マグルの世界でのお話で、幼い頃に死んだ幼馴染の少女がなぜか幽霊となって主人公の元にある日現れる。彼女を成仏させるために、仲違いした他の幼馴染と再び関わり始めたり、前向きに努力するお話である。

もちろん、これはオリジナルではなく、前世の大人気アニメを真似たものである。でも尺の都合上、ストーリーの展開上、キャラや設定を削ったり変えたりしている。初日ということもあり、まずまずの出来であったが、いつもよりも派手で複雑な劇に興奮していたのでよしとしよう。

 

 

* * * * *

 

 

その後俺たちの努力は報われて二ヶ月かけた全ての演目は大成功して、ホグワーツ城ではブームとなった。あとストーリーに出てきた隠れんぼやおやつなども。レシピをホグワーツ城の屋敷しもべの妖精たちに渡すと喜んでつくってくれた。

この演目で俺のチョーク演劇はひとまずおしまいとした。といっても来年には代わりになるようなものすると宣言したので、考えはあるのだ。実現は難しそうだけど……。

 

そして今日はちょうど二ヶ月が経ち演目を全て終わらせ、大団円として打ち上げをしていた。

こっそり先輩たちがバタービールを持ってきてくれたり、お菓子やごちそうを厨房から持ってくれた。

 

「「「かんぱーい」」」

「いやぁ、楽しかったねぇ!」

「ケビンが台詞を飛ばしたときは冷や汗が出ましたわ。アイクの焦った顔も初めて見ました」

「ステフはノーミスだったもんねー。流石ー」

「上がり症って言ったろ!!しかもそうなったのは最初の一回、二回だけだし!!!」

「ケビンは頑張ってたわよ、あんまりいじめないであげなさい」

「ナタリアが優しいぞぉ、なんだナタリア、ケビンに気があるのかぁ?」

「ねぇ、フローラ酔っ払ってないかい?」

「バタービールで?!」

 

てんやわんやとみんな大声で楽しんでいる。俺はというと先輩たちにもみくちゃにされていた。

 

「アイク、お前すごいな!」

「めちゃめちゃ面白かったよ!!アイク」

「来年も何かしらやるんでしょ!とっても楽しみにしてるよ!!」

「女々しい見た目した気に食わんやつとか思ってすまなかったな!」

「感動した、とっても美しかったよ」

「粉が綺麗に舞ってたよね〜」

「すごい幻想的だったよ」

「ありがとうございます!先輩方!!あと俺の容姿は妹似なんで!妹はめっちゃ綺麗で可愛いですからね!!」

「またそれかよ!」

 

ぎゃーぎゃーと騒がしく、賑やかに夜は更けていき宴はますます盛り上がりをみせる。

しばらく色んな人々と話しているとこっそりとステフが近づいて来た。

 

「こんばんは、アイク。今日はとても素晴らしい演目になりましたね」

「うん!ステフやセド、ケビンたちのお陰だよ。俺、一人じゃここまで大掛かりだったり、色鮮やかだったりしたものは作れないしね」

「ご謙遜を。みなさん、貴方の手腕を買っていますのよ。素晴らしい筋書きに心が動かされるキャラクター。それだけでなく、どう魅力的に見せるかなどの演出に凝っていましたしね。私たちみんな貴方を尊敬していますよ、アイク」

「…………」

 

なんというか、こういうとこがハッフルパフの生徒の良いところだと思う。根が素直でみんな善人であるし、他人の良いところを嫌味なくストレートに褒めれるところとか。

自然と顔に熱が集まっているのを感じた。

 

「あら、アイク。浮かれすぎたのですか?顔が赤いですよ?」

「あー……。しばらく放っておいてもらえると嬉しいかな」

「?はい。わかりました」

「ちょっと外に顔を冷やしに行くね」

「はい、行ってらっしゃい」

 

なんだか今日だけで前世一生分褒められた気がする。顔が赤くなるし、とても照れる。

 

「あ、そういえばアイク」

「ん?なに、ステフ」

 

談話室から寮の外へひっそりと出ようとしていたらステフに引き止められる。

 

「エリスが貴方に会ってお話がしたいと行っていましたよ」

「エリスが?」

「はい。おそらく感想だと思いますよ。純血の名家のお嬢様であるエリスは私や貴方のようなマグル生まれに会いづらいですからね。取り巻きを遠ざけてゆっくりと話がしたいと言っていましたよ」

「あー、なるほどね。わかったよ。あとなんだかステフが他の人をお嬢様呼びしているとなんだか可笑しく聞こえるよ」

 

そう笑って言うと、拗ねたようにステフはむくれてしまった。

 

