問題児たちより少し先に1人異世界から来るそうですよ? 作:アリアドネの糸
俺は布団の中で目が覚める。
窓から見える太陽はまだ水平線にかかっている。
俺は布団をたたんで押し入れの中にしまう。
まずは朝ごはんを食べよう。
下に降り、台所・・・異世界で台所と言えることに少しおかしさを感じてしまう。
テーブルに果物ががバスケットにいくらかある。
その中から適当に果物をいくらか取って、上に戻る。
畳の上に座って食べる。おいしい・・・
食べた後何もやることがない。気づいたのはもう食べ終わろうかという時だった。
退屈すぎる、かと言って掃除をしようにも如月さんがいつ来るかわからない・・・
掃除を中途半端なところで終わらすのは大嫌いだ。
本でもあれば暇がつぶせるのに・・・早く本が読みたい。
・・・今のうちに家にあるものを確認しとくか。
すべて確認し終わった。・・・暇。
退屈すぎる、そう思いながら部屋の畳の上に寝転がる。
それから約30分後、
暇なので千里眼で家の構造をよく見ていたら、家の外に如月さんの姿が見えた。
俺は玄関まで行く。
「紫香楽さん?」
玄関の向こうから如月さんの声が聞こえてきた。
「はーい」
そう言いながら、私は玄関の扉を開ける。
目の前に如月さんが立っていた。
「おはようございます、如月さん」
「おはようございます、紫香楽さん」
お互いに挨拶をした。
「準備は出来てますか?」
「はい。大丈夫です」
「それなら行きましょう。戸締りは忘れないでください」
「もちろんです」
私は玄関にカギをかけた。
ちゃんとしまっているかチェックも忘れずに。
私はカギをポケットに入れて、如月さんと〝サウザンドアイズ〟の支店にむかう。
「昨日はよく眠れましたか?」
如月さんが尋ねてきた。
「はい、おかげさまで」
「よしてください。私は何もしていません。家を提供したのもオーナーです」
「そのオーナーに聞いてくださったのは如月さんですよ。
あのままだったらどうなったことか分かりません」
「そこまでおっしゃるのであれば受け取っておきます」
「はい」
「話は変わりますがオーナーと話をしまして、あなたは私の秘書になりました」
如月さんが驚愕の事実を口にした。
「え?」
「だからあなたはあの店の従業員から店長兼オーナーのお目付け役の私の秘書になりました」
「・・・何がどうなってそうなりました?」
一度も仕事をすることなく昇格とは・・・
「あなたを送った白夜叉様が店に戻ってきたあと・・・
「紫香楽をおんしの秘書にする」とおっしゃいまして・・・
なんでも、私の護衛役もかねてとか」
「それで如月さんはそれを受け入れたんですか?」
「受け入れるも何もオーナーの命令です。それに・・・」
「それに?」
如月さんが少し照れくさそうな顔でする。
「私もあなたを秘書としてほしいと思っていました」
その言葉で胸の鼓動が早くなった気がした。
「そういわれるととても嬉しいです」
「いえ、よろしくお願いしますね」
「はい、よろしくお願いします」
「まあ、とりあえず店に行きましょう。
あなたの仕事服を貸さなければなりません」
私の今の服装はまさに現代日本にどこにでもいそうな感じの服装だ。
つまるところ洋服である。あの店の雰囲気、如月さんの秘書としてふさわしい服ではないだろう。
これを仕事服として使うことは無理だろう。
それから店についた私は如月さんに連れられて店の奥へと入る。
そこには、和服が3、4着かけられていた。
「どれが良いですか?」
「如月さんにお任せします」
正直どれも素晴らしいので如月さんに選んでもらうほうが早い。
「では、・・・これでどうでしょうか?」
如月さんが進めてきた和服は剣道とかで見る衣と袴だった。
「護衛役でもあるあなたに相応しいでしょうし、何より似合っていますよ」
如月さんがそこまで言うのであれば着ない選択肢はない。
「わかりました。これにします」
「外に出ていますので着替えてください」
そういって如月さんは外に出た。
私は今着ている服を脱ぎ、衣から着ていく。
手早く結んで、袴を前後確認しながらはく。
終わり。
「着替えましたよ」
「どうですか着心地は?」
中に入ってきた如月さんが聞いてくる。
最高だ。軽くて今まで着た服の中で一番良い気がする。
こういうのも恩恵なのだろうか・・・
「最高です。丈も丁度良いです」
「?少し長い気がしますが・・・」
確かに少し袖が長いが、
私は袖は端が少し手にかかるぐらいが好みだ。
