戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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此のタイミングを逃すと本作の為に温めていた伏線回収の機会が無くなる為、此処で切り出してみる。
かなり闇の深い話ですが“こんな解釈も有りか”と思って頂ければ幸いかと。
其れでは、どうぞ。




第95話「盛り上がる決勝戦と大人達のヤバい話です!!」

 

 

 

第63回戦車道高校生全国大会・決勝戦「熊本県代表・黒森峰女学園対茨城県代表・大洗女子学園」は、重駆逐戦車・ヤークトティーガーを前面に押し立てて力任せの攻撃を仕掛けた黒森峰の前に、高地に立て籠もる大洗女子は苦しい戦いを続けていた。

 

だが、大洗女子は高地から離れた場所で様子を伺っていた“カメさんチーム(38(t)/ヘッツァー仕様)”が黒森峰の攻囲陣の後方から攪乱攻撃を行うと言う“おちょくり作戦”を決行した結果、黒森峰の攻囲陣が崩壊。

 

此れを見た大洗女子学園戦車道チーム隊長・西住 みほは指揮下の全車を率いて高地を駆け下り、黒森峰の攻囲陣からの脱出に成功。

 

此れに対して黒森峰も直ちに態勢を立て直し、大洗女子戦車隊を追撃するのだった。

 

 

 

 

 

 

戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない

 

 

 

第95話「盛り上がる決勝戦と大人達のヤバい話です!!」

 

 

 

 

 

 

斯くして、試合は高地を放棄して新たな戦場へ向かう大洗女子と其れを追う黒森峰と言う構図になった。

 

其の様子を試合会場内の超大型モニターで見た観客達が大歓声を上げる中、サンダース大付属高のアリサ副隊長が……

 

 

 

「何処へ向かう気なの?」

 

 

 

と戸惑う中、隣で特大のポップコーンを食べているケイ隊長が「面白くなって来たわね!」と声を掛けた処、傍らに居る後輩・原 時雨が心配気な声を上げた。

 

 

 

「あっ…大洗のポルシェティーガーのスピードが落ちている!」

 

 

 

其の言葉通り、ポルシェティーガー(レオポンさんチーム)が車列から外れて速度を落としたかと思うと、エンジンルームから微かな異音が聞こえて来ると同時に小さな白煙が車体後部のスリットから上がり始めていた。

 

此の様子は実況席に居る解説陣も見ており、其の1人である斎森 伸之が……

 

 

 

「あっ!? 大洗のポルシェティーガー、動力系統にトラブルが出ているみたいですよ!?」

 

 

 

と述べた為、実況席のゲストである“トライアドプリムス(凛・奈緒・加蓮)”のメンバー3人や大洗女子側の観客席から「「大丈夫なの!?」」と不安気な声が上がる中、“レオポンさんチーム(ポルシェティーガー)”の車内では……

 

 

 

「“レオポン(ポルシェティーガー)”がグズりだしたぞ!」

 

 

 

砲手を務めるホシノが車長兼通信手兼リーダーのナカジマへ状況を告げた処、彼女は「一寸、宥めて来る」と答えてから車外に出て、砲塔の後ろに在るエンジンルーム迄やって来ると……

 

 

 

「「あっ!」」

 

 

 

レオポンさんチーム(ポルシェティーガー)”の様子を車内の覗き窓から見ていた“あんこうチーム(Ⅳ号戦車H型仕様)”の西住 みほ隊長・秋山 優花里・五十鈴 華が一斉に驚きの声を上げると同時に“ニワトリさんチーム”のイージーエイト(M4A3E8)の車長用キューポラから顔を出して様子を見ていたチームリーダー兼車長の原園 嵐も……

 

 

 

『あれは、ナカジマ先輩!?』

 

 

 

と叫んだ。

 

 

 

其れも其の筈、ナカジマは器用な手先でエンジンルームのハッチを開け、内部の何処かを工具で操作し乍ら……

 

 

 

「ハイハイ、大丈夫でちよ~♪」

 

 

 

