今まで何やってたんだ?(自問自答)
その廃墟は、異様にも賑やかであった。
本来ならば機械生命体が跋扈し、殺伐殺風景となるはずの瓦礫。
だがその場で藤丸達が目にしたのは、紙吹雪を舞いあげ、風船片手に行進する道化師を装った機械生命体達だった。
「これは、一体…」
9Sが困惑するのも無理はない。
「遊園地にヨウコソ!コソコソ!」
「また喋る機械生命体……」
「にしても、ゆうえんち、とは……?」
9Sが首を傾げる。
それに対し、小太郎は丁寧に説明する。
「遊園地というのは、僕らの時代…正確にはマスターの時代ですが、世界中に展開された娯楽施設の名称です。ただ楽しむというだけなので、御二方には縁のない話かと思いますが」
「そうですね。遊ぶ暇があれば義体のメンテナンスに努めるだろうに…人間って変わってますね」
ぐさり、と藤丸の胸に言葉の槍が突き刺さる。
彼らからすればご最もな意見なのだが、やはり文化圏の差というのは恐ろしいものだ。
すると、ゲートの前で一体の機械生命体が何が紙を配っているのに気づいた。
ヨルハの2人は気にもとめなさそうだったので、藤丸が傍により紙を取る。
「こちらはスタンプカードになりマス。スタンプを集めると景品をプレゼント!」
「スタンプラリーかぁ、ちっさい頃よくやったなぁ」
藤丸は過去の思い出に耽る。
背後ではヨルハの2人が奇怪の目で見ている。
「スタンプは園内のどこかにありマス。探してみてクダサイネ。……ここダケのハナシ、景品はとっても豪華カモしれない可能性を秘メタ様子があるトイウ噂を聞キマスヨ?」
「ハッキリしないなぁ」
やはり思考回路が支離滅裂なのか、いろいろと言葉に亀裂が生じている。
お楽しみクダサイ!と手を振る機械生命体に、藤丸も小さく手を振り返してやると、機械生命体はどこか満足げに業務に戻っていった。
9Sは、訝しげにカードを覗く。
「それは……?」
「スタンプラリー。いろんなとこでたまにやる、やり込み要素みたいなもんかな」
「ふぅん…人間ってよくわからないなぁ」
またもや意図せぬ棘を撃ち出すが、気にしているとキリがないと思い、藤丸は、平常心を保つ。
スタンプは時間が余ったら集めよう。
さて、視線を周囲に戻す。
「タのしイネ!楽しイネ!」
「喜ビヲ、分かち合オウ!」
「さっきの機械生命体もそうですが、なんというか、異様な光景ですね…」
小型、中型、この場にいる全ての機械生命体が道化師のメイクをし、風船を手に持っている。
腕に砲塔がついている中型二足に至っては、弾ではなく風船を撃ち出している。
それに非好戦的、こちらを一向に襲う様子がない。
なにより、喜びとかなんとか、今までの機械生命体とは真逆の言動をしていたのだ。
「2Bさん、抑えて」
無条件に刀を抜こうとする2Bを小太郎が静止する。
やはり2Bにとって機械生命体は破壊すべき対象なのだろうが、しかしこうも敵意を損なわれてはこちらも対処のしようがない。
黄金ウサギ像を越え、中央通りを進む。
起伏の大人しい階段を中心に、左右には売店やワゴンが陳列している。
「ここを真っ直ぐですね。反応があります」
「城か」
前方に見える巨大な城。
花火の中佇み、その中心にはハート型の穴が空いている。
どの時代どの国も、テーマパークの中心はお城だと決まっている。
実際にそうなのではなく、イメージの話だが。
サイズ的に、この階段を登りきれば入口が見えてくるはずだが…
「……おい、まじかよ!」
藤丸は駆け寄る。
それを追うように3人も門の元へ急ぐ。
『藤丸くん、気をつけたまえ!それは特殊な魔術防壁だ!』
「ああ、戦闘服で探知できた。でも、なんだって魔術の防壁なんて……」
門の奥に見えるドーム状の建物。
恐らく劇場か何かだろうが、その門が魔術防壁によってかたく閉ざされていたのだ。
ここは魔術の存在しない遠い未来。
世界の秩序は機械生命体とアンドロイド部隊ヨルハによって形成されている。
そんな世界で、魔術の防壁などあるはずがないのだ。
「マスター、先程遭遇したセイバーのサーヴァント、奴が関連している可能性があります」
ヨルハの2人に聞こえぬよう耳打ちする。
2人に聞こえるとまた面倒だ。
「どうかしましたか?」
「あー…閉まってるみたいなんだ」
それを聞いて、2Bは錠前を掴みガチャガチャと揺らす。
「………私の力でも壊せない」
「門も登れるような形状じゃないし……そうだ!」
何か閃いたのか、9Sが3人を集める。
そして、上の方を指差す。
「……ジェットコースターのレール?」
