ワン・フォー・ワン《独りは一人のために》   作:亡き不死鳥

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おかしい…。
ただのチート無双書くはずが、ストーリー考えてて進まない現状がある。



ワーク

受験には倍率というものが存在する。

この学校を受けた場合何人中何人が合格できるのかを、単純な数値に置き換えたものだ。

例えば倍率が2であれば2人のうち1人が合格できるという計算になる。

 

さて、俺が何故大嫌いな数学なんぞの話をしているかというと、俺が雄英の教師になるにあたって一番初めの仕事に関係しているからだ。

まず、俺がこれから勤める雄英高校は職業ヒーローになるにあたって最先端の学校であり、当然その分目指す者も多くなり倍率は高くなる。

では雄英の倍率は幾つであろうか。

 

 

 

300である。

 

 

 

もう一度言おう。300である。

さらに言うなら300を下回ったことがないので300というだけで、実際はもっと上だ。

その倍率の正体とも言える定員数だが、たったの36人という狭き門も狭き門。ペラペラになる個性でもなければ通れないような難関である。

 

しかし定員数の少なさには当然理由がある。

雄英はヒーローの学校。故に教師は全員プロヒーローが勤め、生徒の個性の暴走や危険を未然に防ぐための処置なのだ。

 

いや話がズレた。

倍率の話だ。さて、倍率は前述したように何人中何人が合格したかの数値だが、倍率が300の雄英では300人に1人しか合格できないことになる。

まあそれはいい、重要なことじゃない。

生徒にとって重要でも俺にとっては重要ではないのだ。

重要なのは受験生の総数の方だ。

何故重要なのかと言えば………

 

 

「………ビデオ見終わんねぇ」

 

 

俺に担当された受験評価用ビデオが多過ぎるからである。

いや他の先生方にも同じ量渡されているのは知っているさ、それでも多い。

単純計算で1万人超えてる受験生がいて、1人十分の映像に対しての撃破ポイント、その受験生が行ったレスキューポイントを付けていき専用の用紙に記入する。

それを約四百人分締め切りである二週間後までに見て評価していくのだ。

受験の際は演習場に設置してあるカメラでリアルタイムな映像を映し出し、その場でもレスキューポイントの評価をしてはいるが、当然のことながらそれだけで全員を評価できるわけもなくこうして自宅でも仕事をさせられている。

なおオールマイトは緑谷を贔屓してしまうだろうからと審査への干渉を拒否していた。俺も何故それに便乗しなかったのかと若干後悔中である。

 

 

「単純な強化系なら簡単なんだがなぁ。遠隔は画面外になることもあったりで面倒だし。

………えっと次は葉隠か。個性【透明】、だるっ!」

 

 

あ、でもなんかめっちゃ助けてる。手袋以外見えないけど。

ってかロボット全然倒してねえな。いや素手で倒すのはできなくもないけど難しいしわかるっちゃわかるが。

え、こいつレスキューポイント知らないよね?スパイじゃないかってくらい人助けしてる。多めに点数入れとこ。

 

 

「あーとひーふーみーの、数えるまでもなく山積み。

………はぁ」

 

 

仕事じゃなくてひふみ先輩が山積みとかなら大喜びしたのに。

昼は事務所の仕事をして夜は学校の仕事をこなすとか、ただの社畜である。ちくせう。

 

 

「……コンビニでもいくか」

 

 

気分転換は大事。

幸いにしてここは東京。仕事場である事務所近くに居を構えたため、ちょっとあるけばそこいらにコンビニが建っている。

しかしマックスコーヒーがない。なんでないんだよ、東京は千葉の隣なんだからあってもおかしくないだろう。

おかげで毎回マックスコーヒーはネットで通販しなければならない。とても手間である。

 

 

「………さみぃな」

 

 

