戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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遂に本編第100話を迎える事が出来ました。
と言う訳で、今回は原作アニメ版の“最終作戦”がいよいよスタート!
原作とは異なる展開で御送り致します…えっ、何が違うのかって?
其れは御覧になっての御楽しみ。
と言う訳で、其れではどうぞ。



第100話「フラフラ作戦、発動です!!」

 

 

 

「マウスが…市街地へ急げ!」

 

 

 

市街地跡へ繋がる大通りを進撃するティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)の車長用キューポラから双眼鏡で戦況を確認していた黒森峰女学園戦車道チーム副隊長・逸見 エリカは市街地跡から立ち昇る黒煙を見て、自分達の切り札だった超重戦車マウスが大洗女子学園戦車道チームによって撃破された事を知り“間に合わなかった!”と悔し気な思いを抱き乍らも味方の全車へ指示を出した。

 

だが、其処から離れた高台に在る路地には大洗女子の“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”が黒森峰戦車隊の動きを監視しており、チームリーダー兼車長の澤 梓が無線で……

 

 

 

「黒森峰、後3分で到着します!」

 

 

 

との報告を入れると、マウス撃破地点で指揮を執る大洗女子戦車道チーム隊長・西住 みほが毅然とした声で……

 

 

 

「分かりました!次の行動に移って下さい!」

 

 

 

と指示を出した処、各チームリーダーが「「はい!」」と答えつつ、先ずマウスに突っ込んでいたヘッツァー(カメさんチーム)ポルシェティーガー(レオポンさんチーム)が牽引して引っ張り出し、マウスの砲塔を極めていた八九式中戦車甲型(アヒルさんチーム)もマウスの車体から降りて、チーム各車は戦列に復帰しつつあったのだが……

 

 

 

「『あっ!』」

 

 

 

丁度、大通りに通じる路地から“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”が戻って来た時、私・原園 嵐が率いる“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の後方からヨロヨロと着いて来ようとした“カメさんチーム(38(t)/ヘッツァー改仕様)”から大きな異音が聞こえたかと思うと、後部に在るエンジンルームから黒煙を噴出して力尽きてしまい、其の儘白旗を揚げてしまったのだった。

 

其の姿を目撃した西住隊長と私が声を上げた処、私の隣に在る装填手用ハッチから様子を見ていた装填手・二階堂 舞も悲し気な声で……

 

 

 

「やっぱり“カメさん”のヘッツァー、無理のし過ぎでエンジンブローしちゃった……」

 

 

 

と呟いた後、“カメさんチーム(38(t)/ヘッツァー改仕様)”から無線が入って来る。

 

 

 

「ああ、良くやってくれたなあ…此処迄」

 

 

 

ハッチから顔を出した装填手担当の河嶋 桃先輩が感無量の声で語ると操縦手の小山 柚子先輩も「うん」と答える中、チームリーダー兼砲手の角谷 杏生徒会長が……

 

 

 

「我々の役目は終わりだな」

 

 

 

と呟いたのを聞いて居た私は西住隊長と一緒に、夫々(それぞれ)乗っていた戦車を降りて“カメさんチーム”のヘッツァー迄駆け寄ると、其れに気付いた河嶋先輩が……

 

 

 

「西住隊長!」

 

 

 

と声を掛けた為、先ず西住隊長が気落ちした声で……

 

 

 

「済みません……」

 

 

 

と答えた後、私も震える声で……

 

 

 

『本当に御免なさい!私、マウスが本当に怖くて、何も出来なくて!』

 

 

 

と叫んだ時、小山先輩が笑顔で首を横に振り乍ら……

 

 

 

「謝る必要無いよ」

 

 

 

と答えてくれた後、河嶋先輩が「良い作戦だった!原園も気落ちするな!」と励ましてくれて、最後に会長が(此の人にしては珍しく)気合の入った声で……

 

 

 

「後は任せたよ!」

 

 

 

と告げた後、河嶋・小山両先輩が……

 

 

 

「頼むぞ!」

 

 

 

「ファイト!」

 

 

 

と続き、最後にチームの車長・名取 佐智子が「隊長…此処で泣いちゃ駄目です!」と西住隊長へ声を掛けた後……

 

 

 

