閃乱カグラ 少女達の記録 【Bondage dolls】 作:なまなま
薬使いの女は燃えるような橙の瞳で、悪の道に進んだ春花を責め立てる。似た過去を持ちながらも、分かたれた道を進む二人の想いが激突しようとしていた。
糾弾の言葉を放った飼珠が、抜忍二人に向かって五つの忍法球を放つ。瞬時に反応した春花も試験管を放り、球より先に破裂。敵との間に分厚い氷の壁が生成され、破壊されつつも飼珠の五つの爆裂を減殺する。熱風で背を焦がしながらも、破壊された氷の下を二人の少女が駆けいき、近接戦闘の間合いに進入。
接近戦では爆発や劇薬の飛沫は危険と判断し、飼珠も白兵戦に切り替える。
左前方から襲い来る日影が先制し、右手ナイフが横薙ぎに振るわれるが、身を屈めて避けられる。即座に翻った左からのナイフと、右から繰り出された春花の左回し蹴りを、女が手刀で受け止める。予測していた蛇の少女が、間を置かず左指に挟んだ三本のナイフを足元に投擲。
回避不能と思われた刃はしかし、超反応した飼珠の前方宙返りによってコンクリに突き刺さるだけ。回転と同時に閃いた女の手が二人の手首と足首を捕え、巻き込んでいく。掴まれた少女たちは反射的に側転と横転で手足が捩じ切られるのを防ぐが、着地した飼珠の体は息もつかせず伸び上がって右回転。枝のような細身の忍に二人の少女が振られたかと思うや否や、即座に逆回転に変更される。慣性に置いて行かれた少女たちの体が飼珠の左右にさらされると、女は素早く小さな跳躍をしつつ細い両脚を水平に蹴り出した。
腹部に神速の蹴りを受けた二人は、飼珠の手から放されて吹き飛んでいく。吹き飛びながらも、敵と後方で待機していた傀儡の間に、薬品とナイフを乱れ投げていく。飼珠に小野を殺されたら全てが終わる!
過剰とも思える弾幕に、さすがの飼珠も後退。遠隔球がある以上、逃げることもできないため、傀儡は腕をいっぱいに使って中年を覆い隠していた。守られている男は相変わらずの不安顔。
「な、なんとかしてくださいぃっ!」
鋭い蹴技を受けた春花と日影は、裂けた腹部から血を流しながらも再度突撃。どれだけ負傷しようと、傀儡に攻撃を与える隙だけは作らせない!
挟み撃ちになった飼珠は目で笑みを示すと、左右に三つずつ黒球を射出。右の春花へ視界を覆う氷の針が襲撃し、左の日影を雷の嵐が阻む。
春花は急停止しつつ試験管を地面に叩きつけて爆発を起こし、氷の群れを粉砕。足の止まった薬使いに背を向け、飼珠が電撃の中へ疾駆していく。雷は使い手の道を作るように空洞となり、出口の先で足止めされていた日影へと導く。
電撃が消え失せ、二人は互いの間合いに入った。女が胴への右貫手を放ち、少女が半身になって回避。前に出た左手の三本ナイフが下から振られるが、黒衣の貫手が凄まじい速度で反応し、前腕に手刀が打ち込まれた。折れんばかりの激痛にナイフが指から零れ落ちるが、日影は続けて踏み込みと同時に右手のナイフを高速で突き出し、頭を狙いにいく。
少女がやったように飼珠も右半身になって躱すが、切っ先が遅れたフードの端を掠めて切り込みを入れた。隙を与えないように日影の右膝が蹴り出され、畳まれた女の左脚が防ぐ。
ナイフ使いの伸びた右上腕に、上へ瞬間移動していた薬使いの左手刀が急降下して直撃、傷口が広がり骨の軋む嫌な音が聞こえてくる。右腕にかまわず、ナイフを叩き落とされた少女の左拳が飼珠の左脇腹を強襲。先ほどと同じように右手刀が撃墜するが、黒衣の忍は失策に気付く。
「くそっ・・・!」
迎撃された日影の左腕の下、飼珠の死角で密かに左足が動いており、蛇のように一瞬で飼珠の右足に絡みつく!
