漫画読んでたら思ってたより話の進行が早くて逆に書き辛かった。
俺、比企谷八幡の朝は早い。
というか、最近早くなった。
prrrrrr!!
俺の目覚めはセットした目覚ましのアラーム……ではなく、鳴り響く着信音によって目が醒める。
「……んだよ」
『おはよう比企谷くん!
いや実はひったくりの現場に居合わせちゃって!』
「…ヒーロー事務所に電話してヴィランの様相伝えとけ」
『あと隣町で立てこもり事件が…』
「他のヒーローが対処してるだろ」
『……あー、あとは……』
「お前はワーカホリックかよ…。朝くらい大人しくしてろオールマイト」
……とまあ、オールマイトの事件報告で起きるわけだ。
少し前にオールマイトにヴィラン退治の禁止令を言い渡してからは、通勤だけでなく近場の事件まで調べ上げて報告してきやがる。
が、オールマイトが雄英高校の教師になったことはすでに報道されている。
それがされた日の当日にはマスコミが雄英の校門に押しかけ、しかも雄英バリア(笑)の突破までしたそうだ。その日俺はいなかったので知らないが。
「まっすぐ目と耳を閉じて学校行ってろ。
そうすりゃ事件にも会わん」
『あ、ちょっ…』
pi!
オールマイトとの通話をぶった切り、俺はもう一度頭から布団にくるまった。
………のだが。
「………くそ、目が覚めちまった」
一度覚醒した頭はそう簡単には眠りにつかせてはくれないようで、布団でゴロゴロしても夢の世界には迎えそうになかった。
「…ちっ。仕方ない、日程でも確認しとくか」
今日は午前は特に俺の関わる授業もなしだから、書類を片付けて。
昼からはUSJ、嘘の災害と事故ルームでオールマイトと相澤先生、そして13号先生で救助訓練がある。
必要ならばついていくようにと言われたが、まあ3人も先生がいるんだ。
俺の出る幕も無ければ仕事も無いだろう。
よってここもスルー。
あれ、俺今日現地に行く必要のある仕事ないんじゃね?
学校行かなくていいかな?
「…………なわけないか」
何もなくとも学校に行かなければ欠勤扱いだ。
給料の問題もあれば今後の印象にも関わる。
与えられた仕事はこなさなければな。
☆☆☆
「………なーんて朝から憂鬱だったんだが…」
比企谷八幡の憂鬱はまだまだ続くらしい。
「追ってきたらこの裕福な家族ブッ壊してやるからな!
いいかあ、俺を追うなよヒーロー共!」
目線の先には筋肉モリモリマッチョマン。
右手に3人の人質を抱え、何人ものヒーロー相手に中指立てて挑発を繰り返していた。
「………プロも立ち往生か。
…………はぁ」
prrrr!
俺のため息に被せるようにしてポケットの携帯の音が響く。
相手は、オールマイトか。
『「もしもし、比企谷くん?」』
「は?」
携帯を耳に当てれば、何故か耳元と俺の後ろからユニゾンで聞こえてくる相手の声。
そして振り向けばそこには筋肉0のガリガリ野郎。
オールマイトが笑いながら手を振っていた。
「や、おはよう比企谷くん」
「おう。で、なに?」
「流石にあれはお願いしていいかな?
プロヒーローでも万が一があるし、人質は遅ければトラウマの原因にもなるしそれに…」
「…わかってるよ。
目の前でヴィランが暴れてるんだ。
能動的に対処する、仕事だろ?」
「………その仕事を制限されるのは辛いものだよ。
目の前で助けられる人が助けられないんだから」
「…目の前で助けられなかったやつは知らないところで知らない奴に助けられてるよ。
知らないところにいる奴を助けたいなら、少しでも長く平和の象徴をすることだな」
「………ああ。
…なあ、比企谷くん…」
「……雑談は終わりだ。
遅刻したくないしな」
オールマイトの言葉を無視して歩き出す。
俺が動き出すと同時にこの辺り一帯を俺の操る影が覆い隠す。
今まで何度もやってきた事と変わらない。
暗闇の中で人質を助け、ヴィランを拘束した俺はオールマイトの元には戻らず、そのまま学校への道を歩き出した。
「轢き逃げだー!」
「………………………。
……………はぁ」
☆☆☆
side緑谷
「わーたーしーがー!
高速回転で来た!」
午後の最初の授業、ヒーロー基礎学が始まるにあたりオールマイトが扉を勢いよく開けながら目視できない回転数で現れた。
すごく目が回りそうだ!
「…オェッ。
………ようし諸君!
昼ごはんはしっかり食べたかな!?
今日も適度にハードな授業の始まりだ!」
「オールマイトセンセー!
今日はなにするんですか!?」
「それはだね。
……これさ!」
そう言うと、オールマイトは『RESCUE』と書かれたカードを取り出してこちらに向けて来た。
「今日は災難水難なんでもござれ!
人命救助訓練さ!
ちなみにこの授業では私と相澤先生、それともう1人の先生がつくことになったので気を抜かないように!
それとコスチュームの着用は今回は自由とする。
訓練所はまた別のところにあるので続きはそこについてからだ!
着替えたら下にバスがあるのでそこに集合だ!」
「「「はい!」」」
「んー!いい返事!
では、準備開始!」
その号令と共に全員で着替えに向かった。
今日は前回の戦闘訓練でコスチュームがボロボロになってしまっているので体操服だが、人命救助はオールマイトが一番初めにヒーローとして行った偉業である。
だからと言うわけではないけど、今日は特に気合い入っていた。
「すっげえ!USJかよ!?」
そしてバスで移動した先にはUSJ、ではなくて水難や火事などが常に起こっているドームだった。
「水難事故、土砂災害、火事、etc。
あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。
その名も、
USJだった!
