問題児たちより少し先に1人異世界から来るそうですよ? 作:アリアドネの糸
それから、黒ウサギに連れられて進むこと数分、
一人の少年の姿がみえてきた。
「ジン坊ちゃーん、新しい方を連れてきましたよー」
黒ウサギがジン坊ちゃんとやらに手を振りながら駆け寄っていった。
「お帰り黒ウサギ、そちらのお三方が?」
「YES、こちらの四人様が、ってあれ、も、もうお一方様は・・・」
黒ウサギが俺たちに尋ねる。
「十六夜君なら、ちょっと世界の果てを見てくるぜ
とか言って駆け出して行ったわ」
久遠が答える。
「なんで止めてくれなかったのですか」
「とめてくれるなよと言われたもの」
「どうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか」
「黒ウサギには言うなよと言われたから」
「うそです、絶対嘘です。実は面倒くさかっただけでしょお二人さん」
「「そう」」当然と言わんばかりの二人に黒ウサギが手をついてうなだれる。
「難波さんもどうして教えてくれなかったのですか」
なぜってそれは「同じ理由」
「難波さんまで・・・」
「黒ウサギ、世界の果てには・・」
「わかっています、
ジン坊ちゃん、お三方のご案内をお願いします。
黒ウサギは、問題児様を捕まえにむかいますので」
黒ウサギがそう言うと同時に黒ウサギの髪が青色からピンクに変色した。
「箱庭の貴族とうたわれるこのウサギを
馬鹿にしたことを骨の髄まで後悔させてやるのですよ」
そう言うと黒ウサギは風を巻き起こしながら、
俺たちの来た方向に、駆けだして行った。
速い。数秒で姿が見えなくなった。
「箱庭のウサギは随分速く跳べるのねぇ」
久遠も驚いているようだ。
「ウサギたちは箱庭の創始者の眷属ですから」
ジン坊ちゃんは俺たちにそう言った
「そういえばあなたの名前を聞いてなかったわね」
「申し遅れました、黒ウサギのコミュニティのリーダーをさせていただいる
ジン=ラッセルです。よろしくおねがいします。」
「そう、よろしく、あなたが案内してくれるのかしら」
「ええ、こちらへどうぞ。箱庭の中をご案内いたします」
ジン君について、アーチ形の門をくぐると、
そこには、にぎやかな街の風景が広がっていた。
「ここが、箱庭?」
春日部がそうつぶやいた。
「外から入ったはずなのに太陽が見えてる」
「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。
そもそもこの巨大な天幕は太陽を直接受けられない種族のために
設置されていますから」
それはつまり
「箱庭には吸血鬼が住んでいるのか?」
「え、いますけど」
ジン君に当然のことのように返された。
「この箱庭には様々な種が住んでいます。
それこそ神仏、悪魔、精霊、獣人、人間。
もっとも、この東地区のこの付近は、農耕地帯が多いので
住人たちの気性は穏やかですけど」
黒ウサギに修羅神仏などが住んでいるとは聞いたが、
本当になんでもいるとは・・・
「まだ召喚されたばっかりで落ち着かないでしょう。
詳しい説明は、軽く食事をしながらでもいかがですか?」
そう言うとジン君は俺たちをカフェテラスに案内した。
空いていた席に俺たちが席に座ると店員が注文を聞きに来た。
「ご注文は何になさいますか?」
「ええと、紅茶を2つと緑茶を1つ、あと・・・」
「ふゃんみゃん」久遠が注文していると猫が鳴いた。
「はいはーい、ティーセット3つにねこまんまですね」
「「「え?」」」この店員さん猫の言葉がわかるのか?
「三毛猫の言葉わかるの?」春日部が尋ねる。
「そりゃあわかりますよ、私は猫族なんですから」
答えながら注文をメモしている店員さんの頭には確かに猫耳があった。
この世界は本当に驚くことばかりだ。
常識というか固定観念がなくなると言うか・・・
「ふにゃんにゃん、ふやにふやお、にゃお」
「やだもうー、お客さんたらお上手なんだからー」
猫耳の店員さんは照れながらそういうと店の奥に行った。
何を言ったのかわからないが、口説いたことだけはわかった。
猫が口説くというなかなかお目にかかれない場面を目撃した。
「箱庭って凄いね、私以外に三毛猫の言葉がわかる人がいたよ」
春日部がものすごいことをサラッと言った。
「ちょっと待って、あなた、もしかして猫と会話できるの!?」
久遠が驚いた様子で春日部に尋ねる。
「うん、スズメ、ウグイス、ホトトギス、水族館でペンギンと話したこともある。
ほかにもイルカたちと友達」
「それは心強いギフトですね」
ジン坊ちゃんがつぶやく。
「春日部さんは素敵な力があるのね、うらやましいわ」
久遠がそう言う。
「でも、久遠さんも」「飛鳥でいいわ、よろしくね春日部さん」
「うん、でも飛鳥も同じ力」「え?」
「だって森の中で鳥たちと話してた」
「あぁ、違うわよ、そうじゃないの、私の力は」
そう飛鳥が説明を続けようとすると、
ガァン
「おやおや、東区画の最底辺コミュニティ、
名無しの権兵衛のリーダージン君じゃないですか。
今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」
一人の大男が失礼なことを吐きながら、俺たちが囲んでいた
テーブルの空いている椅子に勝手に腰かけた。
それからのことをまとめる。
・虎の名前はガルド、コミュニティの名前は〝フォレス・ガロ〟というらしい
