ただひたすらに、砂漠。
目の前に広がる砂に、藤丸は足を踏み入れた。
じゃり、と心地よい音を立て、足が埋まっていく。
流砂と言う程ではないが、流石に人の重量には砂では敵うまい。
そんな砂の上を、2B、9Sはスタスタと駆ける。
小耳に挟んだ話だが、ヨルハのみでなくアンドロイドは基本体重が100を越えるらしい。
謎だった。
「なあ……どうして、沈まないんだ?」
「ああ、これですか?ポッドです」
肯定、と黒いポッド153が凛とした声で発した。
「僕らの武器。背中に浮いているでしょう?それと同じで、姿勢制御バーニアをごく小さな出力でかけることで砂に沈まないようにしてるんです」
「そうなのか。それは、その…俺らにもできるのか?」
「否定:人類とアンドロイドでは肉体の造りが異なる為、解析が困難」
「ですよねー!」
藤丸はやけくそ気味に走り出す。
足場の悪い中で走っても、結果は分かりきっている。
「わっ!?」
砂に足を取られ、転がり落ちる。
砂はローラーのような役割を果たし、藤丸を下へ下へと流していった。
砂で切れた傷に砂が染みて痛い。
『そのくらいの傷だったら、礼装で治療できるはずだよ_____っと、これは』
通信に出たダ・ヴィンチが不穏な声を上げる。
地中から、数体の機械生命体が飛び出してきたのだ。
「藤丸さん!」
小太郎を含む三人が砂を滑り降りてきた。
やはり勝手な行動はすべきではないと、藤丸は思った。
「主殿、片付けましょう!」
「ああ、一任する!」
三人は一斉に攻撃を始めた。
次々と機械生命体が散っていく。
だがひとつ、奇妙だった。
「アン…ドロイド…」
「サバ…ク」
「コロ…ス」
「ニク」
機械生命体が言葉を発していたのだ。
「機械生命体が、こんなに言葉を話せるだなんて…」
2Bも驚きを隠しきれていない。
「こういう個体も増えたってレジスタンスの人が言ってましたね。どうして今になって増えたんだろう…」
戦いながら、9Sは考える。
藤丸も、人工知能というものには理解があった。
人工知能といっても様々であり、人と対話をするものや、囲碁の為に造られたものもあった。
これらも、人と同じく自立して学習する。
ネットで調べた程度ではあるが、藤丸は人工知能を知っていた。
その立場で彼は思った。
機械生命体は人工知能とは異なると。
言葉を学習するならば、
だが、言葉をいくら学んだところで、感情がなければこのような発言は行えないはずだ。
対話能力を否定しているのではないが、同じ機械同士なのに相手がアンドロイドであると認識した途端「コロス」という言葉を連想するのは些か不自然だったのだ。
即ち機械生命体とは、人と同じように心を持つものなのではないかと。
人工知能も心を持つが、それとはまた異なる。
自らの使命に忠実で、かつ特定の相手に対する憎悪がはっきりとしている。
それこそ、一種の生命体として彼等は機能しているのだ。
「主殿?」
「おおっ、んん?」
ぱっ、と我に返った。
辺りに転がるのは機械生命体の残骸。
2B達はせっせと散らばるボルトやナットを回収している。
そういえば、キャンプではあれが通貨代わりに使われていたような。
「では…向こうの壁の方に行ってみましょう。あの穴、恐らく奥へ続いてます」
言われるままに9S達に着いていく。
高い砂山を越えた先には、9Sの言う通り穴があった。
かなり大きな穴で、奥に続いていた。
「これまた大きいな…ダレイオスでも通れそうだ」
一通り、辺りを見渡す。
他に壁の向こう側へ行く道はなく、穴の先には何かの建造物の影が見えた。
その時、
「来ました、機械生命体です!」
9Sの警告で、以外の三人は身構える。
だが今度は小さい個体ばかりで、特に問題もなく破壊できた。
順調に倒し続け、最後の一機になった時だった。
「死ヌ!ニゲル!ニゲル!コワイ!」
その一機が、地面に潜って逃げ出した。
「っ……どこに行った!」
「カッカすんなって」
藤丸が殺気立つ2Bをなだめるが、癪に障ったのか歯を食いしばっている。
「あっ、いました!穴の方向です!」
「ターゲット個体識別信号をマーク」
『藤丸くん、ポッドくんからこちらのコンピュータにも信号が送られてきた。転送するよ』
ダ・ヴィンチの言葉で、視界いっぱいの砂漠地帯の地図が表示される。
確かに、オレンジ色のマーカーがゆっくり動いているが…
「なあ9S。解像度……粗くないか?」
「それなんですよねぇ。本当にこれが面倒で面倒で____」
「文句言わない!」
と2Bはキレ気味で穴の向こうの坂を下っていった。
「そっか、坂があんのか…」
藤丸の脳裏に、悪夢が蘇る。
