真・恋姫†無双 転生伝   作:ノブやん

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二十九話

ある日、中庭に巨大なオブジェが置いてあった。木製のやぐららしきそれには、基部に車輪がついていて動かせるようになっている。なんじゃこりゃ?

 

「あーっ!副長!」

 

「おー。副長やん。どしたん?」

 

如月「どうしたって、中庭に散歩しに来たら、こんなバカでかいのがあったから、気になって来た。」

 

一刀「如月もか。」

 

如月「お、一刀。凪も一緒か。」

 

「副長ー!真桜ちゃんがひどいのー!」

 

如月「ひどい?真桜、今度は何をやらかしたんだ?怒らないから言ってみな?」

 

「べ、別に何にもしてませんて!」

 

真桜は自分の無実を主張するので、一刀と凪の方を見ると、「何もやってない」というように顔をフルフルと横に振る。

 

如月「で、何がひどいんだ?沙和?」

 

「真桜ちゃん、これが何だか教えてくれないのー。」

 

如月「なるほどな。で、これ何?」

 

なんとなく予想はつくが、

 

「ふっふー。見て分からへん?どうしよっかなぁー。教えたろかなー?」

 

「ずっとこの調子なの!自分だけ知ってるなんてズルいのー!」

 

如月「一刀や凪は何なのか分かる?」

 

一刀「いやぁ、俺も何なのか分からん。」

 

「私も分かりません。」

 

「へっへっへー。知りたい?教えて欲しい?」

 

如月「いや別に。何なのか大体分かったから。」

 

一刀「え!?マジで!」

 

「えー!何なのー?」

 

「本当ですか!?副長!」

 

「えっ・・・・ちょ、マジで!?副長!?」

 

如月「まあな。真桜。これって、こーんな感じのヤツだろ?」

 

近くに落ちていた石を大きく振りかぶって、山なりに投げる。

 

「・・・・マジかいな。何で分かったん?」

 

如月「まぁ、なんとなく。」

 

他の三人は?を浮かべて首を傾げている。

 

如月「あ、けど、中庭で大きな物作ってると、華琳や桂花に叱られないか?」

 

「叱らないわよ。私の指示で作らせているのだから。華琳様にも許可を頂いているわ。」

 

如月「よっ!桂花。華琳も了承済みなんだ。ふーん・・・・」

 

「何?どうかした?」

 

「なんや?ウチの最高傑作になんか文句でもあるっちゅうん?」

 

如月「これ、もっと大きくなるだろ?もしも、あれだとすると、回転軸と本体がこれにくっつくだろ?」

 

「副長の言う通りや!この上にごっつい回転軸と本体の絡繰が備わって、もっとでっかく・・・・」

 

如月「門から出せるのか?でかくなっても。」

 

「「・・・・あっ」」

 

如月「はぁ・・・・。とりあえず、真桜。強度は落ちるかもだが、組み立て式にしたらどうだ?」

 

「うぅ・・・・。副長の言う通りにするわ。」

 

如月「そうしな。そういえば、桂花はどうしてここに?」

 

「そうだった!もうそろそろ軍議の時間だから向かおうとしてたのよ。」

 

如月「あらま、もうそんな時間か。一刀、そろそろ行こうぜ。」

 

一刀「ああ、そうだな。行くか。」

 

如月「凪。すまんけど後は頼むなー。」

 

「え、私・・・・ですか?」

 

「そうだよ、凪ちゃん!がんばって真桜ちゃんからこれが何なのか聞き出すの!」

 

如月「いや、そういう意味で言ったんじゃないんだが・・・・まぁ、いいか。それじゃあ、軍議に行ってくるわ。」

 

軍議が始まり、

 

「では、まずは秋蘭から」

 

「はっ。先日の袁紹と公孫賛の争いですが・・・・予想通り、袁紹が勝ちました。公孫賛は徐州の劉備の所に落ち延びたようです。」

 

反董卓連合での功績のあった諸侯には、漢王朝から官位なんかの褒賞があり、劉備は平原から徐州へ、華琳も領地をいくつかもらっていた。

 

「それで袁紹の動きは?」

 

「青洲や并州にも勢力を伸ばし、河北四州はほぼ袁紹の勢力下に入っています。北はこれ以上進めませんから、後は南へ下るだけかと。」

 

河北四州のすぐ南、海沿いの徐州が劉備の領地で、そこから内陸部が華琳の領地で、そのさらに南にある揚州に本拠地を構えるのが袁術だ。華琳と劉備は北を袁紹、南を袁術に挟まれていることになる。

 

一刀「なら、次は劉備か・・・・」

 

たしかに攻めるなら最小勢力の劉備だが、

 

「さぁ・・・・。どうでしょうね。」

 