至近距離ならではの奇襲を成功させたナイフ使いは、前に体重をかけて女を押し倒し、密着状態に。致命の一撃を決めるために閃いた右のナイフが女の心臓に突き立てられる直前、敵の左掌底が刃の側面を押し込んで位置がずれる。薄い右胸に凶器が突き刺さり、飼珠が激痛に苦鳴を漏らした。
心臓を仕留め損ねた日影の右手が、女の左手を押し切ろうとする前に黒衣の左脚が折られる。瞬間、少女の腹部に放たれた強烈な蹴りが、飼珠からナイフごと日影を引き剥がした。
蹴り飛ばされた蛇の少女が、敵の前方に落下。仰向けに倒れた状態から起き上がろうとする日影の腹からは、先の蹴りでできた裂傷が広がって大量の血が流れ出る。さらに両腕が神速の手刀によって腫れ上がり、赤と青の痣になっていた。
一方の飼珠も右胸に深く突き立てられた一撃で深手を負い、傷口を抑える左手と右半身を赤く染めている。
獣静が作り上げた忍は強烈な体術も兼ね備えていたが、元蛇女のトップ集団にいた少女は、二度同じ醜態をさらさない。
超反応超高速で繰り出される飼珠の打撃も、密着してしまえば大部分を封じられる。だから日影は攻撃を受ける前提で強引に相手を押し倒し、一撃に懸けた。結果は痛み分けだが、深手を負った飼珠の動きは鈍るだろう。ならば、感情のない日影の方に分がある。真に恐れと怯えを知らない彼女だからこそできた、捨て身の格闘であった。
「日影ちゃん!」
駆け寄ってきた春花に助け起こされる日影の体がぐらつく。頭から血の気が引いていくような危険な感覚。
薬使いは即座に止血剤に鎮痛薬、造血剤に包帯などなどを総動員して手早く応急手当をしていく。その顔には珍しく焦りと不安が表れていた。
「・・・一手読み違えたわね。それに・・・予想よりも、限界が・・・」
飼珠も荒くかすれた呼吸をしながら、傷の手当てを行う。そもそも重症なのだが、思っていた以上にダメージが大きいらしく、全身が小刻みに震えている。立っているのもやっとの状態だ。ただ、橙の瞳だけは変わらず執念の光を放っている。
「飼珠さん、体術までトンボやんな・・・?」
「ええそうよっ、あんな相手にナイフを突き刺せるのは日影ちゃんくらいよ!」
苦しそうに息をする日影の言葉に、春花が精一杯の笑顔と称賛で答えつつ、治療を完了させていく。
競り勝った少女が言うように、飼珠は体術にまで秘伝動物の特性を取り入れていた。恐ろしい速さでトンボのように次々と軌道を変える手足が、急加速による強力な一撃を見舞う。日影のように体を張った罠をしかけなければ、二人がかりでも太刀打ちできないほど高速で自由自在な体術だった。
反面、人体の限界を超えた動きを強制するため、体にかなりの負担がかかるはずだ。飼珠の受けたダメージが通常より大きく見えるのは、そのためだろうか。
手当てを終え、右胸に血の滲んだ包帯を巻いて三色になった女が、コンテナを背にゆらりと右足を前にして構えをとる。対する蛇の少女も友の治療で胴と腕が包帯塗れになっている。抜忍二人は戦いを終わらせるために、波止場の端で武器を持ちなおした。傀儡使いの視界右端では下僕がゆっくりと海側に退避していく。
「あなたの負けよ、飼珠」
「いいえ、私は負けない。まだ死ぬわけにはいかないのよ」
降参を放棄した飼珠の言葉で忍たちが同時に突進を開始する直前、両者の間に銀の影が降ってきた。瞬時に警戒態勢となった三人の前に現れたのは、コンクリに右膝をついて着地した刺厳であった。
標的との決着がつこうとしているところへ割って入った監視役に、右から春花が叫ぶ。
「刺厳ッ!邪魔をするなと言ったはずよ!」
「約束をした覚えはない」
