Fate/dragon sphere   作:小櫻遼我

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勉学が……


第二節 廃墟都市

同時、廃墟都市。

 

そこは、有機と無機が入り交じる幻想的な街だった。

 

崩れたビル。

生い茂る木々。

暖かな日差し。

錆びついた車両。

 

西暦11945年にもなってこれが残っているのか、と疑問に思った。

普通なら風化して、文字通り土に還っているはずだ。

 

『やぁ、おはよう藤丸くん!超未来へタイムスリップした気分はどうだい?』

「何か……不思議な所です。ここが本当に一万年後なんでしょうか。一万年後にしてはあまりにも文明が残りすぎている」

 

そこで、ホームズが口を挟んだ。

 

『確かに、いくら金属であろうと酸素に触れれば錆び、朽ち、土に還る。万物において、それは逆らえぬ運命(さだめ)だ。この状況から察するに、現地人が過去の遺産を残そうと修復、復元しているのだろう。そしてこの錆び具合、数年後にはまた「メンテナンス」が必要かもしれないね』

 

流石は天下が誇るホームズ。

冴えている。

 

「主殿、気を付けて。何が潜んでいるか、まだ何も分かりませんので」

「ああ、わかった」

 

右手でガンド撃ちの構えを取り周囲を見渡す。

 

すると、ゼンマイ人形のような、可愛らしいロボットのようなものが複数見られた。

 

「ダ・ヴィンチちゃん、コイツらは…?」

『うむ。霊基反応だと、オートマタやキリングドール等と似た反応をしている。クラスはアサシンと出た』

「まだこちらには気付いていないようです。そっとしておきましょう」

 

藤丸達はロボットから離れるようにして探索を始めた。

 

「にしても、高速道路まで残ってるのか…」

「奥にあるのは___工場でしょうか」

 

崩れた高速道路。

その道の先から、大きな煙が上がっていた。

色からして、小太郎の言う通り工場だろう。

それも結構大規模だ。

 

ふと目に入った紙切れを、藤丸は拾い上げる。

 

「なになに……「交通違反告知書、反則者氏名齋藤陽介」…………違反切符か?」

『ひゃあ、ポイ捨てされた違反切符も復元するのか!細かい、流石の私もこのプロ精神には感服するよ…』

 

まあいいや、といって違反切符を投げ捨てる。

あんなものを復元して、何になるというのだろうか。

割りと真面目に。

 

すると、

 

「主殿、警戒を。足音です、恐らく二名。歩く感覚と速さから既にこちらを探知しており、うち一名はこちらを敵と認識しているようです」

「流石ニンジャ、そんなことまで____って敵!?」

 

小太郎の言葉で、ばっと顔を上げる。

 

その瞬間、

高速道路の柱の裏から、二人の人影が現れた。

 

どちらも黒い服装の奇妙な人物だった。

喪服のように黒い装束、白い髪、視界を完全に塞ぐ黒い包帯。

 

そして、二人にそれぞれ浮かぶ白黒の箱は___

 

「ちょちょ、ちょっと待って下さい!貴方方が誰かは知りませんが、僕達は敵ではありません!」

 

少年が、そう言う。

傍らの少女は、未だにだんまりを決め込んでいる。

 

相手がこういうので、小太郎も少し警戒を解いた。

 

『おや、現地人かい?始めまして、我々は___』

「どこからの通信かは知りませんが、僕らは「人」ではありません」

「肯定:二名はアンドロイド」

 

黒い箱から、声がした。

 

『…確かに、霊基がヒトとは異なる。本当のようだ』

「えっと……俺は藤丸立香」

「9Sです。こっちは2B」

「ナインエス?トゥビィ?」

 

名前とは覚えない言葉の羅列に、藤丸は首を傾げる。

 

『我々は過去から来た。この時間軸に異変を見つけ、その修正のために駆けつけたまでさ。そのコードネームが極秘作戦か何かのだったら、私達を信じて詳細を明かしてくれないかい?我々も詳しいことを話そう』

「は、はい。僕達は____」

「だめ、9S」

 

すぱっ、と。

だんまりだった少女、2Bが9Sの発言を遮った。

 

「人類に、過去へ戻る原理を突き止めた者はいた。でも、未来に行く原理は見つかっていない」

『それはそうだが、しかし_____』

「なにより、」

 

2Bの背後に浮遊していた一本の白い刀。

それを手に取り、藤丸に向ける。

 

「こんなところに、人類がいるはずがない」

 