「最後迄諦めずに戦って下さい!」

 

 

 

と下級生とは思えない程の大声で激を飛ばしたのに対して、西住隊長も覚悟を決めた声で「はいっ!」と答えた時、今度は佐智子が……

 

 

 

「其れと原園さん、もう気持ちは大丈夫ですか!?」

 

 

 

と問い掛けて来たので、意表を突かれた私は慌て気味の声で……

 

 

 

『あ…はいっ!』

 

 

 

と答えた処、佐智子は笑顔で私を見詰め乍ら……

 

 

 

「じゃあ、最後迄皆を…西住隊長を御願いします!」

 

 

 

と告げてから頭を下げたのを見た私は気合を入れると大声で彼女の言葉に答えたのだった。

 

 

 

『有難う!行って来る!』

 

 

 

さあ黒森峰…仲間達を痛めつけた上に私を脅えさせたツケは払ってもらうからね!

 

 

 

 

 

 

戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない

 

 

 

第100話「フラフラ作戦、発動です!!」

 

 

 

 

 

 

「此方は6輌です。相手は未だ14輌…ですが、フラッグ車は何方(どちら)も1輌です!」

 

 

 

先ず、西住隊長が進撃を始めた私達・大洗女子学園戦車道チームの生き残り全車…隊長車の“あんこうチーム(Ⅳ号戦車H型仕様)”に“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”・“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”・“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”・“レオポンさんチーム(ポルシェティーガー)”、そして私達“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の6輌に乗るメンバー全員へ向けて状況を告げた後……

 

 

 

向こう(黒森峰)の狙いは、フラッグ車である私達“あんこうチーム(Ⅳ号戦車H型仕様)”です。皆さんは相手の戦力を出来る限り分散して下さい!」

 

 

 

と指示を出したのに対して“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”リーダー兼車長にしてバレー部々長の磯辺 典子先輩が気合の入った声で「皆、敵を挑発するよ!」と呼び掛けると、私が聞いて居た無線からも“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”メンバー全員が一斉に「「はいっ!」」と応答する声が聞こえて来た。

 

其の声に勇気を貰った私は“さあ、マウスに怯えていた時の汚名返上だ!”と決意を固めると無線で“試合前に皆で打ち合わせていた作戦”を実行する事を皆に告げる。

 

 

 

『じゃあ私達は敵を攪乱しに行くので、“カバさん”は“アヒルさん”と連携して相手を1輌ずつ潰して下さい!』

 

 

 

すると“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”リーダー兼装填手のカエサル先輩が“ある事”に気付いたらしく、私へ向けて無線で……

 

 

 

「そうか…決勝戦前の練習でやった“()()()()”をやる為に、原園はマウスから私達を守ったんだな!」

 

 

 

と呼び掛けて来たので、私は若干恥ずかし気な声で……

 

 

 

『実は…そうでした♪』

 

 

 

と答えた処、西住隊長から「了解です。原園さん、御願いします!」と告げられた為、私は一旦深呼吸してから……

 

 

 

『はいっ!マウスが出た時には皆に迷惑を掛けてしまったから、其の分迄暴れて来ます!』

 

 

 

と宣言したのだった。

 

 

 

一方、嵐の宣言を聞いた“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”車長のエルヴィンは「皆、私達“カバさん”はマウスに襲われた時、原園に助けて貰った恩がある!今こそ此の恩を返すぞ!」と車内の仲間達へ向けて檄を飛ばした処、カエサルは勿論の事、操縦手のおりょうや砲手の左衛門佐も一斉に……

 

 

 

「「応っ!」」

 

 

 

と返したのである。

 

そしてみほは再び無線で……

 

 

 

「“あんこう”は敵フラッグ車(まほのティーガーⅠ)との1対1の機会を伺います!“レオポンチーム(ポルシェティーガー)”の協力が不可欠です!」

 

 

 

と告げると“レオポンさんチーム(ポルシェティーガー)”車長兼リーダーのナカジマが「心得た!」と答え、操縦手のツチヤも不敵な表情で笑い乍ら「燃えるねぇー!」と返す中、みほは更に……

 

 

 

「先鋒は勿論ですが、後続のヤークトティーガーや特にエレファントの火力にも十分注意して下さい!」

 