すぐそこまでと厚着というには薄い格好で出てしまった。

肘をこすりながら進むと、やはりと言うべきか口から白い息が飛び出てくる。

それがクルクルと回る姿を見ながら辺りを見渡すと、皆が皆楽しそうに道を歩いている。

酔っ払ったおっさん達。夜の街へ飛び出す学生。仕事帰りなのか早足で進んでいくOL。

こんな夜道でも、皆の顔に不安はまったく見られない。

それはここいらがオールマイトが根城にしている周知の場所だからか。

自分は被害にあわないだろうという無責任な自信があるからか。

………まあ、なんにせよ。

 

 

「………平和だなぁ」

 

 

 

 

 

 

「………あぁ、ほんと平和だよなぁ。先輩?」

 

「………誰?」

 

 

人の独り言に割り込むルール違反は犯罪じゃない。

が、犯罪じゃないからといってやっていいかと聞かれれば当然ノーである。

だって恥ずかしいもの!

一人で黄昏てるとか中学生で卒業しなきゃ!

今日は、風が騒がしいな。とかも中学生じゃなきゃ許されな……言ったやつ高校生だったわ。

 

まあでもそんな日常はどうでもいいにしろ、残念ながら目の前の相手を俺は知らない。

というかこんな奴知ってても知らない。

まず手。顔に手が張り付いてる。

次に手。肩に手が張り付いてる。

腕に手、頭に手と超人社会が始まりもう長いが、ここまで奇抜なファッションした奴も見たことがない。

 

 

 

「………てか先輩ってなんだよ。雄英の生徒かなんか?」

 

「はぁ?まさかだろ。生まれてこのかた学校なんて行ったことないってのにさぁ」

 

「いやそこは行けよ。そっちの方がまさかだわ」

 

 

……平然と会話しちゃいるが、どうにもこいつは油断ならない。

というか油断しそうで困る。

なんというか、年下を相手にしているような不思議な無邪気さを感じる。いや年下なんだけど。

反応が幼いというか、見た目より小さい子供と相対して相手をしているような、そんな違和感。

 

 

「それで?突然話しかけてきて何の用だよ。俺お前のこと知らないんだけど」

 

「そりゃあ初対面だからな。むしろ知ってたら気持ち悪くて殺してたよ」

 

「あんまり強い言葉を使うなよ。弱く見えるぞ」

 

「は?」

 

「んん!で、マジで何?てか誰?」

 

 

なんにせよいつまでも知らない人と喋るのは趣味じゃない。

他人を見たら他人と思え。他人に見られても他人と思え。

奇抜ファッションの人との長話とか罰ゲームでしかない。

 

 

「いやぁ、単なる顔見せだよ。たぶん、これから何度か会うだろうし」

 

「あっそ。俺の仕事で顔を見るって言ったらヒーローかヴィランか警察くらいなんだが。そのどれかか?」

 

「さあな。それは次会った時のお楽しみさ」

 

 

それだけ言うとクルリと踵を返してソイツは背中を向けた。

ほんとに何しにきたんだこいつ。

 

 

「ああ、そうだった。忘れてた」

 

「あん?」

 

「先生が、よろしく伝えてくれだってよ」

 

「誰だよ先生」

 

「……ふん」

 

 

いや答えろよ。名前言われても分からないから別にいいけどさ。

結局名前も分からない、顔見えないで何もわからないし。

……まあ、いいか。

コンビニに行かなくちゃいけないし。

ヴィランならヴィランでそん時に捕まえればいいだろ。今何もしてないからヴィランでも捕まえられないし。

そう結論付け、ソイツから背を向けて歩き出した。

 

 

 

 

「………じゃあな。ワン・フォー・ワン」

 

 

「……ッ!?」

 

 

即座に振り返る。が、そこには誰ももういなかった。

……おかしい。言っちゃあれだが、ワン・フォー・ワンはオールマイトの個性名的に知り合い連中にも話したことは少ない。被ってて恥ずかしいし。オールマイトが話していなければだが。

そもあれは名前をつけてもらったのを気に入って名乗っていただけで、ちゃんとした個性名もあるし。

 

 

「………厄年の気配がする」

 

 

その序盤を乗り切るためにも、飯食って仕事をこなしますかね(泣)




どんどん初期設定からズレるのはプロットなし人間の定め(常闇並感)

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