防具合成による婚活デビュー   作:横電池

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最終話 これも物欲センサーのせい

 タンジアチップスおいしい。

 タンジアに行った理由はタンジアチップスを買いに行ったことだよ。

 

 タンジアチップスおいしい。

 適度な塩味がいいよね、海を感じるよね。

 

 タンジアチップスおいしい。

 

「アルゴ」

 

 タンジアチップスおいしい。

 

「アルゴ……」

「あ、キリ。いらっしゃい。タンジアチップス食べる? おいしいよ?」

「あとでもらうわ……」

 

 ちゃんとお土産分も確保してあるのだよ。タンジアチップス。お手軽な値段でこのおいしさはいいよね。

 ほんとタンジアチップスはおいしいなぁ。

 

「ダメだったのね……」

「……へ? なにが?」

 

 タンジアチップスをベルナ村でも扱ってくれないかなぁ。こんなにおいしいんだもの。

 

「……あっちでどんなことやらかしてきたの」

 

 タンジアチップスおいし……

 

「………………。やだなぁタンジアチップスを買いに行くだけにやらかすなんてないよ。ふふふ」

「わかりやすい現実逃避はやめなさい。まぁどうせドン引きされるようなことやらかしたんでしょ? 今度は何? モンスターをベアハッグでもして仕留めたの?」

「してないし!?」

「じゃあ何やらかしたのよ」

「……ちょっと無意識に動いただけだし」

「具体的には?」

「ハンマー投げて討伐後雄たけびを……」

「ラージャンになったのね」

 

 …………なにもいいかえせない。

 いや、でもさ、仕方ないじゃん。海に逃げられてたらきっともっと苦戦してたよそうだよ。っていうかもっとこう、優しくしてくれてもいいと思う。現実逃避くらいさせてくれてもいいじゃない。

 とにかくラージャン行動は不本意だったこと、不可抗力に近かったということを彼女にも理解してもらうために当時の状況を説明した。

 

「やっぱりラージャンなのね」

 

 説明受けてまず言うことがそれなんですね。

 

「念のため確認したいんだけどボウガンの使い方わかる? 遠距離武器だけど投げるんじゃないからね?」

「知ってます」

 

 呆れてますと言わんばかりの目線が辛い。

 

「まぁ、そのジンさんとはそれからどうだったの」

「どうって?」

「最後やらかしちゃってるけど、一応途中まではいい感じだったんでしょ? まぁ最後やらかしちゃってるけど」

「帰り道は互いに無言だったよ……。タンジアを出る日にちょろっとお話して別れたよ……」

「あ、一応話さずさよならしたわけじゃないのね」

「うん……」

「それで? どんなこと話したの?」

「えっと……、なんだったかな……」

「え、覚えてないの?」

「その頃から現実逃避がやや始まってて……、いや、おおまかには覚えてるよ」

「おおまかには?」

「うん……、海の男になる的なこと言ってたよたしか……」

「意味がわからないんだけど」

「なんか私みたいになれる気がしないから海の男になる的な……」

「海の男って漁師とか? ハンター業挫折させるって何してんの」

「まことに申し訳ないです……」

 

 本当に申し訳ないとは思ってるんだ。だけど私も結構ショックなんだ。友好度高かったのに一気に0って何さ。

 

 

「いっそすごいハンターを探してみたら?」

「んえ?」

「ほら、いろんな地域にすごいハンターっているじゃない。アルゴみたいな」

「どうしたの急に、照れるよなんか」

「アルゴはなんかすごいモンスター倒したらしいじゃん。髑髏のやばいの」

「ああ、オストガロア」

「もうこの際希望は少ないけど、そんな偉業を達成したハンター相手なら恐縮されることもないし、アルゴのほうも恐縮することはないからさ」

「あー、なるほど」

 

 なんだか言外に「普通の恋愛は無理」と言われてる気がするけども。でもどうなんだろう。個人的にはやっぱりこう、一緒に苦難を超えていくような関係をまず築いて、そして幸せな家庭エンドを目指したい。だけども、前回の失敗を思うとなぁ……。

