防具合成による婚活デビュー   作:横電池

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第2話 獲物を発見しました

 結果だけ言うとオーケーがもらえた。長期は無理だが短期なら、とのことである。

 酒場のマスターのお姉さんに婚活のためと言ったら、かわいそうな人を見る目で見られたのが印象的だ。

 タンジアの港のマスターからは「ハンターたるもの様々な経験も大事じゃな!」と笑いながら言ってくれた。

 ただ、向こうではこちらのハンターランクはないものとして扱うらしい。地域差のせいかモンスターの行動が大きく違っていて、さらには水中での狩猟も行うそうだ。そのためタンジアでは新人として扱われるらしい。正直最高にうれしい。短期とはいえ色眼鏡で見られない状況にまでなってくれるとは、この流れなら婚期もいける。

 

 そんなわけでやってきましたタンジアの港。

 縦長に並ぶ街並みにいくつもの灯台。見知らぬ土地というのはワクワク半分ドキドキ半分だ。

 

 挙動不審になってばかりじゃいられない。出会いを求めてきたのだ。一緒に狩りにいって仲良くなっていき、そしてらぶらーぶ大作戦だ。短期のためいきなりラブラブまでは無理でもせめて仲良くまではいきたい。

 同行者を求む掲示板を見ていい感じの依頼がないかを探す。

 

 今同行者募集で張り出されている依頼はドスジャギィの捕獲、ロアルドロスの狩猟、クルペッコの狩猟、の3つだった。

 

 ドスジャギィの捕獲は選択肢から外す。勢い余ってしまうことが多々あるのだ。

 ロアルドロスは特に問題はない。

 クルペッコは戦ったことがない。知らないモンスターだ。正直興味が惹かれる。だがすでにある同行者の名前がなんだか、男女関係にあるような……、いや考え過ぎか。クルペッコにしよう。

 そう依頼を受けようとしたところ、少し離れた位置の男女の会話が聞こえた。

 

「たっくぅん、わたしをちゃんと守ってくれるぅ?」

「もちろんさあいちゃん! クルペッコからだけじゃなくリオレウスからも守って見せるよ!」

「たっくん素敵ぃ!」

「あいちゃーん!」

 

 うぜぇ。

 

 クルペッコの狩猟依頼を行くのはやめておこう。絶対あそこのバカップルがいる。絶対うざい。

 

 となると、ロアルドロスである。狩猟場所は水没林。何度か戦ったことはあるし足手まといになる不安はない。現在の参加者は一人だけ、つまり私が受けたらペアになる。

 ……ちょっと期待してしまう。

 参加の手続きを受付の子に頼み、指示された場所で待つ。

 ペアでいくのか、それとも他の参加者を待つのかは依頼の受注者が決めることだから待つしかない。……ペアがいいなぁ。

 

 

 待つこと数分。

 

「アルゴさんですか?」

「あ、はいそうです」

「あ、よかったあってた。僕はジンと言います。ロアルドロスの狩猟よろしくお願いします!」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 この青年と一緒に行くようだ。他に人はいない……ペアだ! 変なことしないように注意しなければこれは仲良くなるチャンスなのだから必ずチャンスをものにしないとうひゃー焦る。

 

「二人だけでも大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫ですよ」

 

 顔がニヤけてしまわないよう全力で注意する。落ち着け……明鏡止水の境地に至るのだ……。過度な期待は物欲センサーと呼ばれるアレに感づかれて詰んでしまう。

 水没林に向かって移動してる最中もひたすらワクワクしてしまった。

 

「アルゴさんはロアルドロスとは何度か経験ありますか?」

「ありますよー。あ、でも水没林は初めてです」

「なんだか意外ですね」

 

 ロアルドロス狩猟の経験があることが意外なのだろうか。つまりかよわく見えるのだろうか。ヤバイ、どうしたらいいんだ。かよわいイメージを壊さないようにしないとなのか。

 

「どんな場所でも狩猟してきた!って感じに見えるのに」

「別の地域から来たので、あ、ジンさんが話しやすい口調で大丈夫ですよ」

「あ、ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて」

 

 狩猟場所のほうだったか。かよわいイメージはないようだけどこれでよし。というか流れが完璧すぎる。まずい、ドキドキしてきた。暴走しないようにしないと、そう、落ち着いて、今は仲を深めるだけなのだ……そうなのだ!

