真・恋姫†無双 転生伝   作:ノブやん

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七十三話

建業に着き、何の抵抗もなく無血開城により建業の中へ入った俺達はすぐさま城へ向かい、呉の地の情報を精査すると共に街の代表者たちへの挨拶も行った。

その後、呉領内での反乱分子の制圧に春蘭や秋蘭達が、各街へ赴き警備体制の設立を俺と一刀が中心に行った。

そんな慌ただしい日々が半年ほど続いたある日、

 

如月「とりあえずこんなものかな?」

 

クミン、ターメリック、コリアンダー、カルダモン、唐辛子、グローブ、ナツメグ、シナモン、胡椒の九種類の香辛料と豚肉が入った紙袋を持って市場を歩いてる。

 

如月「さすが建業。呉の首都だけあって陳留じゃ手に入りづらい香辛料が簡単にしかも、安く手に入るとはな。よし、帰るか。」

 

お目当ての物が手に入った俺はすぐさま作業に入りたかったので寄り道せずに城の食堂へと向かった。

 

 

 

如月「さてスパイスの配合をしなきゃだな。」

 

城の食堂に戻った俺はさっそく薬研(やげん)で各スパイスをすりつぶし、スパイスを配合していく作業へと入った。

 

如月「甘口用、中辛用、辛口用の三つが出来たけど本当に出来てるのかな?ちょっと作ってみるか。」

 

甘口用のスパイスを一前分鍋に入れて溶かしていくこと数分……

 

如月「全部溶けたかな?どれどれ…おお!ちゃんと出来てる!他のはどうだろう?」

 

中辛用、辛口用も一人前分溶かして味見すると

 

如月「お!両方ともいい塩梅だな。さてもう一回調合…「如月。何を作っているのかしら?」…ん?」

 

声がした方を向くと華琳の姿があり、その後ろに秋蘭、流琉、一刀の姿があった。

 

如月「どったの華琳?三人を引き連れて。」

 

「良い香りが政務室まで漂ってきてな。その香りが気になって皆、書類に手が付けられなくなってしまったのだ。」

 

一刀「俺は部屋で書類を片付けてた所にその香りが漂ってきて、居ても立っても居られなくなってここまで来たら、鉢合わせしたってことだな。それより如月、それは我が国の国民食である……」

 

如月「カレーだ。」

 

一刀「ひゃっほーい!!」

 

『加齢?』

 

如月「カレーな。歳食ってどうするんだよ…呼びにくかったらカリーでもいいぞ。まだ具材が入ってないが味見するか?」

 

『する!!』

 

四人ともハモりやがった。まぁ、味見でもさせないと納得しないだろうな。

おっと、華琳には甘口を渡さないとな。

味見用の小皿にすくい入れ、四人に渡す。渡されたものを華琳、秋蘭、流琉の三人はまず香りをかぎ、口に含みテイスティングしていた。一刀?一刀は渡した瞬間に口に含んで

 

一刀「あーこれだよ……これなんだよ。」

 

と感動していたな。

 

四人に甘口、中辛、辛口を味見してもらいお墨付きをいただいたので夕食用にもう少し配合しなくちゃな。

ちなみに華琳は中辛でギブアップしてたな。まぁ、辛いものが得意じゃないからしょうがないね。

 

如月「これでよし。」

 

「このまま置いておくだけですか?」

 

如月「ああ、あとは食べる前に温めるくらいだね。ありがとう流琉助かった。流琉が手伝いを申し出てくれたおかげでずいぶん作業が楽になった。」

 

「いえ!新しい料理ですし楽しかったので!それに久しぶりにきー兄様と一緒に料理をしたかったので。」

 

如月「そっか……ありがとう流琉。俺も流琉と一緒に料理が出来て楽しかったよ。」

 

そう言って流琉の頭をなでる。

 

「えへへ。」

 

最初は突然なでられて驚いていたがくすぐったそうにはにかんでいる。

確かに最近は二人とも……いや、みんな忙しくてこんなこと出来なかったからな。本当に今日だけみんなここに居るからな。

 

 