 まぁ、でも案外そういうハンターも同じように婚期で悩んでるかもしれないかな。そう考えるとキリは希望薄いとか言ったけどそんなことないのでは? それにそんなハンター相手ならちょっとばかり豪快に動いても全く気にしない気がする。

 

「でも私あまり他の地域の情報仕入れてないよ」

「タンジアあたりだと、モガの村のハンターだっけ。ギルド異例の大人数で挑むはずだったモンスターを一人で撃退したとか。まぁそういうすっごいハンターを狙ってみるとか」

「タンジアはもうやだ……傷心が癒えるまでタンジアは嫌だ……」

 

 キリさん事情通すぎない? 主婦の情報網的な感じなの?

 なんにしろタンジアは当分いやだ。

 

「んー、あ、じゃああの人のキャラバンのハンターは?」

「あのひと?」

「我らの団っていうキャラバンの」

「ああ、あの帽子の人」

「うんうん、その帽子の人が団長やってるキャラバンのハンターもすごいらしいわ。おとぎ話としか思えないような巨大なモンスターに挑んで勝ったとか」

「キャラバンってことはあちこち移動してるんじゃないの?」

「だから団長さんに会わせてほしい頼み込んでみるの!」

 

 なんかミーハーな感じがする……。

 

「モノは試しよ! ちょうどベルナ村にいることだしほら!」

「うーん……、まぁ言うだけ言ってみるかなぁ」

「よしきた!」

「まぁ結果は後で報告するよ。キリは帰りなよ」

「そうね、今日はちょっと様子見にくるだけのつもりだったし」

「あ、これお土産のタンジアチップス」

「あ、うん……」

 

 しかし団長さんにキャラバンのハンターと会わせてって頼むって……。正直無理な気しかしないけど、駄目元だと思うと気が楽だしね。やるだけやってみよう。

 

 

 

 

 

「番い探しみたいなものか! 面白そうだしいいぞ! はっは!」

「番いって……、いや、まぁいいですけど」

「今度キャラバンに戻るときに一緒に来るといい!」

 

 あっさりオーケーもらえた。馬鹿正直に理由を話したのがこの人にとってはプラスポイントだったようだ。

 やっぱり団長たるもの包容力というか、器が大きくないとなれないのだろうか。この人がもっと若ければアタックしていたかもしれない。いや、やっぱないわ。なんかこう、絶対苦労しそう。そんな雰囲気感じる。

 それはそうと会えちゃうのか。すごいハンターに。会えるとは期待してなかったからいざ会えるとわかるとこう、緊張というか期待というか希望というか、こう、うん、わくわくだ。

 やっぱりそのハンターも婚期焦ってたりするんだろうか。同じような悩みがあるのだろうか。というかどんな人なんだろう。今のところ知ってる情報といえば、すごい、しか知らない。

 ここは団長さんに聞いてみよう。優しくて紳士的な人だったらいいなぁ。

 

「ところでそのハンターさんってどんな人なんです?」

「ん? どんな、かァ。すごいやつだな」

「あ、いや、こう、性格とか特徴とか」

「性格はお人よしだな!」

 

 おお、ますます期待してしまう。

 

「あとそうだなァ。まつ毛のハンターとよく呼ばれてるな!」

 

 んんん? まつ毛が特徴的なの? なんかいきなりイメージが変になる情報が飛び込んできた。

 

「まつ毛の、ですか……?」

「あァ、まつ毛バサバサのハンターとも言われてたなァ」

 

 おおっと? ちょっと意味がわからないぞ? かなり特徴的な顔の人なの?