 

 

と呼び掛けた処、今度は“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”リーダー兼車長の梓から「隊長!後続の方、任せて貰っても良いですか!」との意見具申が有った為、みほはM3リーで大火力と重装甲を誇る重駆逐戦車と渡り合うリスクの大きさを感じつつも意を決して……

 

 

 

「御願いします!」

 

 

 

と告げたのだった。

 

其れに対して“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”車内では士気が上がったのか、75㎜砲手の山郷 あゆみと37㎜砲手の大野 あやが……

 

 

 

「「よっしゃあ!」」

 

 

 

と気合の入った声を出すと、操縦手の阪口 桂利奈が其れ以上の気合で「やったるぞ!」と叫んで戦意を高めるのだった。

 

 

 

そしてみほは“あんこうチーム(Ⅳ号戦車H型仕様)”の仲間達へ向けて最後の確認を始める。

 

 

 

「麻子さん、袋小路に気を付けて相手を攪乱して下さい!」

 

 

 

「オッケー」

 

 

 

「沙織さん、互いの位置の把握、情報を密にして下さい」

 

 

 

「了解!」

 

 

 

「華さん、優花里さん。HS0017地点迄は極力発砲を避けて下さい!」

 

 

 

「「はい!」」

 

 

 

こうして、仲間達への指示を出し終えて“最後の戦いの準備が整った”事を確認したみほは“最後の指示”を無線で出した!

 

 

 

「其れでは、此れより最後の作戦“フラフラ作戦”を開始します!」

 

 

 

斯くして…後年“決勝戦・伝説の終盤戦”として語り継がれる戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

「敵、発見!」

 

 

 

大洗女子を追っていた黒森峰が彼女達を捕捉したのは、みほが最後の指示を出してから数分後。

 

進撃路の行き当たりから大洗女子の“あんこうチーム(Ⅳ号戦車H型仕様)”と“レオポンさんチーム(ポルシェティーガー)”・“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”が左方向へ横切って行くのを目撃した黒森峰戦車隊14輌*1は隊列を組んだ儘、三叉路を左折して追跡を開始したが、実は此れが大洗女子の仕掛けた“フラフラ作戦”の始まりだった。

 

彼女達3輌の戦車を追い掛け始めると最後尾の“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”が目の前でジグザグ走行し、前方の“あんこう”・“レオポンさん”両チームが砲撃されない様に機動する。

 

其の姿を見たエリカが「邪魔よ!」と怒声を上げるが、彼女の補佐役である1年生の五代 百代は焦りを隠せない声で「駄目だ…徐々に相手の罠へ誘い込まれている様な気がする!」と叫ぶ中、隊長のまほは……

 

 

 

「エリカ、五代、落ち着け!今、相手フラッグ車(あんこうチーム)の姿を見逃す訳には行かない!」

 

 

 

と叫んだが、結果的に目前の状況に気を取られていた黒森峰戦車隊は彼女達が向かわなかった三叉路右側の電柱に隠れていた“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”が黒森峰の車列後方へ忍び寄ろうと動き始めるのと同時に、其の近くに居た()()()()()()()()も姿を消していた事に気付かなかった。

 

一方、みほ達大洗女子の戦車3輌は住宅街跡地の狭い道路を縦横無尽に駆け抜けるが、突然“あんこうチーム(Ⅳ号戦車H型仕様)”がとある街角で右折して単独走行へ移るとチームの通信手・武部 沙織が各チームの戦車へ向けて……

 

 

 

「此方“あんこう”。448ジャンクション左折します。“レオポン”373左折。“アヒルさん”373右折して下さい」

 

 

 

と“次に通過する街角で如何動くか”について指示を下すと“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”では通信手・近藤 妙子が操縦手の河西 忍へ「373の先、あと3つ直進!」と伝えた処、忍が気合の入った声で「はいっ!」と答えてから“次の作戦の目的地”目指して突き進むのであった。

 

 

 

 

 

 

其の結果、黒森峰戦車隊は夫々(それぞれ)異なる方向へ逃走する大洗女子の各戦車を追う為に戦力を分散する事態に陥った。

 

特に“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”を追跡する事になった黒森峰のティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)1輌とパンター中戦車G後期型2輌の部隊は相手が仕掛けて来た遊撃戦によって翻弄される事になったのである。

 

 

 

「挑発に乗るな、落ち着け!」

 

 

 

エリカ副隊長が駆るのとは別のティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)車長で3年生の安達 亜沙子*2が僚車のパンターへ警告を発するが“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”は大通りの道幅を一杯に使ったアクロバティック走法で彼女達を翻弄すると、突然ティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)の右側面に張り付いてから砲塔側面へ57㎜砲の一撃を加える!