ジン君曰くこの付近を荒らす獣らしい。
・ジン君のコミュニティは箱庭で魔王と呼ばれるものによって
コミュニティにとって最も大切な名と旗印を奪われ壊滅したコミュニティ
・魔王とは箱庭の天災で目をつけられたら最後、
ギフトゲームを無理やりさせられすべてを奪われる。
・私のコミュニティは旗印をかけたギフトゲームに連戦連勝。
・ジン君のコミュニティよりうちに来ませんかとガルドがいった。
今ここ
「結構よ、あなたのコミュニティには入らないわ。
ジン君のところで間に合ってるもの。春日部さんはどうするの?」
久遠が春日部に振る。
「私はこの世界に友達を作りに来ただけだから」
春日部も入る気はないようだ。
「あら、そうなの。じゃあ私が友達1号に立候補していいかしら」
「うん」
「紫香楽さんは?耀さんの友達2号に立候補しないの」
久遠と春日部がこちらを向く。
「春日部さんがよければ」
「うん、いいよ。よろしく」
俺にこの世界初めての友達ができた。
「そういえば、紫香楽さんはどうするか聞いてなかったわね」
ああ、忘れてた。もちろん…
「もちろん、断る」
ガルドが信じられないような目でこちらを見る。
「どうしてそのような結論に至ったのか理由を教えてもらえますか」
「私、久遠飛鳥は、財力も家柄も、
約束された将来もすべてを捨ててこの世界に来たの。
今更恵まれた環境に入れられて喜ぶとでも思う?」
「しかし」ガルドが説得しようと机に手をたたいて立ち上がった。
「黙りなさい」久遠がそういった瞬間、
ガルドの口が縫い付けらたかのように閉じられた。
「実は私、1つ気になっていることがあるの、
あなたはそこに座って私の質問に答え続けなさい」
飛鳥がそういうと、ガルドは椅子に座る。
その顔は驚愕に染まっていた。体が勝手に動いているようだ。
これが久遠の力か。
久遠はまず、ジン君に旗印をかけるゲームはそうそう行われるものなのかと尋ねる。
ジン君はやむをえない場合を除いてありえない、
旗印をかけることはコミュニティをかけることと言った。
それをきいた久遠はガルドに力を使い、
どうしてコミュニティにとって最も大切な旗印をかけたギフトゲームを
魔王でもないガルドが何度も簡単に行えるのかを吐かせた。
その理由はコミュニティから女性、子供をさらって
無理やりギフトゲームに合意させるというものだった。
さらに吸収したコミュニティから数人ずつ子供を人質を取っていた
久遠が続けて人質の子供たちはと続けると…
「殺した。初めてガキどもを連れてきたとき泣き声が頭にきて思わず殺した。それ以降は連れてきたガキはまとめてその日に始末することにした。だがこれがばれれば、組織に亀裂が入る。だから始末したガキの遺体は証拠が残らないよう」「黙れ!」
久遠があまりの外道ぶり、非道な行いを聞くに堪えられなり叫んだ。
「素晴らしいわ、ここまで絵にかいたような外道とは早々出会えなくてよ。
えせ紳士さん」久遠が指を鳴らして力を解除した。
体が自由になったガルドは怒りをあらわに虎のような姿になり、
「この、クソガキがぁ」飛鳥にとびかかろうとした。
そんなことをさせるわけにはいかないので
力を使い自身の重量を数十倍に引き上げ、
とびかかろうとしたガルドの体をその重量で押さえつけた。
ガルドは見た目とかけ離れた重量とその重みに押さえられる苦しさに
驚愕と苦渋の顔を浮かべる。
聞いていて俺も腹が立っていたので体重をさらに上げる。
「ぐうぅぅ」
「ありがと、紫香楽さん」「どういたしまして」
「さて、ガルドさん、ここであなたには2つの選択肢があるわ、
1つはここにいる全員を殺して口封じを図るか、
もう1つは法の手が届かないところまで逃げ延びるか。
どちらにしても、あなたのような外道はズタボロになって
己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ。
そこで提案よ。私たちとギフトゲームをしましょ、
あなたの〝フォレス・ガロ〟存続と私たち〝ノーネーム〟の誇りと魂をかけて」
あのあと十六夜を連れてきた黒ウサギが戻ってきた。
「な、なんであの短時間に〝フォレス・ガロ〟のリーダーと
接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」
「しかもゲームの日取りは明日!?」
「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」
「準備している時間もお金もありません!」
「一体どういう心算つもりがあってのことです!」
「聞いているのですか四人共」
「「「腹が立ったから後先考えずにけんかを売った。」」」
「「反省はしていない」」「反省はしてる」
「このお馬鹿様お馬鹿様お馬・・・反省してるなら・・」
黒ウサギはそう言いながら
どこからかハリセンをとりだし俺以外の2人の頭をたたいた後、
俺の頭をたたこうとした手を止めた。ふぅ。
「うぅ、どうしてこんなことに」
「ごめん、僕もどうしてもあいつが許せなくて」
「お気持ちはわかりますが・・・
まあいいです〝フォレス・ガロ〟相手なら十六夜さん一人だけでも・・・」
「俺は出ないぞ」「は?」
「は?じゃねぇよ、この喧嘩はこいつらが売ったんだ。
手を貸すのは不粋てもんだろ」
「あら、わかってるじゃない」
「もう好きにしてください・・・」
黒ウサギがすべてをあきらめたように肩を落とした。