ろくな戦闘能力もないのにまたあの機械生命体の群れに放り込まれては堪ったものではない。
「主殿、これを」
そう言い、小太郎が一枚の大きな鉄板を差し出した。
「これは?」
「ソリです」
なるほど、と藤丸は頷く。
しかし、持ち手となる紐がついていなかった。
「小太郎、どこ持てばいいんだ?」
「すみません、それに関しては道具が足りませんでした。前面を掴んでください」
なんと無茶な。
そして。
「あああああっっぁああああああああぁぁぁぁぁああああああああ!!!?」
前面を掴み、高速で滑り落ちる藤丸。
前面を掴んだ手の指が砂に擦れるため、非常に痛い。
これはもはや、皮膚ではなく肉の領域にまで達しているのではなかろうか。
「あだだだだだだだだだだだだだだだだ」
がくがくと顎を震わせながら滑る。
そして平面にソリが達し、急停止した反動で前に投げ出された。
「ぶぶぶ…」
「主殿、大丈夫ですか!」
「結局これかぁーい!」
砂まみれ傷だらけの顔を晒して藤丸は叫ぶ。
これはいけない、と思い立った小太郎が藤丸に触れる。
「二人共、今から主殿に応急処置を施すので暫く待機していてください!」
「は、はい、わかりました」
藤丸のあまりもの間抜けさに2Bはもちろん9Sですら呆れているようだった。
「_______これで、よし!」
「ありがとう。じゃあ行くか!」
「ニゲル!」
そして、機械生命体くんの逃走劇が始まるのである。
「コンニチハ、コンニチハ」
「イイ天気、デスネ」
「ああ、もう!邪魔だよデカイの!」
「これは……大剣?」
「名称:双子の牙。クリティカル確率増加」
「ポッドって、たまに意味のわからないこと言いますよね……」
「ニゲロ!ニゲロ!」
「………アッ、マチガエタ!」
「向かってくんなや!」
追いかけ、逃げ、追いかけ、逃げ、繰り返すこと小一時間。
「だぁー、なんなんだよアイツぅ……」
「流石に……僕らアンドロイド勢も…水が枯渇してきました…」
そういえば、アンドロイドは融合炉で水を分解してそのエネルギーで動いているのであった。
ならほとんど人間と変わらないじゃないか、と藤丸は思う。
そんな中、冷静なままの2Bと小太郎が何かに気付いたようだ。
「主殿、9Sさん、アレ……!」
鉄骨で囲まれた道の先、洞窟の入口を指差す。
そこには、数多ものアンドロイドの亡骸が。
「これは……死体、といっていいのか」
「そう言っても差し支えないでしょう」
だが、その様子が異常だった。
まず量が多い。
それに、幾つかの死体は鉄筋に突き刺さっている。
「ここの機械生命体が……でも、なんで…」
「理由:不明」
ポッドに淡々と返され、藤丸は頭を掻き毟る。
先程もそうだが、機械にしてはあまりにも人間的な行動が多すぎる。
人道的ではないのだが、それでもこれらの行動はいずれにせよ機械には不要なものだ。
「いました、みなさん!」
洞窟の奥から、9Sが呼びかける。
向かうと、奥へ逃げていく機械生命体がいた。
「シツコイ!ニゲル!ニゲルッ!ニゲナキャー!」
「地図の情報から察するに、行き止まりです。一気に仕留めましょう!」
9Sの掛け声で、全員で洞窟を潜る。
そこには、妙に開けた空間があった。
「ここは……?」
「下、見てください!」
下を見てみると、そこにはたくさんの機械生命体が屯していた。
だが、様子が変だ。
とりあえず、降りて様子を見ることにした。
「これは……何をしているのでしょうか」
「腰を前後に…首を上下左右に……ゆりかごを……」
2Bも熟考する。
そんな中、カルデア側の通信機から声がした。
『セックスだろう』
「ばふっ」
『ひゃっ!?』
誰かと思えばホームズだった。
藤丸とカルデアにいるマシュ、双方の顔が真っ赤になっているのは見ずともわかった。
『ゆりかごを揺らしているのは、恐らく赤子をあやすことの模倣だ。と考えると、この行為は子に関する動作、つまり性行為であるというわけだ』
「ばっきゃろぉ!何抜かしてんだよ!」
『あわ、あわわ………せ…せくっ…………せっ…』
マシュがオーバーヒートしている。
フランでもあるまいに。
『あのさ、ホームズ?推理するのはいいんだけど、TPOわきまえよう?』
『おっとすまない、男の性でね!』
藤丸は拳を握った。
「あの…そちらでの通信内容はよく分かりませんが、ホームズさんの話が事実だとすると、なぜそんなことを……?」
9Sは考える。
やはり、機械生命体にも心があるのかもしれない。
だとしたら、自分達がしていることは…
「ヤッテヤル!」
先程の機械生命体が飛び出た。
それを合図に、機械生命体達が一斉にこちらへ向かってきた。
「多い…!」
「これでは耐えきれません!」