 

 

 

「このーっ、八九式()()()の癖に!」

 

 

 

装甲貫徹力が低い八九式の57㎜砲弾ではティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)の装甲に小傷程度のダメージしか与えられないにも関わらず、プライドを傷付けられたと思い込んだ亜沙子は頭に血を上らせ乍ら激昂すると右隣のパンター中戦車G後期型と一緒になって“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”をサンドイッチにしようとするが、相手は卓越したドライビングテクニックでアッサリ躱すと道路脇の坂を一気に登って一段高い部分に在る歩道へ移動した後、又しても57㎜砲で挑発攻撃を仕掛けつつ相手の攻撃を躱し、再び階段を降りて車道へ戻る。

 

其処へ車長の典子が……

 

 

 

「やーい、やーい!」

 

 

 

と黒森峰戦車隊目掛けて挑発すると、周りが一切目に入らなくなっていた亜沙子が……

 

 

 

「待て~!」

 

 

 

と絶叫し乍ら八九式を追っていた時、街角から突如砲声が轟いた!

 

 

 

「何っ、待ち伏せ!?」

 

 

 

突然の攻撃で仰天した亜沙子が叫ぶと、彼女から見て左側を走っていた僚車のパンター中戦車G後期型の車長から無線で……

 

 

 

「此方パンター4号。済みません、エンジンをやられました!」

 

 

 

との悲鳴が入ると同時に、其のパンター中戦車G後期型右側面のエンジンルーム付近から黒煙が吹き上がっているのが見えた…勿論、砲塔からは白旗が揚がっている。

 

其れを見た亜沙子が視線を近くの路地へ向けると……

 

 

 

「あれは…Ⅲ号突撃砲!」

 

 

 

何と路地の陰に“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”が隠れていて、其の75㎜砲の砲口からは未だ発砲煙が立ち上っていたのだ!

 

其の状況を見た亜沙子は赤鬼の様な形相を浮かべつつ「大洗め~!返り討ちにしてくれる!」と叫び乍ら、大洗のⅢ突(カバさんチーム)を砲撃しようとするが、其処へ典子が……

 

 

 

「やらせないよ!」

 

 

 

と叫び乍ら“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”が飛び込んで来ると又しても57㎜砲の牽制攻撃がティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)砲塔正面に命中した為、亜沙子は“砲撃をするチャンスを逃した!”と悔しがっていた時!

 

 

 

“ズドーン!”

 

 

 

「!?」

 

 

 

今度は自分の後ろから鋭い砲声が響いたのだ!

 

 

 

 

 

 

其の少し前、“アヒルさん”と“カバさん”両チームの戦い振りを観客席の外れで眺めて居た嵐の母・原園 明美は満面の笑みを浮かべ乍ら……

 

 

 

「今のは“ハンター・キラー作戦”ね♪」

 

 

 

と評した処、みほの母で西住流師範の西住 しほは苛立ち気味の声で「何だ、其れは!?」と言い返すが、其れに対して嵐の大叔母である元陸上自衛隊陸将・原園 鷹代は「成程」と呟いてから、こう答えたのである。

 

 

 

「敵を誘い込む役と攻撃する役を別々にしたんだよ。此れも戦い方としては邪道じゃ無い」

 

 

 

すると話を聞いて居たアンツィオ高校OGで明美達の親友でもある大姫 龍江も笑顔で頷きつつ……

 

 

 

「大洗の八九式はすばしっこいし、砲撃の命中率も高いけど肝心の57㎜砲の威力が豆鉄砲並みやから戦車戦では役に立てへん。逆にⅢ突は火力が高いけど砲塔が無いから待ち伏せの時しか使えへん。せやから“()()()()”をする事で両方の欠点を解消して長所を生かす戦い方をやったんや」