そこには、コースターのレール。
そしてそれは丁度ドームの真上を走っていた。
「小太郎さんはここが娯楽施設だと言っていましたが、あのレールが娯楽の一部であるならどこかに始点があるはずです。そこから伝えば内部に侵入できるかもしれません」
「なるほど…なら」
話を聞いて、藤丸は目に付いた台からパンフレットを一冊手に取る。
「これは……本、ですか?」
「ちょっと違うかな。ほら、ここに遊園地の地図が書いてある。これを辿れば目的地に行けるはずだ」
なるほど、と9Sは関心。
2Bは相変わらず無愛想に話を聞いている。
「じゃあ、早速向かいましょう」
4人は地図に従いジェットコースター乗り場への道を探す。
だがいざ地形と地図を照らし合わせると、困ったことに瓦礫で道が塞がってしまっていたのだ。
「困りましたね…僕らだけならともかく、この瓦礫ではマスターが登れません」
頭を抱える小太郎。
しかし当の藤丸の頭にはある策が浮かんでいた。
「その……言い難いんだけど、こういうのって大体関係者用の通路があったりするんだ」
「そういうものなんですか?」
「世界観崩すからあんまり大っぴらにはしたくないだろうけどな…」
頭上にハテナが浮かぶ9Sをよそに、一行は早速それらしき通路を探し始める。
ここまで入口から一直線の大通りを進んできたため、探す場所は沢山ある。
4人いるとはいえこのパークの規模からすると中々に骨が折れる作業だ。
「ここは…閉まってるか」
鍵の閉まった扉なども多い。
機械生命体には鍵を開ける脳がないのか、それとも扉が錆びきって開く状態ではないのか。
客の侵入を防ぐために、扉のない関係者用通路というのは少ないはずなのだが…
「見つけた」
すると、離れた場所から2Bの声がした。
駆けつけるとそこは大きな門で仕切られた売店の密集地で、その端に貨物が積まれた通路があった。
「さすが2B!」
「っし、でかした!」
「そんなに褒められても、何も出ない…」
皆から賞賛の言葉を浴び小っ恥ずかしく思う2Bは、そそくさと通路の先にすすんでしまった。
可愛らしいところもあるなと思う藤丸だったが、口に出すと確実に殺されると思い、気持ちを押し殺し後に続く。
一方小太郎は、たった一人あるものを見つけていた。
通路のある売店区画、その隅っこに咲く一輪の花。
それはとても美しく、そして儚く、藤丸達の声が届かない程に小太郎を夢中にさせた。
「百合?でも、ただの花がここまでの発光を……」
ひとりでに光り輝くその花には摘み取る気さえ起きない。
花と接触した瞬間、突然に自然の意志を感じ、畏怖してしまうのだ。
「小太郎ー、どうしたんだー?」
「あっ、いえ、すぐ行きます!」
藤丸の呼び声がかかり、小太郎は花から離れる。
まるで月光ような輝きは、しかし日光のように小太郎の目に焼き付いていた。
「なんでこうなったんだよぉぉぉぉぉ!!」
通路を見つけた後、無事にジェットコースターの入口を見つけた一行。
しかし人間である藤丸にはレールを伝うのはあまりに危険だった。
そこで取った策がジェットコースターに乗ることである。
「って、どうやって降りるんだよぉぉぉぉぉ!!」
喉が枯れるほどに叫ぶ藤丸。
しかし他の3人は一向に恐がる様子がない。
ヨルハの2人に至っては世話話なんかをしている。
「親しい人は、僕のことをナインズって呼ぶんですけど…」
「そう」
素っ気なく返す2B、その様子を察するのも今の藤丸には困難である。
すまない9S、君のことをナインズとは呼べそうにない。
どれくらい経っただろうか。
こういうのがあまり得意ではない藤丸はじっと目を瞑り、風圧に耐え終わりを待っている。
初めて乗ったジェットコースターは、キャメロットでのアーラシュミサイルを思い出させる苦行だった。
しかし何分か経って、突然ジェットコースターが停止したのだ。
「終わった………?ってうおおおおおおおおお」
一周でもしたのかと思って藤丸は目を開けたが、そこはコースの真っ只中、空中で停止していたのだ。
テレビでしか見たことのないシチュエーションがまさか起こるとは。
「ブラックボックス信号、直下」
「らしいですよ主殿、行きましょう」
「おまっ正気か!?」
前を見ると、既にヨルハ2人は下のドームに飛び降りていた。
だいたい、提案を聞いた時から思っていたのだ。
ジェットコースターのレールを伝ったところで、どうやって地上に降りればいいのだ。
やはり人間とアンドロイドでは、根本的に違うところがあるのかもしれない。
いや、小太郎も人間……ん、鬼……?