 

「別の地域ってどこらへん?」

「ベルナ村のほうです」

「へー。聞いといてなんだけどあまり他の地域って知らないんだ」

「私も似たようなものですよ」

「でもなんでタンジアに?」

 

 質問ばっかりだな、面接か。馬鹿正直に「出会いを求めて」とは言えない。聞こえのいい理由を答えなくては。うん、面接だなこの考え。

 しかしなんて答えよう。ほかの地域の人とも接したくて? ナンパになってないかこれ。ほかの地域のモンスターを見たくて? 観光だこれ。悩みすぎて変に間があくとだめだしえーっとえっと……

 

「武者修行です」

「え、あ、そうなんだ……」

 

 何言ってんだ私。

 

「あ、いえ! 武者修行と言いましたけど見聞を広めたいなーって感じの武者修行でして」

「う、うん」

「強い敵と戦いたいみたいな感じじゃないんです! これは本当なんです!」

 

 本当にただ出会いを求めてきただけだから嘘は言ってない! この真摯な気持ち通じてほしい。100%真実だし。

 

「ま、まぁタンジアは色々独特なところあるかもだしね……」

「はい!」

 

 ごまかせた? ごまかせたよねこれ!

 いやごまかしたっていうか実際武者修行は違うからごまかしたというより正しい認識をしてもらっただけだし、って何に言い訳してるんだ私。

 

 とにかく、その後は少し雑談をしたりと水没林に到着するまで、なかなかいい感じに話は進んでいった。

 水没林は名前の通り水没した林であった。ビッチャビチャだ。これはロアルドロスが好みそうな環境だ。

 

「それじゃあ頑張りましょう!」

「はーい!」

 

 ジンさんがさわやかすぎて辛い。まぶしい。

 土地勘が全くないのでジンさんについていく。時々見たことのないジャギィに似た鳥竜種もいたりして新鮮なものだらけだ。見慣れたモンスターもいたりして少し安心もしたりする。

 

 景色を楽しんでいたら見慣れた黄色い巨体を見つけた。

 

「ジンさん、ロアルドロスあっちにいますよ」

「あ、ほんとだ。行き過ぎるところだった」

 

 周囲にルドロスが何匹かいるが特に問題には感じない。のんきに歩いているロアルドロスを狩りに行く。

 ちなみに武器だけは立派なものにはしていない。豪快すぎるとダメだと思ったのでアイアンハンマーだ。

 最初はサポートができるよアピールで狩猟笛も考えたが、笛は振り回したことはあっても演奏したことがなかった。あの重量感は好きなんだけどなぁ……。

 

 ジンさんは双剣を使い切り込んでいく。

 あまり慣れてはいないのだろう。安全を第一にした立ち回りだ。うん、正しいんだけどね。安全第一が普通だ。感覚がおかしくなるのか慣れてくると安全は二の次でいいや、となってしまいがちだ。

 何度も攻められロアルドロスが逃げだした。どこへ行こうというのだね? 気分は悪者だ。

 しかし歩幅の違いで距離は離れていく。足場がぬかるんでて走りづらいのも大きいなこれ。

 

 見失わないように走って追いかけて、そして見失った。

 

 いや、だって水中に潜られたら追いかけようがないよ。ジンさんにロアルドロスの巣になりそうな場所がないか聞こうとしたら、

 

「ジンさん、ロアルドロスの」

「アルゴさん行こう!」

「え」

 

 ジンさん迷わず飛び込んだよ。

 あ、そうか。タンジアでは水中でも狩猟するんだったか。

 

「ま、まじでー……」

 

 大丈夫だろうか……、水中でまともに戦える自信がない……。でもここで止まっててもジンさんに迷惑だし……

 

「うおおおお!」

 