 

 

 

と解説すると明美としほの親友である黒森峰OG・周防 長門も頷き乍ら……

 

 

 

「“ハンター・キラー作戦”の名前は第2次世界大戦中の対潜水艦戦(ASW)闘から来ているが、やり方は猟師が猟犬を使って獲物を追い立てた所で猟師が鉄砲で獲物を撃つのと同じだ。つまり昔から使われて来た人間の知恵を戦車道に応用した迄の事だな」

 

 

 

其れを聞いて居た冷泉 麻子の祖母・久子は明美に向けて楽し気な声で「ふむふむ。“猟師と猟犬”の例えは、私にも良く分かったよ…其れと、しほさんは頭が固そうだと言う事も分かったね」と答えた為、彼女は悪戯っ子の様な笑顔を浮かべ乍ら……

 

 

 

「分かったでしょ“しぽりん(しほ)”。戦車道に限らず頭が固いと時代の変化に取り残されて恥ずかしい思いをするわよ♪」

 

 

 

と語り掛けた為、しほが憮然とした顔で何か言い返そうとした時、観客席のスピーカーから鋭い砲声が響き、続いて悲鳴の様な声が上がった!

 

 

 

「此方パンター3号、後ろからやられました!」

 

 

 

 

 

 

此の時、大洗女子の八九式中戦車甲型(アヒルさんチーム)Ⅲ号突撃砲F型(カバさんチーム)と戦っていた亜沙子のティーガーⅡ重戦車(ケーニッヒティーガー)の右側に居たパンター中戦車G後期型のエンジンルームから又しても黒煙が吹き上がり、砲塔上面から白旗が揚がってしまった。

 

此れで自分に付き従っていた2輌のパンター中戦車を失い孤立してしまった亜沙子は「馬鹿な!Ⅲ突は路地の奥に逃げたから其処には居ない筈なのに!」と叫ぶが、此処で亜沙子と一緒にハッチから顔を出して周囲を監視中だった装填手が「違う!あれは……」と亜沙子へ呼び掛けた為、彼女は視線を後方へ向けた時!

 

 

 

「アレは“イージーエイ(M4A3E8)ト”…原園 嵐!?」

 

 

 

 

 

 

そう…彼女の目の前には砲口から発砲煙が上がっているM4A3E8(ニワトリさん)の姿が在り、其の車長用砲塔ハッチからは忘れもしない“決勝戦直前の合同インタビューで「黒森峰をボコボコにする*3」と言い放った赤毛の少女”が此方を見乍ら不敵な笑みを浮かべていたのだ!

 

 

 

『さあ…マウスなんて化け物を出して来たツケは払って貰うよ!』

 

 

 

母・明美としほに対するトラウマから、対マウス戦では思う様に戦えなかった嵐が放った捨て台詞は周囲の騒音にかき消された事も有って亜沙子には聞こえなかったが、其れでも嵐の顔を見て興奮状態になった彼女は“目に物を見せてやる!”と思いつつ……

 

 

 

「あのガキ…こっちの88㎜砲でぶっ倒してやる!」

 

 

 

と叫んだが、其処で亜沙子車の砲手が……

 

 

 

「待て!八九式とⅢ突が正面から来る!」

 

 

 

と叫んで来た上、操縦手も……

 

 

 

「こっちは至近距離でイージーエイ(M4A3E8)トに後ろを向けているから相手の高速徹甲弾(HVAP)に撃たれると、こっちの後面80㎜装甲を抜かれるわ!」

 

 

 

と叫んだ為“此の儘だと格下の戦車相手に不覚を取られる”と悟った亜沙子は悔し気な声で……

 

 

 

「クソーッ!此処は撤退する!」

 

 

 

と叫びつつ此の場を離れようとしたのだが……

 

 

 

「あっ!イージーエイ(M4A3E8)トが逃げる!」

 

 

 

何と自分を追い掛けて来ると思っていたイージーエイ(M4A3E8)トは此方を無視するかの様に其の場から走り去ってしまい、代わりに八九式中戦車甲型(アヒルさんチーム)Ⅲ号突撃砲F型(カバさんチーム)の2輌が此方へ向けて牽制攻撃を仕掛けて来たのだ!

