魔法のお城で幸せを 作:劇団員A
三年生も始まり、新たな学校生活にも慣れてきた。授業も全て終えて五階へと向かう。五階ではあまり授業に使われることもない教室が多く、そんな教室の一室に俺たちの劇団の部屋がある。俺がホグワーツ功労賞に選ばれたとき、ダンブルドア校長先生と交渉して手に入れたのだ。かなりの我儘だった自覚はある。
そもそも周りはやたら俺を持ち上げてくれるんだが、俺自身そんなすごいことをやったという風には思ってないのだ。せいぜいちょっと仲違いした友達同士を仲直りさせたくらいの感覚である。
あと別に俺は計画的に四寮を結束させた訳ではない。元々はハッフルパフの寮内だけで俺が一年生のときから割と事は足りていたのだ。
ところが一年生のある日、俺とエリスはお互いに前世についてカミングアウトしてより親密になった。そこでエリスはなんというか、今まで薄っすら見せていた壁を取っ払い、俺たちはより親しくなり本音を語るようになった。そうなってから、一年生の終わりの頃、エリスがある我儘を言った、「私もチョークの劇やりたい」と。別にやればいいじゃんと答えたが、なんでも俺の劇や俺たちの劇は特別視されているらしく他の生徒が真似る事はあんまり良い顔をされていないらしいし、純血のエリスがマグル出身の俺の真似をするのも快く思われないらしい。まぁ真似に関してはパクリをして人気出そうとしてる、とでも見れられているんのだろうか。
そこでエリスが出した提案はスリザリンに募集をかけるということだった。もちろん、断ったしスリザリンの生徒が来るとは思っていなかったし、そもそも一つの寮を誘うぐらいなら全部の寮誘うよと言ったら思いのほか人が集まったのだ。
最初はレイブンクロー数人、なんでもどうやっているか、気になるとかもっと効率を良くしたいとか、流動体の操作は研究に役立つとか。とやかく言っていたが、結局のところはやってみたかったらしい。「プライドの高い人たちだから言い出せなかっただけで、元々興味がある人は多かったですよ」とステフは言っていた。
他にはグリフィンドールからはウィーズリーの双子が参加してきた。二人は元々面白いと思っていた上、金になる気配がするとかなんとか。まぁ実際大道具のための開発費用などは渡している。横領は絶対に許さないとエリスが目を光らせているが。
そしてスリザリンからエリスとその取り巻きの女子何人か。エリスだけじゃなかったことに驚いたが、参加することに文句言われたり抗議されたのでむしろ巻き込んで一緒に参加させたほうが早かったというのがエリスの弁。「ハッフルパフの、しかもマグル出身の一年生に負けるわけないわよね?」みたいなこと言って煽ったら着いてきたらしい。
そんなこんなで今劇団エリュシオンには総勢24名在籍している。ハッフルパフから10人、レイブンクローは4人、グリフィンドールは5人、スリザリンからは5人。
さすがにハッフルパフが多いのは仕方ない。というかもしグリフィンドールとスリザリンが多かったら大変だったかもしれない。基本的に不仲かつ嫌悪しているこの二寮の間を取り持つことが最初はしんどかった。まぁ、今ではマグルだとか純血とか、どこの寮とか関係なく仲が良くなったのだ。
ちなみに前に外で練習をしてるときに冷やかしにきたスリザリン生が俺やステフのことを穢れた血と呼んだことがあったのだが、意味がわからずぽかんとしている俺たちと対照的に魔法世界出身の人たちが激怒していた。特に凄まじかったのは意外なことにフローラである。チョークが波打ち巨大な拳を作り上げ、「ぶっ殺す」とか言って普段の間延びした口調ではなく冷たいトーンで圧殺しかけていたので流石に止めたのだが、まさかあのザ・マイペースみたいなフローラが切れるとは。
意味を聞いてショックではあったが、やはり魔法世界にも差別はあるのだな。と実感した出来事でもある。
