なんか華琳の遠慮なささが好きみたいです。
如月「ふぁ~……呉と蜀の連中はいつになったら攻めてくるのかねぇ……ああ、火計に乗じて攻めてくるからそれまで待ちか。まぁいっか、眠たいから寝るか。お休みー。」
「副長!大変です!黄蓋が裏切り、各船に火が!」
如月「えぇ、今日かよ……まぁ、いっか。で、みんな黄色い布は着けたか?」
「はい!みな着けております!」
如月「なら俺は黄蓋さんの所に行ってくるわ。お前らは一刀の指示に従って行動しろ。」
「了解です!」
「ぐはっ……黄蓋様……先に逝きます……」
「くっ、なぜ同じ鎧を着た相手を、ここまで迷いなしに攻められるんじゃ?一体どういう手を使ったと言うのだ。」
如月「いやーそれはさ、この黄色い布を巻いてるからなんだよね。」
「如月!いつの間に!どうやって来た!?」
如月「これでもさ天の御使いの片割れだからね。空くらい飛べるさ。まぁ、一刀は無理だけどね。ははは。」
「だが如月。お主一人で儂らを止められると思うておるのか?風はすでにこちらに吹いておる。火計さえ成功すれば……」
如月「その火計もさ、ほらあれ見て。」
「ん?……なっ!?」
真桜が作った絡繰で鎖がすぐに外れるようにしてあるため、消火が間に合ってない船はどんどん鎖を外され、真桜の螺旋槍で沈没させていた。
火の移りがそれほど酷くない船には凪が気弾を放ち、爆発させ炎を吹き飛ばしていた。そのほかにも兵達が頑張って消火活動をしている。
「なんと、気の爆発や破壊で火事をかき消し、鎖の連結部もいとも簡単に外せるようにしてあるとは……」
如月「さぁ、どうする祭さん?兵達と一緒に投降してくれたら楽なんだけどさ。」
「はっはっは、アホなことを言うでないわ。お主を討ち取って儂の命と引き換えにこの火計を成功させる!」
如月「はぁ……しょうがないか……スピオキルト。準備かんりょ…おっと!」
「はぁ!」
「でりゃ!」
如月「まったく、いきなり斬りかかってきやがって……うおっ!」
キン!キン!キン!と、飛んできた矢を打ち落とす。
如月「いやー、これが黄公覆殿の弓術か。」
「さすが如月。じゃが、これならどうじゃ!」
次は四本同時に飛んできた上に全部タイミングがバラバラで飛んできた。
如月「うお!あっぶねー……」
「オラァ!」
「死ねぇ!」
兵士が数人で斬り付けてきたがそれをかわし、首を刎ねていく。それでも兵達が斬りかかり、それを補助しながら矢を放ってくる祭さん。
「ほう……中々やるのぉ。」
如月「こちとら多対一の戦闘訓練ばかりやってるからね。夏候惇と夏侯淵の二人に比べればよゆーよゆー。」
「副長!大丈夫ですか!?」
如月「大丈夫だ。こっちは任せておけ!お前らは引き続き消火と蜀と呉がすぐに来るから迎撃準備を!」
「はっ!ご武運を!」
「良いのか?味方を呼ばんでもっ!」
ヒュン ヒュン ヒュン
ガキン ガキン ガキン
如月「だから言ったでしょ。よゆーだって!」
祭さんが放つ矢を落としながら兵を斬っていく。全ての兵を斬り殺し、残るは祭さんのみとなった。
如月「さて、残るは祭さんだけだね。」
「……化け物か、お主は。」
如月「それ、ひどくないっ!」
『如月!』
如月「ん?ああ、華琳に春蘭に秋蘭か。来るのが遅かったな。」
「ええ、少しね。黄蓋よ、大人しく投降しなさい。」
「ぬかせ!我が身命の全てはこの江東、この孫呉、そして孫家の娘たちのためにある!」
「そう……秋蘭。」
「はっ。」
如月「あー、華琳、秋蘭。悪いけど俺にやらせてくれないか?」
「なんと……」
「あなた……」
如月「祭さんもいい?秋蘭にって言ってたけど。」
「そうじゃな。お主には世話になったからの。」
そんなやり取りをしていたら
「祭!」
「祭殿!」
ようやく呉の連中が来た。まぁ、火計が成って混乱してる中、祭さんを助け出そうとしてたみたいだが、こっちが速攻で対応したもんだから出遅れたみたいだな。
「おお、冥林に策殿!」
「祭殿……ご無事か……」
「ははは、無事なものか。お主と無い知恵を絞って考えた苦肉の策も、曹操に面白いように見向かれておったわ。」
「しかし……ご無事で何よりです!早くお戻りください!」
「……ふむ。それはちと、難しそうじゃ。お主らの船とも距離がある上に、目の前にいるのが呂布と互角に戦う男じゃぞ。逃げれる気がせんわい。」
『祭!』
「蓮華様に小蓮様……お二人の護衛の任を賜っておきながら、ろくにお守りできずに本当に申し訳ありませぬ。」
「祭ぃ……」
「小蓮様にもこの黄蓋秘伝の手練手管、ご教授したかったのじゃがな……」