とポルシェティーガーをあやす様に声を掛けていたのだ。

 

 

 

其の様子を眺めて居たみほが「壊れた個所を走り乍ら直してる!」と驚きの声を上げ、傍らに居る優花里も「流石、自動車部!」と感嘆している中、嵐は無線で……

 

 

 

『ナカジマ先輩、駆動部に指が触れたら大怪我に繋がるのに*1…済みません、無理させちゃって!』

 

 

 

と心配気な声で語ると、ポルシェティーガーのエンジンルーム上に座って居るナカジマへ向けて両手を合わせ乍ら、頭を下げた。

 

すると彼女は車内に戻り、無線手の代理*2をしていたスズキからみほと嵐からの通信内容を聞かされた後、無線でこう答えたのだ。

 

 

 

「御免ね、西住さんに原園さん。だけど此の試合、絶対勝って皆と戦車道続けたいし、原園さん達も凄く頑張っていたから」

 

 

 

其の言葉に、みほは心を打たれつつ「ナカジマさん……」と声を掛け、嵐は感極まって『有難う御座います!』と語った後で声を詰まらせて居た処、ナカジマは元気の良い声で、2人に向けて無線でこう宣言したのである。

 

 

 

「だから此の先、私達に出来る事があったら何でも言ってよ!」

 

 

 

「『はいっ!』」

 

 

 

こうして“勝利へ向かって心を一つ”にした大洗女子学園戦車道チームは、新たな戦場を目指してひた走る。

 

 

 

 

 

 

一方、高地の戦いでは一杯食わされた形の黒森峰戦車道チームも、逸見 エリカ副隊長が駆るティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)を先頭に体勢を立て直してからは全速力で大洗女子を追跡した結果、漸く相手の姿が見える距離迄近付いていた。

 

其の状況を確認したエリカが「逃がさないわ!」と叫んだ後、砲手へ向けて「目標、1時方向のフラッグ車(Ⅳ号戦車H型)!」と鋭い声で指示を出す。

 

だが、大洗女子も黙ってはいない…其の様子を見た“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”リーダー兼車長の嵐が行動を起こす。

 

 

 

『西住隊長、其方の7時方向約1000mにティーガーⅡ(ケーニッヒティーガー)を確認!直ちにカバーに入ります!』

 

 

 

嵐は隊長兼フラッグ車である“あんこうチーム(Ⅳ号戦車H型仕様)”の後方に回るとジグザグ走行に入り、エリカのティーガーⅡ(ケーニッヒティーガー)からの砲撃を妨害する行動に出た。

 

ニワトリさん(M4A3E8)チーム”の車内では、砲手の野々坂 瑞希が大声で「砲塔を7時に回すわよ!最悪でも相打ちにしてやる!」と叫んで砲戦準備に入る中、嵐のヘッドセットにみほ隊長からの心配げな声が入って来る。

 

 

 

「“あんこう”より“ニワトリ”へ、無理しないで!」

 

 

 

其れに対して嵐は覚悟を決めた声で、こう返す!

 

 

 

『隊長、私達は序盤に一度は撃破されたも同然のピンチを切り抜けましたから、此処で其の幸運を使い切ってでも隊長達“あんこうチーム”は守り抜きます!』

 

 

 

其の声に、みほも覚悟を決めて「了解!此方もジグザグ走行を続けますから、上手く相手の砲撃のタイミングをズラす様に走って下さい!」と返信するのだった。

 

一方、エリカが駆るティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)の車内では照準器を覗き込んでいた砲手が相手の行動を見て、思わず毒吐(どくつ)いていた。

 

 

 

「クソッ…相手がジグザグ走行している上に、あのイージーエイト(M4A3E8)がカバーに入っているから相手フラッグ車(Ⅳ号戦車H型)を撃てない!」

 

 

 

つまり、大洗女子の隊長車兼フラッグ車のⅣ号戦車H型(あんこうチーム)イージーエイト(ニワトリさんチーム)が交互に重なり合い乍らジグザグ走行を続けている為、中々Ⅳ号戦車H型(あんこうチーム)に照準を合わせる事が出来ないのだ。

 

すると彼女の様子を見ていたエリカ副隊長が心の中で“エリカ、此処で怒鳴れば全てが台無しになるわ!”と呟きつつ、冷静さを保った声で……

 

 

 

「砲手、落ち着きなさい!此れから距離を詰めるから射程500m迄近付いた処で……」

 

 

 

と語った後“砲撃するわよ!”と命じようとした時!