落ち着き払った刺厳の右手が、背面中央に納まる剣の柄を握る。その動作で少女たちの警戒心がより高まった。やはり命長は抜忍二人も始末する腹づもりだったのか。しかし、屈んだ男越しに見える飼珠まで驚きと疑いの目を向けているのが気になる。
「その服・・・あなた、命長の忍?・・・見覚えがないわ」
「お前に見つからぬよう、行動していたからな」
息も絶え絶えな女の問いに、銀の忍が低い声で答える。どうやら薬使いは闖入者を知らないらしい。敵か味方かを見極めるために、飼珠が問いを続ける。
「・・・援護に来た、というわけ?」
「結果的にはそうなる。お前を死なせはしない」
「なっ!?」
思いもよらない刺厳の言葉に、春花の口から声が漏れた。
「どういう、こっちゃ。言うてること、滅茶苦茶やで」
苦しそうに呼吸する日影も状況が掴めていない。飼珠抹殺の依頼元である命長所属の刺厳が、なぜ標的の援護にまわるのか。わけがわからない。わけがわからないが、自分たちは忍務を無かったことにされ、詰みかけている。命長を敵に回したら、待ち受けるのは死だけだ。
なにか一つでも間違えれば、二度と紅蓮隊の仲間たちに会えなくなってしまうかもしれない。最悪の事態を回避するために、飼珠に全てを暴露してでも活路を見出さなければ。
「わたしたちは命長の依頼で、禁忌薬を盗んだ飼珠の抹殺に動いていたのよ!?話が違うわ!」
「禁忌薬?」
春花の言葉を聞いた刺厳が、疑問とともに飼珠へ目を向ける。女は驚愕の表情をしているが、当然だろう。飼珠は命長の指示で情報売買阻止のために動いていたわけで、薬品の奪取がバレていたことすら知らなかったのだ。
少女の打ち明けによって、女もまた一気に窮地に追い込まれる。そして、なぜか男は禁忌薬のことを知らないらしい。一体どういうことなのか。
「禁忌薬とは何だ、飼珠」
凄みを含んだ刺厳の声に、飼珠がわずかに逡巡する。女は抜忍二人に劣勢な自分と、刺厳が禁忌薬ではなく自分を守るために現れた事実を考慮し、要らぬ疑念を生まぬためにも白状することを選んだ。
「・・・め、命長が秘密裏に開発していた・・・『永命魂』という薬品を、盗み出したのよ」
「エイメイコン?どういう薬品なのだ、それは」
もはや厳戒態勢となっている飼珠の声は、苦痛と緊張で震えている。
「装備者の気力や体力、筋力・・・あらゆる生命力を吸い取る、忍具薬品よ。吸収ず、みの・・・この薬を使えば、瀕死の人間でも健全な、状態に復活できる」
「な、んだそれは」
刺厳が禁忌薬の正体に驚く。春花も目を見開いていた。
気功や忍法、超自然的な力で他者の生命力を奪い去ることは可能だが、そこには並々ならぬ修練や天性の才、血脈による遺伝や特殊体質など、常人では会得できない絶対的な壁がある。まして、吸収した生命力を他の人間に移し替えるなど、超常現象に近い。
飼珠の盗んだ禁忌薬は、それを可能にした薬品だということだ。忍具ということは一般人には扱えない物だろうが、それでも生命力の吸収、貯蔵、付与を外部装置で行えるとなれば危険に過ぎる。一人の力を持った忍が手に入れるだけで、格下の人間から命を搾り取って生き続けることができてしまうのだ。場合によっては、永遠に生きる独裁者や民族浄化などの恐るべき事態を招きかねない。人の命に大きな格差を生む、忍どころか人類にとって禁忌レベルの代物だ。
少女は密かに禁忌薬を我が物にできないかと企んでいたが、愚かな考えだったことに気づかされた。
「飼珠、それは一個人が利益を得るためだけに、対価として使っていい物ではないわ。命長に返還すべきよ」
「利益?対価?」
