こりゃ頑張らないかんな。
扉を開けた先は、広大な荒野だった。
「うわー、すっげーな。見渡す限り荒野だな。とりあえず、近くに村か町がないか探すか。トベルーラ。」
「本当に三国志の世界に来たんだなー。てか、マジで呪文使えるよ。」
と、トベルーラで空を飛びながら、村か町を探す。「誰か助けてー!!」と叫び声が聞こえる。よく見ると、同い年くらいの青年が、三人組に囲まれていた。
side一刀
「なんじゃこりゃーーーーーー!」
とりあえず、状況確認をしよう。えっと今日は、朝起きて、学校に行って、いつも通り授業をうけて、帰ろうとして、そこから……。
「そこから記憶が無くなってるなぁ。夢でもなさそうだし。」
でもなんでこんな所に?
「なんかヒントはないかなぁ?」
とポケットの中を漁っても、携帯、ハンカチ、小銭に。
「って、携帯があるじゃんか。ナビとか出来るかな?」
圏外
「圏外かぁ。って嘘ぉ!バッテリー無くなりやがった。はぁ、携帯電話。電池がなければただの箱。」
って、俳句みたいに読んでしまった。物が入らない分、箱以下だな。
「おい、兄ちゃんちょっと待てよ。」
……ん?なんだ?と振り返ると。
「……コスプレ?」
「はぁ?何言ってんだ?とりあえず、珍しいもんと服着てんじゃねーか。それ全部置いてけよ。」
と言いながら、剣を頬に当てていた。
「えっ。ちょ、待って。誰か助けてー!!」
「うるせーよ。まぁ、しゃーねーから死ね。」
剣が振り上げられ、振り落とされる。死ぬのかと思ったその時、”ガキン”金属同士の当たる音が聞こえた。
sideout一刀
「そう簡単に、人を殺そうとするなよ。」
運よく間に合ったな。
「テメー!邪魔しやがって!テメーも殺すぞ!」
リーダーらしき人がこっちに剣を振るってきた。
「遅いよ。」
と覇者の剣を、右腕に向かって切りつける。
「ギャーーーー!!腕が!」
「「アニキ!」」
「これ以上やるか?」
「ひっ!クソ、逃げるぞ。」
「「アニキ、待ってー。」」
「ふぅ。」
覇者の剣を鞘に納める。
「あの、ありが『おぬし達、大丈夫か?』ん?」
「え?」
と振り返ると、セクシーな女性がいた。
「見たところ、怪我は無いようだな。あと、そちらの剣をさげている御仁は強いな。」
「星ちゃーん。待ってくださいよー。」
「星、いきなり走り出してどうしたんですか?」
「風、稟。すまん、賊に襲われている人を見つけたのだがな、そちらの御仁が追っぱらってしまった。」
「おー、お兄さん、お強いのですねー。」
「それにしても災難でしたね。このあたりは比較的少ないのですが。」
「そうなんですか。あのー、すみません、名前を聞いてもいいですか?」
「我が名は趙雲、字は子龍と申す。」
「程立ですー。」
「戯志才と名乗っております。」
は?趙雲ってあの趙雲?あと程立に戯志才だって?程立は程昱だろ、戯志才って誰だ?てか、趙雲と程立が女の子?どうなってんだ?ともかく、名前聞いてるんだからこっちも答えないと。
「俺は、龍谷如月。」
「俺は、北郷一刀。」
「あと、一つ聞きたいんだが、さっき、別の名前で呼んでなかったか?」
「あぁ、あれは真名ですな。」
「「真名?」」
「真名とは、真の名であり、本人が心を許した証として呼ぶことを許した名であり、本人の許可なく呼べば問答無用で切られても、文句は言えないほど失礼にあたるものですよ。」
「マジっすか。良かった呼ばないで。」
と冷や汗を流す。
「よし、では、我々は行くので、陳留の刺史殿に任せよう。」
「「陳留の刺史?」」
「ほら、あれに曹の旗が。」
戯志才の指の指す方向に砂煙が立ち上っている。
「では、官軍に見つかると色々うるさいので、さらば。」
「ばいばーい。」
「では、また。」
と言って、三人は行ってしまった。
ふたたび二人っきりになってしまったので、もう一度自己紹介と現状の確認を行った。その結果、ここは俺達の知っている歴史の三国志ではないことを確認。あと、一刀は歴史が大好きで、三国志の知識も結構知っていた。俺も一度死んでしまって、神様に転生させてもらったことを一刀に話した。ドラクエの呪文や特技を使えることも話した。スゲー興奮したので時間があるときに見せることを約束した。状況を整理している間に、騎馬隊が到着し、俺らを包囲していた。