さて、そんなことを思いながらも歩いていると教室、というか我が劇団の会室についた。扉には赤い獅子、青い鷲、黄色い穴熊、緑の蛇が描かれており、それぞれが動き回り仲良さそうにじゃれあったり遊んだりして過ごしている。
これはステフのデザインで校長に許可を得てステフが魔法で描いたものである。みんなが仲良くしようという意味が込めたものだそうだ。
この部屋を貰って喜んだのは俺の次にステフだった気がする。俺は普通に高校生とかで学校に自分たちのための部室があることが嬉しかっただけだが、ステフにとっては劇のお陰でエリスの取り巻きの差別意識は若干和らいだし、ここでなら周りも文句は言わないし、出身も寮も関係なく仲良くできる場所が欲しかったようだった。
そんなことを思いながら部屋のドアを開けると、巨大な赤い獅子とそれに負けないくらい大きな緑の蛇、素早く動き回る青い大鷲が粉塵を撒き散らしながら喧嘩していた。もちろんチョークでできたものであるが、また今回も起きてしまったのか怪獣対戦……。ぼんやりと見ると獅子が蛇に巻きつかれて暴れている。その隙を突き蛇を狙うようにして鷲が滑空し爪で胴を削いだ。
そんな様子を横目にしながら部屋に入り、自身のロッカーを開けて白い白衣のようなローブととんがり帽子を出して被る。これはエリュシオンに所属していることを示すもので、チョークを弾く魔法をかけているためこの部屋にいる時や劇をするときには必須なアイテムである。これはエリスと俺で考えたものでお揃いの物って格好良いよね、という安直な考えにステフやレイブンクローの子達の意見でできたものである。
怪獣大決戦を眺めていると、ふと部屋の隅に黄色と黒で作られた穴熊モチーフのドームが不可侵地帯と看板を掲げていた。チョークでできたドームの中に入ると何人かの生徒が紅茶とお菓子を片手にまどろんでいた。
「おかえりなさいアイク。紅茶飲みますか?」
「ナタリアが分けてくれてやつだからおいしいよぉ」
「あ、団長だ。やっほー」
「ちはー」
「え、うん、ちょうだい」
コポコポとポットから紅茶がカップに注がれる。その間、テーブルに置いてあるお菓子をつまむ。厨房からもらった普通のお菓子であり、おいしい。というか、魔法世界のお菓子はスリルを求めすぎている気がする。動くチョコといい、アホみたいな味のあるビーンズといい最初は楽しかったが、今はもうシンプルにおいしいものが食べたい。
「はい、どーぞぉ」
「ありがと、フローラ。……あ、おいしい。流石はナタリアのチョイスだな」
「よく平然とお茶が飲めますね、先輩方……」
「おう、君はレイブンクローの一年生、否、もう今年は二年生か。月日が経つのは早いなぁ」
「早いねぇ。あぁ、そういえば数占いは面白かったぁ?」
「私たちは占い学ですものね」
「ではなくて!!あれです、あれ!なんですかあの怪獣大決戦!?」
ぎゃーぎゃーとレイブンクロー生が喚く。まぁまぁ落ち着きたまえ。あ、このお菓子結構紅茶に合うな。
「毎度派手ですよね、あれ。賑やかでいいと思いますよ」
「あれはねぇ、演目決めるために議論をやめて実力行使に出てるんだよぉ」
フローラがのほほんと答える。彼女の言う通り今回何をするかを自分たちの代理として怪獣を作り、勝ったチームの演目をするというものである。恋愛モノがやりたいのは蛇チーム。バトルモノがやりたいのが獅子チーム。サスペンスやミステリーがやりたいのが大鷲チームである。別に寮で分けているのではない。
「昨日演目について候補と内容伝えただろう」