 飛び込んだ。視界が悪い。ジンさんは……いた。どんどん進んでいく。追いつこうと必死に泳いではいるが、慣れの差なのか距離がどんどん開いていく。

 というか、そろそろ、息が苦しい。ジンさん息継ぎしてなくない?? 私より先に潜ってるよね? やばい苦しい。息継ぎのためにも、水面へ……。

 

 そして再び潜ったらすでにジンさんの姿は見えなかった。同じ人間なのでしょうか彼は。それともこの地域じゃあれが普通なのでしょうか。タンジアのハンターこわい。

 

 はぐれてしまったけど一応地図はベースキャンプで頭に叩き込んである。一本道だったはずだ。

 拙くてもとにかく泳いで追いつかないと。

 

 

 

「アルゴさん、よかったはぐれたかと」

「いえ、大丈夫、です。すいません、泳ぎ慣れて、なくて」

 

 ジンさんと無事合流できた。途中何度も息継ぎをするため水面にあがったりしたが合流は合流だ。

 再会の抱擁を交わしたいほどうれしかったが我慢する。なぜなら近くにはロアルドロスが寝ているのだ。だからやり取りも小声である。私は泳ぎによる疲労から大きな声を出す元気がないだけだが。

 私を待たずに戦ってもよかったのに。あ、罠とか期待されてるのだろうか。

 

「すいません、私、罠持ってきてません」

「あ、気にしないで。僕も持ってきてないし、かといってアルゴさん抜きで戦える自信がないから待ってただけなんだ」

 

 ジンさんがフレッシュすぎる。まぶしくてつらい。

 

「じゃあ目覚ましにきっついの当てましょうか」

 

 呼吸も整ってきたことだし、ハンマーで盛大にガツンといこう。

 あまり物音を立てずに、そばまで近寄り、思いっきり振り回す。

 

「そりゃぁあああ!」

 

 ぐぎゃん、といった感じの鳴き声をあげてロアルドロスが数メートルほど転がった。やり過ぎた? いやこれくらい普通だよね?

 不安になりジンさんの顔色を伺ったが彼は真剣な表情のままだ。セーフだなこれは!

 

 ロアルドロスに視線を向けると奴は水中に潜っていった。あ、まずい。

 

「あと少しのはず!」

「は、はい!」

 

 そう言ってジンさんは水中に飛び込む。私も慌てて続いた。

 

 ロアルドロスは逃げたと思っていたが違うようだ。水中で待ち構えていた。陸でならありがたいけど水中ではやめてほしい。まともに戦えるだろうか。いや、やるしかないか。

 武器を構えて近づく。やはり思うように動けない。ジンさんはロアルドロスとすでに交戦を始めている。私はなかなか進めない。近づいてもロアルドロスが動いてすぐに距離が離れるのだ。避けられてる?

 

 水中ではやはりロアルドロスのほうが有利なのだろう。ジンさんも苦しそうだ。早く助太刀に行きたいが……もう息が苦しい。申し訳ないが一度水面に上がらなければ。

 

 急いで水面を目指して泳ぐとそれを邪魔するようにロアルドロスが突進してきた。

 

 こいつ……!

 

 ぶつかった衝撃で肺に水が入ったのかひどく苦しい、つらい。ただでさえ少ない酸素が漏れていったのだろうか。ロアルドロスに仕返ししてやりたいがそれどころじゃない。早く、呼吸を。

 

 水面を目指すとまた妨害が入る。本気でやばい。このバナナ野郎……。

 もう一度水面へ泳ぐ。ただし今度は剥ぎ取りナイフを片手に持ちながら。やっぱりまた来た。三度も同じこと繰り返すとは。避けるなんて無理だ。向こうから来るなら迎え撃ってみよう。

 剥ぎ取り用ナイフとはいえさんざん攻撃にも使ったことがあるのだ。ぶつかる瞬間にナイフで刺し、そこをとっかかりに抱きしめるように腕や足を使って捕まえる。動きにくい水中でも抱きしめる力は変わらないぞこのバナナ野郎!