「失礼ですね、私も今はただの一介の生徒ですよ」

「あはは、ごめん」

「全く、もう。あ、そういえば場所は八階の階段前だそうですよ」

「八階?また遠いね。なんでまたそんなとこなんだろ」

「さぁ?私にはわかりませんわ。取り巻きから徹底的に避けるためとか、人目につかないようにでは?」

「まぁ、行ってくるよ」

「ええ、行ってらっしゃい」

 

俺は楽しい気分のまま、寮を出て階段を上っていった。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

俺が階段を上がり終えるとすでにエリスはもう着いていた。普段は結んだりしていない艶のある黒髪をツインテールにしている。バレないようにするためだろうか。彼女は俺に気づいたようで笑顔を浮かべる。

 

「こんばんは、アイク」

「こんばんは、エリス。普段とは違ってツインテールなんだね。可愛いし似合っているよ」

 

俺がそういうと笑みを深くするエリス。たまに授業で一緒になったりして見かける彼女はいつも冷ややかな雰囲気を身に纏っており今目の前にいる優しげな雰囲気とは異なっている。そのギャップにちょっとどきりと心臓が跳ねた。

 

「それでエリス、話ってなんだい?」

「もちろん、貴方の素晴らしい演目についての感想とかよ。とても面白かったわ」

「そうかい、喜んでもらえて嬉しいよ」

 

俺がそういうとエリスはくるりと背を向けて歩き出してしまった。

 

「歩きながら話しましょ、今日はそういう気分なの」

「いいよ、行こっか」

 

エリスに先導される形で俺たちは八階を実にゆったりとしたペースで歩いた。その間の話題は今日行った演目やそれ以外の前の話について語っていた。

どのシーンが良かったとか、幻想的であったり美しかったり、他にはどのキャラの台詞などに共感したなど、様々な事を語り合った。

 

「そういえば、アイク。今日まで演っていたお話では死んだ幼馴染の女の子が出てくるけど、私たちは死んだらどうなるかしらね」

「俺たちが死んだら?んー、どうなんだろうね?天国や地獄に行ったり、はたまたピーブスとかみたいに幽霊になってこの世に留まったりするのかも知れないね。あるいは……」

「あるいは?」

「もしかしたら、もう一度生まれ変わって別の人生を歩むかもね。他の国や他の人種になったり、もしかしたら全く知らない世界に生まれ変わるかもしれないよ」

 

俺が茶目っ気まじりにエリスにウインクをしながらそう言うと、エリスは一瞬目をパチクリとすると笑みを深くした。

 

「百点満点の花丸な答えだわ。とっても素敵な考えだもの」

「そうかな?前にセドに話したら『不思議な考え方だね、アイクらしいよ』とか言われたんだけど」

 

そういうとクスクスと楽しそうにエリスは笑った。俺たちが八階を三周くらいしたかと思うと、見たことのない扉が現れた。

 

「あれ、こんな部屋八階にあったっけ?」

「ええ、あるのよ。基本は無かったりするけれど」

「どういうこと?また魔法ってことかい?動く階段といい不思議だよね」

「ここはホグワーツでもっとも不思議な部屋だと私は思うわ。入ってみましょう」

 

そう言うや否や、エリスは扉に手をかけて開いて、入ってしまった。慌てて俺も追いかけて部屋に入るとそこにはシンプルな木製の机や椅子たちに教壇。それと前世で見たような黒板やカーテンがあり窓は無いものの、まるで()()()()()のようであった。なんだろうか、ここは?

 

迷いのない足取りで進んだツカツカと前に進むエリスは教壇の前に立ち、チョークを取って黒板に文字を書き始める。俺はそんなエリスの様子を尻目に懐かしむようにあたりを見回した。

 

「不思議な場所だね、エリス。俺の知ってるある風景にそっくりなんだ。なんだか懐かしくかんじるよ、黒板に落書きとかもした……こと……」

 

俺はそれ以上言葉を口に出すことはできなかった。なぜなら黒板に白いチョークで大きく

 

 

 

『賢者の石』『秘密の部屋』『アズカバンの囚人』『炎のゴブレット』『不死鳥の騎士団』『半純血のプリンス』『死の秘宝』

 

 

 

これらの文字が綺麗な()()()で書かれていたのだ。

目を丸くしている俺を見てにっこりとエリスは微笑みいつもより柔らかい口調で言った。

 

「やっぱり、そうなのね。()()()()()()()のハーマイオニー・グレンジャーのお兄さん」

 

そう言ってこちらを見たエリスの笑顔は今までのどんな表情よりも魅力的に映った。

 

 

 

 




なんだか急にお気に入りが増えてビビっている作者です。これからもこの拙作をよろしくお願いします。

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