問題児たちより少し先に1人異世界から来るそうですよ? 作:アリアドネの糸
黒ウサギが
「ギフトゲームが明日なら〝サウザンドアイズ〟に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと」
と言ったので俺たちは恩恵の鑑定をするために〝サウザンドアイズ〟に向かっていた。
黒ウサギ曰く
・〝サウザンドアイズ〟は特殊な〝瞳〟のギフトを持つ者達の群体コミュニティ
・箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティ
・ギフトの鑑定というのはギフトの秘めた力や起源などを鑑定する事
・自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなる
しばらく街路をあるいていると、
3人が桜、いや桜のような花びらを散らす街路樹に意識を向ける。
「桜の木・・・ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」
「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」
「・・・?今は秋だったと思うけど」
3人の言葉から考えるに俺たちは
「みんな違う世界からこの世界に召喚されたんじゃないかな?」
「難波さんの言う通りです。みなさんはそれぞれ違う世界から召喚されているのです。
元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」
「それってパラレルワールドってやつか?」
十六夜が尋ねる。
「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども・・・
今からコレの説明を始めますと一日二日では説明しきれないので、またの機会ということに」
確かに、そんな時間はないな。
正面に〝サウザンドアイズ〟らしき店舗と割烹着をきた店員の姿が見えてきた。
そしてその女性店員は今まさに看板を下ろそうとしていた。
それをみた黒ウサギが待ったを・・・
「まっ」
「待った無しですお客様。うちは時間外営業はやっていません」
かけられなかった。
その言葉を聞いた久遠が言う。
「なんて商売っ気の無い店なのかしら?」
それにかさねて黒ウサギも言う。
「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」
「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます」
突然の出禁発言に黒ウサギが憤る。
「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」
その黒ウサギに、店員は冷めたような眼と侮蔑を込めた声で対応する。
「なるほど、〝箱庭の貴族〟であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。
中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」
「・・・うぅ」
女性店員の返答に窮する問いに黒ウサギが言葉を詰まらせる。
すると、十六夜が言葉を詰まらせることなく答える。
「俺達は〝ノーネーム〟ってコミュニティなんだが」
「ほほう。ではどこの〝ノーネーム〟様でしょう。
よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
「・・・くっ」
その問いにさらに言葉を詰まらせる黒ウサギ。
縮こまった黒ウサギが小さな声で言う。
「あの、私たちのコミュニティに旗は・・・」
「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉ、久しぶりだ黒ウサギィィィ」
黒ウサギが店内から爆走してきた着物風の服を着た白髪の少女に
抱き・・・いや、フライングボディアタックをされ
少女とともに空中4回転半ひねりをして街道の向こうにある浅い水路まで飛んだ。
「きゃあーーーーー」
ボチャン。そして遠くなる悲鳴。
十六夜達は目を丸くし、女性店員は痛そうな頭を抱えていた。
「おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?
なら俺にも別バージョンで是非」
「ありません」
「何なら有料でも」
「やりません」
真剣な表情の十六夜と、真剣な表情でキッパリ言い切る女性店員。二人は割とマジだった。
なんというか、
「その、苦労されているんですね・・・」
「哀愁を込めた目で見ないでください」
そう答える女性店員の姿に日ごろの苦労がにじみ出ている気がした。
「すいません、・・・よろしければ今度愚痴でも聞きましょうか、
楽になると思いますよ」
余計だとは自分でも思ったが、
この真面目そうな女性店員の苦労を少しでも減らしたいと思った。
「・・・お気持ちだけで・・・いや・・・」
断られると思ったのにまさか迷うとは思わなかった。
これは愚痴の1つでも聞いてあげないと女性店員はストレスで倒れるかもしれない。
割と本気で、
「まぁ、考えておいてください」
「・・はい」
この女性店員さんの悩みの種となっているであろう白髪少女は・・・
「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」
「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに!
フフ、フホホフホホ!やっぱり黒ウサギは触り心地が違うのう。ほれ、ここが良いかここが良いか!」
そういうと白髪少女は黒ウサギに頬を擦り付けた。
「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」
黒ウサギに投げ飛ばされ、十六夜が足で受け止めた。
「てい」
「ゴバァ!お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!」
「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」
ヤハハと笑いながら自己紹介する十六夜。
というか美少女?変態の間違いじゃないのか?
あまりの展開に呆気にとられていた久遠が思い出したように尋ねる。
「貴女はこの店の人?」
「おお、そうだとも。この〝サウザンドアイズ〟の幹部様の白夜叉様だよご令嬢。
仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」
「オーナー。それでは売り上げが伸びません。ボスが怒ります」
どこまでも冷静な声で女性店員が釘を刺す。
濡れた服やミニスカートを絞りながら水路から上がってきた黒ウサギは複雑そうに呟く。
「うう・・・まさか私まで濡れることになるなんて」
「因果応報・・・かな」
「だね」
「ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。
異世界の人間が私の元に来たという事は………遂に黒ウサギが私のペットに」
「なりません!どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」
ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。何処まで本気かわからない白夜叉は笑って店に招く。
「まあいい。話があるなら店内で聞こう」
「よろしいのですか?彼らは旗も持たない〝ノーネーム〟のはず。規定では」
「〝ノーネーム〟だと分かっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する詫びだ。
身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」
む、っと拗ねるような顔をする女性店員。
彼女にしてみればルールを守っただけなのだから気を悪くするのは仕方がないことだろう。
4人は変態・・失礼、和装ロリについて暖簾をくぐった。
「すいません、押しかけてきたのはこちらなのに」
俺は女性店員に謝罪をした。
「いえ、かまいません・・・
本当に申し訳ないと思っているのであれば今度愚痴を聞いてもらえますか?」
そんなの「ええ、喜んで」
「お願いします、そういえば中に入られないのですか?」
おっと、いけない。おいて行かれるところだった。
「あぁ、それではまた後でお話ししましょう」
女性店員にそう言って、俺は店内に入った4人を追いかける。
女性店員さんの名前どうしようか考え中。