 暴れまわるが離さない。離れてほしければ陸へあがれバナナ野郎。だんだん視界が白くなってく。早く陸へあがれ早く早く早く早くはやくはやくはや……あ、やば

 

 

 

 

 

 

 目が覚めたらベースキャンプにいた。

 

「あ、アルゴさんよかった、気づいたんだね」

「あ、ジンさん、すいません。あれからどうなったんです」

 

 そばにはジンさんがいた。撤退したのだろうか。完全に足手まといになってしまった。タンジアでの狩猟はこんなに厳しいとは……。

 

「アルゴさんの攻撃でロアルドロスもぼろぼろになってたみたいで、無事狩猟達成! そして意識を失ったアルゴさんをベースキャンプに運んだんだ。本当にありがとうございました!」

「なんとか倒せたんですね。こちらこそありがとうございます」

「アルゴさんはあまり泳ぎが得意じゃないんだね」

「水中で戦うって発想がなくて……タンジアのハンターはみんなジンさんみたいに泳げるんですか?」

「まぁ結構みんな泳ぐかなあ」

 

 マジか。ジンさんが特別泳げるんじゃないのか。タンジア怖い。

 

「そうですか……。結構堪えるものがありますね」

「あ、大丈夫! アルゴさん陸じゃすごかったよ! アルゴさんのおかげで今回勝てたようなものだし! 大型モンスターがあんな風に吹っ飛ぶ姿初めて見たよ! それに最後もナイフで応戦するなんてすごいよ!」

「ありがとうございます」

 

 ぐぐぐ、フォローはありがたいけどごめんよ。私本来はロアルドロスに負けるようなハンターランクじゃないんだ……。タンジアじゃ新人だけどベルナじゃ超ベテランなんだ……。

 っていうかそうだった。怒りと焦りのあまり全力でベアハッグもどきをかましたんだ。幸いジンさんはナイフで攻撃したと思ってるようだ。マジあぶない。セーフだセーフ。

 

「それに水中ばかりで狩猟するわけじゃないし! あ、アルゴさんがよければまた一緒に狩りをしてほしい、なあって「是非お願いします」うおっ」

 

 まさかの向こうからのお誘いですよ! 思わず食い気味に返事してしまった。今までこんなこと言われたことほぼなかったのにこの流れは……きてる! ロアルドロスに苦戦したのは恥ずかしいけどロアルドロス狩猟に来てよかった! ほんとよかった!

 

「訳あって短期しかタンジアにいませんがそれまでよろしくお願いします!」

「あ、はい。こちらこそ、改めてよろしく!」

 

 キリさんへ。私のタンジアでの婚活は一歩進んだようです。装備のデザインってすごい大事ですね。

 

 

 それから数週間ほど、ジンさんと何度か一緒に狩りにした。

 私に気を使ってか基本的に水中に行かないモンスターばかりである。こんなふうに気を使われることも新鮮でやっばい。ただ甘えてばかりじゃいられないので時々なんと、ジンさんに泳ぎを指導してもらっている。そう、なんとジンさんに教えてもらっている。ヤバイ。友好度上昇っぷりがすごいのではなかろうか。

 だが絶対に油断してはならない。練習の時くらい泳ぎやすい恰好になってみては、と言われたが断固拒否である。へそ出しNGです。

 筋肉にトキメクタイプだったらいいかもしれないけどその可能性はないだろうしね。っていうか恥ずかしいわ。

 まぁその甲斐があってか以前よりだいぶ泳げるようになった。ただやはり呼吸だけが問題である。

 息継ぎどうしてるの、と尋ねたら藻とか使うだの湧き上がる泡で息継ぎだの……ちょっと何言ってるかわからない。

 真似できそうにない。酸素玉をおとなしく使うしかない。正直酸素玉も使うのに違和感があって、水面に顔を出すのが一番安心する。

 

 まぁ今のところ水中戦はなさそうだし、このまま仲を深めていこう。そうしよう。

 

 

 

 

「この依頼、一緒に行ってくれませんか……?」

 

 そんなことを思ってた時にジンさんから提案された依頼の対象は、ラギアクルスだった。




新人さんイメージでジンさんです。
適当に名付けたわけじゃないです。真剣に考えたんです。

たっくんとあいちゃん? 適当に考えました。

書いてて気づきましたが戦闘描写ってすごい難しいんですね。
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