 

 

 

「クソッ、格下の癖に舐めるんじゃ無いわよ!」

 

 

 

斯くして単独で八九式とⅢ突を相手取る破目になった亜沙子は悪態を吐き乍ら戦い続けるが、其の結果彼女は“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”を追跡し損ねてしまった為に此の後チームを“危機”に陥れただけで無く、自分も酷い目に遭う運命が待っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

一方、試合中のフィールドの別の場所では大洗女子の“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”が悲鳴を上げていた……

 

 

 

「硬過ぎる~!」

 

 

 

黒森峰戦車隊・本隊の最後尾に居た格上の重駆逐戦車・エレファントを威嚇射撃で挑発した上、住宅地の狭い路地へ誘い込んでから皆のチームワークと操縦手の阪口 桂利奈によるドラテクで路地に迷い込んだ相手の後ろへ回り込んで至近距離から砲撃を加えると言う「戦略大作戦」を展開した“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”だったが……

 

決勝戦前夜にチーム全員で戦争映画を見乍ら徹夜で研究した作戦も、後面で最大85㎜の装甲厚を誇るエレファントの前ではM3中戦車リーの37㎜砲と75㎜砲も役に立たない。

 

其の事を思い知らされたチームの37㎜砲々手・大野 あやが悲鳴を上げるとチームリーダー兼車長の梓も……

 

 

 

「零距離でも倒せないなんて、もう無理じゃない!」

 

 

 

と弱音を吐く一方で、一時は“住宅街の狭い路地で相手に後ろを取られ、旋回しようにも道幅が狭過ぎるので出来ない”状況下で絶望していた黒森峰のエレファント車長は……

 

 

 

「アハハ!M3リー如きで此のエレファントの装甲が破られる筈も無い!此の儘後進してM3リーを押し出せば、こっちの勝ちだ!」

 

 

 

と舞い上がっていたのだが、其の時“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”の車内では……

 

 

 

「!」

 

 

 

37㎜砲の装填手を務める1人の少女の脳裏に“天啓”が閃いた。

 

 

 

其れは、彼女が大洗女子学園の図書館で“ある短編劇画*4”を読んでいた時の事だった。

 

如何しても其の劇画のラストシーンの意味が分からず、困った彼女は其の場に居た原園 嵐に質問した…但し、彼女は嵐に向けて一言も喋ってはおらず、自らの仕草と表情だけで嵐に質問し、嵐も其れだけで質問の意味を理解して、こう答えたのである。

 

 

 

『ああ…此の()()()()()()()()()()()()()の後ろに有るハッチは脱着式だから、此の劇画の様に地面へ落とす事が出来るんだよ。しかも其のハッチは装甲板でもあるから近寄って来たソ連兵は落ちて来たハッチに潰された訳』

 

 

 

嵐の答えを聞いて漸く彼女は納得したが、更に嵐は何かを思い出すとこう答えた。

 

 

 

『因みに此のハッチの内側に有る小さな丸いハッチは88㎜砲弾の薬莢排出口、つまり薬莢を捨てる所のハッチだから防御上の弱点だよ。其れと此の()()()()()()()()は後に車体前面の機銃と車長用キューポラを追加し、履帯の変更や機関室上面のグリルの防御を強化する等の改修を行ったタイミングで愛称を“()()()()()()”に改名したんだ』

 

 

 

其処迄思い出した瞬間、其の少女・丸山 紗希はあやの肩を叩く。

 

肩を叩かれたあやが紗稀に気付いて「あっ!」と声を上げると紗稀はたった一言……

 

 

 

「薬莢…捨てるとこ」

 

 

 

と告げたのを聞いたあやはハッとなって……

 

 

 

「凄―い!紗希ちゃん天才!」

 

 

 

と歓喜の声を上げ、其れを聞いて勇気を貰った75㎜砲手のあゆみが「良しっ!“せーの”で撃とう!」と皆に呼び掛けて……

 

 

 

「「せーのーでっ!」」

 

 

 

と声掛けをしてからM3リーの37㎜&75㎜砲を“エレファントの薬莢排出口”目掛けて撃ち込んだ結果!

