遊戯王5D's-TAG FORCE-赤帽子と愉快な仲間たち 作:中野 真里茂
ネオドミノシティ治安維持局からの発表があると告知され、今日の大イベントホールは市民や外部からの訪問客で埋め尽くされている。昨日この街に引っ越してきた俺は迷いながらも何とか会場までやってこれたが慣れない混雑で苦しんでいる真っ最中だ。俺がこのネオドミノシティにやってきた目的はこの町で行われるWRDP、正式名称はワールド・ライディングデュエル・グランプリに出場すること。何やら今までネオドミノシティはシティとサテライトという二つの町に分断されていたがネオダイダロスブリッジの開通によってその境界は消えたらしい。その記念でWRGPを開くそうだ。今日はその説明会かと思って足を運んだのだが今のところは何の詳しい説明もなくネットで見たような概要しか話されていない。
「皆さま、本日はようこそお越しくださいました。治安維持局副長官イェーガーよりご挨拶をさせて頂きます」
あの甲高い声のピエロみたいなのが街で二番目に偉い人らしい。全く信用できそうにない見た目だが人は見た目によらない、そういうことなのだろう。ピエロの口からはシティとサテライトが繋がったことやWRGPの開催目的などが話されている。そんなことはどうでもいいから詳細を教えてほしい
「そして本日はWRGP開催に伴いましてWRGP前哨戦と称したワールド・タッグデュエル・グランプリ、通称WTGPの開催を発表させていただきます」
周囲からは驚きの声と拍手が続々と上がっている。ピエロからのルール説明では参加は二人一組、年齢制限はなく市民でもそうでなくても自由に参加できるらしい。しかも会場はWRGPの決勝でも使われる周回コース。これは出るしかない。少し目的とは異なるがWTGP、WDGPの二連覇を狙うしかない。大会のことで頭がいっぱいになり説明の公判を聞いていなかったが特に重要では無さそうだったし気にすることもないだろう。ピエロの話が終わり拍手でイベントが終幕した。周りの観客たちは押し合いながら解散していく。
「おい!そこのお前、そんなところで突っ立ってないでこっちに来い!」
「はいっ!?」
混雑を掻き分けて帰るのは嫌だったので人が少なくなるまで待っていると急に前から大きな声で呼びかけられた。髪型が個性の強い三人組の男性たちだが彼らもデュエリストだろう。というかあの風貌は元キング、ジャック・アトラスと現キング不動遊星では……?
「悪いな、礼儀知らずで。ここに来てるってことはあんたもデュエリストなんだろ?俺達もそうさ。俺はクロウ・ホーガン、でこっちが遊星で、コイツがジャックだ」
すごい、本当にジャック・アトラスと不動遊星なんだ……ジャック・アトラスに話しかけられるなんて一生分の幸運を使い果たしたのかもしれない。そう感じながら悦に浸っているといつのまにかクロウとジャックは喧嘩を始めていた。それを慣れた様子で見て見ぬふりをして不動遊星が話してくれる。
「名前は何というんだ?」
「こ、コナミです。キングの不動遊星さんに会えるなんて感激です」
「そうかコナミか。そんなに畏まらなくていい、デュエリスト同士だ、遠慮はいらない。あと二人のことは気にしないでくれ。いつものことだ」
「そ、そうか、ありがとう。これからよろしく」
遊星とがっちり握手を交わすと喧嘩が収まりジャック、クロウとも握手を交わした。有名人とこんな簡単に交友が持てるなんて夢のようだ。その後も遊星たちと話していると三人はサテライトの出身でシティとサテライトの開通に一役買ったらしいことを聞いた。俺は思ったよりもすごい人物と話しているのかもしれない。しかもいつでも連絡をくれとデュエルディスクに連絡番号を登録させてもらった。デュエルディスクで何でも出来る時代ってすごい。そういえば俺がジャックに呼び止めれられた理由は、大会で優勝する気満々のジャックに対してクロウが未知の強敵がこの会場にいるかもしれないと言い、例えばあいつとかで指を刺されたのが俺だったから、らしい。偶然の出会いもあるものだ。
「まったく、相変わらず賑やかね」
長い時間話し込んでいると遊星たちの後ろから女性の声が聞こえた。遊星の肩越しに見てみるとそれはもう絶世の美女だ。彼女も遊星たちの仲間なのだろう。
「アキ、来ていたのか」
「ええ、WTGPならD-ホイールは要らないし私も参加できそうね」
「なぁなぁアキは勿論優勢と組むんだろ?」
「え、えぇ遊星が良ければ私は貴方と……」
クロウの質問に対してアキさんの顔はポッと赤く染まる。あぁそういうことかと。確かに顔も良くてクールでデュエルも強い、いい男なのは確かだよな。遊星も隅に置けないというか当然といえば当然のことかもしれない。