「これぐらいが好みの長さなので」
「それなら良いです」
〝サウザンドアイズ〟に来てから貰いものばかりしている気がする。
「こんなに貰ったり、貸し出して頂いたりばかりで少し気が引けます」
「そう思うのであれば仕事をきちんとこなしてくれれば良いです。
これらはあなたに期待しているからこそです」
そう言われると身が引き締まる。
「誠心誠意努めさせていただきます」
「お願いします」
「そういえば、秘書と言っても何をすれば良いですか?」
「基本的に私の護衛と仕事のサポートです。
私の指示で動いてもらうことになります。
仕事の始めは私と同じです。終わりも・・・私の仕事が終わるまでです」
「それはつまり」
「申し訳ないですが、私が仕事を終わらない限り、紫香楽さんもずっと仕事が終わりません。
例え深夜になろうと次の日の朝が来ようと、私の仕事が終わるまで。」
「秘書なら当然ですよ」
少しブラックに感じないでもないが、
如月さんが働いているのに秘書兼、護衛が先に仕事を終えるのもおかしなことだ。
それに如月さんと一緒に働ける。やった。
「そういっていただけるとありがたいです」
「いえいえ」
「では、もうそろそろ開店もまもなくですから仕事を始めますよ。
私についてください」
「はい」
こうして私の異世界初の仕事が始まった・・・
如月さん曰く、オーナーがかかわることがないときはそこまで忙しくはないそう。
理由は、ここの支店立地上、客がほかの支店に比べて少ないかららしい。
店長の仕事として、従業員の指導や取引相手との商談などがある。
今は、それらがないので店前を掃除している。
私も手伝っている。掃除が好きなので、苦ではない。
が、
「並木があるので大変ですね」
花がひらひらと落ちているが、それが石造りの道の所々に散らばっている。
「いえ、もう何度もやっていることですし、掃除は嫌いではありませんから。
如月さんは掃除は嫌いですか?」
「大好きですね、掃除が終わった時の達成感が好きです」
「私もです」
そんなことを言っている間に、掃除が終わった。
「仕事もひと段落しましたし、店の中を案内します」
「ありがとうございます」
「最初は・・・」
如月さんは私に店内の案内を始めた・・・
「大方案内し終わりました」
「ありがとうございました」
「後5分ぐらいで閉店なのでその作業に移ります」
「なにをすれば良いですか?」
「店の外の看板を下ろしてきてください」
「まだ、閉店前なのですよね?」
「かまいません、閉店ぎりぎりに駆け込んでくる客はそうめったにいません」
「わかりました。では下ろしてきます」
「おろした看板は玄関の横あたりに置いといてください」
私は如月さんの指示で店外へとでる。
そして、看板を下ろす。
その看板を玄関の横あたりに置く。
終わり。
如月さんの下に戻る。
「下ろしてきました」
「ありがとうございます」
「次は何を?」
「次は、と言いたいのですが、紫香楽さんをオーナーが呼んでいます」
「どこですか?」
「オーナーの自室の前で待機してください」
「わかりました」
先ほど、如月さんに案内された白夜叉様の自室に行く。
白夜叉様の自室前に行くと、白夜叉様が立っていた。
「白夜叉様、およびですか?」
「おお、来たか紫香楽。
実はこれからある奴と話をするんだが、おんしについておいてほしくての」
「私は何をすれば?」
「おんしにはそばで話を聞いておればよい」
「わかりました。すぐですか?」
「うむ、では向かうとするかの」
そう言い白夜叉様は歩き出した。私もそれに続く。
「相手はどのような方なのですか?」
「わしと同じ幹部じゃ。まあ、わしは直系であ奴は傘下だがの。わしはあ奴が嫌いじゃ」
「温厚な白夜叉様が嫌いというとはよっぽどですね」
「おんしも見ればわかる」
みればわかる、そんな人物に会いたくはない。
そんなことを話しているうちに離れにある貴賓室についた。
「ここですか」
「うむ。入るぞ」
白夜叉様はそういうと貴賓室の入り口を開ける。
中には亜麻色の髪に蛇皮の上着を着た線の細い男がいた。
その男は、そばに女性2人を侍れせていた。
わざと着崩させた花魁風の着物を着た女性に酌をさせながら、
男が白夜叉様にニコリと笑い掛けた。気味が悪い。
「随分待たせてくれるね。コミュニティの同士をほっぽり出してまで接客する大事な客で?」
「阿ッ、何が同士か戯け。成り上がり風情がウチの娘どもを侍らせるとはいい度胸だの!