「主殿…?」
「………アサシン、着地任せた!」
とんだ災難である。
「痛った」
小太郎に抱えられてドームまで落ちたものの、重力で抱えられた背が痛い。
パキポキと腰を動かしながら立ち上がると、そこは広い劇場だった。
天井が砕けた瓦礫が散らばり、それを除いても客足はとうの昔に途絶えているような汚さだ。
「ここにヨルハ達が……?」
すると、突然警報のような轟音が流れ、舞台の幕が開き始める。
「敵機械生命体反応確認」
「マスター、下がって!」
ポッドと小太郎の警告に従い交代する。
他の3人は武器を持ち、臨戦状態で幕開けを待つ。
「アイツは………?」
幕が完全に開き、敵の姿があらわになる。
そこに居たのは、今までのとは根本から形状の違う機械生命体だった。
中型二足の三倍程はある身長に、貴族を思わせるような丈のスカート。
尖った耳と腰には人形…いや、スケルトン状態のアンドロイドが手を繋ぐように装飾されている。
耳のアンドロイドをピアスのように揺らしながら機械生命体がこちらを振り向くと同時に、藤丸の腕輪のホログラムが付いた。
『大変だ、藤丸くん!』
切迫した様子のダ・ヴィンチだった。
『あの機械生命体とやら…内部にサーヴァント反応がある!吸収されて……いや違う、あの機械生命体そのものが擬似サーヴァントなんだ!』
「何っ!?」
ダ・ヴィンチの言葉に驚いて件の機械生命体に目を向けると、それは突然大きな鳴き声を発し始めた。
「Aaaa、Aaaa…AAAAAaaaaaaaa!!」
歌声にも悲鳴にも聞こえる、つんざくような機械音。
藤丸は不快感に顔を歪ませながらも小太郎に指示を出す。
「こ…小太郎……!」
「了解、状況を開始します!」
先陣を切った2Bに続き小太郎も駆け出す。
それを感知した機械生命体はスカート下部のハッチを開き、そこから360度を焼き払う回転レーザーを照射した。
位置関係で言えば、全員を狙える。
小太郎を始めとする戦闘員は容易に飛び越えることができるが、一般人程度の身体能力しかない藤丸は避けようがなかった。
「主殿!」
瞬時に藤丸の危険を察知した小太郎はレーザーが迫り来るギリギリのところで藤丸を抱え上げ、高所に位置する客席まで運んだ。
一瞬の出来事に、藤丸は状況把握に時間がかかり、理解した瞬間冷や汗まみれになった。
「怪我はありませんか!」
「あ…ああ、ありがとう小太郎……ッ、小太郎!」
藤丸の警告で小太郎が振り向くと、機械生命体がどこからともなく多弾のミサイルを発射していた。
そのミサイルは速度と旋回性に優れ、小太郎が気づいたタイミングでの回避は困難に見える。
「
十人単位で増幅した小太郎達が縦横無尽に飛び回る。
その分身は航空機におけるセダクションフレアの役割を果たし、迫り来るミサイルのホーミングを撹乱した。
「小太郎…こんなこともできるのか!」
「はい。僕の本体と似た魔力パターンの分身を形成し、追尾目標を分散させるんです。最も、時には欺瞞が足りず数発を自分で捌かねばならないこともあるでしょうが」
大昔の忍者であった小太郎が現代のフレア技術について語るのは不思議な光景だった。
カルデアの図書館で戦術やら兵器やらの専門書を読んでいる姿をよく見かけたのはこういうことか。
「凄い…僕達も負けていられませんよ、2B!」
「わかってる」
ヨルハの2人は迫り来るミサイルを華麗な身のこなしで回避し、その勢いに乗せた強力な一撃を叩き込む。
機械生命体もこれにはたまらずよろめく。
「AAAAaaa、AHAHAHAHAhahahaha!」
しかしその痛みすら悦びに変えるように、機械生命体は嗤いながら自身を中心とした円形レーザーを展開する。
それは空中に舞い上がり、鐘のような音と共に地表に降りかかる。
「甘い」
小太郎、9Sが警戒する中2Bは猛進し、閉じるシャッターを抜けるようにレーザーの下をスライディングで通過し、その大剣で機械生命体へ重い一撃を喰らわせる。
