遊戯王5D's-TAG FORCE-赤帽子と愉快な仲間たち   作:中野 真里茂

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デュエルの組み立て方を教えてください。切実です


1日目 月曜日

 一日目 月曜日

 

 とてつもなく濃い初日から一夜明けて目が覚めたのは正午を回ってからだった。朝に弱いのは昔から変わらない。誰かが起こしに来てくれないとこうやって昼過ぎまで寝過ごしてしまうこともしばしばだ。これ以上部屋でだらけていると街を探索する時間が無くなってしまうので急いで準備をして家を出た。

 

 まずは腹ごしらえをしたいところだ。昨日の夜から何も食べていないのでいつお腹が鳴って恥ずかしい思いをするかわからない。俺は昨日無料で頒布されていたネオドミノシティ観光ガイドに目を落とした。流石は都会、カフェからレストランまでありとあらゆる店が揃っている。あまり食事に時間をかけている時間もないので多少の空腹は我慢して手早く済ましてしまおう。噴水広場にあるCAFE LA GEENにしよう。

 

『気まぐれメニューが評判を呼ぶ一押しスポット!当たり外れの大きさが話題となりあたりの日のデートはうまくいくこと間違いなし!』

 

 当たった日はいいだろうけど外れた日はどうするんだろうとどうしても思ってしまう。カフェの説明文を読みながら目的地に向かっていると突然現れた人とぶつかってしまい俺は尻もちをついてしまった。

 

「いてっ。す、すいません」

 

「このジャック・アトラスにぶつかるとは何事だ!」

 

「あ、ジャック」

 

「む、貴様、コナミだったか。気をつけろよ」

 

 ガイドを読みながら歩いていた俺の不注意だったがまさかジャックとぶつかるとは……そうだ、この町の住民であるジャックならカフェの場所を知っているだろう。とりあえず聞くだけ聞いてみよう。

 

「ジャック、このカフェの場所知ってる?」

 

「LA GEENか。俺の行きつけのカフェだ。ちょうど仕事帰りに行こうと思っていたのだ。ついてこい」

 

 まさか行きつけのカフェとは。元キングのジャックが行きつけというほどなのだからさそがし美味い店なのだろう。それよりもジャックが仕事をしていることに驚いた。ジャックって人の下で仕事するようなタイプじゃないような……大丈夫なのだろうか。

 

「ここだ。ブルーアイズマウンテンコーヒーを頼む」

 

「じゃあ俺は気まぐれメニューとサンドイッチで」

 

「かしこまりました~」

 

 噴水が見えるテラス席で昼のティータイムとは優雅なものだ。店員さんも可愛いし、俺も常連になりそうだ。注文が来るまでジャックと世間話をしていたがジャックはバイトをクビになったらしい。というかクビになり続けているそうだ。本人は俺のことを理解していないの一点張りだが話を聞いているとどう聞いてもジャック側に責任があるとしか思えない。クリーニング屋でアイロンに失敗して穴の開いたシャツをそのまま返すのは何が何でも酷いだろ。

 

「お待たせしました~。ブルーアイズマウンテンとピリ辛風ブラックフェザー・カフェ・オレとサンドイッチです」

 

「うーむ、やはり流石はブルーアイズマウンテン。香りが違う……」

 

「これ美味いな。今日は当たり日ってやつか」

 

 カフェで一服しながらジャックにこの辺りのカードショップや訪れるべき場所などを教えてもらった。ジャックにもついてきてくれないかと頼んだがこの後もバイト探しがあると断られてしまった。バイト探しじゃしょうがないよな。ジャックにも生活があるわけだし……それにしてもジャックが飲んでたコーヒー一杯3000DPしてたけど大丈夫なのか。仕事してもすぐクビになるんじゃお金ないんじゃ……

 

「それではな。俺は仕事を探すとする。俺はポッポタイムというガレージに遊星、クロウと住んでいる。いつでも訪ねてくるといい」

 

「何から何までありがとう。助かったよ」

 

 ジャックと別れてから地図を参考にカードショップを目指した。KURUMIZAWAという名前の店でデュエルアカデミアに近く繁華街にあるため学生から大人まで人気のショップらしい。俺が通っていたデュエルアカデミアには校内にカードショップもあったんだがネオドミノシティのデュエルアカデミアは無いのだろうか。そんなことを考えながら歩いているとカードショップの看板が見えてくる。同時にちょうど夕方になってきて授業終わりのアカデミア生が店に入っていくのが見えた。その後は子供たちが店に入っていった。ジャックの言っていた通り改めて人気店であることを知る。確かにこんな人通りの多い場所に店を構えていれば店が多少小さくても客が入るのは納得だ。店に入ろうとしたところで店の前に置かれたあるものに気づいた。

