「れんほーちゃーん。おーなーかーすーいーたー。」
「そんなに言わなくても、分かっているわよ。」
「人和。わたし、もうこんな所いたくないわよ。ご飯も少ないし、お風呂だってちょくちょく入れないし……何より、ずーっと天幕の中で息がつまりそう!」
「それも分かってるわよ。でも仕方ないでしょ……曹操ってヤツに糧食が焼かれちゃったんだから。」
「仕方なくないわよ。別の所に行けばいいでしょ。今までだって、そうやって移動してたじゃない。」
「……私たちの活動が朝廷に目を付けられたらしくてね。黄巾党の討伐命令が大陸中に回っているのよ。」
「……はぁ?私たち何もしてないわよ!」
「まわりの連中がね……」
「なら、置いていけばいいじゃない。」
「何度か試してみたけど、その度に誰かが寄ってきて、一人来たら、百人来るんだから。」
「まったくもぅ。何でこんなことになったのー?」
「姉さんたちが『大陸のみんなに愛されたいのー!』とか『大陸をとるわよ!』なんて言ったからじゃない。……はぁ。」
一刀「秋蘭。本隊到着したって。」
「そうか……各隊の報告はまとまったか?」
「ちょうど終わった所やで。連中、かなりグダグダみたいやな。」
一刀「なあ。華琳の予想って結局なんだったんだ?」
如月「一刀、分かってなかったのか。あとで、説明する。真桜、報告を。」
「はいはい。まず、連中の総数だけど、約二十万……」
「うはー。ものすごい大軍隊なのー!」
「……なんやけど、その内戦えそうなんは……三万くらいやないかな。武器も食料も全然足りてるように見えんのよ。そのわりに、さっきもどっかの敗残兵みたいなのが合流してたから……」
「さっきの大兵力は、その非戦力を合わせた上での数と言う事か。」
「せや。あちこちで内輪もめしとったみたいやから、一枚岩ではないみたいや。指揮系統もバラバラなんちゃうかな。」
如月「戦闘力を奪った連中をまとめて、わざと戦えない頭数を増やして、動けなくする。太りすぎればただの的と言う事だ。」
「……太りすぎたら……」
「……イヤな例えなの。」
「……同感です。」
如月「別にお前らは、もう少し食べてもいいと思うけどな。まぁ、太りすぎたら、細くしてやるよ・・・・俺直々にな。」
「「「「ひっ!」」」」
「何をそんなに怯えているんだお前らは?」
「秋蘭様、ウチら副長の鍛錬につきおうたことがあるんやけど……」
「三日くらいまともに動けなかったの。」
一刀「俺も一週間くらい動けなかった。もう、二度とやりたくない。」
「秋蘭様も体験してみては?私も正直やりたくありません。」
「そ、そんなにか。凪が拒絶するほどか。とりあえず、華琳様の本隊に伝令を出せ。皆は予定通りの配置で、各個かく乱を開始しろ。攻撃の機は各々の判断に任せるが……張三姉妹だけには手を出すなよ。以上、解散!」
んじゃ、配置につきますかね。
「張角様!張宝様!張梁様!」
「何?どうしたの?」
「敵の奇襲です!各所から、火の手が!」
「何ですって!すぐに消火活動を!」
「各々でやっているようですが、火の手が多いのと誰に指示をすればよいのかわからず……」
「ぐ……っ。無駄に増えるから……。」
「「「どうしましょう、どうしましょう……」」」
「ともかく、敵の攻撃があるだろうから、皆に警戒するように伝えなさい!火事も手の回るものが消せばいい!」
「「「はいっ!」」」
「……まったくもぅ。もう潮時ね。応援がどうこう言っている場合ではないわ。……よっと」
張梁が三人分の荷物を出す。
「何?その荷物?」
「逃げる支度よ。三人分あるから、皆でもう一度、一からやり直しましょう。」
「……仕方ないわね。でも、二人がいるなら。」
「そだねー。ちーちゃんとれんほーちゃんがいれば、何度だってやり直せるよね♪」
「そういうこと。そうだ、これも……」
「太平なんとかだっけ……?」
「もう、そんなのいいよぅ。二人がいれば何もいらないから、早く逃げようよー!」
「華琳様、秋蘭達先発隊が行動を開始したようです。敵陣各所から火の手が上がりました。」
「秋蘭からの伝令が届きました。敵の状況は完全に予想通り、当初の作戦にて奇襲をかけると。こちらも作戦通りに動いてほしいとのことです。」
「了解……桂花。決めていた通りに動きなさい。」
「御意!」
「先日あれほど苦戦したというのに……何ですか、今日の容易さは?」
「少数の兵で春蘭程度を扱える器はいても……あれだけの規模の兵をまとめ、扱える器はいなかった。ただそれだけのことよ。」
「なるほど。私程度を……って華琳様!それはひどうございます。」
「ふふ、冗談よ。」
「華琳様。そろそろ、こちらも動こうと思うのですが……号令をいただけますか?」
「あら、もう?もう少し春蘭と遊んでいたかったのだけれど……秋蘭達、張り切りすぎではない?」
「向こうの混乱が輪をかけてひどいのでしょう。急がなければ、張三姉妹がこちらではなく、身内に殺されかねません。」
「それはそれで問題ね……分かったわ。」
後方の兵へ向き直り、力強い号令をかける。
「皆の者、聴け!汲めない霧は葉の上に集い、すでにただの雫と成り果てた!山を歩き、情報を求めて霧の中をさまよう時期はもうおしまい。今度はこちらが飲み干してやる番!ならず者どもが寄り集まっただけの烏合の衆と我との決定的な力の差……この私にしっかりと見せなさい。総員、攻撃を開始せよっ!」
一刀「みんな、華琳達本隊が来た。本隊と合流する。秋蘭と沙和と真桜の隊が右翼。俺達は季衣と如月と合流して左翼だ。」
「兄ちゃーん。」
如月「よっ!おまたせ!」
一刀「二人とも大丈夫だったか?」
如月「こっちが一方的過ぎて可哀そすぎだわ、ありゃ。」
「うん。で、華琳様も来たし、そろそろかなって如月兄ちゃんが。」
一刀「こっちも合流しようと思ってたんだ。ちょうど良かったよ。」
「隊長、指示を。」
一刀「いや、俺そういうの苦手だし。軍師タイプだからむかないと思う。」
「なら、副長お願いできますか?」
如月「俺か、しょうがないな。」
あー、あーと声出しをおこない、
如月「これより俺らは本隊に合流、合流後は本隊左翼として攻撃を続行する。ただし、張三姉妹は生け捕りにしろ!この戦を持って黄巾党を殲滅させる。今までの借りを返してやれ!全軍突撃!」