一刀「どういう事?反董卓連合じゃ、勢力の弱い劉備や公孫賛が集中攻撃を食らってたじゃないか。」

 

「それは言いやすそうな相手だからよ。麗羽は派手好きでね、大きな宝箱と小さな宝箱を出されてどちらかを選ぶように言われたら、迷わず大きな宝箱を選ぶ相手よ。」

 

「領地が大きな我々が狙われると言う事ですか?」

 

如月「それとな流流。あと、華琳が治めてるってのもあると思うぞ。」

 

「なぜですか?きー兄様?」

 

如月「幼馴染で、小さい頃からこいつには負けたくないって相手。好敵手が華琳だからだと思う。」

 

「まぁ、そんな感じよ。国境の各城には、万全の警戒で当たるよう通達しておきなさい。・・・・それから河南の袁術の動きはどうなっているの?」

 

「特に大きな動きは・・・・我々や劉備の国境を偵察する兵は散見されますが、その程度です。」

 

「あれもそうとうな俗物だけど、動かないというのも気味が悪いわね。警戒を怠らないように。」

 

「はっ。そちらもすでに、指示を出しています。」

 

如月「桂花も大変だな。」

 

「華琳様から与えられた私の仕事だもの。名誉にこそ思いにすれ、大変だと思ったことはないわ。」

 

「そうね。手の空いている誰かに手伝わせたい所だけれど、秋蘭と如月には色々まかせているから無理だとして・・・・」

 

『・・・・』

 

一斉に黙るみんな

 

「使えそうなのがいませんから、いりません。」

 

「何だとぅ!」

 

如月「すまんな桂花。俺も少しは手伝えればいいんだが・・・・」

 

「いいわよ別に。あんたはあんたの仕事をちゃんとすればいいんだから。」

 

「なら、桂花には悪いけれど、もう少し情報を集めてちょうだい。他の者はいつ異変が起きてもいいように準備を怠らないように。」

 

『はっ!』

 

異変が起きてもいい様に兵たちを鍛えますかね。と思い動いていた数日後、非常招集がかけられた。

秋蘭の報告を聞く限り、旗印は袁、文、顔。敵の主力は全てそろっていて、三万らしい。対する攻められた城の人数は七百。しかも増援はいらないらしい。

華琳は増援を送らず、城の指揮官の程昱と郭嘉に袁紹が去った後に説明に来るように伝えろとのことと俺らに勝手に兵を動かさないことと命令を出したが、

 

一刀「お、おい春蘭。何やってるんだよ!」

 

如月「春らーん。華琳に兵を動かすなって言われたよなー。何やってんの?」

 

「袁紹ごときに華琳様の領土を穢されて、黙っていられるものか!」

 

「おいこら!自分ら何やっとんねん!」

 

一刀「霞!春蘭が例の城に応援に行くって・・・・止めるの手伝ってくれ!」

 

「・・・・ったく、ここもイノシシか!どあほう!」

 

「貴様も似たようなものではないか!」

 

如月「自制が効く分、霞の方がお前よりマシだよ!一刀は華琳を呼んで来い。全速力で!ここは俺と霞の二人で止めとくから。」

 

一刀「わ、分かった!」

 

如月「本隊、止まれー!止まれー!」

 

「貴様ら・・・・!どうしても止める気か!」

 

「当たり前や!どうしても行くっちゅうんなら・・・・」

 

「ふん、あの時の決着、もう一度つける気か?」

 

「ええなぁ・・・・!今度はどこからも矢なんぞ飛んで来ぃへんで?」

 

「上等だ!ならばいくぞ!」

 

「来ぃ!」

 

春蘭と霞が打ち合い始めて間もなく、一刀が華琳を連れてきた。

 

「何をしているの!」

 

「か、華琳様っ!」

 

「如月!どういうこと!説明なさい!」

 

如月「そうだな・・・・」

 

「でええええええいっ!」

 

「くぅっ!」

 

如月「終わったようだし、本人から聞いてくれ。」

 

「そうね。」

 

「今度はウチの勝ちやなぁ。春蘭。」

 

「い、今のは油断して・・・・」

 

「見苦しいわよ、春蘭。」

 

「うぅ・・・・華琳様・・・・」

 

「で、一体どういう事なの?説明なさい。」

 

「い・・・・いかに華琳様のご決断とは言え、今回の件、納得いたしかねます!袁紹ごときに華琳様の領土を穢されるなど・・・・」

 

「それで兵を勝手に動かしたわけね?」

 

「これも華琳様を思えばこそ!」

 

「はぁ。もう少し、説明しておくべきだったわ。いいわ、出撃なさい。」

 

「華琳様!」

 

「おいおいおいおい!それでええんか?」

 

「ただし、あなたの最精鋭の三百だけ動かすこと。」

 

「華琳様の信任を得た以上、出来ぬことはありませぬ!」

 

