東方虚空伝   作:TAKAYA

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九話 約束

「これでもう2度とあんたの顔を見なくていいと思うと清々するわ!」

 

「いや別にこれ今生の別れとかじゃないから」

 

 輝夜といつも通りと言えばいつも通りのやり取りをしているここは月に向かうシャトルの待合室。永琳達の見送りにきたら輝夜とムツミさんが居た。

 議会の方針で子供や非戦闘員を優先で月に送る事が決まっており準備が出来た人達は早々に出立させるらしい。

 輝夜も永琳と一緒に行くように劉禅さんに言われたそうだ。後は庵さんの娘さん達も今回の便で行く事になっている。(庵さんが朝電話で泣きながら教えてくれた)

 

「ふん、あんただけここに残ればいいのよ」

 

「ひどいなー」

 

「あらあら~、だめよ~輝夜ちゃんそんな事言っちゃ~」

 

 輝夜に対して鈴音さんがそう注意する。この二人実は知り合いだったとさっき聞かされたのだ。こうして見ると親子のようだ。

 

「うっ、ごめんなさい」

 

「は~い、いい子ね~」

 

 鈴音さんにはやたらと素直だな。

 

「輝夜ちゃんは~本当は~コー君の事が心配なのよね~」

 

「うん。…ってち、違う!!」

 

「そうなのか♪よし頭を撫でてあげよう」

 

 ワシワシと輝夜の頭を撫でる。

 

「違うって言ってるでしょ!頭撫でるな!このっ!このっ!」

 

 輝夜は顔を赤くしながらゲシゲシと僕の足を蹴ってくる。地味に痛いよ。

 

「痛い痛い。これでも怪我人なんだよ」

 

「ふん!知らないわよ!」

 

「あら、お兄様ったら姫様とそんなにイチャイチャして」

 

「イチャイチャなんかしてない!!」

 

「何?永琳ヤキモチ?」

 

「ええ、だって私はお兄様が大好きだもの?」

 

「その台詞が疑問文じゃなければ喜べたんだけどね。でも僕は永琳の事は輝夜の50倍好きだから♪」

 

「どんだけ差があるのよ!!」

 

「まぁ~永琳ちゃんったら羨ましいわ~」

 

「大丈夫ですよ。鈴音さんの事は輝夜の45倍位好きですから♪」

 

「だから差があり過ぎるでしょ!!」

 

「うーん……じゃあ庵さんの事は輝夜の1.2倍位だよ?」

 

「庵にすら負けてるの!!!」

 

「皆様そろそろ…」

 

 遠慮がちにムツミさんが声を掛けてくる。そろそろ出発の時間の様だ。こんなやり取りも暫く出来なくなるな。

 

「次に会うのは月だね」

 

「コー君~あまり無茶したらダメよ~」

 

「善処します」

 

「…ちょっとあんた手出しなさいよ」

 

「え?何で?」

 

「いいから!!」

 

 そう言うと輝夜は僕の手を無理やり引っ張り掌に何かを渡してきた。

 

「ペンダント?」

 

「お守り代わりに貸してあげる!いい絶対に後で返してよ!」

 

 どうやら輝夜なりに気を使ってくれたらしい。

 

「わかったよ必ず返す。ありがとう輝夜」

 

 僕はもう一度輝夜の頭を撫でる。今度は出来るだけ優しく。

 

「うっ!?な、撫でるなって言ったでしょ!馬鹿!ムツミ行くわよ!!」

 

 そう言い放つと顔を真っ赤にしながら走り去ってしまった。

 

「姫様!それでは七枷様、どうか御武運を」

 

「はい、ムツミさんもまた月で」

 

 ムツミさんはペコリと頭を下げて輝夜の後を追っていった。

 

「それじゃ私達も行くわね。お兄様、本当に無茶しないでね?」

 

「わかってるよ。そんなに心配しないで」

 

「信じてるから。お母様行きましょう」

 

「ええ~、コー君~また月でね~」

 

 

 二人は手を振りながらシャトルの方に向かっていき、僕はそれに応えながら見送った。少ししてシャトルは月を目指し空へ上っていった。

 それじゃ僕も自分の成すべき事をしよう。気持ちを切り替え僕は兵舎へと向かうのだった。

 

 

 

 

□   ■   □   ■   □   ■   □   ■   □   ■

 

 

 

 

 守備隊兵舎の会議室。そこに今守備隊と守護団の主要なメンバーが集まっていた。集まった理由はもちろん奴の事だ。

 

「それではターゲット『紅髪(あかがみ)』に対する迎撃作戦会議を行う」

 

 進行役の庵さんがそう宣言する。でも正直あれと正面きって戦っても結果は目に見えている。ここに集まった者のほとんどがそう思っているはずだ。

 

「何か効果的だと思う作戦の案は無いか?」

 

 そう問いかける庵さんに答える者はいなかった。

 

「虚空何かないか?やつと直接やり合ったのはお前だけなんだ」

 

 正直に言えば直接戦ったからこそ何も言えない。あれのやばさを思い知らされたから。

 

「…すいません」

 

「…そうか。わかった…」

 

 短くそう答える。それだけで庵さんは察してくれたらしい。それから会議はなんの進展もないまま時間が過ぎていった。沈黙が支配していた空間に誰かが自嘲するように、

 

「はは、いっそ落とし穴にでも落として蓋をするとか…」

 

「いいなそれ」

 

「そんなの出来たら苦労はないぜ?」

 

「まったくだな」

 

「だったらお前は何かあるのかよ?」

 

「そ、それは…」

 

 議場に剣呑な空気が漂う。だけど僕には今の発言で一つのアイディアが浮かんだ。とりあえず庵さんに進言する。

 

「庵さん、一つ作戦を思い付いたんだけど」

 

「何だ?言ってみろ」

 

 

 

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「…どうかな?」

 

「確かに悪くはねーな。条件は揃える事ができる」

 

「だがそんなにうまくいくのか?」

 

 黄泉総団長がそんな疑問を口にする。

 

「何もしないよりはマシでしょう。俺は賛成だ」

 

 そう言ってくれたのは草薙連隊長だった。他の守備隊の隊員達も賛同してくれた。

 

「やれるかじゃなくやらなきゃいけねーんだよ俺達は。そうだろ迦具土?」

 

「…そうだな、そうだった」

 

「よし!それじゃぁすぐに準備に取り掛かるぞ!紅髪が何時来るとも限らん。各自迅速に行動せよ!」

 

「「「「 了解!!! 」」」」

 

 全員が活気を取り戻し作戦に動き出した。うまくいくかは判らない。僕達にに出来るのはただ望む結果に近づける努力をするだけだ。

 

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