「そんなの、これから教えてくれればいいじゃない!」
「あら?私には教えてくれないのかしら?」
「何と……ははは。蓮華様も言うようになりましたな。」
普段から真面目そうな孫権にそんなことを言われた祭さんは嬉しそうに笑ってる。
「皆、祭を助けるわよ!総員……」
孫策が祭さんを助けようと号令をかけようとしたが、
「来るなっ!」
それを祭さんがさえぎり
「聞けぃ!愛しき孫呉の若者たちよ!聞け!そしてその目にしかと焼き付けよ!我が身、我が血、我が魂魄!その全てを我が愛する孫呉の為に捧げよう!この老躯、孫呉の礎となろう!我が人生に、何の後悔があろうか!呉を背負う若者たちよ!孫文台の建てた時代の呉は儂の死で終わる!じゃがこれからはお主らの望む呉を築いていくのだ!思うがままに皆の力で!しかし決して忘れるな!お主らの足元には、呉の礎となった無数の英霊たちが眠っていることを!そしてお主らを常に見守っていることを!儂も今より、その英霊の末席をけがすことになる!如月!」
如月「遺言はもう大丈夫ですか?」
「ああ。さあ一思いにやれ!」
如月「分かりました……はっ!」
祭さんの鳩尾に拳をめり込ませ
「かはっ……如月……貴様……」
鳩尾を抑えたまま、くの字になりながらも顔をこちらに向ける祭さんに
如月「ゴメン、祭さん……ラリホーマ」
祭さんの額に人差し指をあてて、ラリホーマを唱える。
「お主……覚えておれよ……」
眠ってしまった祭さんをお姫さまだっこで担ぎ、
如月「はっ!」
トベルーラで孫策たちの船へ。
船に着地したら、孫呉のみんながこいつ何してんの?みたいな目で見てきたので祭さんを床へ降ろしたら、はっとしてみんなで駆け寄ってきた。
「祭!」
「祭殿!」
如月「大丈夫。寝ているだけだ。」
「なぜ……こんなことを……」
如月「んーそうだなぁ……あっ、そうだ!黄蓋さんがさ、こっちに来た時から、俺が造ったお酒ほとんど飲んじゃってさ。しかも兵達にも勝手に振る舞っちゃったから、その代金の支払いをさせなきゃでしょ。ちゃんと支払ってもらうために生かしてこっちに連れてきた。黄蓋さんに言っておいてください。飲んだ分はちゃんと払ってよね。おごりじゃないよ。って。」
「あ、ああ……伝え……承った……」
如月「んじゃ、俺は戻るんで。」
「このまま、はいそうですかと帰すと思ったか?」
呉の将の一人が戻ろうとしていた俺の背後に回り込み、首筋に刃を突き付けていた。
如月「はぁ……甘寧さんよ。それで優位を取ったつもりかい?……よっと!」
「うわっ!」
背後にいた甘寧の腕をつかみ、一本背負いで投げ飛ばしたあと、バックステップそのままにトベルーラで上空へ避難したと同時に
「黄蓋殿!」
「黄蓋さん!」
「祭さま!」
と蜀の連中がやってきた。その中に鳳統の姿を発見。ふむ、無事にあっちに戻ってたか。
如月「それじゃ、呉と蜀のみなさん。さよ~なら~。」
何か言ってるけど聞こえないからOK。
如月「ただいまー。がふっ!むぎゅっ!」
「さて、どういうことか説明してもらおうかしら?」
帰ってきた途端に鳩尾に正拳突きをくらい、うずくまった所で頭を踏まれ説明を求められた。
如月「その前に……足をどかして下さい……」
しょうがないわねとため息を吐きながら足をどかす華琳。
「で、訳を話しなさい。」
如月「えーっと祭さん……黄蓋さんはここで死ぬべきじゃないと思った。黄蓋さんを殺せば、やつらは敵討ちとばかりに突撃してきただろう。それに付き合わされる俺達も被害が甚大になる。それを避けたかった。ただそれだけだ。」
「ふーん。」
如月「……何だよ。ふーんって……」
「いいえ、別に。」
ニヤニヤした顔で俺を見る華琳。くそっ!
如月「あ、そうだ。」
「何?まだなにかあるの?」
如月「ピンク……桃色もいいけど、たまには白もいいんじゃないか?一刀も喜ぶと思うが?」
「桃色???……あ、あなた!いつ見たの!」
如月「踏まれてる時に目線を上げたらチラっと「ふんっ!」ありがとうございます!」
「華琳!敵は撤退していったで!追うか?……ってなにやっとるん?」
「別に何もしてないわ。」
そう言いながらも、俺を椅子代わりにして座ってる。
「で、霞。あの娘たちを追う必要はないわ。それよりも、船から降りて軍議を開くわ。みなに伝えてちょうだい。」
「おう。了解や!」
船から降りて軍議を開いた。建業を落とすための移動方法で陸路か水路でと議題に上がったが、
「陸路だっ!」
と春蘭の一声によって陸路となった。
まぁ、船酔いしてるやつらばかりだったからしょうがないよね。