藤丸は下がって小太郎に指示を出す。
しかし、あの三人をもってしても辛いようだ。
倒しても倒しても新しい機械生命体が湧いて出てくる。
「コノママジャ、ダメ」
「コノママジャ、ダメ」
不思議な言葉を叫ぶ。
先程まで戦っていた機械生命体達が奇妙な動きを見せる。
と思うと、パタッと動きが止まった。
「なんだ……?」
「コノママジャダメコノママジャダメコノママジャダメコノママジャダメコノママジャダメコノママジャダメコノママジャダメコノママジャダメコノママジャダメ」
急に動き出した。
先程とは違う暴れるような動きだった。
すると、今度は左右に立つ鉄骨から上に登る。
機械生命体同士で橋を作り、たくさんの機械生命体がひとまとまりに集合する。
そこには、機械生命体の球が出来ていた。
「あれは…卵?」
球は鈍く輝き、心音を奏でる。
その球がまるで卵のように割れ、中から粘液質の何かが落ちてきた。
べちゃっと水音を立てそれが落下する。
水分が地面に吸われ、内容物が明らかになる。
白い髪に肌、筋肉質な身体の人型。
しかし、股間に、性器は見られない。
ゆっくり、人型は立ち上がる。
「…アンドロイド?」
2Bが驚愕する。
それに返答するように、9Sが言った。
「いえ、こいつ………機械生命体です!」
人型が目を開く。
冷たい目を見て、2Bと9Sはすぐに行動に移した。
「小太郎、やるしかない!」
「ですが……」
相手は一向に動く様子を見せない。
あまりにも棒立ちで、2Bと9Sも控えめだ。
その時、人型が言葉を放つ。
「ウウ…アアア…アンド、ロイド…ドウシテ…タタカウ……」
途端、2Bの腹に蹴りを放った。
「ぅ、げほ…っ!?」
「2Bッ!」
ゆっくりではあるが、歩き出した。
そして重々しい蹴りを放つ。
「でも…捉えられる!」
忍の小道具を操り、小太郎は人型を翻弄する。
人型も何とか追いつけている程度だった。
「カタナ、ヨケル…タマ、ハジク……」
「話してる暇があったらッ!」
小太郎が小刀を構え、飛びかかる。
その瞬間、人型の周りをシールドのようなものが囲んだ。
「ッ!?」
だが時は既に遅く、シールドに小刀が触れる。
すると小太郎ごと弾かれ、そこに斬撃が降り注いだ。
「がっ…!」
「小太郎!」
人型が、同じくシールドを張る。
今度は2Bがポッドで弾幕を張る。
だがそれでも意味は無く、シールドに触れると同時に弾幕が2Bを襲った。
「くっ…」
間一髪で避けたが、これで仕組みがわかった。
パリィの容量で相手を攻撃ごと弾き、攻撃に対応するもので反撃するようだ。
「みんな、あのシールドがある間は攻撃しちゃダメだ!」
藤丸が皆に知らせる。
だが、人型の耳にも届いていたようだ。
というより、言葉を理解できるようだ。
すると、人型が消えた。
「あいつ…進化してる!」
9Sは人型を警戒して周囲を見渡す。
人型が現れた。
壁から飛び出た建物の端だ。
そして、光の弾丸を撃ち出した。
三人は弾幕を避けるが、再び地上に現れた人型の動きは更に素早さを増していた。
「主殿!これではキリがありません!」
「どうすれば………」
そこで藤丸はひとつ、アイデアを思いついた。
今藤丸はカルデア式の魔術礼装を身につけている。
それと同時に、インナーとして戦闘服を着込んでいるのだ。
「小太郎!俺がやる、なんとかして隙を作ってくれ!」
「そうか…!2Bさん9Sさん、お願いします!」
小太郎の言葉で、二人は双方から人型の注意を引く。
二人の間の角度が180°、つまり二人が正反対の位置に来ると、人型は両手で双方の刃を抑えた。
「今です主殿!」
「礼装起動、ガンド!」
人型を指差し、黒色の魔弾を撃ち出す。
魔神をも怯ませるガンドが、あの人型ごときに効かないわけがない。
なぜ魔神にすら効くのかは不明だが。
「グ……!」
計画通り、人型の動きが止まった。
「うおおおぉぉぉーーっ!!」
その時、9Sが背後から刀を突き刺した。
「ふっ!」
同じく、2Bも前から突き刺す。
ぐおぉ、と人型は声を上げる。
二人が刀を引き抜くと、人型は倒れた。
赤い液体を吹き出して、赤い水溜まりの中で人型は眠る。
「これは…血?」
「そんなわけない……体内を循環するオイルが酸化したのでしょう」
9Sは冷たく語る。
「まだ壊れてない。爆破するまでやらないと…」
2Bが刀を振り上げる。
藤丸は止めようとした。
もう死んでいるのに、それでも傷つけるのは機械生命体相手だとしても死者への冒涜だと思ったからだ。
その時だった。
これ遊園地とか塔とかのノベル持ってこようと思ってたけど利用規約見た感じできないっすね
どうしよっかー?(焦燥)