 

「ん?アイテムターミナル……?」

 

 観光ガイドを見てみるとアイテムターミナルの欄を見つけた。一回に200DPで食べ物、衣類、日用生活品、書籍、カードプロテクター、ホルダーなどのデュエル用品、ぬいぐるみ、映画、モンスターカードフィギュアなどありとあらゆる物が貰えるガチャガチャみたいなもので三つの目を止めるスロット形式になっている。当たった絵柄、色の中から一つの景品がもらえるシステムだが絵柄ももしくは色のどちらかが三つ揃うと景品が三つ貰えるお得なシステムまでついている。絵柄はデュエル、食品、日用品、フィギュアの四つ、色は赤、青、緑、紫、そしてレアアイテムの金の五つ。

 

「金色のレアアイテムが当たればその日一日ラッキーかも!かぁ。とりあえずやってみよう」

 

 デュエルディスクをかざして200DPを支払うとディスプレイに表示されたスロットが回りだした。その下に設置されたボタンで止めるのだろう。三つ同時止めボタンと一つずつ止めるボタンがあるが一つずつ止めてみよう。その方が射幸心を煽られる。ただそれだけの理由だ。一つ目、食品の紫、二つ目、食品の緑、三つ目、食品の緑。やった、ビギナーズラックというやつか、ディスプレイにcongratulationという文字が表示されると三つの景品が受け取り口にゴトゴトゴトっと落ちてきた。景品の内容は水と肉まん二つ。肉まんは今食べてくださいとばかりに熱々だ。流石に食べながらカードショップに入るのも悪いと思い、周りに座れるところを探したが見つからなかったのでお行儀は良くないと自覚しながらアイテムターミナルの脇で立ち食いすることにした。冷めた肉まん食べたくないしな。肉まんが包まれた封を開くとむわっと蒸気が顔に当たる。熱い肉まんを口の中で冷ましながら食べていると正面から視線を感じる。目線を上げると紫色の長い髪の毛をツインテールに結んだ美形の女の子、それもデュエルアカデミアの学生がこちらを、というか肉まんを潤んだ瞳で見つめていた。うるうるした目は何だかは奏で可哀想に見えてくる。さらにそんな目で見られると食べ辛い。

 

「あの、すいません」

 

「あら?何かしら」

 

「いや、何かしらではなくて。ずっとこっち見てたよね。肉まん見てましたよね」

 

「み、見てないわよ!ぼうやは自意識過剰なんじゃないかしら」

 

「ぼ、ぼうや!?もうそんな歳では……あの肉まんもう一個ありますけどいる?」

 

「え!?そ、そうね、頂けるというなら頂こうかしら」

 

 明らかに目の色が変わっている。俺が持っていた肉まんを差し出すとさらに彼女の顔は輝き嬉しそうに受け取るとすぐに封を開け美味しそうに頬張った。女学生が肉まんをモキュモキュと頬張る様子はまるで小動物のようで可愛らしい。思わず自分の肉まんを食べるのを辞めて見とれてしまった。

 

「あら、何を見つめているの?お姉さんに見とれてしまったのかしら?」

 

「いや、まぁ、可愛らしいと思って」

 

「うふふ、いいのよ、ずっと見ていても」

 

 妙に色気のある子だな。今どきの学生はこのくらいが普通なのだろうか。いやいや俺が学生の頃からそんなに経ってないしこの子が異常なだけだ。それにしても色気がある。

 

「ふぅ、ごちそうさま。ありがとう……そういえばぼうや名前は?」

 

「コナミ、昨日この街に引っ越してきたんだ。君の名前は?」

 

「私は藤原雪乃よ。デュエルアカデミアに通ってるわ」

 

「まぁ制服を見ればわかるよ。藤原さんは今日はカードショップに?」

 

「えぇ、でもそれより大事な用ができたわ。ねえ、ぼうやは昨日街に引っ越してきたのよね?」

 

「あぁしばらくはここに住むつもりだよ」

 

「それで今仕事は?」

 

「あーまだ見つかってないというか探してないというか」

 

「つまり無職よね?」

 

「まぁそうだな」

 

「お金はあるに越したことないわよね?働きたいわよね?」

 

「まぁそうだな……っておい!」

 