・・・・・・・・
「華琳様、こやつらは……。」
「……どうやら違うようね。連中はもっと年かさの、中年男だと聞いたわ。」
「どうしましょう。連中の一味の可能性もありますし、引っ立てましょうか?」
「あの、君の名は?」
「それはこちらの台詞よ。貴方達こそ何者?名を訪ねる前に、自分の名を名乗りなさい。」
「俺は、龍谷如月。」
「俺は、北郷一刀。」
「龍谷に北郷ね。私の名は曹孟徳。こちらの二人は赤い服の子が夏候惇、青い服の子が夏侯淵よ。こんな場所じゃなんだし、移動しましょう。あと、連中の手掛かりもあるかもしれないわ。半数は辺り捜索。残りは一時帰還するわよ。二人もついてきなさい。」
マジかよ。と思いつつ、俺達二人は曹操についていった。
・・・・・・・・
「なら、もう一度聞く。名前は?」
「龍谷如月。」
「北郷一刀。」
「では、おぬし達の国は?」
「「この大陸から海を渡った所にある、日本という国だ。」」
「二人がこの国に来た目的は?」
「「分からない。」」
「ここまでどうやって来た?」
「学校からの帰りに、気付いたら、あの荒野にいた。」
「信じてもらえないだろうが、俺は一度死んでいる。神様って奴が間違えて俺を死なせてしまったらしいので、特別に転生させてもらった。」
「すまん、あとちょっと聞きたいことがあるんだが。」
と一刀。
「何よ。」
「ここって、魏なのか?」
「どういうことよ。」
「……華琳様?」
「魏という名前はね。私が考えていた国の名前の、候補の一つなのよ。」
「……は?」
「どういう意味ですか?」
「まだ春蘭にも秋蘭にも言ってないわ。近い内には言うつもりっだったのだけれど……。それを、どうして会ったばかりのあなたが知っているの!」
と曹操が語気を強めて聞いてくる。
「ちょっと落ち着いてくれ。ちゃんと説明するから。俺も、一刀も理解せざるを得なかったのだが、俺らがこの世界の未来から来た人間なんだ。」
「……春蘭、秋蘭、理解できた?」
「……ある程度は。しかし、にわかには信じがたい話ですな。」
「いえ、よく分かりません。」
「例えばだな夏候惇。目が覚めたら荒野のど真ん中にいて、項羽や劉邦に会った様なものだ。」
「はぁ?項羽や劉邦といえばはるか昔の人物だぞ。そんな昔の英傑に、今のわたしが会えるものか。何をそんな例えを……。」
「そういう馬鹿げている状態なんだよ。俺たちは。」
「……な、なんと。」
「確かに、それならば北郷が華琳様の考えていた魏という国の名を知っていたことも説明がつく。」
「春蘭、色々難しいことを言ったけど、この二人は天の国から来た遣いなのだそうよ。」
天の国の遣い?なんだそりゃ。と俺と一刀。
「五胡の妖術使いや、未来から来たなんて話をするより、そう説明した方が分かり易いのよ。あなた達、これからは自分のことを説明するときは、天の国から来たと説明なさい。」
「一刀、俺達は天の国の遣いになったぞ。」
「どうやら、そのようだ。」
はぁ。と二人でため息をつく。
「ならば、あなた達二人を保護します。」
「おう、こっちは行く当てがないから、助かるぜ。」
「そういえば、あなた達の真名を聞いてなかったわね。教えてくれるかしら。」
「いや、俺らには真名がないんだよ。真名にあたるとしたら、俺は如月、一刀は一刀ってところか。」
「そうなの?ならあなた達は初めから真名を名乗っていたのね。なら、こちらも真名を預けましょう。私のことは華琳と呼びなさい。春蘭も秋蘭も真名を預けなさい。」
「華琳様の命ならばしかたあるまい。なぁ姉者。」
「そうだな秋蘭。」
「ではあらためて、姓は曹、名は操、字は孟徳、真名は華琳。この真名あなた達に預けるわ。」
「姓は夏候、名は惇、字は元譲、真名は春蘭だ。」
「姓は夏候、名は淵、字は妙才、真名は秋蘭。よろしく。」
「姓は北郷、名は一刀、字と真名はないから好きな方で呼んでくれ。」
「姓は龍谷、名は如月、一刀と同じで字と真名は無い。如月と呼んでくれ。」
こうして、俺と一刀は華琳の所にやっかいになることになった。