飼珠は何がおかしいのか、体を震わせてクククと笑う。春花へと向けられた橙の瞳が示すのは嘲笑。
「やはり・・・やはり、お前は何もわかっていないじゃない。私は、お前のような・・・悪忍とは違う」
「何を言って・・・」
少女の続く問いを遮るように、刺厳が推測の一端を述べる。声色にはわずかに動揺の色が混じっていた。
「獣静か・・・?」
男の言葉に、飼珠が感心する。
「よく、わかったわね・・・調査済み、なのかしら?」
「予測しただけだ。指党組無き今、お前が自分以外のために命長を裏切るなら、唯一の肉親である獣静くらいにしか動機がない」
春花の頭に浮かぶ疑問符は消えない。刺厳の予想はもっともに思えるが、飼珠が虐げられ仲違いした母親のために禁忌薬を持ち出す理由がない。それに指党組さえ立て直せなかった獣静が永命魂を手にしたところで、利用法は他の組織に売り飛ばすくらいのものだ。そんなことのために飼珠が命懸けになるはずがない。
理解できない面持ちの少女を見て、女が蔑むようにかすれた声を上げる。
「おろ、か・・・愚かね、春花!人の心を失った・・・愚かな、悪忍!」
飼珠の両手が頭へと動く。フードの奥では燃え上がる意志の炎。
「言葉でわからないなら、見るがいいっ!」
女の手がフードを脱がせ、マスクを捨て去る。露わになった薬使いの素顔を目撃した全員が硬直。
そこには書類に載っていた影のある美人の面影はなかった。
艶やかで黒かったはずの髪は、真っ白な細い糸のように垂れさがり、ほとんどが抜け落ちて頭皮をさらしている。その下にあったであろう眉は消え失せ、落ち窪んだ目元や頬は薄い皮で覆われているのみ。
灰色の肌に若々しさは微塵も残っておらず、ひび割れたような皺と赤黒い斑点がそこかしこに見られる。辛うじて歯はそこまで減っていないようだが、口からは日影の刺突が原因なのか、血の滝が細い細い首へと跡を残していた。こんな状態で突き刺されたのなら、通常よりダメージが大きくなるのも当然だ。
飼珠は、まるで屍か骸骨のような風貌に変わり果て、ぜえぜえと苦しそうに白い息を吐く。一方で、信念と覚悟を宿す昏い眼窩の双眸だけは、残された命の輝きを放ち続けていた。
女の素顔が意味することに、春花は信じられないといったように声を上げる。
「まさかあなた、自分に永命魂を使っているの!?」
驚愕の言葉を聞いて、飼珠が骸骨の顔でニヤリと笑みを浮かべていた。
「・・・獣静に、自らの命を捧げるというのか」
刺厳が懸命に紡ぎ出した予想を口に出す。男に向けられた女の顔には助けを求めるような悲愴さが宿っていた。
「母は今、不治の病で・・・生死の境を、さまよっているのよ。私は、ただ、彼女を助けたいだけなの」
春花の推測は間違っていた。
飼珠は自らが求める理想の生き方を実現させるために、禁忌薬を持ち出したのではない。死に逝かんとしている母を救いたいがために命を賭しているのだ。
だが、理解できない。哀れな女と同じように、母の歪んだ束縛に苦しめられたからこそ、わからない。なぜ憎き母を救おうというのか。なぜ人形の生を与えた愚か者に命を捧げるのか。
「なぜ・・・」
春花の口からこぼれ出た困惑の声。母のために戦う女は、幽鬼の嘲笑を形作る。
「所詮、お前には辿り着けない。人の敵となった、お前には」
悪忍を蔑む善忍の言葉に少女が惑わされる。過去を糾弾されているような、言い知れぬ恐れ。自分はどこかで誤ったとでもいうのか。母と決別した、あの選択は間違いだったとでもいうのか。飼珠の心が分からない。彼女と自分の、母への想いを違えたのは何なのか。善忍の責めへ返す言葉は見つからない。