目隠しでその瞳こそ見えないものの、彼女は明らかに殺意に満ちていた。

 

「ちょっ、2B!彼等を敵とみなすには早急すぎます!人類を偽ったアンドロイドかもしれませんし!」

「この場にヨルハでもレジスタンスでもないアンドロイドがいるとは考えにくい。それに、そんなこと斬ってみないとわからない」

 

あまりにも暴力的な少女だ、と思った。

もっと合理的な手はないかと考えた。

だが、あの少女相手にはどんな説得も通用しそうになかった。

 

「戦うしか無いのか…?小太郎!」

「はい、軽傷程度で済ませます!」

 

小太郎の戦意を確認した途端、2Bは駆け出した。

 

あまりにも不自然な動き。

浮遊するように地を滑った2Bは、残像すら見える速度で迫る。

 

「速いッ!?」

 

だが、小太郎とて忍。

その程度見切れぬようでは、風魔一族当主など務まらない。

 

小太郎は先制してクナイを投げる。

互いの速度から回避は難しいと判断した2Bだったが、傍らの白箱が弾丸を撃ち出した。

「撃墜」

「もしや、絡繰の類か!」

 

ならば、と小太郎は手を組み、指を立てる。

誰もが知るであろうこの技は、この時代まで語り継がれているだろうか。

 

「忍法…影分身の術!」

 

その総数、3。

2体の分身を作り出した小太郎は、計3人で2Bを迎撃する。

 

「掛かれッ!」

 

そしてそれぞれが素早く回り込み、2Bめがけて三方向から襲いかかる。

 

「自身を複製した!?ポッド!」

「R020:ミラージュ、起動」

 

その時だった。

白箱の言葉とともに、2Bの周囲全方向に斬撃が繰り出された。

その行動は白箱によるものだった。

小太郎と同じような分身、いや高速移動だろうか。

あまりにも素早すぎて残像が個の分身として機能してしまっているのだ。

 

「やりますね…ッ!」

「甘い」

 

すると、刀が飛んできた。

いや、浮いていたのだ。

 

どのような仕組みかは知らないが、ギルガメッシュの王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を思い出させるような輪が柄を掴み、浮遊させているようだった。

 

射程範囲外からの思わぬ攻撃で、小太郎は後ずさる。

 

「くっ、なんという芸当…」

「これは芸当なんて代物じゃない」

 

そう語りながら、今度は自らの腕で刀を振りかざした。

小太郎も腰に差した小刀で応戦する。

相手よりこちらの方が刀が短く身軽なはずなのに、2Bは刀の重量を感じさせないような素早い動きで剣戟を放つ。

そして衝撃なのが、その剣戟が分身を含む3人に対するものだということだ。

 

「三方向から攻めても防ぎ切るとは…」

「ポッド!」

「R040:ブレード、起動」

 

またもや白箱が何かを始めた。

今度は刃を展開して2Bの周りを旋回している。

だが、それが2Bを囲むことになり、刃が持続する限り攻撃はしにくくなった。

 

「視界さえ塞げば……!」

 

小太郎は懐から出した手のひらサイズのボールを投げる。

白箱の刃にそれが当たると、音を立てて弾け辺りを白煙で包み込んだ。

 

煙玉(スモークグレネード)だッ!」

 

小太郎は刃の範囲外にいたため、2Bには小太郎が今何処にいるかはわからない。

視界は真っ白に覆い尽くされ、油断か慢心か白箱の刃も止まる。

 

小太郎が狙ったのは、その一瞬の隙。

彼程の忍となれば、たかが白煙は無きに等しい。

その視力を用いて、2Bの盲点を突く。

 

(今だ_______行ける!)

 

そう、計算したはずだった。

 

小太郎は白煙に飛び入り、小刀を突き立てる。

次の瞬間、小太郎に訪れたのは頬を這う熱だった。

 

「___ッ!?」

 

思わず小太郎は飛び退いた。

頬に触れると、刺すような痛みと共に手が赤く濡れた。

 

「斬られた……?いや、それはない…あの煙は風魔秘伝の特注品……そう簡単に見切れるような煙幕じゃないはずだ!」

 

そう考えた後に、小太郎は小刀片手に再び2Bへと迫る。

 

だが2Bはそれを確認しながらも、刀を背へ収めた。

 

「もういい」

「は…?」

「………疑いすぎた、と言っている。斬った質感が違かった」

 

どうやらわかってくれたようだが、斬ってやっと分かるとは、とんでもない娘だ。

 