攻撃形態で防御が疎かになっていたのか、機械生命体は声を上げて苦しむ。
「よし、効いてるぞみんな!」
客席から本物の観客のように
実際、自分のサーヴァント達が優勢となり、一切を後衛でやり過ごす身でありながら天狗になっているのは事実だった。
そんな藤丸を諌めたのは、通信機越しのダ・ヴィンチだった。
『調子に乗ってる場合じゃないよ、藤丸くん!敵目標内部に大規模魔力収縮!』
「って、え!?一体………ッ!」
藤丸が見たのは煙を上げながら痙攣する機械生命体の姿。
ところどころに電撃も走っており、瀕死に近いことは明白だった。
だがダ・ヴィンチが言うのだから何かが……
「AAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaa!!!」
「っ、主殿伏せて!」
「わっ、何だ───!?」
機械生命体の口から光の波が放たれる。
その瞬間、彼の意識は──────
わかった……私、もっとキレイになる。
沢山の飾りをつけて……もっとキレイになります。
「───っ!」
瞬時に意識は戻った。
しかし藤丸が光の中でみたモノは、悲哀と憧憬を帯びているように思えた。
まるで、あの機械生命体の……
「今のは………」
「2B、敵からのハッキング攻撃です!電脳内でダメージを受けると、機体に不具合が生じます!」
9Sと、困惑する小太郎の声。
だがこれが機械性のハッキング攻撃だとすると、藤丸と小太郎はなぜ……
機械生命体が動いた。
ダメージで俯いているようだったが、突然目が覚めたように顔をあげる。
そして、その「口」からは、ヒトの言葉が発せられた。
「私……私は…………美しくなるんだぁぁぁあアアアアアっっ!!!」
絶叫する機械生命体。
それと同時に、劇場の全体に何かが降り注いだ。
それは十字架、あるいは磔、
「これは………アンドロイドの死体!?」
「いえ、藤丸さん、これは……ブラックボックス信号継続。生きたまま、兵器に改造されているんです!」
藤丸が驚くまもなく、アンドロイド達の口から光波が放たれる。
藤丸を戦闘力として見なしていないのか、光波は前線の3人に向けられていた。
「くっ………アンドロイドを除去する!」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、2Bは「殺戮」を開始する。
同胞のアンドロイドに対するそれはやはり殺戮でしかなく、悔恨と憐憫を以て介錯しなければならない。
「藤丸さん!」
9Sが下から大声で呼びかける。
「あれは恐らくあの機械生命体に操作されています!僕が奴にハッキングして操作系を破壊するので、2人の援護をお願いします!」
「あ……ああ!」
言葉通り、藤丸は小太郎と2Bにフォーカスし、礼装を起動させる。
カルデア制服と戦闘服、二重に着込んだ礼装の起動による身体への負担は未知数だが、身を削ってこその戦場である。
想起させられるのは、イシュタルとの特訓の記憶。
(いい?ガンドは使用者の魔力に応じて形を変えるの。アンタのは外部からの魔力貸与で、弾丸型ね。なら私の得意分野よ。手を鉄砲の形に構えて、立てた親指で照準を合わせて───)
「───ガンド!」
藤丸の指先から魔弾が放たれる。
それは銃弾の如き高速で飛翔し、アンドロイドに命中する。
すると、アンドロイドは痙攣し始め、ショートした。
「主殿、援護射撃感謝します!」
「よっしゃ!女神直伝のガンド捌き、魅せてやるぜ!」
藤丸は目に入るアンドロイドに次々ガンドを放ち、麻痺させていく。
機械に呪いが効く道理が分からないが、今をやり過ごすには理論などは必要なかった。
時折9Sの方に目を向けると、文字通りの頭脳戦に没頭していた。
ホログラムのキーボードパネルを叩きながらいくつものホロモニターに目をやり、情報を処理していく。
「………来た!操作系、シャットダウンします!」
ッターン、と9Sが爽快にエンターキーを弾く。
すると、周りのアンドロイド達は動きを止めて、目の光を失っていく。