 

 

 

“ガコン、ガキャン!ガキャン!”

 

 

 

突如、車内から激しい異音が響き渡ると同時に前進を続けていたティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)が急激に左方向へ横滑りを始めたのだ。

 

此の不自然な走行に気付いたエリカが操縦手目掛けて「一寸、何処へ行く気なのよ!」と叫ぶが、ティーガーⅡ(ケーニッヒティーガー)は其の儘あらぬ方向へと走り続ける。

 

其の状況に痺れを切らしたエリカが「何やってるの!」と某ロボットアニメの強襲揚陸艦“木馬”艦長みたいな台詞を大声で怒鳴った処、操縦手が悲痛な声でこう叫んだ!

 

 

 

「左側動力系に異常!済みません、操縦不能です!」

 

 

 

 

 

 

其の状況が映し出された観客席前の超大型モニターの映像を聖グロリアーナ女学院の御茶会の席で並んで見て居たオレンジペコとアンツィオ高校1年生エース候補生・マルゲリータが嬉し気な声で「「やった!」」と叫んでハイタッチ。

 

其処へ彼女達の様子を見ていたダージリン・聖グロ隊長が冷静な声で……

 

 

 

「プラウダ高対策だった重戦車運用が裏目に出た様ね」

 

 

 

と語った処、オレンジペコが「黒森峰の重戦車は足回りが壊れ易いのが欠点。其れを狙っていたんですね!」と答えると、ダージリンは超大型モニターに映し出された“転輪が脱落した愛車・ティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)の修復作業の最中に地団駄を踏んで悔しがるエリカ”の姿を眺めつつ……

 

 

 

「走り回っていれば、黒森峰側は燃料切れを起こす車輌も出て来るわ」

 

 

 

と付け加える。

 

すると2人の話を聞いて居たマルゲリータが明るい声で……

 

 

 

「しかも、此処で大洗女子が黒森峰を振り回している限り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()…目立たないけれど、此れは大きなアドバンテージです!」

 

 

 

と指摘した処、ダージリンは微笑み乍ら頷くと、こう答えたのだった。

 

 

 

「其の通り。今はみほさん達大洗女子が主導権を握っているわ…でも、黒森峰も此の儘やられっ放しでは無い筈よ

 

 

 

其の言葉を聞いて、オレンジペコとマルゲリータは表情を引き締め乍ら頷く。

 

其れは兎も角、大洗女子は黒森峰側の追撃を振り切り、新たなる戦場へ向けて機動を開始したのである。

 

 

 

 

 

 

一方…聖グロの御茶会の席から少し離れた場所では、大人達が“()()()()()()()”を始めていた。

 

 

 

先ず、原園 嵐の母・明美がニヤニヤ笑い乍ら……

 

 

 

「“しぽりん(しほ)”。何時から黒森峰は()()()()()()()を忘れたのかしら?」

 

 

 

“意味深な問い掛け”をして、西住流師範・西住 しほの顔を(しか)めさせた処、2人の共通の親友・周防 長門が生真面目な声で「そうだな」と語った後、明美の問い掛けに対する答えを述べる。

 

 

 

「私達の代…しほが隊長だった時代の黒森峰は補欠の選手でも()()()()()()()()()()()を絶対に欠かさなかった筈だが?」

 

 

 

明美と長門は、先程黒森峰副隊長・逸見 エリカが駆るティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)の転輪が外れて走行不能になったトラブルの原因が“昔と違って戦車の扱い方を軽視した結果、イレギュラーなトラブルに弱くなっている黒森峰の戦車道の在り方”に有ると指摘したのだ。