「いや、この場で慌てて結論を出すことじゃない。ゆっくりと決めたほうがいい」
「そうね……アカデミアからも誰か出場するかもしれないし」
遊星の答えに頭を抱える。そういう人かと。前途多難そうだが頑張ってほしい。ここでようやくアキさんは俺に気づき視線をこちらに向ける。今まで全く気付いていないわけじゃないだろうけど。
「すまないコナミ。紹介するのが遅れた、こいつは十六夜アキ、俺たちの仲間だ」
「十六夜アキです。よろしく、アキでいいわ」
「コナミです。よろしく、俺もコナミと呼んでくれ」
アキとも握手を交わし、細かい自己紹介や自分のデッキのことについて少し話していると今度はジャックの後ろの方から人がやってきた。今度は小さな子供のようだ。しかもめちゃくちゃ似てる、双子だろうか。
「遊星ー、アキ姉ちゃーん」
「龍亜も来ていたのか、龍可も一緒か」
「こんにちは、素敵なパーティですね……そちらの方は?」
龍可と呼ばれた子がこちらを向いて首を傾げた。すると遊星が丁寧に紹介してくれる。この子たちも遊星の仲間だろう、こんな小さな子もどこで知り合ったんだろう……
「俺は龍亜!よろしくねコナミ!今度デュエルしようよ!」
「私は龍可。龍亜とは双子なの、よろしくね」
「よろしくな。二人もWTGPに出るのか?」
「うん!D-ホイールには乗れないからWDGPには出れないけどWTGPならスタンディングだし出れるもん!優勝狙っちゃうもんね!」
夢を見る少年とは眩しいものだ。是非とも優勝を目指して頑張ってほしい。一方の龍可はあまり乗り気ではないらしい。デュエルが嫌いではないらしいが目立つのが嫌なようだ。引っ込み思案なのだろう。それからしばらく話した後、クロウ、アキ、龍亜、龍可は帰っていった。
遊星、ジャックはまだまだ知り合いが寄ってきて帰るどころではなさそうだ。二人の知り合いには俺も挨拶させてもらった。記者でジャックのおっかけをしているカーリー渚、ビン底眼鏡が特徴的だがその瞳は輝いていた。ジャックは夜食の買い物を忘れていたとカーリーから逃げるように去ったがカーリーもその後を付いていった。
その後に来たのはセキュリティの牛尾さんと狭霧さん、牛のようながちり体系で力仕事で一番頼りになりそうなのが牛尾さんで元はジャックの秘書をしていた美女で狭霧さん。何か困ったことがあれば頼ってくれと言われたのでデュエルディスクに登録させてもらった。初めての町で分からないことだらけだからよく頼ることになりそうだ。
さらに謎の金髪美女シェリー・ルブラン。遊星とは初対面のようだったがWTGPのパートナーにいきなり遊星を誘ったりと大胆な女性だった。遊星はすぐに断っていたが。俺も並みのデュエリストではなさそうだとお褒めの言葉をもらいパートナーに誘われたが場の空気で考えておくとお茶を濁してしまった。
「ん?」
遊星とシェリーが話している最中にふと後ろを振り返るとD-ホイールスーツに赤いサングラスをかけた男がじっとこちらを見ているのが見え、目が合ったような気がした。まだ残っている人がいるためたまたまこちら側を向いていただけかもしれないが誰とも喋っている様子は無いし動き気配も全くない。不気味と言っては何だが俺よりは遊星をずっと見ている気がするしシェリーとの話が終わったタイミングで少し話してみよう。
「遊星」
「ん、どうかしたのか?」
「いやさっきそこにいた赤いサングラスの男が……」
「男……?今はもういないみたいだが。どうかしたのか?」
「なんかずーっとじーっと遊星の方を見てた気がしたんだ」
傍にいた牛尾さんも赤サングラスの男が遊星を見ていたことを気にして話しかけてくれた。牛尾さんは街を守るセキュリティという職業柄、気にしすぎかもしれないと言っていたが、遊星はこの町では有名人であり気を付けた方がいいとも言っていた。牛尾さんは狭霧さんを待たせているからと足早に去っていった。セキュリティって大変な仕事だな。
「遊星、気をつけろよ。こんな都会じゃ何があるかわからないし……」
「俺を心配してくれているのか?出会ったばかりの俺のことを?」
「え、あぁ、まぁ心配もするよ。出会ったばかりとはいえ人に何かあるのは嫌だろ」
「フッ……どうやらコナミとは長い付き合いになりそうだ」
「そうなると俺も嬉しいよ」
そう言ってその日は解散になった。まさか新しい町にやってきて早々にキング不動遊星や元キングジャック・アトラスと知り合いになれるとは思ってもみなかった。明日からは本格的にこの町での生活が始まるしWTGPのパートナー探しやWRGPの準備のためにも今日は新しく借りたアパートに戻ってゆっくり休んで明日からこの町を探索するとしよう。