真・恋姫†無双 転生伝   作:ノブやん

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七話

盗賊討伐を終えた数日後。俺と一刀は華琳に呼び出された。

 

如月「華琳、呼ばれたから来たけど、何かあったか?」

 

呼ばれた先には、華琳、春蘭、秋蘭がいた。

 

「ええ、如月、一刀、これを。」

 

と華琳に一枚の書類を渡され、俺は、さらっと流し読みした後に、一刀へ渡す。

 

一刀「えっと……街の治安維持……向上……。草案ってことは、まだ完成していないって事だよな?」

 

「あら、ちゃんと勉強の成果は出ているようね。偉いわ。」

 

如月「そりゃ、教える先生が優秀だからな。」

 

一刀「たしかに。でもスパルタすぎるだろ。」

 

如月「うるせい。そうでもしなきゃ、出来ないだろ一刀は。お前は自分で思っているより、頭いいぞ。自信持て。」

 

「おしゃべりはそこまでにして頂戴。一刀、勉強の成果を見せるついでに、その草案を本案に仕上げてごらんなさい。如月を補佐につけるわ。」

 

一刀「…分かった。やってみる。」

 

如月「了解。」

 

「よろしい。なら、期限は三日とするわ。」

 

如月・一刀「「三日!?」」

 

「華琳様!」

 

「華琳様…。」

 

「どう?不満?」

 

一刀「…何とか、やってみるよ。」

 

如月「一刀、時間がない。すぐにやるぞ。」

 

「如月の言う通り。グズグズしている暇はないはずよ。二人とも。」

 

次の日、

 

「華琳様…。」

 

「なぁに?」

 

「昨日の北郷の件ですが…少々、無茶が過ぎませんか?」

 

「あら。私に意見するつもり?」

 

「そんなつもりはありませんが…。しかし、あれを三日で仕上げるのは…いくら如月が補佐についているとはいえ、荷が重いかと。」

 

「でしょうね。で、その一刀と如月はどうしているの?」

 

「侍女達に聞いたところ、ずっと部屋にこもったままのようです。」

 

「なるほど……ね。」

 

「おや、噂をすれば。」

 

一刀「華琳!」

 

如月「やっと見つけた。」

 

「どうしたの?一刀、如月。もう本案が出来たのかしら?」

 

一刀「それは…。」

 

「む…?」

 

「あら。ずいぶん早いのね。見せてくれるかしら?」

 

「これなんだが…。」

 

「……」

 

「……」

 

「一刀。」

 

一刀「はい。」

 

「ここは……実際はどうするつもり?」

 

一刀「やってみないと分からない。」

 

「なら、こちらは?」

 

一刀「そこも、やってみないと……。」

 

「…秋蘭。」

 

「は。」

 

「この無能者達に、処分を。方法は任せるわ。」

 

「華琳様…。」

 

如月「華琳、ちょっとまて。」

 

「言い訳を聞く気はないわ。こんなものを本案として提出されては、仕事を任せた私の責任が問われてしまうもの。」

 

如月「それを本案と言ったつもりはないぞ。」

 

「…何ですって?」

 

一刀「あれからずっと二人で考えてみたんだけど…俺らの頭だけじゃ、これが限界だった。」

 

如月「この仕事をちゃんと仕上げるために、お願いがあるんだ。それを頼みに来た。」

 

「言ってごらんなさい。」

 

一刀「俺達を今の警備部隊に入らせて欲しい。三日じゃ、期限を過ぎるか。一日二日でも良い。現場で少しでも経験を積めば、もっと良い案や、さっき聞かれた事も答えられるようになると思うんだ。」

 

「秋蘭。二人の意見、どう思う?」

 

「悪い案ではないと思います。……が、たった一日現場に立った所で、何かが見えるとも思いませぬ。そうですね。せめて十日…いや、基礎から始めて、ひと月は欲しいかと。」

 

一刀「秋蘭?」

 

「……秋蘭がそこまで言うのなら仕方ないわね。なら、十日にしましょう。その間に現場の問題点をしっかり洗いだして、適切な解決案と向上計画を作り上げること。いいわね。」

 

一刀「…ああ!ありがとう、華琳!秋蘭!」

 

如月「ありがとう。」

 

そして俺達は、その日から警備部隊の一員となった。

 

警備隊に入って三日たち、

 

「それで兄ちゃん達が街の警備をする事になったんだ?なるほどねぇ…。」

 

一刀「ああ。やっぱり現場のことが分からないと、改善のしようもないからな。」

 

「如月兄ちゃんは?」

 