 

 

「___というわけで、改めまして僕が9S、こっちは2B。疑ってすみませんでした」

「いえ、こちらこそ変な警戒しちゃって」

 

あの後しばらくの間、この世界の情勢と藤丸達の事情について話し合った。

藤丸達の事情はだいたい理解してくれたようだ。

 

で、問題なのはこの世界について。

この世界では西暦5000年頃に宇宙人が飛来し、地上にあのゼンマイ人形___「機械生命体」を放った。

これまで何千年もアンドロイドと機械生命体との戦争は続いていたが、佳境に入っているらしい。

 

また、彼等は通常のアンドロイドではなく、衛星軌道上にある宇宙基地「バンカー」から派遣された特殊型アンドロイド「ヨルハ」であるとのこと。

二人の正式名称をヨルハ2号B型、ヨルハ9号S型といい、それぞれ戦闘とサポートに特化しているらしい。

なお目隠しはヨルハのゴーグル、HUDのようなもので、先程は煙幕の中から赤外線カメラを通して小太郎の位置を探知したという。

傍らの白箱と黒箱はそれぞれポッド042とポッド153。

随行支援ユニットなんだとか。

 

二人はこれからレジスタンスというアンドロイドの駐屯地へと向かい、そこでレジスタンスのサポートを行うらしい。

それがわかるやいなや、ダ・ヴィンチは、

 

『なるほど。では、何だ。君らの任務に、彼等も同行させてやってくれないか?』

 

などと言い出した。

 

「は!?ダ・ヴィンチちゃん、何を…!?」

「そうですよ!元々これは我々の極秘任務、そんな中よそ者を連れたりしたら双方ともレジスタンスからの信頼を失いかねません!」

 

だが、ダ・ヴィンチはチッチッチとモニターの向こうで指を振る。

 

『極秘任務を任されるような精鋭がそんなヘマをしでかすかね、普通。私だったら、君達がそんなことをするなんて想像できないなぁ。つまり、これは深い事情があってのことだと、相手も理解してくれると思うんだ』

「で、ですが____」

 

と9Sが反論しかけたその時。

彼の名を呼んで、2Bが口を挟んできた。

 

「レジスタンスの皆には私から説明する。それに、戦力は多い方がいい」

「ん…まぁ、2Bがそういうのならいいの……か、な」

 

半ば諦めたようにも見えたが、9Sもなんとか了承してくれたようだ。

 

「となると、後はレジスタンスの方々への説明と、本部への報告ですね。本部にはこちらから言っておきます。司令部へ、こちら____」

 

と、モニターを展開しバンカーと通信を繋いだ。

 

「………………」

「えっと……2B、でいいか?」

「構わない」

 

どこか不服そうに、そう言った。

藤丸は、それがどうも気になった。

 

「なあ、何か気に入らないことでもあるのか?言ってくれ、こっちも対応する」

「いや……」

 

すると、2Bは少し頬を赤らめながら呟いた。

 

「……こういうの、慣れてない」

「……慣れ、だな」

 

人として、その気持ちはよくわかる。

誰だって最初は緊張したり恥ずかしかったりするものだ。

 

と、そこで9Sからお呼びがかかった。

 

「ぎりぎりOK出ました!司令官は半信半疑だったみたいですけど……」

「そうか……じゃあ、行動で示すしかないか。その、キャンプってのはどこにあるんだ?」

「あ、はい。案内しますね」

 

9Sに先導され、藤丸一行は廃墟都市を進む。

この決断が、果たして吉と出るか凶と出るか。

それはまだわからない。

 

 

 

廃墟都市、某廃ビル屋上。

 

そこにあったのは、コンクリートの建物に似合わない貴族趣味の長テーブル。

両端に椅子が置いてあり、二つほど燭台も乗せてある。

 

そんな中、長テーブルに悠々と座る、これまた不釣り合いな和装の男が一人。

腰に二本の刀を携え、風になびく羽織と髪はまさに雅。

 

そんな男が、彼等のことをじっと見つめていた。

 

「ほほう、人間か。随分とご苦労なことだな、カルデアのマスター」

 

男は、カルデアを知っていた。

それが何を意味するのか、彼は何を企んでいるのか。

 

「君等はいずれ塵芥と化す運命にある。アンドロイド諸君も同じくな。君等はまだ知らない。私が何者か。私は何のための存在か。それは_____」

 

______未だ、作者にしかわかるまい?




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