というか…
「スペースヒーロー『13号』だ!
災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」
「わー!
私好きなの13号!」
USJルームにいたのは13号。
個性『ブラックホール』。
その個性でどんな災害からでも人を救い上げる人気ヒーローだった。
宇宙服のようなゴテゴテしたコスチュームとは裏腹に、よく見れば可愛いと子供や主婦に好かれている。
「さて、あまり説明で時間をかけるのもアレだし始めようか!
じゃあ13号先生!お願いします!」
「ええ、分かりました。
ではこれより少しだけオールマイトから受け継ぎます。
えー、まずは………」
ズズッ…
「…ん?」
「一かたまりになって動くな!」
「相澤くん!13号!
生徒達を頼む!」
相澤先生とオールマイトの怒号。
その視線の先。
広間のようになっている USJルームのど真ん中に黒い靄のようなものが広がっていた。
そこからは異形な姿をした夥しい数の人間で…。
その中でも一際異彩を放つ、全身に手をつけた男が手に覆われた顔をこちらに向け、口の端を釣り上げながら口を開く。
「……ああ、いたいた。
平和の象徴、オールマイト。
ゲームスタートだな」
「13号に、イレイザーヘッド。
先日頂いたカリキュラムとは少しばかり違うようですが、オールマイトがいるなら些細なことですかね」
「そうだな、じゃあ早速。
平和の象徴を、殺せ」
☆☆☆
sideーーー
「ヴィラン!?
バカだろ!?
ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホ過ぎるぞ!」
初めは生徒の怒号から始まった。
ヒーローの卵が集まるこの雄英高校。
卵がいるなら鶏もいる。プロヒーローの溜まり場だ。
そんなところに襲撃をかけるなど逮捕してくださいと両手を手錠の前に突き出すような行為だ。
「大丈夫!!」
なにより、ここには『平和の象徴』がいるのだから。
「私がいる!!
君達を危険に晒したりなんかしないさ!」
「……センサーが反応していない。
電波系の個性で妨害してる可能性もあるな。
13号、避難開始!
学校に電話試せ!
上鳴、お前も個性で連絡試せ」
「っス!」
ガッシャン!
「「!?」」
「オールマイト?何を…」
「先に行く、後は頼んだよ!」
瞬間、オールマイトの姿がその場から消える。
「「「「「ッ!?」」」」」
吹っ飛んだ。
武器をかまえていた者、異形を振りかざしていた者、オールマイトを見縊っていた者。
その全てが紙屑に息を吹きかけるように吹き飛ばされた。
「……お前達が本命だな?」
「ああそうだ。
こいつは対平和の象徴。
改人『脳無』」
ヴィランが根こそぎ吹き飛び、その場に残っているのは3人だけ。
オールマイト、身体中に手をつけたヴィラン。
そして、オールマイト程の背丈、筋肉を持ち、全身真っ黒で脳味噌が丸見えの改人。
「さあ、遊ぼうか。
オールマイト」
「悪いがその遊びには付き合ってられないな!
CAROLINA SMASH!」
両腕をクロスして放った一撃はたしかに脳無の身体にぶち当たる。
しかしそれをまるで意に介さないように脳無は反撃に移った。
腹に一撃、脳味噌丸見えの頭に一撃、膝に一撃顎に一撃足の甲に一撃肩に一撃肘に一撃…。
「マジで全然効かないな!」
「効かないのは『ショック吸収』だからさ。
そしてパワーはお前並みだ。
つまりどう抵抗しても俺の遊びに付き合うしかないってこと。
………ああ、もちろん」
視界の端、1-Aの生徒と先生が居た場所に黒い靄が広範囲で広がって行く。
「お前の可愛い生徒にも参加させてやるから安心してくれ!」
「貴様!
お前達の狙いは私じゃなかったのか!?」
「お前だよ、オールマイト。
お前が相手じゃ有象無象じゃ相手にならない。
かといって使えるなら使わないとだろ?
なら、平和の象徴の矜持を少しでもへし折るために使おうってわけさ」
「くっ!外道が!
いや、そもそも相澤くんや13号がいたはず!」
「黒霧の身体さえ見られなきゃアイツらくらい余裕さ。
ヒーローの本拠地に攻めるんだぜ?
教員の個性くらい把握してるに決まってるだろ?」
余裕綽々、自分の思い通りにゲームが進行しているとヴィランは笑う。
ヴィランにとって自分は主人公。
ボスキャラを相手に弱点を調べ、有効な武器を作り、強力な仲間を手に入れた最終決戦。
強いはずの相手が自分の操る脳無を相手に手も足も出ない状況など、笑いが収まるはずもない。
「さあ!続きだオールマイト!
脳無相手にどこまで粘れるか見もの…」
そこでようやく、ヴィランの笑いが引いた。
なんせ、自慢の改人がまるで雑魚キャラのように吹っ飛ばされたのだから。
「………おい、オールマイト。
呼ぶにしてももうちょいやり方ってのがあるだろ…」
全てが上手く進んでいると思っていたヴィラン。
だが、現実はそう上手くことが運ぶことはない。
ゲームのボスですら第二形態があるのだ。
現実では、ゲームが突然ブラックアウトするくらいの理不尽だって起こり得る。
「………邪魔だぜ先輩」
「邪魔しに来たぜ後輩?
……結局何の先輩なんだよ」
ヒーローは遅れて登場する。
ならばやはり、比企谷八幡もヒーローなのだ。
「……ま、なんだっていい。
現行犯だ。
お縄につきな、ヴィラン」
話の展開的にどんどんオリ要素が溢れ出る。
なんでこんな設定にしたのか、過去の自分がわからない。