一刀「五つ向こうの警邏中。」

 

「それにしても兄ちゃん、何かあった時にはどうするつもりなの?武器だって使えないでしょ。」

 

一刀「いや、如月に鍛えてもらってるから、ある程度は使えるぞ。如月曰く、一般兵より少し強いくらいだって。」

 

「そうなんだ。じゃあ、今度手合せしてよ。」

 

「新入り!三つ向こうでケンカだ!子供と遊んでないでさっさと来いっ!」

 

一刀「あ、はい!」

 

「ぶー。ボク、子供じゃないよぉ……。」

 

「新入りーっ!」

 

「じゃあ、また今度な。」

 

「うん。分かったよー。兄ちゃんもがんばってねー。如月兄ちゃんにも言っといてねー。」

 

一刀「それにしても、三つ向こうの通りって…随分遠いな。俺達が着く頃には、ケンカなんか終わってるんじゃないか?」

 

それからさらに三日が過ぎて。

 

「よお。秋蘭から聞いて、見に来てやったぞ。」

 

如月「春蘭か。ま、見ての通りだよ。びっくりするほど人手不足でね…。なぁ、春蘭。」

 

「何だ?」

 

如月「警備に、本隊の兵を回せないかな?」

 

「…ふむ。そこまで人手不足か。」

 

如月「うん…。なかなか、なり手が少ないみたいでね。」

 

「とはいえ、それは厳しいと思うぞ。平時の時は問題ないだろうが、調練や戦が起きた時、その兵はすべて本隊に戻さねばならん。遠征ともなれば、その間はずっと本来の人数で警備をしてもらうことになるしな。」

 

如月「…だよなぁ。」

 

「まぁ、せいぜい華琳様の期待にお応えできるよう、良い知恵を絞りだすといいさ。」

 

如月「ああ、そうするよ。」

 

 

「十日目…か。結局、来なかったわね。二人とも。」

 

「そうですね…。あれらを任せた隊長からは、それなりに働いていると聞いていたのですが。」

 

「とはいえ、二人の人となりは知れたから、明日にでも相応な罰を与えることにしましょう。」

 

「はっ。」

 

コンコン

 

如月「夜分遅くにすまん。入っていいか?」

 

「如月?一刀も居るのでしょう。入ってきなさい。」

 

如月・一刀「「失礼しまーす。」」

 

「で、何の用かしら?」

 

一刀「計画書が出来たから見てもらいに来た。……まだ十日目だよな?」

 

「そういえば、刻限は決めていなかったわね。」

 

「は。私も聞いておりませんでした。」

 

「…なら仕方ないわ。見るとしましょう。」

 

一刀「頼む。」

 

そして華琳は秋蘭を横に置いたまま、書類に目を通し始めた。

 

「一刀。ここ。一町ごとに詰め所を作って、、兵を常駐させるとあるけど…。これはどういう計算なのかしら?」

 

一刀「今は四町から五町の間に、詰め所があるだけだろ?それだといざ騒ぎが起こっても、すぐに駆けつけられないんだ。」

 

「でもそれだと、人手も経費も馬鹿にならないわ。」

 

一刀「平時は半数を本隊の兵から回してもらいたい。残りはこちらで募集をかける。」

 

「…義勇兵ということ?それなら…」

 

一刀「いや、他の所から流れてきた人達の職業斡旋という形で。ちゃんとお給料は払う。兵役や雑役を免除して待遇を良くすれば、今より人は集まるだろうし…本隊に所属したい人がいれば、そちらへの推薦状を出してもいい。」

 

「なるほど…兵役を課さない代わりに、本隊の予備隊としての性格を与えるわけね。」

 

一刀「うん。基本は同じ戦闘部隊だしね。人がそろえば、本格的に本隊の訓練部隊を兼ねてもいいと思う。」

 

「で、経費の方はどう考えているのかしら?これだけの規模だと、活動費も今と桁が違ってくるけど。」

 

一刀「治安が良くなれば、商人だって来てくれる。商人が来てくれるのは、平和な街だという証拠。平和な街には、人が集まる。人が集まればその分、税も増える。税が増えた分、警備隊の経費も増える。増えた経費で人を募集して、雇う。警備隊の人数が増えれば治安が前より良くなる。治安が前より良くなれば商人がまた来てくれるの繰り返しかな。」

 

「ふむ。ならばこの計画を認めましょう。予想よりはるかに良い案よ。それなりに詳細も詰めてある。この仕事はあなた達に任せるわ。良くやったわ一刀、如月。」

 

こうして、治安維持向上の草案は本案となった。

 

 

 

 


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