遊戯王5D's-TAG FORCE-赤帽子と愉快な仲間たち   作:中野 真里茂

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時間が経つのは早い


3日目 水曜日

「こんにちはー」

 

 何の変哲もない平日の昼下がり。今日も購買のバイトを終わらせ、シティを散策していた。先日ジャックに教えられた皆が住んでいるらしいポッポタイムというガレージを訪れたわけだが応答がない。ただ中から音は聞こえるので誰かしら人はいるのだろう。ここで無断で入ることもできるけど流石にそれは悪いか。とにかく応答があるまで声を出し続けよう。

 

「すいませーん。誰かいますかー?」

 

「はい」

 

「あ、遊星」

 

 玄関から出てきたのは遊星。でもいつものジャケットではなく作業着だ。遊星の手にはスパナが握られており、どこかオイル臭い。作業着も煤汚れが目立つ。

 

「こんな汚れた格好で済まない。ジャックもクロウも出かけていてな」

 

「そうなのか。残念。ところで遊星は何の仕事をしてるんだ?」

 

「D-ホイールの整備をしている。さっき汚れていたのはそのせいだ」

 

 遊星は一旦仕事を切り上げ、もてなしてくれた。なかなか良い家で三人で住むとしても十分すぎるほど広い。一見片付いているように見えて、部屋の隅には荷物が積まれていたり、ソファには脱ぎ捨てられた服がかけられているなど生活感は満点だ。まさに男だけの暮らしの縮図。

 

「で、今日は何の用だ」

 

「別に用があったわけじゃないんだ。この間、たまたまジャックと出くわして、ここに住んでるからいつでも来いって言われてさ」

 

「そういうことか。ジャックは今日もバイト探し、クロウは配達の仕事だ。昼間で家にいるのは俺ぐらいさ」

 

 遊星の淹れてくれたコーヒーを飲みながら、雑談をしてかなり時間が経った。歳が近いこともあり、話に花が咲いた。挨拶程度で済ませるつもりだったが、時計を見てみれば子どもはお家に帰る時間になっていた。

 

「長話になってしまったな。またいつでも来るといい。ホイールの修理でも構わない」

 

「ありがとう。頼りにさせてもらうよ。また来る」

 

 ポッポタイムを出たのは六時だった。太陽が沈み初め、綺麗なオレンジ色の空が広がっている。ポッポタイムから家に帰る道を歩いていると、中央広場に差し掛かったあたりで見覚えのある後ろ姿が見えた。紫色の長い髪をツインテールに結んだ女の子、俺をアカデミアのバイトに紹介してくれた人。名前は藤原雪乃。

 男性と歩いてるけど、あれだけの美人なら彼氏がいても何もおかしくないよな。それにしても男が一方的に話してるだけで雪乃は全然喋ってない。そうか、合点がいった。あの男は彼氏じゃなくてナンパだ。と分かったところでどうしろというのか。ナンパを断ろうが受け入れようがあいつの勝手だ。口を出すことじゃない。

 雪乃と雪乃に合わせて歩く男より俺の方が歩くスピードは速いわけで、二人を抜いて帰ろうとすると、後ろからカツカツとローファーで走ってくる音が聞こえる。振り返った瞬間、雪乃が俺の服の袖を引っ張った。

 

「しつこい人は嫌いなの。この人とデュエルして勝てたらお茶してあげてもいいわよ」

 

「は?」

 

「何だお前、この子の何だ?やろーってのか」

 

「は?」

 

 流れが完全にデュエルする流れだが。やるしかないのか。こんな意味の分からない状況で。

 

「「デュエル!」」

 

「ん?」

 

コナミ LP4000

 

男 LP4000

 

「俺の先攻! ドロー」

 

「お、俺のターン、ドロー」

 

 しまった。このデッキ、いつものデッキじゃなくてアカデミアで生徒と対戦する時用って友紀さんから今日もらって、生徒とデュエルした後、入れ替えるの忘れて、そのまま入れてたんだった……

 

「モンスターをセット、さらに手札の機械族モンスターをレベル合計8以上になるように墓地に捨てて、マシンナーズ・フォートレスを特殊召喚。カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 ナンパ男 LP4000 手札 1 伏せカード 1

          フィールド マシンナーズ・フォートレス 2500/1600

 

「いきなり高レベルモンスターかよ。俺のターンドロー。手札から魔法カード、サイクロン発動。伏せカードを破壊。さらに魔法カード、ブラックホール発動。あんたのモンスターは全滅だ」

 

「なかなかやるじゃないか」

 

「手札からならず者傭兵部隊を召喚。永続魔法、連合軍を発動。場の戦士族モンスターの攻撃力は、場の戦士族、魔法使い族の数×200ポイントアップする」

 

 ならず者傭兵部隊 1000/1000 → 1200/1000

 

「ならず者傭兵部隊でダイレクトアタック」

 

 男 LP4000→2800

 

「んぐぅ…」

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 コナミ 手札 1 伏せカード 1 

     フィールド ならず者傭兵部隊 1200/1000

     永続魔法 連合軍

 

「あんま調子乗るなよ……俺のターン、ドロー。カラクリ忍者 九壱九を召喚。ならず者傭兵部隊に攻撃!」

 

 カラクリ忍者 九壱九 1700/1500

 

 ならず者傭兵部隊 1200/1000

 

 コナミ LP4000→3500

 

「いってぇな……」

 