そう俺は言いながら、一枚の巻物をだす。この巻物、『お喋りな巻物』もローブと同じく劇団用のものである。普段は白紙なのだが巻物に文字を書くと他の巻物にも浮かぶというものであり、チャットなどができるようになっている。エリスとレイブンクロー、ウィーズリーの双子による合作である。もともと携帯電話、というかメールがない時代に連絡手段を考えたエリスの発案であり、最近はフレッドとジョージが商売道具にしたがっているが未だに許可は取れていないようだ。
この巻物に昨日、俺とエリス、ステフの3人で話し合って候補を絞り、三つの演目について書き上げた。その後お昼までに多数決方式で決める。別に何でもいいよという中立派もいるので基本的にはこれで決まるのだが、偶に投票が同数となり議論となる。
この議論が完全に平行線であり、全く進まなかったため、FOCで決めることになっているのだ。提案したのはグリフィンドールだが、これにノリノリだったのがエリスで、どうせならチームで協力して大きいものを作り対決することになった。劇で使う怪物用の核を改造して怪獣を一チーム一つ作り最後まで残ったものが勝ちである。
余談だが怪獣用の核は勇者が囚われの姫を助けるためにドラゴンを倒すというベタな物語に使用するために作ったものである。複数人が核に呪文をかけられるようにした特別製で、開発に難航していた。この劇は下級生を中心にウケて、それ以外にもグリフィンドールに馬鹿ウケした。
去年は怪獣大決戦に巻き込むのは可哀想と思って一年生には知らせていなかったのである。
「アイク、もうそろそろ決着みたいだよぉ」
そうこう解説していると獅子が蛇を噛みちぎり、鷲を潰して二体の核が崩れたようで崩壊していくのが見えた。サラサラとチョークの粉へと戻っていく。
「まぁ、今年一発目は初めて見る一年生もいるわけだし派手なほうがいいか。ほら、決着ついたろ、片付けるぞぉー!!」
俺が大声を出しながら指示を出すと床一面に散らばった粉が逆巻き、それぞれの袋へと戻っていった。
負けたチームは悔しそうに、勝ったチームは喜んでいる。エリスはどうやら鷲のチームに参加していたようで悔しそうにしていた。
「ほーい。それじゃ今年、最初の演目はバトルモノで」
全員揃ったので、みんなが各々ソファや椅子に座っており、俺はその前に立ち指示を出す。この部屋にはくつろげるようにソファやクッションが結構な数置いてある。一応団長である俺の方針として過ごしやすい部屋にしている。ちなみに副団長はエリスとステフだ。
書いてきた台本を配って回す。この台本はネタバレ防止のために予め設定しておいた人間以外には見えないように魔法がかけてある。
「はい、んじゃ、各自その台本読んでやりたい役とか決めといてください。それ以外にもここの演出はどうしたいとか、セリフが変だとかあったらお喋りな巻物にでも書いていってください。以上。なんか質問ある人?」
一人のグリフィンドールの生徒が手をあげる。
「はい、どうぞ」
「FOCの大会って今年やんの?」
あ、そうだ。そういえば伝え忘れてた。
「正直やるつもりだったけど、ちょっと微妙になったわ。三年生思ったより忙しいからなぁ。劇もあるし。なので来年には必ずやるから今年は許してくれ」
各所からえぇーという声が聞こえた。特にフレッドとジョージは大会用に核を量産するつもりだったらしくめっちゃ文句を言われた。ごめんね、いや来年はやるからさ、ハーマイオニーとの交流がしたいし、劇も楽しみたいから下準備を今年やって来年にはやるからさ。
「他に質問は?ない?なら解散。今日は特にすることもないから」
そう俺が言いながらパンと手を叩くとみんなそれぞれお喋りを始め、誰も帰ろうとはしなかった。この部室は第二の談話室みたいなものであり、ここも大分まったりできるのだ。スリザリンの生徒なんか自室より居心地いいなんて言う生徒もいる。
俺たちは夕食の時間までまったりと部室で過ごしていた。
びっくりするくらい話が進まない……
書きたいことの量に対して執筆速度が遅すぎる……