「よし、あとはあいつだけ………だ?」
全員が機械生命体に意識を向けると、機械生命体は何やら不穏な動きを始めた。
スカートが開き、隠れていたであろう四足があらわとなり、その股ぐらから出てきたのは……獣のような大きな口だった。
「げえっ、
あまりもの気色悪いフォルムに、藤丸は目を背ける。
その様子をみた小太郎は、表情に怒りにも似た何かを浮かべた。
「主殿の不快なものは排除する…!9Sさん!」
「はい、何で…わあっ!?」
小太郎は仔細を話さずに、鎖鎌の先端、つまり鎌の部分を9Sに投げ渡す。
ヒヤリと冷や汗を流す9Sをよそに、小太郎は機械生命体を中心として円を描くように走り出す。
機械生命体は上下の口から悲鳴を上げながらミサイルで小太郎を狙うが、熟達の忍びである小太郎の前には亀の歩みに過ぎない。
まさに業前。
小太郎が一回転ほど走り終えると、その手からは鎖鎌の鎖が伸びていた。
機械生命体を一周する程の鎖は四足全てを包み込み、逃げ場を封じる。
「9Sさん!」
「やりたいことはわかりました、大丈夫です!」
「転べッ!」
小太郎が思い切り鎖を引くと、鎖の円の直径が一気に狭まり、機械生命体は足を掬われ転倒する。
鎖は四足にしっかり絡みつき、半錯乱状態にある機械生命体のみの力では解けそうにない。
「今です、2Bさん!」
小太郎は2Bに向けて声をかける。
機械生命体やアンドロイドからのハッキングの障害が残っているのか、2Bはよろめきながら機械生命体へ視線を向ける。
「ポッド!」
「了解」
ポッドの頭部が変形し、横長のレーザーが照射される。
機械生命体のそれよりも極太で眩しいレーザーは、一点突破に注力した必殺の一撃だ。
「行けぇっ!」
「キャアアアァァァァアアアアアアアッ!!」
ポッドレーザーは機械生命体の本体であろう胴体に命中し、大きな爆発を起こす。
それは機械生命体の全部位に引火し、その肉体を原型を留めぬほどに四散させた。
一件落着である。
『敵機械生命体沈黙、同時にサーヴァント反応も消失……』
「っしゃぁぁ……疲れたぁ……」
『サーヴァント反応…何だったんだ……?』
疲労困憊の藤丸は座席の残骸に腰掛ける。
残骸であろうと、休息にはなる。
一方疲労を知らぬ小太郎はヨルハ2人の調査に協力していた。
「………駄目です。どのアンドロイド方も、核と思わしき部位が大破しています」
「はい、こちらでもブラックボックス反応の消失を確認しました……御協力、感謝します」
「いえ、大したことは……」
互いに謙虚に譲り合う声の似た2人。
それを見て、2Bは不満げに口を歪めていた。
9Sを独占され妬むように、あるいは感情そのものを忌避するように。
「………2B」
帰り道。
劇場のエントランスで9Sがふと問いかける。
「あの機械生命体、何か言葉のようなものを発していました……まるで、感情が──」
「機械に感情なんてない」
9Sの言葉を遮るように2Bが口を開く。
それは我が子に語りかけるような、穏やかな口調だった。
「……そう言ったのは貴方よ、9S」
それを聞いていた藤丸は、2Bの発言に信じられずにいた。
あの時……光の中で見た景色。
あれは紛れもなくあの機械生命体の記憶だった。
恋したヒトに振り向いてもらうため、ひたすらに美を追い求めた彼女。
崖から転げ落ちながらも宝石を手にしたり、迷信と分かっていながらも僅かな希望を求めてアンドロイドを捕喰したり…
だが、その恋は実らずに終わった。
愛しい彼は恋に無頓着、己が思想を自慢げに語るだけで、彼女の気持ちなど考える素振りすら見せない。
機械生命体は絶望した。
盛りに盛って、同胞からも避けられるようになった自分の身体。
そうして、彼女は狂った。
ただ、声をかけてほしかっただけなのに。
「綺麗だ」と、認めてほしかっただけなのに。
それが、ボーヴォワールという機械生命体の拠り所だったのだ。
いつの間にかFGO終わりそうだったりニーア新作出たりで草生えますよ