 藤原さんは俺の腕をがっつり掴むと唐突に走り出した……まさか無職の俺を治安維持局に女子高生に接触した罪で突き出すつもりか。そのためにあんな目で俺を見つけて俺からは話しかけるように仕向けたのか。なんていう演技力だ……でもお金あるとかないとか働きたいとかには繋がらないな……

 

「なぁどこに行くんだ?」

 

「アカデミアよ。詳しくはついてからよ」

 

 彼女のなすがまま走るがままに付いていくと本当にデュエルアカデミアに到着した。俺はもう何年も前にアカデミアは卒業しているわけだが。もうここで学ぶ事は何も無いんだが。それにこのままアカデミアに入ったら不法侵入とかでセキュリティに囲まれて逮捕とかされるのではないか。そんな俺の焦りは露知らず藤原さんはずんずんとアカデミアの中に入っていく。下駄箱を抜け長い廊下を抜け、彼女が足を止めた場所は購買だった。

 

「購買……?」

 

「友紀さん!連れてきたわよ。バイト」

 

「あら雪乃ちゃん!昨日頼んだのにもう連れてきてくれたのね!見つかったらでいいって言ったのに~」

 

 状況が全く呑み込めない。バイトだの頼りになりそうだのクエスチョンマークが頭の上でぐるぐると回るような思いである。藤原さんはお姉さんと俺抜きで親しげに話しを進めているしお姉さんもちらりとこちらを見ては笑みを浮かべている。

 

「あのすいません、ちょっとこっちにも説明してくれませんか?」

 

「あ、ごめんね、私はこの購買で働いている加藤友紀です。これからよろしく!」

 

「これからよろしく!?そんな話がどこでついたんですか」

 

「え?明日から購買で働いてくれるんじゃないの?」

 

 どうにも話が噛み合わず俺も加藤さんも頭が混乱し始めたところで二人そろって藤原さんの方を振り向く。彼女は彼女でにこやかに笑っているだけで解決の糸口を出そうとする素振りを全く見せていない。どう考えても彼女がこの事件の発端なのは間違いないんだが。

 

「仕事ないんでしょ?」

 

 唐突に藤原さんが言う。

 

「お金欲しいでしょ?」

 

 さっきと同じ質問だ。

 

「ここで働いたら?今なら仕事を探す手間も省けるわよ?」

 

 そういうことかとようやく納得する。つまりは加藤さんは購買で働いてくれる人を探していて藤原さんにもし働いてくれる人がいたら連れてきてほしいと依頼した。そこに現れた無職の俺を働くと言ったわけでもない俺を無理やり連れてきて働くことを強いているというわけか。

 

「わ、私からもお願い!給料もそんなに悪くないわよ?」

 

「働くのはいいですよ……ちょっと急すぎてびっくりしただけで。俺も仕事探さないといけないと思ってたところですし」

 

「本当!?お姉さん嬉しい!」

 

 加藤さんは嬉しさ余ってその場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。大人の女性でもこんなにはしゃぐことってあるんだな。逆に若いアカデミア生の雪乃は落ち着いた様子でひと息ついている。

 

「じゃ、ぼうや。明日からよろしくね。詳しいことは友紀さんに聞いてちょうだい」

 

「藤原さんはもうどこかへ行くのか?」

 

「カードショップよ。元々その予定だったでしょ。あとこれからよく顔を合わせることになるんだし藤原さんなんて他人行儀じゃなくて雪乃でいいわよ」

 

「そうか。じゃまたな雪乃」

 

 雪乃と別れた後、購買で働く上で大事なことなど基本的なことを教えてもらった。マニュアルは一応貰ったが乗っていることはあらかた教えてもらったし『困ったらお姉さんを頼って!』なんて自信満々に言われたし特に不安視することはないだろう。

 

「それじゃ、今日はこんなところね。明日からよろしくね」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いします、加藤さん」

 

「そんな固くならないでー。これから一緒にやっていくんだから友紀でいいわよ」

 

「じゃあ明日からよろしくお願いします友紀さん」

 

「うん、じゃあバイバーイ」

 

 アカデミアを出るとすっかり夜になっていた。ネオドミノシティにやってきて遊星たちと出会って一日目、昨日に続いて激動の一日だった。これから行きつけになるであろうCAFE LA GEEN。そして俺の職場となったデュエルアカデミア。俺が在学していたアカデミアより新しいし綺麗だ。今日は雪乃にアカデミアに連れていかれたが明日こそカードショップに行かないとな。それにWTGP、WRGPのパートナーもまったく探せてない。やることはたくさんあるが二日目も頑張ろう。

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