 

其れに対して嵐の大叔母・原園 鷹代も頷き乍ら「そうだね」と語った後、こう話す。

 

 

 

「戦車は一寸した事でもトラブる壊れ物の様な車輌だから、乗員は乗車前に必ず基礎的な点検作業をやって、未然にトラブルを見付け出す様に躾けられる筈だがね?」

 

 

 

3人からの指摘で心理的に追い詰められたしほが苦い顔を浮かべ乍ら「うっ……」と小さく呻いた時、今度は元・アンツィオ高校OGで明美達の友人でもある大姫 龍江が何時もの関西弁で「“しぽりん(しほ)”、そろそろ白状したらどうや?」と詰め寄って来た。

 

 

 

「な…何を?」

 

 

 

唐突な詰問を受けたしほが戸惑い気味に答えるが、龍江は不敵な笑みを浮かべつつ……

 

 

 

「此処に居る人達は皆、知っとるんやで」

 

 

 

と前置きした後“ある衝撃的な事実”をしほに告げたのである*3

 

 

 

「10連覇を逃した去年の全国大会の黒森峰、実は何故か予算削減で整備の人員や消耗部品の購入費用が削減された為に共食い整備を強いられて稼働戦車の数が激減した結果、1年生は高等部入学当初戦車に乗れずに“演習場内を歩き乍ら戦車に乗ったふり”をすると言う練習をやっていたそうやないか?」

 

 

 

「何故、其れを!」

 

 

 

龍江の追求に、しほは絶叫しつつ“何故、彼女達が黒森峰の内部事情を知っているのだ!今は明美と長門も母校黒森峰や西住流とは絶縁状態なのに!”と心の中で驚愕するが、其処へ長門が更なる事実を突き付ける。

 

 

 

「其れだけじゃないぞ。漸く1年生が戦車に乗って練習を行う際には使用する戦車の整備を全て1年生の乗員に丸投げしていたそうじゃないか。確かに周防家は去年の大会後、黒森峰と西住流とは縁を切ったとは言え、出入りの業者との縁迄は切れていないから色々と話は聞いて居るぞ」

 

 

 

其処へ鷹代も*4「私も陸自時代の元部下や戦車道連盟の伝手で調べてみたのだが、去年の大会前の黒森峰の練習は『まるで戦車道じゃなくてマーチングバンドみたいに隊形を組む練習しかやっていなかった』そうじゃないか」と追及した処、しほは驚きを隠せない声で……

 

 

 

「そ…其処迄調べたのですか!?」

 

 

 

と叫ぶが、其処へ明美が更なる事実を暴露した!

 

 

 

「オマケに大会前の練習を指導したのは隊長のしほさんでも西住流師範の貴女(しほ)でも無く、黒森峰PTAだったって言うじゃない。しかも練習内容を細かく指定して戦車道チームのメンバー達には其れ以外の事をさせなかったそうだし」

 

 

 

其れに対して、最早呆然とした顔で突っ立て居るしほを余所に、長門がこんな事を付け加えた……

 

 

 

「更に、戦車道チームメンバーの指導を口実にして当時チームの3年生だった富永の娘や花谷・黒島とか言う奴らが“鎖犬隊”とか名乗って色々と変な事をやっていたのだが…あの3人、実は親のコネで裏口入学をやっていた可能性が高い事が分かったんだ*5

 

 

 

そして、明美はしほに向かって凄みの有る笑みを浮かべつつ、こう語ったのだ。

 

 

 

「流石は富永PTA会長。“黒森峰戦車道チーム・陰のエース”と呼ばれていた私を妬んで、当時黒森峰PTA会長だった自分の母親に頼み込んだ結果、私が黒森峰を卒業後に推薦入学する予定だった大学に圧力を掛けて推薦枠を潰した黒幕だけの事は有るわ!*6

 

 

 

其の言葉にしほが呆然とした声で「何て事……」と呟く中、龍江が「しかも、其れで話は終わりでは無いんや」と語った後、彼女はこう言ったのだ。

 