 

 

 

「黒森峰女学園・エレファント、行動不能!」

 

 

 

黒森峰が誇る強力な駆逐戦車トリオの一角(残り2輌はヤークトティーガーとヤークトパンター)・エレファントを非力なM3リー中戦車で撃破したと言う、大洗女子の1年生集団“ウサギさんチーム”による快挙に会場からは大歓声が上がった!

 

そして、此処から大洗女子学園は更なる攻撃を展開するのである。

 

 

 

(第100話、終わり)

 

 

*1
此の14輌の内訳は、フラッグ車のティーガーⅠ重戦車×1輌の他、ティーガーⅡ重戦車×2輌、パンター中戦車G後期型とⅣ号駆逐戦車70(V)ラング×各4輌、ヤークトパンター・ヤークトティーガー駆逐戦車とエレファント重駆逐戦車×各1輌。実は原作アニメ版と比較すると顔触れが異なるので注意。

*2
「プラウダ戦記」第4巻の黒森峰対青師団高校戦に登場する黒森峰2年生でティーガーⅠ重戦車の車長。性格が此のティーガーⅡの車長と似ていたので此処で起用した。

*3
本編第86話「決勝戦・前日です!!」を参照の事。

*4
此の劇画にはモデルが有る。詳細は後書きを参照の事。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第100話をお送りしました。
超重戦車マウス撃破と引き換えに“カメさんチーム”を失った大洗女子学園だが、生徒会役員トリオや佐智子ちゃんの声援で勇気付けられたみほ殿と嵐ちゃん達は最後の決戦へ向けて“フラフラ作戦”を決行する…本作オリジナルの要素も追加してね!
と言う訳で、本作ではマウス攻防戦の際に嵐ちゃんが助けた“カバさんチーム”が“アヒルさんチーム”と組んで黒森峰の戦車狩りを仕掛けると言う“ハンター・キラー作戦”を展開。
両者の長所を生かして短所を補い合う妙策が効いて、黒森峰のパンター中戦車G後期型を1輌撃破、更に居合わせた“ニワトリさんチーム”も同型車を1輌撃破する中、“ウサギさんチーム”も難敵エレファント重駆逐戦車を撃破すると言う名場面迄話が進みましたが、次回も大洗女子学園のターンは続きますので、乞う御期待。

其れと、今回の有る描写について少し長い話を。
今回、丸山 紗希ちゃんが原作アニメ版最終回の名台詞「薬莢…捨てるとこ」と告げる場面を掘り下げて描写しましたが、其の中で書いた「ある短編劇画」はモデルが有ります。
其れは、ガルパン本編で秋山 優花里の部屋に飾られていた「黒騎士物語」の主人公・バウアー大尉の生みの親でもある劇画家・小林 源文先生が描いた「第656駆逐戦車連隊、クルスクでの戦い」(旧題「クルスクに於ける第656駆逐戦車連隊」。単行本では初版が大日本絵画から刊行されていた「街道上の怪物」に収録されていた)です。
で、何故此の話をするのかと言いますと、此の劇画のラストが「戦闘中に過負荷でモーターが焼けてしまったフェルディナント(此れが後に改修されてエレファントになる)から乗員が車外へ脱出しようとするが、其処へ肉薄攻撃を仕掛けたソ連兵に屋根を昇られて大ピンチの時、車体後部に有るハッチを地面へ落とす事で近くに居た別のソ連兵を潰した後、車内のガンポートから屋根に昇ったソ連兵を射殺して脱出に成功する」と言う話になっています。
で、実は紗希ちゃんが原作アニメ版最終回で「薬莢…捨てるとこ」と言った時に映っていたエレファントの車体後部ハッチ(薬莢を捨てる為の専用ハッチも付いている)こそが、正に小林先生が劇画のラストで描いた「地面に落としてソ連兵を潰したハッチ」だった為、最終回を当時のバンダイビジュアル公式動画配信で見た居た私は……
「あーっ!此れは“あの劇画”で地面に落ちたハッチじゃないか!」
と絶叫した訳でして、自分にとってはガルパンを見た思い出として今でも強烈に記憶に残っております。
と言う訳で、今回当時の思い出を書き残したくなり、つい作中描写の中に織り込んでしまった次第で御座います。

其れでは、今回は後書きが長くなってしまいましたが、次回をお楽しみに。

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