 でも、まぁ、大丈夫、きっと大丈夫。まつ毛なんて、なんだい。些細な事だきっと。

 

「そうだ、アイツのすごいところはな」

「はい」

「パンツ一丁でダレン・モーランに挑んだんだ」

 

 

 

 

 

 あっ……、変態だ。

 

 

 

 

「ぱ、パンツ一丁、ですか」

「あァ! すごいだろう!」

「え、ええ……、ある意味すごいですね……」

 

 こ、これはあれだよねきっと。団長が誤解を招く言い方してるだけだよね。ちょーっとスリルを求めて装備を付けずにダレン・モーランに挑んだんだよね。うん、たまにいるよね防具つけずに狩猟に行く人。大丈夫、誤解してない私。

 

「もちろん挑む前はその人服着てましたよね……?」

「ん? いや、たまたま一緒の船に乗り合わせてたがずっとパンツ一丁だったぞ?」

 

 はいアウト。

 どう考えても露出狂の変態です。弁解の余地ないです。

 よく捕まらなかったね? なに? ハンターとしては能力が高くて見逃してもらってたの?

 

「それとな、アイツはそのときな……」

「まだ何かあるんですか……?」

「ハンターでもなんでもなかったんだ。はっは! すごいよなァ!」

 

 どうリアクションしたらいいのこれ……

 

「そ、そうなんですか……」

「アイツみたいな大物はそういないぞ」

「そうでしょうね……。あの……」

「お、どうした?」

「やっぱり私、その人と会わないでいます……。すいません……」

「あ、あァ」

 

 いくら優しくてもさ、露出狂の変態とか無理です……。絶対無理です……。

 

 期待なんて、するんじゃなかった。

 素材だけじゃなく婚活にも物欲センサーのようなものはあるのかもしれない。

 キリさん、私しばらく婚活休止しますね。芽生えた希望の先も変態だったとか、ちょっといろんなことがどうでもよくなってきましたので。

 もしかしたら、偉業を達成できる人は、何かしら異常なのかもしれない。

 ちょっと野生的だったり、性癖が異常だったり、どこか、恋愛面ではダメな部分がある人が偉業を達成できるのかもしれない。そんな気がしてきた。もう一生独身を享受しよう。なんだかとっても疲れたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 タンジアの港にて、受付嬢とギルドマスターの会話。

 

 

「ジンさんここのところ張り切ってますねー」

「おお、みなぎっとるようじゃのぅ」

「アルゴさんの影響でしょうかね!」

「外からの刺激は若者にいい刺激だったようじゃな。別れの時のあの豪胆な宣言、思い出すだけで心躍るものじゃ!」

「ギルドマスター、あまりからかっちゃだめですよっ。でもあれは見てて私もドキドキしましたね!」

「うむ、海で一番のハンターになる、とはよく言ったもんじゃ! 若人の恋路は誠に青春じゃな!」

「でもアルゴさん上の空みたいでしたよねあの時……」

「そこだけがイマイチロマンを感じさせなかったのぅ。まぁ縁がこの先あるかないかは儂らにはわからんな」

「わくわくしちゃいますね! あ、そろそろお昼休憩入っていいですか?」

「うむ、よいよい。じゃがあまり食べ過ぎないようにな?」

「はーい!」

 

 

「婚期がどうのと言ってたが、あとは本人たち次第じゃな……」

 

 

 

 

 





 もともと短編予定だったのですが少し長かったため連載でやらせていただきました。
 そのため連載にしては短いかもですがこれで終わりです。
 最終的に婚期ゲットか、残念でしたかは、想像に任せるスタイル。
 アルゴの婚活生活はこれからだ!エンドです。本人諦めてますけど。

 ちなみに当初はもっとまじめ路線の予定でした。
 ちょっと調子に乗り過ぎてアルゴさんがパワー型になりすぎた結果、真面目路線は消えました。
 最後のタンジアの会話はまじめ路線の名残です。救いのある物語好きなの。

 あ、誤解ないように言っときます。我らの団ハンター(MH4)はキャラメイクでまつ毛バサバサにできません。装備でまつ毛バサバサにもできませんよ。期待してMH4始めちゃう人がいないように注意しておきます。
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