そして夕食時になり、みんな中庭へ集まってきた。

事前にみんなで食べようって事になってたのですぐにみんな揃った。

 

「そう言えば、昼に良い香りがしていたが?」

 

「ですねー。あの匂いを嗅いだらすぐお腹減っちゃって、お昼はラーメン十杯に桃饅と肉饅合わせて四十個食べちゃいましたよーあはは。」

 

「季衣。そりゃあいくらなんでも食べ過ぎやで……」

 

「あの香りのせいで仕事が手につかなっかたわ……これであの香りの元を出さないとしょうちしないんだから!」

 

「落ち着いてください桂花。まぁ確かにあの匂いの元が出されなかったら暴動が起きると思いますが。」

 

「と言うわけなので早く持ってくるのですよー!」

 

「どんな料理なのかなー?」

 

「副長が作った料理やから、おいしいと思うで?」

 

「そう言えば如月さんが市場で香辛料をたくさん買ってる所をお見かけしたな。」

 

「てことは辛い料理なんかな?」

 

如月「辛い系の料理だな。」

 

みんながしゃべっている所にカレーが入った鍋を持って登場。後ろにはご飯を持った流琉と一刀。

 

「あ、ふくちょー。」

 

「きー兄ちゃん!遅いよ!」

 

「如月!貴様、我々をいつまで待たせる気だ!」

 

季衣と春蘭から批難の声が聞こえる。

 

如月「ゴメンゴメン。ほら、準備出来てるからもうちょっと待ってろー。」

 

秋蘭にも手伝ってもらい四人でカレーをよそっていく。

 

「ふくちょー。そっちの鍋はよそわないの?」

 

如月「ああ。こっちの二つはこれより辛いから、これを食べた後で味見してくれ。」

 

流石に初めから中辛や辛口から食べてもらうわけにはいかないからな。

 

みんなに行き渡った所で一斉に食べ始めたみんな。春蘭と季衣は待ってましたとばかりにかきこみ、他のみんなもすごい勢いで食べ進めていた。

 

 

四刻後(約一時間後)には中辛、辛口の鍋も空っぽになってしまっていた。みんな満足してくれたみたいだ。

 

 

 

そんなカレー試食会から一週間後。

詰め所で書類整理をしていた俺の元に街の代表者を始め、商工会のみんながやってきた。

何事かと思ったが話を聞くとどうやらカレーのことを聞きに来たらしい。

ウチの武将たちが自慢までも行かないにせよ、口々においしかったと言っていたのを街の人や店主さん達の耳に入ったらしく、誰が作ったのかを聞いたら俺の名前が出てきたとの事だった。

 

如月「そう言うことだったのね。ビックリした……」

 

「そう言うことなのですよ副長さん。それに……」

 

如月「それに?」

 

「副長さんに作り方を聞いて来いと街のみんなに言われましてな。」

 

如月「ふむふむ。」

 

「もし聞いてこなかったら暴動を起こすと脅されましてな……」

 

如月「は?」

 

「私達商工会の方にも聞いて来いと言われまして……」

 

如月「マジ?」

 

『はい。マジです。』

 

おぉう、そんなことになってたのか……最近書類整理ばかりだったから知らなかったぜ……

 

『副長!俺達からもお願いします!』

 

と話を聞いていた警備隊のみんなが話に加わってきた。

 

如月「お、お前達もか……」

 

「俺達もカレーなるものが食べたいっす!」

 

「楽進様を始め他のお二人からも話を聞いていて、我々も食べたかったのです!」

 

如月「それほどか。分かった、分かったから!落ち着け!」

 

なんとかみんなをなだめ落ち着かせて

 

如月「作り方教えるから。材料も含めて教えるから、代表者が集まれる日程を教えてくれ。」

 

その後、街の代表者と商工会の代表者を集めての調理・試食会が行われ、その味を認めた商人たちの仕入れルートの確保、店主たちへのレシピの伝授などが話し合われた。

そして、商人たちがカレースパイスを領内各地に広めたことにより呉がカレー王国になるのはもう少し後の話……

 

 


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