 

 

「黒森峰女学園PTA会長・富永はな、数年前から文科省学園艦教育局長・辻 廉太とグルになって『学園艦統廃合計画』を喰い物にしとるんやで…つまり、贈収賄に手を染めとるんや!」

 

 

 

と。

 

 

 

「!」

 

 

 

衝撃的な発言にしほが驚愕の叫び声を上げると、鷹代がフォローに入る。

 

 

 

「まあ、しほさんが知らないのも無理ないよ。私達も事の次第が見えて来たのは今朝になっての事だからね」

 

 

 

更に龍江が「其れより“しぽりん(しほ)”は忘れたんかい?」と前置きしてから、こう指摘する。

 

 

 

「“ながもん(長門)”の実家が経営している周防石油グループには“周防総合研究所”と言う事実上の()()()()が存在すると言う事を」

 

 

 

其の指摘を受けたしほが「あっ!」と呻く中、長門は苦笑いを浮かべつつ「“龍っちゃん(龍江)”、情報機関は言い過ぎだ」と(たしな)めたが、其の後真面目な声でこう語った。

 

 

 

「とは言え、文科省が進めている学園艦統廃合計画の内容に不審な点が有ったのは事実だから、明美と組んで大洗女子の支援者になった後、母上(日向)の許しを得た上で総研を使って色々と調べて来たのだが…まさか、此処迄闇の深い話になっていたとは思わなかった」

 

 

 

長門からの話を聞かされたしほは、彼女にしては珍しく弱気な声で「一体、学園艦統廃合計画と富永PTA会長との間に、何が……」と語った処、明美も珍しく困り顔を浮かべつつ「実は、此の話は今朝になって第一報が入って来たから、未だ詳細な話は把握し切れていないんだけど……」と語っていた処。

 

 

 

「あっ。“ながもん(長門)”のスマホが鳴ってる」

 

 

 

明美が長門に話し掛けると、彼女は直ぐ自らのスマホで……

 

 

 

「もしもし…ああ、陸奥美(むつみ)か。大丈夫だったか?」

 

 

 

と答えてから、少しの間会話を交わした後……

 

 

 

「皆、漸く今回の一件の構図が見えて来たぞ。今から周防総研・総合調査部の岩木(いわき) 陸奥美(むつみ)がPDFで詳しい報告書を私のスマホに送ってくれる」

 

 

 

と答えた処、話を聞いて居た龍江が……

 

 

 

「じゃあ…やはり“むっちゃん(陸奥美)”が調べていた件は“ビンゴ”やったんか?」

 

 

 

と問い掛ける中、語られている内容に付いて行けないしほが当惑気味の声で「御前達…一体、何の話をしているんだ?」と問い掛けた為、明美が泰然自若とした声で「まあ、落ち着いて。今は岩木さんからの報告書が届く迄待ちましょう」と諭すのだった。

 

 

 

だが、此の後明美達も“周防総合研究所からの調査報告書”の内容を読んで絶句する事となる。

 

 

 

 

 

 

さて、此処で時間は第63回戦車道高校生全国大会・決勝戦が始まる直前迄遡る。

 

此処は東京都内某所に在る“周防総合研究所”の関連(ダミー)会社が所有する建物の一室…所謂セーフハウスの中。

 

其の部屋の中で、3人の女性がホッとした表情を浮かべつつ、会話を始めていた。

 

 

 

「清恵ちゃんに井手上さん。今、長門先輩に第一報を送りました」

 

 

 

先ず、原園 明美の秘書・淀川 清恵と西住家の使用人・井手上 菊代が居る前で、茶髪のショートカット姿をした女性…周防総合研究所・総合調査部所属の岩木(いわき) 陸奥美(むつみ)が周防ケミカル工業株式会社・社長で大学時代の先輩である周防 長門へ報告を済ませたと伝えた処……

 

 

 

「陸奥美さん、今回は助かりました」

 

 

 