春蘭はそう言うと、三百を引き連れ出撃していった。その後、華琳が霞に残った兵たちを率いて、盗賊討伐に向かわせ、この場をおさめた。

 

その日の真夜中、春蘭が帰還したとの報告が入り、春蘭を出迎えに行き、そのまま緊急会議となった。

 

「さて。それでは、説明してもらおうかしら?どうして程昱は増援がいらないと?」

 

「・・・・ぐー」

 

「こら、風!曹操様の御前よ!ちゃんと起きなさい!」

 

「・・・・おおっ!?」

 

すげーなあの娘。華琳の前で寝るとは。てか、漫才みたいだな。と思っていると程昱は説明をし始める。

説明としては、相手は数万の袁紹軍で前線指揮官の文醜は派手好きのため、たった七百の相手はしないだろう。だけど、華琳が増援を送ったらケンカを売られたと思い、そのまま攻め込まれ全滅だったのではと。

顔良が出てきたら?の問いには、顔良は必ず補佐に回ざるをえないとのこと。

もし、総攻撃をしてきたら?の問いには、損害が砦一つと兵七百ですむし、情報はすでにこちらに送っていたから無駄死にではないし、風評操作にも使えたはずとのこと。

 

「郭嘉、あなたは程昱のその作戦、どう見たの?」

 

「・・・・」

 

と、華琳に意見を求められた郭嘉。しかし、答えないことに不思議に思った秋蘭が答えるように促すと、

 

「・・・・ぶはっ」

 

突然、鼻血を大量に出す郭嘉。

 

如月「なぜ、鼻血!?」

 

「誰か救護の者を呼べ!救護ー!」

 

突然のことで慌てる俺達をしり目に

 

「あー。やっぱり出しちゃいましたかー。ほら、稟ちゃん、とんとんしますよ、とんとーん。」

 

と程昱が慣れた手つきで、郭嘉の首の後ろをとんとんしている。

 

「・・・・う、うぅ・・・・すまん」

 

「郭嘉さんは持病でももってるんですか?」

 

「いいえ。稟ちゃんは曹操様の所で働くのが夢でしたから。きっと緊張しすぎて鼻血が出ちゃったんでしょうね~。」

 

「そ、そうか・・・・」

 

「だ、大丈夫だ・・・・すまん、風。」

 

「いいえー」

 

「大丈夫かしら?郭嘉とやら。」

 

「は、はい。お恥ずかしい所をお見せしました。」

 

「無理なようなら、後ででもかまわないわ。」

 

「そ、曹操様に心配していただいてる・・・・ぶはっ!」

 

一刀「うわっ!またかよっ!」

 

如月「だからなんで鼻血だすんだよ!」

 

「衛生兵ー!衛生兵ー!」

 

「程昱、代わりに説明を・・・・」

 

と華琳に促され説明する程昱。

郭嘉は最悪、城に火を放ってみんなで逃げようと考えていたらしい。

その後、袁紹が南皮に引き上げたとの報告があり、程昱と郭嘉の両名はこのまま城に残り軍師として働くことになった。桂花は反対していたが、華琳の説得により納得したようだ。まぁ、桂花一人でこの城の軍師の仕事を行っていたからなぁ。作業分担できるのは賛成だ。

その後、華琳に一刀と流流と一緒に二人を部屋までの案内を命じられた。

 

如月「覚えてないかもしれないが、とりあえず、お久しぶりでいいのかな?程立?戯志才?」

 

「おおー、なぜその名をー?」

 

如月「そりゃ、覚えているさ。ここに来て初めて?会った人たちだからな。ちなみに、陳留の街の外れであった者だ。」

 

「ああ、あの強いお兄さんですかー」

 

「ああ・・・・あの時の」

 

「そうですかー。華琳様の所にいる天からの遣いって、お兄さんたちのことだったんですねー」

 

「そういえばあの頃の陳留の刺史って、曹操様だったわね・・・・」

 

如月「あの後、華琳に一刀共々拾われてね・・・・あの時、真名の存在を教えてくれてありがとね。」

 

一刀「そういえば、あの時、二人はなんで旅してたの?」

 

程昱曰く、見分を広めていたそうだ。偽名を使っていたのも女の旅は何かと物騒だからだそうだ。こんな時代だからなぁ。ちなみに郭嘉は偽名だったが、程立は偽名ではなかったらしい。改名した理由を聞くと、良い夢を見たからだそうだ。

もう一人の槍使いの彼女のことを聞くと、路銀が無くなったため、公孫賛の所に士官したらしい。しかし、公孫賛は袁紹に滅ぼされてしまったため安否が気になったが、縁があればその内会えるのではないかとのことだ。

とりあえず、新しく二人が仲間になった。

程昱の風と、郭嘉の稟の二人が。

 

 


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