元善忍に飲み込まれそうになっている友を、日影が救い出そうと口を開く。
「関係あらへん。飼珠さんが獣静さんを助けたいなら、好きにしたらええ。ただ、わしらも好きにさせてもらうで」
「日影ちゃん・・・」
感情のない宣言が春花の意識を胸中から引き戻す。しかし標的を見つめる傀儡使いの心を、断ち切ったはずの過去の呪縛と、飼珠の侮蔑は手放してはいない。
蛇の少女は混乱の糸が絡まる春花の内心を察して、現実に向かって話を続ける。
「せやけど今、わしらはやるべきことがわからんようになってる」
蛇目は飼珠から手前の刺厳へと移された。
「刺厳さん、あんたの目的は何や?禁忌薬のことを知らんのに、ただ飼珠さんを助けに来たっちゅうんは、さすがにおかしいやろ」
問いを受けた刺厳の体が強張る。友の疑問で、春花も直面している危機に目を向けることができた。
日影の言う通り、命長から飼珠の救出だけを命じられたかのような刺厳の行動は不可解だ。命長が勝手に計画を変更して、飼珠の救護と抜忍の始末を命じたのなら、少女二人には飼珠を殺す理由がなくなる。
その上で、刺厳が飼珠を説得して永命魂を命長に返却するというなら、小野を捨てて脱兎のごとく逃げ去るだけだ。逆に刺厳が永命魂を悪用する意思を見せたなら、今度は彼を殺さなければならなくなる。
飼珠の暴露で全員が当惑したが、重要なのは刺厳の思惑。命長の犬である、この男の行動で全てが決まる。つまるところ、いまだ誰も命長の手から逃れられていないのだ。
「・・・言ったはずだ。私は飼珠を死なせない。それだけだ。彼女の目的がどうであれ、それだけは譲らぬ」
「永命魂には興味がないと?」
「禁忌薬がどうなろうと構わぬ。だが・・・飼珠、お前はそれのために戦うのだな?」
銀の忍が女へ問いかける。迎えたのは揺るがぬ想いを秘めた橙の瞳。
「母を救うためよ。ようやく溜まった二十日間の命・・・母の命を奪いに来るというなら、誰であろうと排除するまで」
飼珠のか細い声には決死の覚悟がある。もはや彼女にとって、永命魂は母の命そのものなのだ。失われれば、獣静は定められたように死んでいくしかない。
剣を握る刺厳の手に力が込められる。苦渋の決断をしたように、低い声とともに背の刃が抜かれていく。
「ならば、お前は獣静を救え。お前のことは、私が何としてでも救ってみせる」
立ち上がり、右手で構えた剣は抜忍たちに向けられていた。
「永命魂を獣静に託すというの?」
「飼珠がそう望み、私も覚悟決めた」
「・・・なんでや」
理由は分からないが、刺厳は飼珠と運命を共にすることを選んだ。少女二人は男の決断に疑問を感じながらも、戦闘の予感に身構える。命長から差し向けられた監視役となれば、自分たちと同等以上の実力を持っているはずだ。できることなら戦いたくはない。
「獣静に永命魂を渡すのは危険だわ。自己満足のためだけに、娘すら使い潰そうとする女よ?禁忌薬を悪用しない保証なんてない」
「知らぬ。飼珠は獣静を、私は飼珠を救いたいだけだ。永命魂奪取のために引かぬというなら、戦うのみ」
ただならぬ覚悟を秘めた命長の忍たちに、春花が言い知れぬ恐怖を感じる。
「あなたたちを突き動かしているのは、いったい何なの・・・?」
「敗れゆく者に、知る必要などない。飼珠、お前は身を守ることだけを考えていろ」
少女の問いを切り捨てて刺厳が向かってくる。永命魂を獣静に渡さないためには二人の敵を倒すしかない。
単なる報酬目当てだった忍務は、禁忌の流出と暴走を食い止めるための戦いとなった。
譲れぬ想いに煌く銀の剣が、揺れる春花の心に新たな試練を与えようと迫る。
第六話へ続く