清恵が御辞儀の後で礼を言うと、陸奥美はサバサバした声で「“ながもん(長門)”先輩から“多分、大変な目に遭っているだろうから助けてやってくれ”と言われていたからね」と答えた処、今度は菊代が落ち着いた声で……

 

 

 

「不覚でした…奥様(しほ)からの指示で『富永PTA会長が言わなかった“()()()()”のレストア費用の出処』を探っていたら、正体不明の男達に尾行された上、危うく拉致されそうになるとは」

 

 

 

と語る。

 

すると清恵が「私は例の文科省の役人()の動向を探っていたら、偶然菊代さんが男達に連れ去られそうになっているのを見掛けたので、隙を見て合気道で2・3人倒してから菊代さんを連れて逃げ出したのです」と語ると陸奥美は冷静な声で当時の状況を振り返る。

 

 

 

「私も以前から噂になっていた“余剰の学園艦払い下げと解体事業を巡る贈収賄疑惑”を調べた後、車で首都高を移動中に清恵ちゃんの車が怪しい雰囲気のベンツ2台に追われ乍ら私の乗っている車を追い越して行ったから“何か有る!”と直感して手を貸したのよ」

 

 

 

要するに、都内で怪しい男達に拉致されそうになった菊代を救い出した清恵は其の場から菊代と一緒に逃げ出すと愛車であるアウディTTクーペに乗り、追手のベンツ2台に追われ乍ら都内を逃げ回って居た時、偶然首都高で出会った三菱ランサーエボリューションIX MRに乗る陸奥美に助けて貰って何とか逃げ延びた後、現在は彼女が用意したセーフハウスに避難している。

 

 

 

其処で清恵が話題を変えて「其れで、陸奥美さん。学園艦統廃合計画の件は?」と質問した処、陸奥美は険しい表情を浮かべつつ、凛とした声で……

 

 

 

真っ黒よ…先ずは辻の奴だけど、長崎県長崎市に在る造船所の社長とグルになって相当の悪さをやっているわ」

 

 

 

と断言した。

 

すると真っ青な顔になった菊代が震え声で「其の造船所の社長って、まさか……」と問うた処、陸奥美はキッパリと……

 

 

 

「菊代さんの御想像通り、河波(かわなみ)造船所*7河波(かわなみ)社長です」

 

 

 

と答えた。

 

其れに対して菊代は「河波社長は富永PTA会長の夫で国会議員である富永氏の幼馴染です」と告げた処、清恵が納得した表情を浮かべつつ……

 

 

 

「と言う事は、彼と富永夫妻と辻がグルになって学園艦統廃合計画で廃艦になる学園艦の解体工事競争入札を河波造船所が落札出来る様に仕組んでいると?」

 

 

 

と推理したのだが、其れを聞いた陸奥美は真剣な声で「其れ処じゃないわよ」と答えた後、より衝撃的な事実を告げたのだ。

 

 

 

「学園艦統廃合計画自体が有名無実な代物なのよ。実際は適当な理由を付けただけで普通なら廃校にならなそうな学園艦を次々に解体しているわ」

 

 

 

其の事実を聞かされた菊代が「何ですって!?」と驚愕し、清恵も「つまり…金目当て!?」と叫ぶ中、陸奥美は更なる事実を語る。

 

 

 

「しかも、廃校対象の学園艦の生徒や住民への説得工作を巡っては脅迫や嫌がらせ・関係者の買収に加えて拉致・監禁・暴行、更には説得に応じない関係者の自宅へダンプカーを突っ込ませて家屋を破壊する等と言った犯罪行為迄行っている事が分かったわ」

 

 

 

まるでバブル景気時代の地上げ屋がやりそうな手口の数々に、菊代と清恵は絶句する…何故、其処迄やる必要が有るのかと。

 

だが、此処で陸奥美は一呼吸置いてから……

 

 

 

「只ね、更に調べたら奇妙な事が分かったのよ」

 

 

 

と語った為、清恵が当惑気味の声で「奇妙?」と問うた処、陸奥美はこんな話を始めた。

 

 

 