ほれ、お前たち。もうよいから閉店作業に戻るが良い」
「は、はい」
白夜叉様がそう言うと着崩れしていた女性たちは着物を正すと、そそくさと退場する。
「残念。どんな注文でも受け付けるっていうから愉しんでたのに。
ああいう気品のあるおとなしい娘って〝ペルセウス〟にはいないからなあ。
同じ幹部のよしみで売ってくれない?」
「・・・私は無礼には決闘をもって返すぞ、ルイオス殿」
白夜叉様の返答には怒気が含まれている。
白夜叉様にとって今のルイオスとやらの言動は侮辱以外の何物でもないだろう。
この男が言ったことはつまりは〝仲間を金銭で譲れ〟なのだから。
聞いていて気分が悪い。白夜叉様がこいつを嫌いという理由がわかる。
ルイオスは白夜叉様の言葉に肩を竦ませておどけたのみ。
「失礼。逆鱗に触れたというなら謝りましょ」
まったく反省の色が見えない声音でルイオスが言う。
「フン━━━して、〝ペルセウス〟を継ぐルイオスお坊ちゃんが私に何用だ」
え、この男がコミュニティを継ぐ?
白夜叉様が言ったことからはその男がコミュニティを破滅をもたらす未来しか見えない。
この男が〝サウザンドアイズ〟の幹部ということにも驚きだ。
「それは貴方のほうが知っていると思いますがね」
男と白夜叉様が睨みあう。ルイオスが訪れた理由を白夜叉様は知っているらしいが・・・
白夜叉様はフン、と鼻を鳴らして愛用の扇を広げる。
私もほしいな扇子。給料もらったら・・・給料はあるのかな?
給料がもらえるのか怪しい・・・
私は今も無一文なので、
生活に必要なものを自分で手に入れようと思ったらギフトゲームしかない。
毎回それで支払うのはめんどくさい。
これが終わったら聞いておこう。
「レティシアの事なら隠す気もないのう。
先に双女神の旗に泥を塗るような真似をしたのは貴様らだ。
一度は開催を引き受けたギフトゲームを取り下げるなど、本来なら降格ものだぞ」
「ええ、自覚しています。ですからこんな姑息で陰険で小物臭い、
どこかの誰かの嫌がらせにも涙を吞んで黙々と対応してるじゃないですか」
この言葉に白夜叉様はヒクヒクと青筋を立てていた。
こいつが安い挑発をかけたようだがそれを安い値段で買うほど白夜叉様は馬鹿ではない。
こいつは笑いながら言葉を続ける。
「それに参加予定だった者たちにも納得してもらったうえでの中止です。
最低限のマナーは守ったつもりだけどね」
「ああ、そうかい」
白夜叉様はこいつが口を開くたび不快な気分になっているようだ。私もだが。
「しかし肝心のレティシアだが、もう此処にはおらんぞ。フフン、二手ほど遅かったな」
「それぐらいわかってるさ。どうせ行き先の見当はついてますから。
所有物の過去ぐらいきっちり把握してるよ」
その言葉に白夜叉様が顔を怪訝そうに歪ませる。
「・・・ならば何故、私の元に?すぐにでも向かって連れ戻しに行けばよかろう」
「部下を向かわせてるから、ほどなく見つけるでしょうよ」
ルイオスは茶菓子を口に含んで謎の余裕を見せるルイオス。
その不気味さに白夜叉様は何か思ったのか、無言で席を立つと、
「行くぞ紫香楽」「はい」
扉に向かう白夜叉様について私も立って向かう。
次の瞬間男が茶菓子を乗せていた皿を扉に向かって投げた。
白夜叉様の行く手を遮るように。
「小僧。どういうつもりだ?」
白夜叉様が明確な敵意をもった声で問いかける。
「こんな事が二度と起こらないようにしておこう、という僕なりの配慮だよ。
今回の脱走劇の原因は、古巣のコミュニティに対する執着だ。
その執着を断っておかないと取引相手のところで迷惑をかけるかもしれないだろ?」
「まさか貴様・・・〝ノーネーム〟を襲う気か!?」
「襲うなんて失敬な。我らの所持品を盗み出した〝ノーネーム〟に天誅を!