「モンスター効果発動。九壱九が戦闘で相手モンスターを墓地に送った時、墓地からレベル4以下の『カラクリ』と名のついたモンスターを守備表示で特殊召喚する。カラクリ守衛 参壱参を特殊召喚」

 

「そいつ、チューナーモンスター……まさか」

 

「九壱九に参壱参をチューニング、シンクロ召喚。カラクリ大将軍 無零怒。このモンスターのシンクロ召喚に成功した時、墓地から『カラクリ』と名の付いたモンスターを特殊召喚できる。墓地から九壱九を特殊召喚。ターンエンドだ」

 

 ナンパ男 LP3800 手札 1

フィールド カラクリ大将軍 無零怒 2800/1700

            カラクリ忍者 九壱九 1700/1500

            

 しまったなぁ。最初の手札がなかなか厳しかったからってブラックホールを切るのは速すぎた。次のターン、あの無零怒をどうにかしないと。

 

「俺のターン、ドロー。罠カードオープン。リビングデッドの呼び声。墓地のならず者傭兵部隊を特殊召喚。更に手札から復讐の女戦士ローズを召喚。俺もやらせてもらう! ならず者傭兵部隊にローズをチューニング! シンクロ召喚、ギガンテック・ファイター!」

 

「なっ、でかい……だが、ギガンテックファイターの攻撃力は無零怒と同じ2800……」

 

「ギガンテック・ファイターの攻撃力は素の2800に加えて連合軍で+200、ギガンテックファイターの効果で墓地の戦士族モンスターの数×100ポイントアップして3200だ」

 

 ギガンテック・ファイター 2800/1000 → 3200/1000

 

「ギガンテック・ファイターで無零怒を攻撃!」

 

 ギガンテック・ファイター 3200/1000

 

 カラクリ大将軍 無零怒 2800/1700

 

 ナンパ男 LP2800→2400

 

「馬鹿な……くそっ」

 

「ターンエンドだ」

 

 コナミ LP3500 手札 1

     フィールド ギガンテック・ファイター 3200/1000

 

「っ俺のターン、ドロー。九壱九を守備表示にする。ターンエンドだ……」

 

 ナンパ男 LP2400 手札 2

      フィールド カラクリ忍者 九壱九 1700/1500

 

 

 劇的なドローもなく無零怒が沈められて意気消沈か。よくわからない理由で始まったデュエルだし、デッキもいつもと違うし、テンションもそこまで上がらない。早く終わるに越したことはない。

 

「じゃあ決めさせてもらう。ドロー、手札から永続魔法、一族の結束を発動。墓地に存在する種族が一つの時、場のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする。ギガンテックファイターの攻撃力は4000。手札からコアキメイル・ベルクザークを召喚。連合軍によってギガンテック・ファイター、ベルグザークの攻撃力は400ポイントアップ」

 

 ギガンテック・ファイター 3200/1000 → 4400/1000

 

 コアキメイル・ベルグザーク 2000/200 → 3200/200

 

「終わりだ。ベルグザークで九壱九を破壊、ギガンテック・ファイターでダイレクトアタック」

 

 男 LP6400→0

 

 

「う、うわああああ!!! く、くそっ」

 

 捨て台詞の一つでも吐いていくかと思ったが、普通に逃げて行った。切り札がやられても、まだまだライフもふんだんに残っていたのに心が折れていてはデュエリストなんて務まらないだろう。見るからに金持ちそうなやつだったが、この街の階級層はトップでもメンタルは弱いままだったようだ。

 

「で、何で俺になすりつけたわけ?」

 

「あら? そんなつもりはないわ。ぼうやがちょうど通りかかって、鬱陶しいのがちょうどいたから、ぼうやのデュエルを見てみたいと思っただけよ」

 

「ぎこちないデュエルで悪かったな。このデッキは友紀さんのなんだよ」

 

「ふふふ、なら本当のデッキで今度は私とデュエルしましょうね」

 

「そうだな。アカデミアの購買で待ってるよ。じゃ、俺帰るから」

 

「あら? たった今、ナンパに遭って困っていた女学生を見捨てて行くのかしら?」

 

「じゃあカフェでも行くか。美味いところ知ってんだよ。でも日が沈む前にはちゃんと帰れよ?」

 

 結局、カフェラジーンのテラスでお茶をして他愛ないお喋りをした。途中でジャックが来店してあの3000DPコーヒーをがぶ飲みしてるのを見たり、遊星とアキが弁当を抱えてどこかへ行っているのを見たり、いろんな街の様子が見れて楽しかった。雪乃にはちゃんと私を見ろとか結構怒られたけど。

 雪乃を送り届けた後、自分の家に向かう途中にまたアイテムターミナルに寄って、今日のご飯を確保した。繁華街だけあって夜でも光が絶えない場所だ。また柄が揃ってしまったので3つ景品を取らなくてはいけない。これ3つ一気に落ちてくるから滅茶苦茶取りづらいんだよな……

 

「……で、何でジャックがうちの前にいるわけ?」

 

「クロウが突っかかってきてな。ブルーアイズマウンテンの良さを理解できんとは愚かなやつだ」

 

「クロウと喧嘩してポッポタイム出てきちゃったから泊めろってことね。まあ入りなよ」

 

 夜はジャックと過ごした。ジャックにベッドをとられ、なぜか床に寝ることになったが。元キングと同じ部屋で寝るなんて体験は今後無いだろうし、ラッキーぐらいに思っておくか。体痛いけど明日も頑張ろう。

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