「富永と辻は、去年の秋頃から大洗女子学園廃校の件で関係各所に色々と根回しをしていた事が分かったのだけど、実は其れと同じ時期に2人が文科省関係者に対して“ある手続き”をする様に働き掛けていた事が分かったのよ…其れが何か、分かる?」

 

 

 

すると菊代がハッとした声で「去年の秋頃…まさか!?」と叫び、彼女の話を聞いた清恵が当時の状況を思い出すと……

 

 

 

「其れって丁度、みほさんの転校話が持ち上がった頃ですよね…って、ひょっとしてみほさんの転校先を決めた人物は!?」

 

 

 

と語った処で“陸奥美が語った奇妙な話の内容”に気付いて驚愕すると陸奥美は冷静な声で……

 

 

 

「清恵ちゃんの勘、大当たりよ」

 

 

 

と告げた後、詳しい状況を説明する。

 

 

 

「長門先輩によると、みほちゃんの転校話を切り出したのは、去年の戦車道全国高校生大会の一件で落ち込んだ彼女を心配した御父上の常夫さんだけど、彼が転校先探しを依頼した相手はPTA会長の富永。そして私が調べを進めた結果、富永は実際の手続きを辻に任せていた事が分かったわ」

 

 

 

すると菊代が驚愕の声で「待って下さい。だとすると、みほさんが大洗女子学園へ転校する事が決まった後に廃校の通達が行われた事になるのでは!?」と問い掛けると陸奥美は小さく頷いて菊代の話が事実だと認めた処、清恵は震え声で「だとしたら……」と呟いた後、こう叫んだのである。

 

 

 

「みほさんの転校先が大洗女子学園に決まった後、其の学園に廃校の通達が出されたと言うのは偶然では無く、実は辻と富永が仕掛けた陰謀だったと言うのですか!?」

 

 

 

(第95話、終わり)

 

 

 

*1
実体験だが、勤務先の工場でも「駆動中の機械に手を触れると大怪我するから触るな」と上司や同僚から頻繁に注意される。此れは、そんな事をやると大抵手指を切断して労働災害となり、被害者は勿論の事、会社も労働基準監督署への報告等で大変な事になる為。

*2
レオポンさんチームの無線手は本来車長のナカジマが兼任の為。

*3
此処から先の会話内容は「プラウダ戦記」第2巻が元ネタ。

*4
此処から先の会話内容は「プラウダ戦記」第3巻が元ネタ。

*5
此の話の元ネタは「プラウダ戦記」第1巻と第2巻。

*6
此の話に関しては本編第8話「これが、戦車道復活の真相です!!」を参照の事。

*7
此の造船所、実在のモデルが存在する。詳細は後書きを参照の事。





此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第95話をお送りしました。
遂に本作オリジナルの伏線“みほ殿転校の裏事情と大洗女子学園廃校の真相”のネタばらし回。
原作では“偶然そうなった”様に見えていたみほの転校と大洗女子学園への廃校通知は、本作では水面下で繋がっていました。
更に、前年の戦車道全国高校生大会で黒森峰が敗北した裏には、黒森峰PTA会長・富永による露骨な介入を疑わせる事実も判明…一体、何故其の様な事を?
此の様なネタは一般向けのアニメでやるのはアレだと思うのですが、非常に闇の深い話になったと自負しております。
ええ、私、此の様な闇の深い話が大好きなのです(黒い笑い)。
とは言え、本作はハッピーエンドを志向しておりますので、キチンとオチは付けますから御安心を。

因みに、今回初登場の「岩木 陸奥美」さんのモデルは、言う迄も無く“火遊びが好きな(笑)戦艦娘”です(爆)。

其れと今回辻や富永とグルになっている会社として登場した「河波造船所」ですが、実を言うと艦これにも艦娘として登場する南極観測船「宗谷」を建造した造船会社がモデルなのですが…後はググって見て下され。
宗谷も数奇な運命を辿った船として有名だけど、何と此の会社の創業者や幹部は、戦後あるトンでも無い事件の首謀者になりましてなあ……(渇いた笑い)

其れでは、次回をお楽しみに。

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