━━━━とまあ、名目はこんなところかな?
名無しのコミュがつぶれたところで誰も怒ったりしないだろ?」
このこれはどれだけ白夜叉様を怒らせたら気が済むのだろうか。
「紫香楽!この方向、5キロ先を100メートル上から〝見て〟くれ」
白夜叉様が私に〝千里眼〟を使えと指で方向を指し示して指示を出した。
「わかりました」
その指示通りに〝見る〟
そこには大きな屋敷が2棟、その他様々な施設があった。
細かく見ていくと十六夜と黒ウサギと金髪の女性がいた。
そして十六夜たちに遠方から褐色の光が三人に差し込んだ。
その褐色の光から十六夜と黒ウサギを庇うように、金髪の女性が立ち塞がった。
すると褐色の光を全身に受けた女性は瞬く間に石造となって横たわった。
更に光の差し込んだ方角から、翼の生えた空駆ける靴を装着した騎士風の男たちが大挙して押し寄せる。
このことを白夜叉様に報告する。
「〝見え〟ました」
「それでどんな様子だ?」
せわしない様子の白夜叉様に私は〝見えた〟ものを言った。
「クソ、紫香楽すぐに行くぞ」
白夜叉様はそう言うと、戸に手をかけて出ようとする。
しかし、戸は動かない。
「あーちなみに出入口は僕がもう細工しちゃったから」
「この、小僧・・・!よほど命が惜しくないらしいな!?」
白夜叉様が怒りをあらわにする。
「あれ、同士を殺しちゃうの?同士殺しは重罪だぜ」
「阿ッ、下種一匹殺したところで誰も気にとどめんわ戯け!」
「うわぉ。
確かに〝白き夜の魔王〟と謳われた白夜叉様が相手じゃ僕も死んじゃうだろうなあ・・・」
そこまでわかっていてよくこんなことを言えるなこいつ・・・
「けど殺される前に、
この店一つなくすぐらいはして見せるぜ?
かわいい部下が粉々に砕かれるのはきっとつらいと思うな?」
その言葉に私の堪忍袋が尾が切れる音がした。
こいつは絶対殴る。そう心に誓うことで何とか抑える。
白夜叉様が手を出さない以上私も手を出すわけにはいかない。
下種が首のチョーカーにぶら下げている金の装飾をちらつかせる。
生首のような形をしている。
どうやらそれが下種の切り札らしい。
「くっ・・・・」
白夜叉様が歯噛みして睨む。下種は真正面からそれを受け止める。
膠着した両者はしばらくその姿勢を維持した後、白夜叉様が折れた。
「そうそう。おとなしくしとけばお互いに痛い思いをしなくていい。
僕らは同じ双女神の御旗を掲げるコミュニティなんだから」
「・・・・」
「大丈夫、殺しはしないさ。適度に嬲って二度と逆らわないようにするだけだよ」
私と白夜叉様の神経を逆なでするような言葉を吐き終わった下種は上着を正し、
ニヒャっと顔をゆがめた・・・
・・・絶対殴る。
オリ主は激怒しているようです・・・・